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■6075
/ 親記事)
赤い教会
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□投稿者/ くぅ
一般人(1回)-(2009/07/24(Fri) 14:50:45)
冷蔵庫から取り出してから少しだけ時間が経ち、水滴がついたペットボトルに口を付ける。
冷たい水がペットボトルを掴む手につき、手が濡れる。喉を冷たくて美味しい水が通るこの感覚が昔から好きだった。
お風呂あがりに水を飲むのは、詩織の幼い頃からの習慣のようなものだ。
お風呂あがりと寝起きに毎日ペットボトルの水を飲む。母親と父親がしていた事で、自然と娘である詩織にも身に付いた。
それは、大人になって一人暮らしをする今も変わらない。
テーブルの上に置きっぱなしにしたままであった黒い携帯を開け、メールと電話を確認する。特に入っていない。
1件だけメールボックスに入っていた新着メールがあったが、それは登録してある雑貨店からの広告だった。
そういえば、最近はあまり雑貨店やカフェに行っていない。仕事が忙しく、行く暇がない。
深く長い溜息をつくと、携帯を閉じた。
その瞬間に、突然携帯が電話を知らせるメロディーを鳴らせた。
ディスプレイを見ると、そこには『香織』と表示されて点滅している。
「はい、もしもし、詩織です」
『しーちゃん?久ぶりね、元気だった?』
ちょっと低い詩織の声とは反対に、明るく甘い女性らしい声で電話越しにはしゃいでいるのは、友人の香織。
高校生のときに知り合い、今も連絡を取り合っている。
高校の入学式の時に、名前が似ているという理由で友人になった。名前は似ていても、性格や容姿は正反対なのだが。
『あっ、あのね!そういえば、今度の月曜日空いてるかなあ?』
「ああ、明後日?・・・・・仕事も休みだし、一応空いてるけど、何で?」
『お姉ちゃんが結婚式を挙げるんだけどね・・・あ、招待状届いてるよね?』
「うん。ピンクのやつでしょ?」
『それそれ♪当日、一緒に行かないかなあって思って電話したんだ♪』
確かに、香織のお姉さんとも親交があった詩織の下には、一昨日、既に招待状が来ていた。
もう着る予定である自前のドレスもクリーニングに出して、明日取りに行く予定だ。
準備は整えていた。
「いいよ?じゃあ・・・8時半に迎えに行くから待ってるんだよ?」
『うんっ!ありがと〜、しーちゃん大好きっ♪じゃあ、待ってるね?バイバイっ』
「うん、待ってて。バイバイ」
結婚式は午前10時から。しかし、結婚式を挙げる教会まで結構離れており、かなり前に出発しないと間に合わない。
詩織だけならもうちょっとゆっくりでもいいが、香織も一緒に、となると話は別だ。
はしゃぐ香織に別れを告げ、携帯を切って充電器と繋げて充電をする。
香織とはもう半年ぶりぐらいに直接会う。電話やメールはしていたが、忙しくて会えなかったのだ。
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■6076
/ ResNo.1)
赤い教会
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□投稿者/ くぅ
一般人(2回)-(2009/07/24(Fri) 15:12:44)
詩織は今、営業の仕事をしている。
所属している会社では、化粧品などを主に生産し、女性相手が多い仕事だ。
詩織は元々事務などの会社のビル内で働く部署がよかったが、配属は営業部になってしまった。
それに引き換え、香織は建物の中で働く仕事をしている。
2年前からキャバクラ嬢をしている、と、以前電話で話してくれた。
理由は、女性らしい声と容姿、豊富な知識を生かした高収入な仕事だかららしい。
結構人気もあるようで、そこそこ有名なキャバクラ嬢に成長した。
高校生の時に出会った時からそうだった。
女の子らしい甘い声、くりっとした丸い双眸、白い肌と可愛らしい整った顔。
運動は出来ない方だったし、勉強はそこそこ出来て、人気者でよくモテた香織。
ちょっと低い中性的な声、切れ長の目、そこそこ焼けた肌と中性的な整った顔。
