| しばらく適当に相手の話を流しているうちに、2人分の夕食が運ばれてきた。 あたしはハンバーグ定食・・・まあありがちな、ハンバーグとご飯、野菜スープとサラダ、デザートにパンナコッタ。そしてカフェオレ。
ミチルの夕食は、これまた同じハンバーグ定食。唯一異なるのは、あたしが選ばなかったパンのところだけ。
「まあ、またもや奇遇ですわ!ここまでご一緒なんて・・・ハンバーグはお好き?」
「・・・・・ええ、まあ、好物ですが」
「嬉しいですわ、わたくしもちいさい頃から好物なんですのよ」
「あたしも好きですよ」
そういうと、ミチルはまぁ、と小さく言って、頬を赤らめた。何を照れているのかさっぱりだ。
にしても、大崎といえば有名な会社の名前。彼女はそこの会社の次女なんだとか。 ちなみに、姉が1人いるらしい。詳しくは知らないが。
今日はミチルは、淡いピンク色の胸元が開いたフリル付きのチュニックに、白いこれまたフリルのミニスカート。 右手の銀のバングルが時折、彼女の動きに合わせて揺れる。
「にしてもですわよ、梨乃さんは相変わらずお美しいですわ」
「・・・・・・はぁ・・・・・貴女の方が見目麗しいと思いますが」
「あら、謙虚ですのね。でも、結構いますわよ?梨乃さんを狙ってらっしゃる方」
「そうですか?てっきり、美空への視線かと思って」
「それもあるのでしょうけど、彼女の場合は有名なカップルではありませんか。 何せ、あの先輩ですもの」
そう、美空の恋人は、『ミス・黒百合』。成績優秀、眉目秀麗、まさに才色兼備の生徒に贈られる称号の持ち主だったのだ。 確か、弦楽器が得意で、理数系では教師も驚くほどの天才ぶりなんだとか。 まあ確かに、成績だっていいらしいし、見た目も美しい。 というか、この学校は美人の割合が高い事でも有名なのだ。
「そういえば、梨乃さん。今日はこれから用事はありまして?」
「いえ、特には」
「ならば、わたくしの部屋へ来て下さらないかしら?寂しいんですのよ」
「あたしはいいですけど・・・・でも、ルームメイトは?」
「大丈夫ですわ、緊急の用事だとかで、一時帰宅していますの」
彼女のルームメイトは、あたしの隣の席にいる早坂瑠衣。バスケットボール部。 それなりの容姿と、抜群の運動神経で、運動部活では重宝されている。 たまに他の部活の大会にも出ているような、忙しくて活発な人だ。
「先生によると、叔父様が交通事故にあってしまわれたんですって」
「よくなるといいんですがね」
「そうですわね・・・・・・心配ですわ。梨乃さん、わたくし部屋でお待ちしておりますわ」
そういうと、彼女は最後のパンナコッタを口に入れて、お盆を持って立ち上がる。 典型的なお嬢様だが、随分と早飯なのだ。
あたしは正直面倒臭かったし、また今夜もあの人に会えるかもしれない、と淡い期待を抱いていた。 が、結局気まずい事になると思われ、ミチルの部屋に行く事にした。
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