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■7659
/ 親記事)
君のすべてが、
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□投稿者/ 王兎
一般人(1回)-(2014/11/28(Fri) 02:06:48)
1月、まだ年が明けたばかりの頃、私は地元の成人式に参加していた。
自分も、久しぶりに会う友人たちも、みな一様に振袖を着ておめかしをしている。
色とりどりの振袖が市内中に溢れ、真冬だというのに道が明るく賑やかだ。
久しぶりに会う友人たちとは話しても話しても話題が尽きず、笑顔も尽きない。
前日までは緊張していたのに、今では時間が止まればいいとさえ思っている。
市内の中心部に位置するイベント用ホールでの式典が終わり、外へと出る。
同い年の男女で溢れかえったホール前は大変騒がしく、人ごみで酔いそうだ。
私は出る際にはぐれた高校の時の友人たちを探し、懸命に辺りを見渡す。
みんな同じような髪型におなじような格好で、意外となかなか見つからない。
香水や化粧品、振袖や袴の新品の匂いなんかに若干胸焼けを起こしながら歩く。
記念撮影の邪魔にならないように歩いていたら、人ごみを抜けてしまった。
久しぶりに吸い込む透き通った冷たい空気に、無意識に深呼吸を繰り返した。
「あの〜、ちょっとよろしいですか?」
声がした方に視線を移すと、地元のテレビ局が男女のグループを囲んでいた。
みんなはしゃぎながらインタビューに答えているが、多分私には向かないだろう。
テレビ局の人に見つからないように注意しながらも、友人探しを再開した。
その数分後、少し離れたところに見知った顔を発見し、安堵した。
私を探しているらしい彼女たちの方へ行こうと、歩く速度をあげる。
振袖姿で走れないのがもどかしいが、せっかくの振袖が乱れても困る。
私自身は振袖どころか、浴衣の着付けさえも自分でできないからだ。
「すいませ〜ん、ちょっといいですか〜?」
慣れない振袖で一生懸命急いでいた私に、背後から女性が声をかけてきた。
振り返ると、パンツスーツを身にまとった細身の穏やかそうな女性が立っていた。
たれ目で俗に言う癒し系であろう彼女は、人の良さそうな笑みを浮かべている。
隣には少しキツそうな印象を受ける女性が、カメラを手に持って立っていた。
「雑誌の取材をさせて頂いているんですけど〜・・・・・・」
テレビ局からだけかと思っていたら、女性誌の記者も取材に来ていたのか。
その女性は話を聞くだけで写真は任意だと、緩い口調で説明してくれた。
テレビとは違い、自分の姿が公表されないのであれば、答えてもいいかな・・・。
一瞬そんな気持ちになり、つい取材に応じる旨を伝えてしまっていた。
「よかったぁ〜!実はあなたが今日1番最初なのよ〜」
「ここじゃあ賑やか過ぎるから、少し離れた場所で伺いますね」
手を叩いて全身で喜びを表現する記者とは裏腹に、落ち着いたカメラマン。
カメラマンの女性に誘導され、少し離れた場所に行くことにした。
2人に断りを入れ、友人には携帯で取材に答えてくることを伝えておく。
「こっちの方が落ち着いてお話を伺えるかしら〜」
正直、成人式の取材なんて、そこまで時間がかかるようなものではないと思う。
有名人であれば別だが、私は何の取り柄もない一般人なのだから、余計に。
しかし、2人は静かな場所を求めて歩いて行き、当然私もそれについていく。
人ごみを抜け、ホールの裏の方に位置する場所まで歩いて行き、ベンチに座る。
確かにそこは人が1人もおらず、落ち着いて話すにはもってこいの場所だ。
「ごめんなさいね、実は彼女、少し耳が悪くて・・・・・・」
カメラマンが言うには、記者の女性は生まれつき少し耳が悪いという。
確かに髪の毛の隙間から見える耳には、補聴器らしきものが見える。
ならば静かな場所で取材をしたがるのは当たり前のことだ。
右側にメモを持った記者が座り、カメラマンは左側の方に立っている。
取材内容は名前や職業から始まり、今日の感想などを尋ねられた。
私はプライバシーに気を付けながら、答えられる範囲で答えていく。
それを記者はメモに書き込み、カメラマンは黙ってそれを眺める。
一通り質問に答え終わると、記者がメモをカバンにしまい、立ち上がる。
