[戻]-5538/親
悲しみの果てには悦びの楽園
李白
何で泣くんだと、少し相手に苛立ちを覚えた。
相手は、近所に住むフェム系の6歳年上の女。
ついさっき、こんな時間に家に来て何かと思えば、告白された。
でもはっきり言って、しつこくてお節介なこの女は嫌いだったから、
「アンタに興味ないの。むしろ嫌いだからもう近付かないでくんない?」
とインターホン越しに言い放った。
家の中に設置してあるモニターには、毛先を15cmほど巻いた茶色い頭は項垂れ、
ピンクと白のワンピースの生地を握り締めた女の姿。
そして、数滴の涙を残し、走り去った。
ふう、と軽く溜息をつく。
お風呂上りで火照っている身体を配慮し、暖かいリビングへと足を運んだ。
一人暮らしをしているため、家中が静寂に包まれている。
テレビは何も面白そうなことはやっていない。
ふと、ガラス製のテーブルの上にある封筒に目がとまった。
今日の夕方にポストに入っていた、黒と紫のクールな感じの封筒。
糊で貼り付けてあり、送り主は名前を書いていない。
多分前の彼女・・・いや、ご主人様からだろう。
つい3ヶ月前まで、夏樹には秋という彼女がいた。
恋人、というかご主人様とペットという関係だったが・・・。
夏樹は家の中では赤の首輪に、裸に白いエプロンという格好をしていた。
今思えば、馬鹿らしくて、悔しくて仕様が無い。
そんな彼女から、最近メールが来ていたのだ。
何を思ったのかは知らないが・・・。
そしてこの間『手紙を送る』とメールで言っていたのだ。
面倒くさそうに封筒を取ると、ビリビリと手で口を破る。
中からは万年筆っぽいもので書いた、手書きの便箋が入っていた。
12/14 23:24
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