[戻]-1907/親
はじめての夜 −1−
美弥
今日は雨。
「せっかくの休みなのに嫌になっちゃうな…。」なんて独りで呟きながら電車に乗った。
突然の誘いだったのに、お姉さまは快く返事をくれた。
7時前、駅の近くで待ち合わせ。
お姉さまに会うのは初めてで、とっても緊張していた。
黒いコートに身を包んだお姉さまは、30代なんて思えないくらいに綺麗な人でした。
とりあえず食事をしようってことになって、お姉さまお気に入りのレストランへ向かった。
人込みに流されないように、お姉さまの後ろを付いて歩いた。
少し薄暗い照明の店内では、お姉さまのロングヘアが怪しげでドキドキした。
軽くお酒を飲んで、ビアンバーへ行くことになった。
お姉さま行きつけのビアンバーで、またお酒を飲んだ。
ふとした話から、SMの話になった。
お姉さまは、SMの店で女王様をしていて、SM経験は10年以上。
それに比べて私は、まだまだ未熟なM女。
経験がないわけじゃないけれど、まだ手探り状態って感じ。
どんなプレイが自分の好みなのかも、実はよく分かっていないの。
お姉さまが突然聞いてきた。
『蝋燭…苦手なのよね?』と。
私は、個人サイトに蝋燭が苦手だと書いていた。
でも苦手なわけじゃなかった。
ただ蝋燭を受けた経験がないだけ。
あの赤い蝋燭って見るからに熱そうで、何となく怖くって。
蝋燭を受ける機会はあったけど、いつもお許しを乞いていた。
「蝋燭、受けたことがないんですよ、何かあの赤い色が恐怖心を煽っちゃうみたいで」
『そう?そんなに熱くないよ?』
「低音蝋燭らしいけど、やっぱり熱いんでしょ?」
『Mちゃんの蝋燭処女もらっちゃおうかな〜』
なんて言いながら、お姉さまは笑っていた。
(お姉さまになら、いいかな)なんて、頭の中で考えていた。
カウンターの中の店員が話しに入ってきた。
─「近くにアダルトグッズ専門店ありますよ?」─
さすが、同性愛者の街「新宿2丁目」です。
─「ゲイグッズのショップですけど、蝋燭ぐらいなら扱ってるんじゃないですかね」─
─「けっこう品揃えいいみたいですよ?」─
(店員さん…そんな情報いらないよぉ…)と思いながらも、内心はドキドキしてた。
『Yちゃん、ちょっと散歩に行こうか?』
お姉さまに連れられて、ビアンバーから1度出ることになった。
やっぱり向かったのは、店員さんが教えてくれたアダルトショップだった。
『蝋燭ありますか?』
お姉さまはショップの店員さんに尋ねて、赤い蝋燭とピンクのローターを買っていた。
またビアンバーに戻って、お酒を飲み直した。
『ティッシュあるかしら?』
店員からティッシュを受け取ると、さっき買った赤い蝋燭に火を点けた。
赤い蝋燭に火が点いて、溶け出した蝋が静かに揺れていた。
『手だして?』
お姉さまに言われるがまま手を差し出すと、手の甲にポタッ…ポタ…。
体が突然の熱さにビクッとなった。
『そんなに熱くないでしょう?』と、お姉さまは火を吹き消した。
(手の甲でも熱かった…手の甲じゃなかったら…)なんてことを少し考えた。
『そろそろ出ようか?』
お姉さまに促されるがまま、ビアンバーを後にした。
※ 私書箱番号「6877」
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04/13 09:47
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