SMビアンエッセイ♪

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■6001 / 親記事)  possession
  
□投稿者/ 美優 一般人(1回)-(2009/06/26(Fri) 21:30:49)
    あたしは昔から、何となく自分がおかしい事に気が付いていたと思う。












    あたしは今まで付き合ったことがあるのは2人くらい。



    恋をするたび、あたしはただただその人だけを愛して、欲した。



    愛する人に、愛しているが故に、極度の束縛や独占なんかを求めてた。



    愛してる人に、部屋にずっと閉じ込められても平気。



    愛してる人に、暴力を振るわれても平気。



    むしろ、束縛や独占なんかをされたいって、強く思ってたと思う。



    今まで付き合った人は、みんなあたしのそこが嫌で別れて、離れていった。



    その度にあたしは1ヶ月くらい泣いて、引きこもって、ただただ悲しんだ。
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■6002 / ResNo.1)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(2回)-(2009/06/27(Sat) 20:02:16)
    リンゴーン・・・リンゴーン・・・・・・・・・





    終礼が終わると同時に、学校中に鈍い鐘の音が鳴り響いた。
    学校が終わった合図だ。















    豊かな自然の中に、ひっそりたたずむ白を基調とした立派な校舎。


    『黒百合女学院』。男子禁制の、女の園。


    全寮制で男性は教師にも生徒にもいない、ただただ女ばかりがいる学校である。
    偏差値も高く、大会でもほとんど上位を占める有名校。
    中高大一貫校で、密かに秘め事のように、山や海に囲まれた場所にあった。


    体育祭や文化祭、卒業式や入学式くらいでしか親には会えない。
    バスや電車も、1日に2本くらいしか通らないような場所である。
    行事ではるばる来た生徒の親は、学校の近くにある高級感溢れたホテルに泊まるのだ。









    そんな金持ち学校の高等部1年薔薇組に、あたしはいた。
    あたし・・・・・天音梨乃。15歳。今年高等部にあがったばかりだ。
    といっても、大体が中学生の頃から一緒にいる人ばかりだから、大した変化はないけど。





    「りーの!」





    ここの学校の制服である黒いシャツ、白い赤のラインが入ったスカート。
    胸元に高等部の証である赤いリボンと、金のバッジを留めた女の子がやって来た。



    彼女は北野美空。中等部の頃に知り合った友達だ。
    今は生憎、あたし隣の百合組になってしまったけど、中学校3年間はずっと、一緒なクラスだった。


    茶髪の腰までのロングヘアーをなびかせて走ってきて、あたしに抱きついた。
    それだけであたし達には視線が集まる。


    可愛らしい容姿と性格を持ち合わせた美空は、なんだかんだ結構な人気者。モテるし。



    女子校だとやはり、同性愛は生まれる物で、逆に男性と付き合っている生徒の方が珍しい。寧ろ引かれるかもしれない。







    「ねえ、帰ろうよ、梨乃」




    「うん、帰ろっか」






    彼女とはルームメイト。寮の部屋が一緒で、仲もいいため、毎日一緒に登下校をする。決して恋人ではない。



    そもそも、この子にはちゃんと、高等部2年菫組にいる恋人が存在する。
    あたしにはいないけど・・・・・・・・。
    最近は恋人である先輩と一緒に帰っていたから、久ぶりにあたしと帰る。


    何でも、先輩が部活で残らなければならないらしい。
    先輩は陸上部の長距離走選手。毎回お馴染みのエース。大会も近いし、練習に毎日遅くまで励んでいる。
    だからあたしと帰るらしい。


    先輩とは知り合いだけど、性格がサバサバしてて明るいし、いい人だ。
    先輩もあたしの事を知っているし、誤解される事もない。














    校舎の玄関からのびる、舗装された白い大理石の道を5分ほど歩くと、寮に着く。



    寮は3つあって、それぞれがある一定の距離を保って並んでいる。
    中等部は『向日葵』。高等部は『紫陽花』。大学は『シクラメン』という名前だ。
    この学校の創立者である人が花が大好きで、クラスや寮の名前も花の名前。
    花畑も敷地内に2ヶ所あり、鮮やかで綺麗な花がたくさん咲く。

