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Re[4]: 浄魔師弓香の受難その2
水無月

翌日、午前の授業は妙なこともなく過ぎた。
昼休みは自分の練習に充てることにした。
表家業につかうフルートではなく、浄魔の篠笛。

ひかる先生からのメールは
「実は女学院中等部の三年生が五人、ショッピングモールで万引きして警備員に捕まって、それで理事長がうちの院長に相談を持ちかけてきた。弓香からシスターへの連絡の内容もあってさ。院長からあたしにその生徒と会ってみろと言ってきた。
依存症という病気なら知り合いの精神科医師を紹介すればいいがシスターカレンが悪霊や妖魔が絡んでる可能性を言い出したので私に問題の生徒の状態を見ろと言うんだ。放課後、多分三時半辺りに学校にいくからそこで合流しよう」
と言うもののだった。
久々に正式の装束を着用しての裏仕事を予感したあたしは今朝から準備を始めている。
今、浄魔の篠笛を吹いているのもその一環だ。
すみきった響き。今はアニータの呪いの影響もなく、自分の心身の状態を確認した。できればアニータの呪いがまた活性化する前に決着をつけたい。
しばらく篠笛を奏でた後、一息いれていると「あの、早瀬先生」と遠慮がちな声がした。大きな眼鏡をかけた理知的な印象を与える女性、「えっと、三年五組の担任の・・・」
「千葉啓子です」
千葉先生は国語を担当している。

「早瀬先生は篠笛も嗜まれるのですね」
そういうと啓子先生は嬉しそうに微笑んだ。
「これでも音楽に関しては結構修行したんですよ」
あたしは答えた。
「最近悩んでいたけどあなたの篠笛で心が洗われた気がします。ありがとうございました」そういうと啓子先生は午後の授業のために一般教室に戻っていった、
あたしは気がついた。彼女のクラスの生徒が万引きをしていたのだ。
この「仕事」気が抜けない。

放課後まもなく、ひかる先生が愛用のバイクで颯爽とやって来た。
彼女がバイクを操る姿を見ると長身の人が羨ましく感じる
あたしはゼロハンでも乗れるのは限られる。
ひかる先生はヘルメットをホルダーにかけるとあたしをみて
「あんたいつここに入学したんだ」と冗談を口にする。
・・・あたしは非常勤だけど講師だよ。
「冗談だよ。
んでやってほしいこと、
今から問題の生徒と面談をするけど弓香は隣の部屋か廊下でその生徒に憑いているものを観察してほしいんだ。おそらく弓香とあたしでやるよ、あれを」

問題の生徒との面談は生徒指導室で行われる。
あたしは指導室に静かに近づくと、壁越しにあの念を探って見た。
ひかる先生は穏やかに問題の生徒と話しをしているようだった。
「最初はスリルがほしくて、でも止まらなくなって」生徒がすすり泣き混じりに話すのが聞こえる。
あの「念」は強くなって来ている。
急ぐ必要がありそうだ。

美紀子さんも家に送った後、あたしはひかる先生の病院に行く、
職員のカンファレンスルームを使わせてもらうのだ。

ひかる先生は苦い表情を浮かべて待っていた。
「大事になりそうだね」彼女の呟きが重い。
「仕事としては単純なんだろうけど、力技になるわね」あたしの見立てをいう。
しばらくの沈黙の後、ひかる先生が口を開く。
「弓香、例のサキュバスの呪いの影響はどう?」
今のところそれは影響はない。新月を経て次の半月までは問題はないと思う。
「ならば」ひかる先生の眼光が鋭くなる。
「あんたの次の授業の日、夜体育館でやる。」
それも問題はない。
「弓香、装束も準備しといて。あたしも浄魔師として動く。音祓いの助っ人も呼ぶ、あんたと助っ人の音祓いとあたしの刀で充分対処できる」

音祓いの助っ人、琵琶を奏でるあのひとだ。

06/22 00:17
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