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真っ黒な縄が肌の上を這い、至る所を絞め付けている。 身体中を這う縄は、身体を動かす度に肌に食い込む。 その度に平静を装いながら、内心甘美な刺激に悶える。
(ああ・・・・誰か気付いているかもしれない・・・・)
真昼間のオフィスで、私は一体何をしているのだろう。 スーツの下に身に着けているのは、この縄だけだ。 下着もキャミソールも一切身に着けていない。 それが余計に私の興奮と羞恥心と被虐心を煽る。
「相崎さん、ちょっといい?」
「あ、はい」
自分のデスクで書類を整理していると、上司からの呼び出し。 椅子から立ち上がろうとしたが、それに合わせて縄が食い込む。
(あっ・・・・)
下着の代わりに縄が這わされ、敏感になっている身体。 特に“ある場所”は朝からずっと熱く、乾くことを知らない。 きっとそこの部分の縄はさぞかし濡れて汚れていることだろう。
「相崎さん?どうかしましたか?」
「い、いえ・・・・」
なかなか上司の下へ行かないのを不審に思ったのだろうか。 隣のデスクで仕事をしている後輩が心配そうに声を掛けてきた。 愛想笑いを浮かべたが、不審そうな色は消えていなかった。
(不思議がってる・・・・ばれたらどうしよう・・・・)
上着を羽織った状態で、縄のことは気付けないだろう。 しかし、もしかしたら不審に思う人がいるかもしれない。 そのスリルが、更に心の中の色々なものを煽り立てる。
「相崎さん、この書類のことなんだけど・・・・」
上司が話している間、座っている上司の横に立ちっ放し。 書類に目を落とし話を聞こうとするが、あまり集中出来ない。 どうしても縄の方に意識がいってしまうからだ。
「・・・・相崎さん、どうかしたの?」
「えっ?」
「さっきからずっともじもじして・・・・もしかしてお手洗いに行きたい?」
「い、いえ・・・・何でもないです、すみません」
無意識に太股を擦り合わせてしまっていたようだ。 上司が小声で気遣ってくれたが、何人かがこちらを見た。 しかしそれも数秒のことで、すぐに自分の仕事に戻る。
(ああ・・・・もっと見てくれてもいいのに・・・・)
尚も続く上司の話を聞く振りをしながら、妄想に耽る。 もしばれてしまったら、自分はこの職場にはいられない。 しかし、ばれた時の妄想は止まるところを知らない。
(きっと噂になって、軽蔑されてしまう・・・・)
その時のことを考えただけで、更に身体が火照った。 身体の奥がきゅんとなって、より一層密が溢れ出す。 胸が高鳴り、頬が紅潮し、厭らしい気分に浸った。
「ということでよろしくね」
「はい、分かりました」
自分のデスクに戻ろうとしていた時、チャイムが鳴った。 お昼のチャイムが鳴るなり、大勢の人が席を立った。 自分も上司に渡された書類を置くと、食堂へ向かった。
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