「取材を受けてくれてありがとう〜!これで怒られずに済むわ〜」
私も記者の後にベンチから立ち上がり、友人のもとに向かおうと―――――
「あ・・・れ、?」
一瞬のことだった、一瞬のうちに背後から口元に手が回され、口元を布が覆う。
女性らしい匂いがする布の匂いを吸い込むと、なぜか足元がふらついた。
途端に全身に上手く力が入らなくなり、目も開かず、視界が徐々に暗転する。
必死に抗おうとしたが抗えるわけがなく、あっという間に意識を失った。
「・・・やっと、やっと捕まえたわぁ・・・」
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■7660
/ ResNo.1)
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□投稿者/ 王兎
一般人(2回)-(2014/11/28(Fri) 02:49:23)
モヤがかかったような頭の中と、しぱしぱする目を無理矢理こじ開ける。
成人式の後、インタビューに答えて、友人のもとへ行こうとして、それで・・・。
徐々に覚醒してきた意識と直前までの記憶を思い出し、一気に目が覚めた。
どうしよう!、みんな心配しているかもしれない!、と起き上がろうとした。
「え・・・?」
しかし、全身を上から押さえつけられ、首を少し持ち上げるのが限界だった。
首と、手先と、足先しか自由になる箇所はなく、その自由も些細なものだ。
慌てて自分の身体を見下ろすと、黒い革のベルトでベッドに拘束されていた。
黒い革のベルトは至る場所を締めつけ、私の自由を確実に、強固に奪っている。
身体に力を入れてみるが、ベルトは全く動かず、身体も全く動いてくれない。
自分があの後誰かに気絶させられて誘拐されたのだと、その時初めて気が付いた。
必死に辺りを見渡すと、自分以外には誰もおらず、室内であることが分かった。
窓は1つもなく、扉は木製の頑丈そうなドアが1つ、あとは浴室とトイレ。
浴室とトイレの壁は透明のガラスでできており、中が丸見えの状態だ。
床一面にはカーペットが敷き詰められ、クローゼットらしきものが見える。
ベッドの真横には何やら棚が置いてあり、天井にはシャンデリアがぶら下がる。
ラブホテルの一室か富豪の屋敷の一室か何かのようだと、ぼんやり考える。
これからのことを考えていると、ガチャン、と鍵が開けられる音がした。
そしてゆっくりと入口のドアが開き、1人のにこやかな女性が現れた。
それはあの記者でもカメラマンでもなく、初対面の見知らぬ女性だ。
自分よりは5歳か10歳ぐらい年上に見えるその女性は、こちらに歩き出す。
膝下までのシンプルなワンピースを身にまとっている女性は、清楚そのものだ。
「意外と目が覚めるのが早かったわね」
自分の真横に来た女性は、そう言うと細い指で私の顔の輪郭を撫で上げた。
くすぐったさと不安と恐怖から顔を背けると、ふふっと笑われてしまう。
女性はそのままベッドの隅に腰を下ろし、優しい手つきで髪を手ぐしですく。
「茉莉梨奈さん。20歳。大学2年生。県外で一人暮らし。・・・合ってるかしら」
先ほどの取材で答えた情報をつらつらと口にした女性の顔は、穏やかで優しい。
とりあえず微かに首を縦に振ると、女性は今度は唇をむにむにと弄び始めた。
リップを塗られているであろう唇が光を反射し、ぷるぷると輝く。
「振袖、窮屈でしょうから脱がせて、他の服に替えておいたわ」
よく見ると自分が今着ているのは振袖ではなく、Tシャツにジャージだった。
少し大きめのサイズのようだが、確かに振袖よりは着慣れているし断然楽だ。
女性の名前は小笠原百合だと名乗った以外、年齢も職業も何も教えてくれない。
しばらく唇や髪を好きなように弄ばれ続けていたが、ようやく指が離れた。
「ふふ・・・怖くて不安で、声も出ないってところかしらね?」
さらりとした髪を耳にかけ、女性は恍惚としたような表情で見つめてくる。
少し震えている身体を女性の指が這っていき、時々くすぐるような動きを見せる。
髪から耳、耳から輪郭、輪郭から首、首から腕、腕から胸元へ・・・。
微妙な距離で触ってくる指がくすぐったく、身を捩ろうとするがあまり動かない。
先程から声を出そうとしているのに空気しか出てこず、震えも止まらない。
「大丈夫よ、殺したり乱暴にしたりなんてしないわ、安心してちょうだい」