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■6003 / ResNo.2)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(3回)-(2009/06/27(Sat) 21:44:14)
    あたしと美空の部屋は、3階あるうちの2階にある。
    2階の1番奥だ。



    寮の部屋は全室大きい。快適だ。
    冷暖房がついているし、小さなキッチンもあるし、テレビや冷蔵庫なんかも揃ってる。
    本棚や机、ベッドもあって、流石お金持ち校だななんて思った時期もあった。
    が、今は慣れてしまって普通になってしまっている。








    ガチャリ、とあたしの持っている銀の鍵で、部屋の鍵を開ける。
    あたしの持っている、っていっても、美空も同じものを持っている。
    合鍵、というやつだ。





    美空は入るなり、涼しくしておいた部屋のベッドに飛び乗った。
    あたしはそんな彼女を見つつ、制服から私服に着替えた。


    クローゼットも1人ずつあるので、自分のクローゼットを開けて、白いワンピースと、黒い白いレース付きのレギンスに着替える。


    いつの間にか美空も着替えていた。
    美空は黒いサマーセーターにジーンズだ。髪の毛をピンクのシュシュで上でまとめている。
    今から先輩に会いに行くね、と行って、満面の笑顔で部屋を小走りで出て行く。














    1人になってしまったあたしは、特に空腹でもなく。
    1階にある食堂で夕食も摂らずに、外の空気を吸いに、薄暗い7時前の外に出た。





    みんなは夕食を食べたり、部屋にいる頃だ。部屋のほとんどに明かりが付いている。




    あたしも美空しか友達がいるわけでもない。他にも友達がいる。
    けど、なぜかそういう気分にならなかったのだ。
    食堂に行けば、部屋に行けば、確実に最低でも1人は会える。








    何となく今夜は森に近付きたくなって、ちょっと道を外れて森側に行った。
    やっぱり、暗闇に包まれた森は、昼間の森とは違って見える。怖さが倍増する。
    でも、なぜか今日は近付きたかった。








    「何してるの?」













    いつの間にか暗くなっていた背後から、ハスキーな声がする。
    知らない声だから、知り合いじゃあないみたいだ。

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■6006 / ResNo.3)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(4回)-(2009/06/28(Sun) 17:12:34)
    後ろをばっと、勢いよく振り返ると、微笑んでいる人と目が合った。
    やっぱり見たことがない顔で、制服じゃないからどこの人かも分からない。
    ただ、教師ではないだろう、という事は頭の片隅で思った。
    何しろ、今までそんな教師は見たことないからだが、顔が整っていて分からない。





    「えーっと、驚かせちゃったかな?ゴメンね、いきなり声かけてさ?」





    あはは、もう馬鹿だなって苦笑いしながら頭の後ろで手を組む、謎の人。
    あたしはどうやら、酷く驚いた顔をしていたらしい。




    にしても、綺麗な顔だ・・・可愛くはない、どっちかというと、美人でカッコイイ感じの人だ。



    身長もあたしより10cmくらいは高そうだし、すらっとしていてモデルみたいだ。
    ボーイッシュに短く切ってある黒髪と、茶色っぽい目が特に惹きつける。
    白いTシャツと黒いジャージのズボンを着て、にっこりと笑ってくれていた。





