| 直美は、仕事を終え、帰り支度を始めていた。 「お先です」誰に言うともなく声に出した。 「おつかれ」向かいの男の同僚が顔を上げずに答えていた。 帰りの電車に揺られ、自宅の付近の駅で降りる。
もう、何年も繰り返している。スーパーでお惣菜を買い、アパートの鍵を開ける。
「ただいま」誰もいない部屋に言う。
最初にTVを付けた。何か音がほしい。 着替えが終わると、TVの前に座り簡単な夕食を取りながら、友達にメールを返信する。 しばらくして、PCを立ち上げてみた。ス気なく、色々なサイトを見ていると ビアンのサイトが目に留まった。興味本位で見始めた。
(ここって・・・。色々な掲示板があるんだ)
2ショットチャットの部屋に行ってみた。入るかどうか迷ったが、思い切って入室してみた。 挨拶して、すぐにいやらしい言葉を言われ、退出してしまった。
(男の人みたい・・・。)軽いため息をついてPCの画面を眺めていた。
純粋にビアンの女の人と話してみたい。と思った。
もう一度、2ショットチャットの部屋を覗くと、軽い呼びかけの部屋があった。 すぐに入室してみた。
『こんばんは』 『初めまして』文字が流れて行く。 『本当に女の人なんですか?』 『あぁ、そうだよね。疑うよね。確かめてみる?電話してもいいよ』
文字からやさしさが出ていると思ってしまった。 電話は怖いと思ったけど、思い切って番号を載せた。 すぐに知らない番号の着信があった。
「もしもし」 「こんばんは」 「はじめまして・・・」 「本当に女の子だったでしょ?」 「はい・・・」 明るい声だった。嫌な感じはなかった。また、チャットに戻った。
女の人と判って、今度は興味が沸いてきた。質問を繰り返した。 女の人と付き合ったことがあるのか?女の人しか愛せないのか?素朴な疑問をぶつけてしまった。 質問に対して、1つ1つ丁寧に答えてくれた。
『あのぉ・・女の人とエッチするんですか?』胸の鼓動が早くなる気がした。 『するよ、もちろん。(笑)ただ・・・』 『ただ?』 『ただ、Sなんだ。』 『S?』
『そう。SMのS。』 SMの文字が目に飛び込んできた。体の奥底がギュッとなる気がした。
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