彼女は散々指を這わせることを楽しんだ後、自分の手足を組み、優雅に笑う。
「あの記者とカメラマンは私の部下のようなものなの、悪い子ではないわ」
やはりあの雑誌の記者とカメラマンはこの女性、小笠原百合の仲間だった。
きっと雑誌だというのも嘘で、ただの口実、個人情報の収集のためなのだろう。
やっぱり取材だなんてちゃんと断ればよかったのだと、今更ながら後悔した。
百合は怯える梨奈が可愛くて仕方がないというように目を細め、微笑んでいる。
「ここは私の自宅の一室なのだけど、地下だしそうそう見つからないわ。
それになかなか出られないでしょうし、出すつもりもない・・・」
梨奈は百合の目に狂気の色を感じ取り、後退りをしたい気持ちになった。
ぱっと見は優しそうで優雅で上品な女性なのに、どこか怖く、どこか冷たい。
未だベルトのせいで満足に身体が動かず、混乱しており、声もろくに出てこない。
ぎしぎしと音を立てるベッドとベルト、目の前で微笑み続ける初対面の女性。
気絶させられて誘拐された見知らぬ家の地下室に、全く読めないこれからの展開。
全てが不安と恐怖に入れ替わり、逃げようという気持ちは全く湧いてこない。
「怯えている梨奈はとっても可愛いわ、まるで小動物のようね」
百合は少し待っているように言い残すと、再度ドアから外に出て行った。
ようやく全身を支配していた緊張が解けて、少しだけ落ち着くことができた。
全身を拘束されていて、個人宅の地下室にいるなら、脱出は不可能に近い。
改めて冷静に現状を整理すると、その絶望に泣き出したい気持ちに駆られる。
これからどうなるのだろう、と悶々としていると、再びドアが開いた。
「食事を持ってきたわ、梨奈」
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■7661
/ ResNo.2)
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□投稿者/ 王兎
一般人(3回)-(2014/11/28(Fri) 17:46:02)
食事ということで、百合がリモコンでベッドの上半身側を起こしてくれた。
梨奈は大人しく野菜のコンソメスープとクリームパン、サラダを食べる。
変な薬が入っていないかどうかは、百合自身が食べて証明してくれた。
全部食べ終わると、百合は微笑みながら食器を片付けに部屋を出て行った。
「・・・っ、?」
しばらくすると、身体が痺れ、息が上がり、全身が火照って赤らんできた。
少し動くだけで甘い痺れが広がり、ベルトや服で擦れた場所がじわりと熱を持つ。
「や・・・怖いっ・・・」
梨奈はやっぱりあの食事には毒が入っていたんだ、という風に解釈した。
本当は毒ではなく、媚薬が混ぜられた食事だったのだが、梨奈は性に疎い。
自慰も何回かしてみたことはあるものの、大して快楽を得られないのでやめた。
じわじわと高まる痺れや熱に梨奈は恐怖心を抱き、目には涙を浮かべた。
もう少しで涙がこぼれる―――――そのタイミングで、部屋のドアが開いた。
「いやっ・・・いやっ、助けて、死にたくないっ・・・!!」
「うふふ、薬が効いてきたのね・・・大丈夫よ、毒じゃあないわ」
「いやっ、も、帰してっ・・・帰りたいっ・・・!!」
「それはできない相談ねえ・・・梨奈、それは毒なんかじゃなくて、媚薬。
梨奈がもっともっと可愛くなるためのお薬で、身体に毒はないわ」
百合は梨奈に近づき、梨奈の細くて白い首を人差し指で撫で上げた。
目をぎゅっと瞑って泣いていた梨奈は、突然の刺激に短い悲鳴をあげる。
喉を人差し指で軽く触られただけなのに、その身体は面白いぐらいに跳ねた。
百合はびくびくと跳ねる梨奈の身体を楽しむかのように、全身に指を這わせる。
その度に梨奈は声こそ出さないもののびくびくと震え、快楽に耐える。
勝手に甘く熱い吐息を漏らし、身を捩り、全身をびくつかせる梨奈の身体。
梨奈は自分の身体の変化についていけず、されるがままの状態だった。
「感度がいいのね・・・ふふふっ、さあ、お洋服は脱ぎましょうねえ〜」
幼稚園や保育園に通うような子に言い聞かせるかのように言われ、恥ずかしい。
ベルトを外してベッドに繋がった手枷と足枷に変えると、Tシャツをハサミで裂く。
Tシャツはゆっくりゆっくりと下から上に切られ、遂に可愛らしい下着が現れた。