    「君、高等部1年薔薇組の、天音さん、でしょ?天音梨乃だっけ」




    ああ、そうだという感じで名前を当てられた。しかも、クラスまでも。
    相手はあたしの事を、少なからず知っている人らしいみたいだ。




    「・・・・はい、そうですけど・・・・・・?」




    あたしのほうは相手の事を何も分かっていなくて、ちょっと疑っている感じになってしまった。警戒心丸出しだ。


    失礼だよね、と思ったが、相手は笑顔を崩さない。気にしてはないらしい。
    ポーカーフェイスか、とも思ったが、そこまで疑っては本当に失礼だ。




    「お、喋ってくれたね。てっきり、喋ってくれないかと思ってたよ」



    「・・・・・・すみません、もともと無口なので」



    「そうなんだ?ああ、もう行かなくちゃ。早く寮に戻りなさい、『あの事』を知らない訳じゃあないよね?」





    バイバイ、と手を数回振って、駆け足であっという間に闇に消えた。
    一体、何だったのか、誰だったのか。




    『あの事』というのを知っている限り、ここの学校の関係者らしい。



    今から約5年前・・・・・とある後輩に恋した女生徒が振られたショックで、ここの森のどこかに隠れてしまった、という話の事だ。
    だが、今まで見たことはないし、周りにもそういう人はいない。


    しかし、3年ほど前に、夜遅くに数人で森の近くで花火をしていた先輩が、その人を見かけたらしい。
    その人は、白い狐のお面をつけ、紫の綺麗な男物の着物を着ていたらしい。
    顔も声も分からなかったが、先輩が驚いて必死で逃げた後、どこを探してもそんな人は現れなかった。
    幻覚でも、夢でもない、とすると、本当にいるのかもしれない。



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■6008 / ResNo.4)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(5回)-(2009/06/28(Sun) 17:33:28)
    あたしはその人の言うとおり、その後寮に戻った。
    食事は温かいきつねうどんを食べて戻ったが、まだあたしは1人だった。
    美空はまだ先輩のところにいるらしい、もしかしたら朝帰りかもしれない。


    一応、各寮にも監督の人がついているが、裏から入れば分からないのだ。
    それに深夜や早朝だと、流石に監督の人も睡眠中であるため、余計にばれない。
    多分、美空もそこを狙って帰ってくるはずだ・・・・ヤって帰ってくるだろう。



    いつ帰ってくるのか分からないあたしは、シャワーを浴びてパジャマに着替え、宿題をやり始めた。
    今日は古文と、歴史の宿題が出ている上に、予習もしている。
    やり終えた時には既に、時計は深夜の12時を指していた。
    森の近くで随分といたらしいが、それでも2時間くらいは勉強していただろう。



    明日の準備を済ませ、白いふかふかのベッドに潜り込む。
    電気を消して、近くのテーブルに置いてあるランプを付けた。この綺麗で優しい、温かな光が好きだ。
    これは確か、7歳年上の従兄弟がイギリスに留学し、一時帰国した時のお土産だ。




    目をつぶると、やはりそれなりに疲れているのか、眠たくなってきた・・・。
    あの人、誰なんだろう・・・・気になるなあ・・・・・・・。







    「もう、寝ちゃったか」







    「っ!?」







    ふと誰かの声がして、慌てて飛び起きた。侵入者ならば、あたしの身が危ない。






    しかし、その人を見た途端、胸を撫で下ろす事になった・・・・さっきの人だったのだ。
    どうやって入り込んだのかは分からないが、部屋の前にプレートが各室ある。
    それを見れば、簡単にあたしの部屋が分かってしまうのだ。





    「さっき見たときから、気になっちゃってさ。お話したいな」





    「いい・・・・ですけど・・・・・」







    あたしは電気を付けてランプを消し、その人と自分に冷たい紅茶を淹れた。
    コップを受け取ると、その人はありがとう、と言ってちょっと飲んだ。
    そして、美味しい!上手なんだね、と褒めてくれたのが無性に嬉しかった。
    何しろあたしが選んだ茶葉で、あたしが淹れた紅茶なのだ。嬉しいのは当たり前だ。