運動は出来る方だったし、勉強もいつも10位以内ぐらい、人気はあったがモテはしない詩織。
前から性格も容姿も何もかもが正反対で、教師からは『でこぼこコンビ』と言われていたほどだ。
例えるなら、詩織が騎士で香織が姫、とまで言った教師や友達もいた。
確かに、のほほんとしている可愛い香織を、しっかりしたカッコイイ詩織が支えていた。
でも、仲は不思議とすごく良かったし、合っていたのだが。
香織のお姉さんである香里菜は、詩織と香織の4歳年上のこれまた可愛らしい女性だ。
香織が3ヶ月前に、彼氏とお姉ちゃんはもうそろそろ付き合って2年、と言っていた。
2年目で結婚する事になるのだが、彼氏は詩織は見た事がない。
香織いわく、子供好きで話していて楽しい人、らしい。容姿は中の上だとか。
色々考えては楽しい思いに耽っていたが、今から寝不足を直しておこうと早めにベッドにもぐりこんだ。
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■6077
/ ResNo.2)
赤い教会
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□投稿者/ くぅ
一般人(3回)-(2009/07/24(Fri) 15:48:07)
そして、あっという間に明後日であった月曜日。
詩織は朝の6時に起きて、水を飲んで顔を洗った。朝食にはちみつトーストとブラックコーヒーを飲み、シャワーを浴びる。
そして、クローゼットから、クリーニングに出しておいた涼やかなオーシャンブルーのドレスを取り出した。
これは自分で買ったもので、スリットが大きく入り、胸元と背中も大きく開いたセクシーなドレスだ。
それに着替えると、メイクに取り掛かった。
唇と同じ色の淡いピンクのリップ、黒のマスカラと付け睫に、綺麗な紫のアイシャドー。
茶色のハイライトを入れたセミロングヘアをワックスで整え、耳には金の蝶のピアスを留めた。
これは去年、実家の母親からの誕生日プレゼントとして贈られてきたものだ。
小さないくつかの綺麗なダイヤモンドがはめ込まれ、4つの小さなサファイアが蝶にぶらさがっている。
準備が終わり、白い長方形型のハンドバッグを持ち、中に財布と携帯、ハンカチと招待状を入れて、自分の青い愛車に乗り込む。
そして、そのまま自分のマンションから20分ほどで着く、香織のマンションへと向かった。
香織はマンションの外で待っていた。
薄いピンクのスリットが両側に入ったドレスの胸元は、胸の半分しか隠していない。
そのドレスの下には、白い半透明のレースがのぞき、足には赤いラメ入りのハイヒール。
白いストールを身に纏い、黒いエナメルのハンドバックを持っていた。
顔をふと見つめると、茶髪の背中までのロングヘアの毛先15cmを巻き、きらめく瑞々しいピンクのグロスに、青いアイシャドー。
長いくるんと反っている睫は、多分付け睫ではない。前から睫は長かった。
「しーちゃん、久ぶりだねっ!わあ、またカッコよくなってるよ〜」
そうハイテンションで助手席に自ら乗り込む香織は、昔と変わらず可愛らしいままだった。
香織の何やら甘い香水と、詩織のレモンの清々しい香水の匂いが混ざる。
詩織と香織は、2人で談笑しつつも教会に向かった。
教会は山のふもとにあり、自然に囲まれた美しい場所に静かにあった。
近くには湖と町があり、夕方からは近くの町のレストランで食事、との事だ。
時間はかかるが、こんな美しい場所に行けるなら構わない。
中に入る前に、お姉さんと彼氏の共通の友人だと名乗った智美さんという人に、招待状を見せ、中に案内してもらった。
中は広くて天上が高く、大きく立派なパイプオルガンと、長く連なる椅子、飾られた綺麗で鮮やかな花々。
白い石で造られた壁と床。入り口から祭壇までの数十メートルの間には、赤い絨毯が敷かれている。
もうちらほらとは数人が来ていて、笑いながら話をしていた。
「綺麗だねっ、しーちゃんっ!」
「そうだね・・・・・綺麗」
詩織と香織の目を1番ひき、多分みんなも引き付けられるであろう、大きなステンドグラスに太陽の光が反射して余計美しい。
それは、おそらく聖母マリアと思われる女性が、キリストを抱いているものだ。
