[]-6786/親
解放 1
AI





目を開けると、そこは知らない場所でした―――――
なぁんてことは、AVやマンガ、小説の中でだけだと思ってた。
実際、そういう話って非日常的だから興奮するし。
1人で歩いていると、突然知らない人に布で鼻と口を覆われて、さらわれて。
意識を取り戻すと、どこか知らない場所にいて、混乱する主人公。
そんな主人公の前に現れた容姿が整った男なり女なりが、こう告げる。



『あなたはこれから、犯される』



ペットとか奴隷にしてやる、とかって言われる場合もあるけど。
まあ基本的には、突然さらわれた主人公は、強姦されちゃう。
最初は嫌がって抵抗するくせに、徐々に抵抗できなくなる主人公。
強制的に与えられる快楽に溺れて、理性が失われていく。
最終的には自分から快楽を求めたりもして、最後は完全に堕ちる。
そして主人公は、もとの生活には戻れないと思うのでした、みたいな。



大抵こういう話に出てくる人ってテクニシャンで、経験も豊富。
ありとあらゆるテクニックや道具を使って、主人公を攻め立てる。
そんなのを相手にした純情な主人公は、最後まで抗える術を知らない。
何度も何度も無理矢理にでもイかされて、快楽を叩きこまれる。
そうかと思えば、しばらくイかせずに焦らされたりもして。
気がおかしくなってしまいそうなほどの快楽を、一方的に享受する。



まあ、話によっては苦痛を伴う攻めとかも出てくるけど。
でも快楽を伴う攻めが1番基本的というか、なんというか。



ありふれた話、ありふれた設定、ありふれた話の流れ、ありふれた結末。
そんな“ありふれた”非日常的な話に興奮し、オカズにする人は少なくないはず。
そう、自分だってそういう話を読んで、ドキドキして、興奮したりもした。
だけど、他の大半の人たちとは違って、自分を慰めるようなことはしたことない。
人に触られれば敏感な反応を示す部位も、自分で触れば大したことない。
耳も、首も、横腹も、友達が冗談で触ってくるとビクッ、となってしまうのに。
いざ自分で触ってみると、横腹以外はどこも大した反応を示さない。




胸も、勿論下の方も、興味本位で触ってみたりしたことはある。
しかし、他の人が示すであろう反応を、自分の身体は示さなかった。
声も出なければ、濡れもしない、特に気持ちがいいというわけでもない。
それゆえ、男女ともに経験がない自分は、“イく”という感覚を知らなかった。
自分で自分をイかせようとしても、そもそもそんなに気持ちよくない。
だから、きっと自分は病気ー――――不感症なんだな、って、思っていた。
それが理由でなければ、いったい何が理由で感じられないというの、みたいな。



いわゆる“いかがわしい”ものを見たり読んだりすると、ある程度は濡れる。
だからといってナカに指を入れて出し入れを繰り返しても、感じない。
指は2本までなら飲み込むのだが、声も出てこない、気持ちよくもない。
で、結局イく、という感覚を経験できず、ということの繰り返しだ。
調べてみると、不感症は、濡れるけどイけない場合も不感症に入るらしい。
まさに自分がそのタイプだったので、ますます自分は不感症だと思った。



そういう行為について、自分は否定的な思いを抱えている。
男性嫌いで、男性に触られるのも嫌なので、男性との行為なんてもってのほか。
気持ち悪いとか、嫌だとか、したくないとか、そんなことしか思ってなくて。
恋人ができても、性欲なんてものは、全然出てこなかった。
ヤりたいとか、ヤられたいなんて、これっぽっちも思わなかった。
不感症には心理的原因もあるみたいだから、これも原因かと思っていた。










そう、『あの日』まではー―ー――






02/29 19:11
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