    「あれ?もう1人・・・・美空だっけ?どうしたの?」



    「ああ・・・・・恋人の先輩の所です」



    「へえ、じゃあ今頃ヤってんのかな?」



    「そうかもしれませんね・・・・・」



    「ははっ、そんな呆れた顔しなくてもいいじゃんか」



    「・・・・・してます?」



    「うん、してたよ。君はいないの?恋人」



    「いないですよ、好きな人さえ、気になる人さえいませんから」



    「そうなんだ?勿体無いなあ、こんな美人だから、何人かは狙ってるだろうに」



    「告白はされますが、その気になれないので、お断りさせて頂いてるんです」



    「じゃあ、一緒だね。告白されるけど、相手にしないところ、とか」







    こんな他愛ない話を1時間ほどすると、その人はまたも名前さえ明かさず、笑って帰って行った。



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■6009 / ResNo.5)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(6回)-(2009/06/28(Sun) 17:46:19)
    朝、あらかじめ7時にセットしておいた時計が鳴り、目が覚めた。
    隣のベッドにはやっぱり、いつ帰ってきたのか美空が眠っている。
    毎回の事だが、溜息をつくとあたしが彼女を揺さぶり起こす。




    「起きて、美空。朝だよ、遅れるよ」



    「んぅ・・・・・?梨乃ぉ?おはよぉー」





    寝ぼけた感じで起きた美空を顔を洗いに行かせて、制服に着替えると食堂に向かった。
    勿論、彼女の首のキスマークを絆創膏で隠すことも手伝ってあげた。








    にぎやかな朝の食堂でサンドイッチとスープ、サラダとフルーツという朝食を2人とも済ませ、一旦部屋に戻って歯を磨いた。
    そして、やっと学校に登校するのだ。朝の8時45分までに行けば、遅刻ではない。







    「おはよっ、梨乃姫☆」








    教室に入るなり、ぽん、と肩を叩いて挨拶をしてくる、朝からハイテンションなクラスメイト。
    あたしは低血圧なため、朝にはめっぽう弱いのだ。羨ましく感じてくる。




    彼女もまた、中等部の頃からの友達の1人。朝日香蓮。バドミントンの実力が素晴らしい人である。






    「まーたテンション低いよー?」



    「しょうがないでしょ、梨乃は低血圧なんだからね」



    「あ、そうだよねー」







    隣のクラスメイトが、ぐったりしてしまっているあたしの代わりに答えてくれる。
    彼女もまた、バスケットボール界では有名な方だ。








    あたしは、その日1日ずっと、あの人の事が頭から離れなかった。

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■6016 / ResNo.6)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(7回)-(2009/06/29(Mon) 14:16:55)
    また今日も平凡な授業を終えてしまって、今は掃除時間。
    自分の掃除場所である、校舎の中央部の階段をほうきで掃いている最中だ。



    結局、昼休憩に少しは探したり聞いてみたりしたが、それらしき人はいなかった。
    幽霊でもないんだし、ここの関係者のはずだ。
    敷地内には、生徒と教師の持つカードが無いと入れないからでもある。
    ただでさえ、セキュリティー面については厳しいのに、不法侵入出切る訳がない。
    入ったとすれば、学校全体で問題になってしまうだろう。




    そうごちゃごちゃ考えていると、一緒に掃除している香蓮に、ちりとりを教室から借りてきてくれと頼まれた。
    どうやら、他の生徒にちりとりを貸してしまったらしい。
    仕方がないので、あたしが取りに行く事になった。





    教室に行くと、すでにいくつかの机は後ろにあったのが、綺麗に整頓されて戻されていた。
    ちょうどちりとりを片付けようとしていたクラスメイトに借り、急いで階段のところへと向かう。
    早くしないと、終礼が遅れてしまうからだ。




    ちょうど廊下を曲がろうとした時に、誰かにぶつかってしまった。




    「あっ、ごめんね、大丈夫!?」




    尻餅をついてしまったあたしに、綺麗な色白の手が差し出される。





    「あ、ありがとうございます・・・・・・あ・・・・・・」




    あたしが顔を見てあ、と驚くのと同時に、相手も目を少しだけ見開いた。














    ・・・・・・・・・・・昨日の、あの人だ・・・・・・・・・・・・・!!!