周りには数人の裸の天使が飛んでいる図である。
しばらく2人とも無言でそれを眺めた後、前列から3列目、右側の椅子に座って待っていた。
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■6078
/ ResNo.3)
赤い教会
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□投稿者/ くぅ
一般人(4回)-(2009/07/24(Fri) 15:58:21)
結婚式が始まって現れた香織のお姉さんは、これまた美しい花嫁姿だった。
白い純白のウエディングドレスに、レースの繊細さがよく分かるベール姿で、香織の父親と現れた。
香織の父親はというと、白髪の混じった髪の毛を整え、黒いタキシードで照れつつも一緒に歩いていた。
肝心の新郎である彼氏は、黒髪で優しそうな顔をしている人だった。嬉しそうにはにかみつつも、お姉さんを見つめている。
銀色のシンプルな指輪交換も、夫婦の誓いの言葉も済ませると、2人で腕を組んでみんなが散らす花吹雪の中、教会から現れた。
晴天の青空の下、花嫁が赤い薔薇の綺麗なブーケを背中越しに投げる。
「みんなっ、受け取ってねっ!・・・・せーのっ!」
ブーケは彼女の友人である、みんなに由梨子と呼ばれていた女性が受け取り、そのまま結婚式は幕を閉じた。
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■6079
/ ResNo.4)
赤い教会
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□投稿者/ くぅ
一般人(5回)-(2009/07/24(Fri) 16:15:46)
一同は着替えた新郎新婦と共に、近くの町のおしゃれなレストランに向かった。
そのレストランは貸切にしてあり、客は他には1人もいなかった。
広い店内で酒や料理をみんなで囲んで喋りつつ楽しんでいると、突然誰かが詩織に話しかけた人がいた。
「こんにちは、初めまして。私、香里菜の友達の倉本明香といいます。よろしくね?」
その人はウエーブかかった黒髪を右下でおだんごにしてまとめ、白いラメが入ったドレスを着ていた。
耳につけているリング型の赤いイヤリングが印象的な女性だ。
「あ・・・よろしくお願いします。四ノ宮詩織です」
「詩織ちゃんかぁ。カッコイイねっ、名前は可愛いけどね」
そういってあははっ、と笑うと、明香は持っていたワイングラスの赤ワインを飲んだ。
笑うと綺麗に並んだ白い歯が見えた。
隣の香織も香織で、こちらも香織のお姉さんの友達らしい人、由貴という人に話しかけられて話していた。
黒いアイパッチ姿の変わった美人で、薄い紫の体にぴったりとフィットしたドレス姿だった。
金髪をワックスで立てたボーイッシュな人だ。
しばらくして、午後9時半頃になるとお開きとなり、各自で自宅に帰宅する頃となった。
あちらこちらで色んな人と話している人がいて、詩織と香織も話しかけてきた相手の人と連絡先を交換した。
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■6080
/ ResNo.5)
赤い教会
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□投稿者/ くぅ
一般人(6回)-(2009/07/24(Fri) 23:17:29)
詩織はワインなどの酒類を飲んでいなかったため、シャンパンを飲んだ香織と由貴、ワインを飲んだ明香を送る事になった。
運転は勿論詩織、香織が助手席で、由貴と明香は後ろに座った。
車の中で、さまざまな香水と多少の酒の匂いを漂わせながら、4人は楽しい帰り道を過ごした。
由貴と明香は、4歳差という年齢を感じさせないような人格だったため、余計に話は弾んだのだ。
「へえ〜っ、香織ちゃんはキャバクラなんだ?」
「はいっ、キャバクラ嬢してます♪名前は変えてますけどねー」
「詩織ちゃんは営業かあ・・・大変そうだな」
「まあ・・・・夏と冬は大変だけど、知り合いは増えますよ?」
