| 『せんせぇ〜…』 「あらあら、いずみさんじゃない」
保険室のドアを静かに開く。 オフィスチェアを回転させ、白衣を着た大人の女性がいずみの方を向く。
「今日はどうしたの?」
大人の色気が漂う女性、保健教師のみゆき先生が心配そうに尋ねる。
『身体がだるいので、休ませて欲しいのですが…』
昨夜の夜更しが今朝になって響いていた。 本当は授業に出れないほど辛いわけではない。しかし、今日はいずみの苦手な体育がある。 丁度いい口実を見つけたため、サボってしまおうと考えていた。
「それは大変ね」
ベットにつながる仕切りカーテンを開放する。 綺麗に整えられた真っ白なベットが姿を現す。
「まだ誰も居ないから、空いてるベット自由に使っていいわよ」 『ありがとうございます』
襲い来る睡魔にベットの誘惑。 いずみには先生が天使にみえた。
「あ、そうだ!」
靴を脱いで横になろうとした時、突然先生が何を思い出した。 薬品棚から瓶を取り出し、コップに移していずみに手渡す。
「休む前にこれ、飲んで」 『なんですか、これは?』
コップには甘い香りのする液体が注がれていた。
「そうねぇ…栄養剤みたいなもの、かしら」 『では、ありがたくいただきます』
いずみは疑うこともなく、手渡された液体を飲み干す。
「少し用事があるから席をはずすわね」
先生は机に置いてあった書類を抱え、いずみに向き直る。
「担当の先生には私から体調不良だってこと、伝えといてあげるわ。 ゆっくり休みなさい」
一言お礼を言うと、毛布を引き寄せて瞼を閉じる。 いずみはカーテンを閉めることも忘れ、眠り落ちてしまう。
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