[]-6322/親
Rain
くるみ

―――――ザァザァと、雨が降っていた。
どんよりと重い雲が空全体を覆い隠し、通りを歩く人はいない。



「・・・・ッ、ハッ、ハッ・・・・!!!」



そんな中、バシャバシャと水を跳ねさせ、必死の形相で走っている少女がいた。
背後を何度も何度も振り返る、何かを確認しているようだ。
彼女は膝上の白いワンピースに裸足という格好だった。



ある程度走ったところで、もう走る必要は無いと感じたのだろう。
徐々にスピードを緩め、そして足を止め、コンクリートの壁を背に座り込んだ。
アスファルトで切ったらしい右足の親指を、ぼうっと眺める。



どのぐらいそうやってぼうっとして過ごしていただろうか。
突然、今まで身体を打っていた雨が途切れた。
何事だ、といきおいよく警戒した顔で少女は見上げる。
そこには、少女に傘を差し伸べる美しい女性がいた。



「そのままじゃあ風邪を引いてしまうわよ?」



胸元が大きく開いたトップスとタイトなミニスカートを身につけたその女性は、
同性である少女の目から見ても、充分色気がある女性らしい女性だった。
バッチリメイクをした顔で微笑まれ、少女は少し恥ずかしくなった。



「・・・・・・」


「・・・・何か訳ありのようね」



何も喋ろうとしない少女に溜め息を吐いてみせた女性は、少女の腕を掴んで立ち上がらせた。
見た目に反して結構な力で腕を持ち上げられた少女は、簡単に立ち上がる。



「うちへ来なさい。せめてこの雨が止むまでは」



茶色っぽい大きな瞳に見つめられて、少女は不思議なぐらいたやすく頷いた。

06/10 22:43
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No6323
Rain:2

くるみ
(06/10 22:54)
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