そんな会話を交わしつつも、詩織と香織、由貴と明香は仲を深めた。
由貴は仕事はバーテンダーをしていて、バーを運営しているらしい。家は実家暮らしで、駅の近くに住んでいる。
明香はというと、仕事は中学校の保健医をしているんだとか。家はマンションで友達と2人暮らし。
2人は幼稚園の頃からの幼馴染で腐れ縁、との事だった。
最初に1番教会に近い方である由貴を送り届け、次に香織、そして最後に明香を送り届けて、詩織は自宅のマンションへ帰った。
帰って時計をふと見ると、もうすでに11時に近い。明日は仕事がある。
急いでお風呂に入らなくては、と思い湯を浴槽に溜める。
携帯を構っていると、香織と由貴と明香から、同じようなメールがそれぞれから届いた。
『今日は楽しかったね。私もあんな結婚式挙げたいよ〜。また会えたら嬉しいな♪』
『今日はありがとう。お陰で楽しい時間だった。また会おうな、バーにも来てくれよ?』
『わざわざ送ってくれてありがとうね。またの機会にゆっくり話したいな。』
それぞれに返事を返信すると、溜まったお風呂に入り、パジャマに着替えた後にベッドに入った。
その日は、綺麗な三日月とたくさんの綺麗な星が出ている、晴れ渡った夜空だった。
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■6081
/ ResNo.6)
赤い教会
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□投稿者/ くぅ
一般人(7回)-(2009/07/24(Fri) 23:37:58)
朝、6時半に五月蝿い目覚まし時計で起きると、のそのそとベッドから這い出た。
今日は確か、お得意様である数件の家を訪問して、新しい商品を届ける仕事があったはずだ。
テレビをつけ、天気予報とニュースをざっと見て、新聞もチェックする。
たまにお客様である相手が、そういう話を持ってくるからだ。それに、世の中の動きなどをチェックするのは当たり前である。
今日は昨日と同じ晴天、降水確率は20%。傘はいらないだろう。
そうやって天気予報をしているお姉さんが言っていたし、新聞でもそう書いてあった。
昨日はまたもや殺人事件と放火事件が起こったらしい。犯人は両方捕まっている。
地球温暖化の深刻化などのニュースをチェックし終わり、朝食を食べる。
今日ははちみつトーストとフルーツヨーグルト、ブラックコーヒーが朝食だ。
そしてシャワーを浴び、髪の毛を乾かすと黒いスーツに着替える。
黒いストッキングを穿き、茶色いショルダーバッグを掴むと、玄関で黒いハイヒールを穿いて車に乗り込んだ。
会社までは車で片道25分ほどかかる。電車で向かえば15分くらいで行けるが、人ごみを避けるために車で行っているのだ。
灰色の壁の、窓がたくさんある地上17階のビルが本社のビルだ。
地下の駐車場に車を止め、エレベーターでロビーに向かう。
広い綺麗にされたロビーのカウンターにいる、3人の受付嬢の1人に社員証を見せ、エレベーターで9階へと向かった。
9階にある営業部が、毎日通っている詩織の職場である。
「おはようございます」
そういって入ると、数人からおはようございます、と返事が返ってくるのが心地良い。
慣れた足取りで窓側の机に向かうと荷物を置き、今日の予定を確認する。
詩織が来たのとほぼ同じ頃に、部長である女性が入ってきた。部長の錦沢裕実である。
「ああ、四ノ宮さん。今日は6件のお宅に伺ってね。お宅の場所は分かるわね?」
「はい、分かっていますよ。部長。では9時に行って来ます」
「頼んだわよ」
部長は実力もあり、頼りがいもあるので、営業部の社員から絶大な人気と信頼を誇る自慢の上司だ。
席に着いた8時20分から9時までは、パソコンで書類の作成とスケジュール表の作成、コピーをしていた。
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■6082
/ ResNo.7)
赤い教会
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□投稿者/ くぅ
一般人(8回)-(2009/07/24(Fri) 23:50:37)
「じゃあ、営業回ってきますね」