そしてその下着も同じようにハサミで真ん中を切られ、意味を成さなくなった。
「ほら、乳首が立ってるわ・・・可愛い・・・」
「あっ・・・ひっ・・・」
少し冷たい指でゆっくりと胸を揉みしだかれ、百合は手全体で胸の感触を楽しむ。
梨奈はまたしても身体が震わせ、半開きの口からは吐息と喘ぎ声を漏らした。
百合は梨奈の顔を見つめながら、指が乳首には触れないように胸を揉む。
ゆっくりとマッサージのように行われるそれは、確実に梨奈に快感をもたらす。
「はぁんっ・・・あっ、あっ、あっ・・・」
乳首は痛いほどに硬く立ち上がり、早く触ってというかのように存在を主張する。
それでも百合は梨奈の乳首には触れずに、胸を揉むことだけに徹している。
しばらく揉んでいると、梨奈の腰が動き、百合の手に乳首を当てようとし始めた。
百合は一瞬で梨奈の目的を見抜き、それでも乳首に手を当てないように揉む。
「あら、身体をくねらせてどうしたの?」
「あっ、そ、そこばっかやだぁっ・・・!もっとっ、もっと触ってっ・・・!」
「胸なら揉んであげているでしょう?何が足りないの?」
首を振っている梨奈は、初めての快楽と初めての媚薬に、既に溶かされていた。
太ももを擦り合わせ、全身を震えさせて快楽に耐えるその姿はいやらしい。
百合が乳輪を人差し指でくるくるとなぞってやると、梨奈はまた泣き出した。
「やだやだやだっ、ちゃんと触って、触ってよおっ・・・」
「だからちゃんと触っているじゃない。言われなきゃ分からないわ、梨奈」
「・・・っ、乳首っ、乳首触ってっ、お願いっ、!」
「・・・こうかしら?」
言われた通りにきゅっと乳首を摘み上げると、梨奈は声を出さずにのけぞった。
どうやら念願の乳首への刺激だけでイってしまったらしく、息が荒い。
未だ余韻に浸ってびくびくと跳ねる梨奈にはおかまいなしで、乳首を刺激する。
摘んだり、そのまま引っ張り上げたり、捻ったり、押しつぶしたり・・・。
中でも梨奈は親指と人差し指で摘まれ、擦られるのが好きなようだった。
綺麗に切り揃えられた百合の爪をてっぺんに立てて引っ掻いてもいい反応をする。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、」
「あ、またイった」
媚薬に加えてイったことで更に敏感になった身体は、容易く何度もイく。
百合は梨奈を乳首だけで何度も絶頂に導き、梨奈はされるがままに何度もイった。
数十分してからようやく刺激から解放された梨奈は、ぐったりとしていた。
荒い呼吸を繰り返し、呆然としている梨奈をそのままに、百合は手を下にずらす。
そして、ハサミでジャージの股の部分の生地をゆっくりと切り取っていく。
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■No7660に返信(王兎さんの記事) > > > > モヤがかかったような頭の中と、しぱしぱする目を無理矢理こじ開ける。 > 成人式の後、インタビューに答えて、友人のもとへ行こうとして、それで・・・。 > 徐々に覚醒してきた意識と直前までの記憶を思い出し、一気に目が覚めた。 > どうしよう!、みんな心配しているかもしれない!、と起き上がろうとした。 > > > > 「え・・・?」 > > > > しかし、全身を上から押さえつけられ、首を少し持ち上げるのが限界だった。 > 首と、手先と、足先しか自由になる箇所はなく、その自由も些細なものだ。 > 慌てて自分の身体を見下ろすと、黒い革のベルトでベッドに拘束されていた。 > 黒い革のベルトは至る場所を締めつけ、私の自由を確実に、強固に奪っている。 > 身体に力を入れてみるが、ベルトは全く動かず、身体も全く動いてくれない。 > 自分があの後誰かに気絶させられて誘拐されたのだと、その時初めて気が付いた。 > > > > > 必死に辺りを見渡すと、自分以外には誰もおらず、室内であることが分かった。 > 窓は1つもなく、扉は木製の頑丈そうなドアが1つ、あとは浴室とトイレ。 > 浴室とトイレの壁は透明のガラスでできており、中が丸見えの状態だ。 > 床一面にはカーペットが敷き詰められ、クローゼットらしきものが見える。 > ベッドの真横には何やら棚が置いてあり、天井にはシャンデリアがぶら下がる。 > ラブホテルの一室か富豪の屋敷の一室か何かのようだと、ぼんやり考える。 > > > > > これからのことを考えていると、ガチャン、と鍵が開けられる音がした。 > そしてゆっくりと入口のドアが開き、1人のにこやかな女性が現れた。 > それはあの記者でもカメラマンでもなく、初対面の見知らぬ女性だ。 > 自分よりは5歳か10歳ぐらい年上に見えるその女性は、こちらに歩き出す。 > 膝下までのシンプルなワンピースを身にまとっている女性は、清楚そのものだ。 > > > > 「意外と目が覚めるのが早かったわね」 > > > > 自分の真横に来た女性は、そう言うと細い指で私の顔の輪郭を撫で上げた。 > くすぐったさと不安と恐怖から顔を背けると、ふふっと笑われてしまう。 > 女性はそのままベッドの隅に腰を下ろし、優しい手つきで髪を手ぐしですく。 > > > > 「茉莉梨奈さん。20歳。大学2年生。県外で一人暮らし。・・・合ってるかしら」 > > > > 先ほどの取材で答えた情報をつらつらと口にした女性の顔は、穏やかで優しい。 > とりあえず微かに首を縦に振ると、女性は今度は唇をむにむにと弄び始めた。 > リップを塗られているであろう唇が光を反射し、ぷるぷると輝く。 > > > > 「振袖、窮屈でしょうから脱がせて、他の服に替えておいたわ」 > > > > よく見ると自分が今着ているのは振袖ではなく、Tシャツにジャージだった。 > 少し大きめのサイズのようだが、確かに振袖よりは着慣れているし断然楽だ。 > 女性の名前は小笠原百合だと名乗った以外、年齢も職業も何も教えてくれない。 > しばらく唇や髪を好きなように弄ばれ続けていたが、ようやく指が離れた。 > > > > 「ふふ・・・怖くて不安で、声も出ないってところかしらね?」 > > > > さらりとした髪を耳にかけ、女性は恍惚としたような表情で見つめてくる。 > 少し震えている身体を女性の指が這っていき、時々くすぐるような動きを見せる。 > 髪から耳、耳から輪郭、輪郭から首、首から腕、腕から胸元へ・・・。 > 微妙な距離で触ってくる指がくすぐったく、身を捩ろうとするがあまり動かない。 > 先程から声を出そうとしているのに空気しか出てこず、震えも止まらない。 > > > > 「大丈夫よ、殺したり乱暴にしたりなんてしないわ、安心してちょうだい」 > > > > 彼女は散々指を這わせることを楽しんだ後、自分の手足を組み、優雅に笑う。 > > > > 「あの記者とカメラマンは私の部下のようなものなの、悪い子ではないわ」 > > > > やはりあの雑誌の記者とカメラマンはこの女性、小笠原百合の仲間だった。 > きっと雑誌だというのも嘘で、ただの口実、個人情報の収集のためなのだろう。 > やっぱり取材だなんてちゃんと断ればよかったのだと、今更ながら後悔した。 > 百合は怯える梨奈が可愛くて仕方がないというように目を細め、微笑んでいる。 > > > > 「ここは私の自宅の一室なのだけど、地下だしそうそう見つからないわ。 > それになかなか出られないでしょうし、出すつもりもない・・・」 > > > > 梨奈は百合の目に狂気の色を感じ取り、後退りをしたい気持ちになった。 > ぱっと見は優しそうで優雅で上品な女性なのに、どこか怖く、どこか冷たい。 > 未だベルトのせいで満足に身体が動かず、混乱しており、声もろくに出てこない。 > ぎしぎしと音を立てるベッドとベルト、目の前で微笑み続ける初対面の女性。 > 気絶させられて誘拐された見知らぬ家の地下室に、全く読めないこれからの展開。 > 全てが不安と恐怖に入れ替わり、逃げようという気持ちは全く湧いてこない。 > > > > 「怯えている梨奈はとっても可愛いわ、まるで小動物のようね」 > > > > 百合は少し待っているように言い残すと、再度ドアから外に出て行った。 > ようやく全身を支配していた緊張が解けて、少しだけ落ち着くことができた。 > 全身を拘束されていて、個人宅の地下室にいるなら、脱出は不可能に近い。 > 改めて冷静に現状を整理すると、その絶望に泣き出したい気持ちに駆られる。 > これからどうなるのだろう、と悶々としていると、再びドアが開いた。 > > > > 「食事を持ってきたわ、梨奈」 > > >
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