    「あれ、梨乃かあ。昨日ぶりだね」





    あたしの体を簡単に引き起こすと、あの人はハハハッと笑った。
    相変わらずの美形だな、なんて見とれていると、あたしの手元をその人が見ている事に気がついた。




    「掃除中だったんだね、邪魔しちゃった?」



    「いえ・・・・・今から向かうところでしたし、別に・・・・・」



    「ならいいんだけど・・・・あ、いけない。急がなくちゃ、じゃあね、梨乃」



    「あのっ・・・・・・・・・・・・・・!?」






    あたしは、名前を聞こうとしていたのに、それは叶わなかった。










    「ん・・・・・ぅ、ふ・・・・・・・・!」














    ・・・・・その人がたまたま持っていた黄色いファイルで隠しつつ、キスをされているから。
    身長の差が結構あって、あたしが背伸びしないと口に届かない。
    いきなりの事と、ファーストキスという事もあって、上手く呼吸ができない。
    ちょっと苦しくなって、顔は熱いし、何か泣けてきて涙が溜まる。
    幸い、人がいなかったのが唯一の救いだ。





    「っ、はぁっ・・・・・・・・・・!」







    やっと離して貰えたあたしは、廊下に座り込んでしまった。力が入らない。




    「可愛いね、これなら無理もないかな・・・・・じゃあね、また会うと思うよ」




    意味深な言葉を残して、早くも消えてしまった。



















    しばらくしてから立てたあたしは、友達にお腹が痛くて、トイレに行っていたんだなんて嘘をつき、掃除を済ませた。









    その後の終礼も下校途中も、あの人の事で頭がいっぱいだった。



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■6019 / ResNo.7)  Re[1]: possession
□投稿者/ 愛美 一般人(1回)-(2009/06/30(Tue) 11:22:18)
    続きが気になります^^
引用返信/返信 削除キー/
■6020 / ResNo.8)  possession〜愛美様〜
□投稿者/ 美優 一般人(8回)-(2009/06/30(Tue) 18:51:39)
    初めまして、小説を読んで下さってありがとうございます。


    一応、1日1回は更新したいな、と考えてはいます。


    ご期待に添えるかどうか分かりませんが、これからも読んでやって下さいませ。

引用返信/返信 削除キー/
■6021 / ResNo.9)  possession
□投稿者/ 美優 一般人(9回)-(2009/06/30(Tue) 19:07:45)
    1人で寮に戻ると、今日も1人だ。美空は今日もいない。
    今日はデートではなく、部活のコンクールが近くなってきたため、練習が入ったのだ。
    美空は合唱部で、今はソプラノを担当しているらしい。歌もかなり上手く、校内のイベントで優勝経験もある。




    食堂で少し早めの夕食を食べようと、ボヘミアンなワンピースに着替えて食堂に向かった。


    カウンターでおばさんにハンバーグ定食を頼むと、運ばれて来るまで、窓際の白い4人がけのテーブルで待つ。
    生徒も段々増えてきたようで、かなりにぎやかになってきた。





    「梨乃さん。こちら、よろしいかしら?」





    窓の外の暗くなってきた夕暮れをぼーっと見ていると、1人の人が話し掛けてきた。
    美空と同じ、高等部1年百合組で生徒会の書記でもある、大崎さん・・・大崎ミチルだ。
    イギリス人の母と、日本人の父のハーフだという彼女は、輝かしいブロンドの名古屋巻きを揺らしてやって来た。
    彼女の綺麗な碧眼と目が合う。顔立ちがやはり美しいのである。





    「・・・・・・・いいけど?」



    「ありがとうございますわ、梨乃さん。今日は1人でいらっしゃるの?」



    「美空は部活で。1人なんです」



    「まあ、奇遇ですわね!わたくしも1人ですの。今日は、岬が部活ですのよ」





    岬、というのは、彼女の幼馴染であるという副生徒会長にして、高等部2年桜組の新野岬のことだ。
    彼女は吹奏楽部で、やはりコンクールが近いのだという。




    前々からだが、このミチルという同級生は、あたしに関心があるらしい。
    何かとしょっちゅう話しかけてくるのだ。・・・・・美空がいないときだけ。





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