そういって会社を出て、車でお得意様のお客様のお宅を回る。
最初は10分ほどかかるお得意様のお客様である女性のお宅へと向かう。
その女性は30代の主婦の方で、しばらく世間話に興じていた。
そして、新作であるリップグロスを見せると、それを買って下さった。
次は50代の未亡人の女性。
寂しいのよ、と言われ、案内されるがままにお茶とお菓子を頂いた。
こちらでも化粧水とクリームとを買って頂いて家を後にした。
そして20代の女性のマンション。
そこの女性とは仲が良く、しばらく世間話や苦労話で盛り上がった。
新作を勧めたが、いいものがなかったらしく、こちらは何も売り上げはなし。
昼食の前にもう1件、お金持ちの10代の女性の豪邸を訪れる。
そこでも割と長い話を彼女と豪邸の中の部屋でして、新作を勧めてみた。
すると、気に入ったらしく全ての新作を買って頂いたのは、大きな成果である。
近くにあった喫茶店でサンドイッチとカプチーノを昼食として食べると、残る3件のお宅へと伺った。
結局その日は6件中4件のお客様に新作を買って頂き、会社に戻った。
会社に戻って報告書を作成し、書類整理を済ませて夕方の5時半に会社を出た。普段よりも少し早い帰りだ。
帰る途中でドレスをクリーニングに出し、買い物を近所のスーパーで済ませると、ようやく自宅のマンションへと戻れた。
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■6083
/ ResNo.8)
赤い教会
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□投稿者/ くぅ
一般人(9回)-(2009/07/25(Sat) 00:20:23)
マンションに帰ってポストを確認すると、1通の不思議な白い封筒が入っていた。
宛名は詩織になっており、パソコンで文字が打ってある。送り主は分からず、3日前に出された物のようだ。
不審に思いつつもスーツから着替えた後、手紙の封を切る。
宛先と同じくパソコンで打ってある白い無地の便箋が、折りたたんで2枚ほど入っていた。
文章は次のようなものだった。
『拝啓 詩織様
突然の御手紙、申し訳ございません。さぞ驚かれた事でしょう。
私の名前は御影千秋、と申します。以後お見知りおきを。
さて、このような突然の御手紙を、面識のない詩織様に送らせて頂いたのは理由が御座います。
貴方は先日、ご友人である香織様の実の姉、香里菜様の結婚式へご参加しましたね。
何故知っているのか、そんな疑問はさておき。その後の夕食の場で、由貴と明香と名乗る女性に出会われませんでしたか?
出会われたはずです。その方達には実は彼女様がいらっしゃるのです。
おそらく、そのような事は一言も申し上げなかったでしょう。
そして彼女達4人は、詩織様と香織様、香里菜様までもを狙っているのです。
何故狙っているかと言いますと、貴方達3人を奴隷とするためです。
調教を施し、お客である女性に高額で売ったり、ショーに出演させたり、自分達が楽しむためなのです。
これをお読みになったら、香織様と香里菜様にご連絡くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。 敬具』
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■6084
/ ResNo.9)
赤い教会
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□投稿者/ くぅ
一般人(10回)-(2009/07/28(Tue) 14:40:53)
詩織は読み終わると、手紙を何度も何度も、細かくなるまで破って捨てた。
自分のみならずーーー香織やお姉さん、由貴や明香まで使ってある気味の悪い悪戯な手紙を、送り主を許せなかった。
消印は北海道、となっており、北海道から送られたらしいことは分かったが、それ以外は何も分からなかった。
苛々したまま何とか眠り、次の日の朝。
いつものようにニュースを確認し、今日が晴れであることを調べ、朝食を済ませる。
今日は黒いスーツパンツと青いシャツに着替え、ショルダーバッグと黒い紙袋を持った。
