[]-5327/親
Stubborn 1
カイア

「それでね……」
「…………」
「ちょっと、さっきから聞いてるの?」
「聞いてるよ。会社の話してたでしょ?」
「会社の何の話してた?」
「嫌いな上司の話でしょ。斉藤さんでしょ?」
「はぁー……」
「斉藤さんの話じゃなかった?」
「違うわよ!!!」
「ああ、ごめんね。聞いてたんだけど」
「聞いてないから、斉藤の話してたとか言うんでしょ」
「じゃあ、言わせてもらうけど」
「なに?」
「今日、あった瞬間から会社の話してるよ。夕ちゃん」
「いいじゃない別に」
「まぁ、別にいいけど……」
「会社の話、嫌だったら、嫌って言いなさいよ」
「別にいいって」
「いいんなら、ちゃんと話きいて」
「はいはい」
「それでね……」
「うん」
私は夕ちゃんを見つめて、話を聞いてるふりをする。
夕ちゃんの会社の話は退屈だった。話はいつも、斉藤さんの悪口で始まって、悪口で終わる。斉藤さんがどんな人か想像してみる。
一日の大半を夕ちゃんと過ごす斉藤さんをうらやましく思った。
「これ、食べないの?」
「うん」
いつの間にか、話題は目の前のサラダに移っていた。
「セロリ嫌い?」
「うん。なんか、クスリみたいな味するから」
「健康にいいのよ」
「ふーん」
「長生きできるわよ?」
「セロリ食べて、長生きなんかしたくない」
「タバコもやめるくらいなら、死んだ方がまし?」
「えっ?」
「タバコ、吸ってるでしょ?」
「す、ってないよ」
「ふーん」
「…………」
夕ちゃんは、目の前のセロリをカリカリ食べていた。
その後、一度も私を見なかった。私も、うしろめたさから話しかけられなかった。

04/06 01:40
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