詩織が働く会社では、度々ホテルでパーティーを行っている。
会社内の結束を固める事が主な目的だが、他の会社の方も招待する事もある。
内容は至って普通で、夕食やダンス、ゲームなどをして終わるのが大抵だ。
社員の中には、そこのホテルに泊まる者も少なくなく、実は詩織もその1人だ。
そして、紙袋の中には明日の着替えやら何やらと一緒に、ドレスも入っている。
結婚式で着たものに似ている赤いドレスだ。腰と裾の部分に赤いドレスが付いているドレスだ。
車で会社に向かい、今日は会社内の自分の机で仕事を済ませた。
今日は会社全体が早めに仕事を片付けて、各自ホテルに向かう事になっている。
詩織も早めに仕事を済ませて、夕方5時にホテルに向かった。
今回のホテルは、車で約30分。ベージュ色の洋風ホテルだった。
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■No6075に返信(くぅさんの記事) > 冷蔵庫から取り出してから少しだけ時間が経ち、水滴がついたペットボトルに口を付ける。 > 冷たい水がペットボトルを掴む手につき、手が濡れる。喉を冷たくて美味しい水が通るこの感覚が昔から好きだった。 > > > > > > > お風呂あがりに水を飲むのは、詩織の幼い頃からの習慣のようなものだ。 > お風呂あがりと寝起きに毎日ペットボトルの水を飲む。母親と父親がしていた事で、自然と娘である詩織にも身に付いた。 > それは、大人になって一人暮らしをする今も変わらない。 > > > > > > > テーブルの上に置きっぱなしにしたままであった黒い携帯を開け、メールと電話を確認する。特に入っていない。 > 1件だけメールボックスに入っていた新着メールがあったが、それは登録してある雑貨店からの広告だった。 > そういえば、最近はあまり雑貨店やカフェに行っていない。仕事が忙しく、行く暇がない。 > > > > > > > 深く長い溜息をつくと、携帯を閉じた。 > その瞬間に、突然携帯が電話を知らせるメロディーを鳴らせた。 > ディスプレイを見ると、そこには『香織』と表示されて点滅している。 > > > > > 「はい、もしもし、詩織です」 > > > > 『しーちゃん?久ぶりね、元気だった?』 > > > > > ちょっと低い詩織の声とは反対に、明るく甘い女性らしい声で電話越しにはしゃいでいるのは、友人の香織。 > 高校生のときに知り合い、今も連絡を取り合っている。 > 高校の入学式の時に、名前が似ているという理由で友人になった。名前は似ていても、性格や容姿は正反対なのだが。 > > > > > 『あっ、あのね!そういえば、今度の月曜日空いてるかなあ?』 > > > > 「ああ、明後日?・・・・・仕事も休みだし、一応空いてるけど、何で?」 > > > > 『お姉ちゃんが結婚式を挙げるんだけどね・・・あ、招待状届いてるよね?』 > > > > 「うん。ピンクのやつでしょ?」 > > > > 『それそれ♪当日、一緒に行かないかなあって思って電話したんだ♪』 > > > > > 確かに、香織のお姉さんとも親交があった詩織の下には、一昨日、既に招待状が来ていた。 > もう着る予定である自前のドレスもクリーニングに出して、明日取りに行く予定だ。 > 準備は整えていた。 > > > > > 「いいよ?じゃあ・・・8時半に迎えに行くから待ってるんだよ?」 > > > > 『うんっ!ありがと〜、しーちゃん大好きっ♪じゃあ、待ってるね?バイバイっ』 > > > > 「うん、待ってて。バイバイ」 > > > > > 結婚式は午前10時から。しかし、結婚式を挙げる教会まで結構離れており、かなり前に出発しないと間に合わない。 > 詩織だけならもうちょっとゆっくりでもいいが、香織も一緒に、となると話は別だ。 > > > > > > はしゃぐ香織に別れを告げ、携帯を切って充電器と繋げて充電をする。 > 香織とはもう半年ぶりぐらいに直接会う。電話やメールはしていたが、忙しくて会えなかったのだ。 >
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