[戻]-7359/親
十三行進曲
hime
『大奥くらぶ』は、大阪十三(じゅうそう)にいくつもある、いわゆるソフトSMクラブの一つだった。
過激なことはしないけれど、入っている女の子は他のクラブよりも質が高く、マニア一歩手前的な男たちに人気だった。
けれど人間という存在は欲深く、這えば立て、立てば歩けの親心、ならぬ、縛れば鞭、打てばアナルのスケベ心で、一歩手前が本格的なマニアに脱皮すると、『大奥くらぶ』のサーヴィスではもの足りぬと、あっさりと他に乗り換えてしまうのだった。
世には草食系男子がはびこるとかで、この業界そのものが先細り、ソフトSMの「ソフト」をいっそ外してはしまえぬかと、オーナーから嬢達に相談のあったのが一週間前、具体的には、
一本鞭
飲尿
アナル責め
アナルセックス
浣腸
これらを解禁してはくれないだろうか、と。
真っ先に反対したのが、ゆか(源氏名)だった。
「うちら、そういうことせえへん約束で働いてんで」
「けどな」とオーナーの百合子は苦しそうに言った。「もう、このまんまやったら、やってけえへんのやって。あんたの常連さんも、何人、『シャドウズ』に取られた?」
「あんな、浣腸とかを売りにするような下品な店にしたいんですか?」
「下品かどうかは客が決めることや。現に客は減っとる。逆に『シャドウズ』は客が増えて、あそこのオーナー、こないだホストクラブで会うたら、えらい景気ようて、ドンペリバンバン開けとったがな。私、悔しゅうて悔しゅうて」
「お母さん」とゆかは言った。
オーナーは、嬢達に「お母さん」と呼ばれて慕われていた。
「また、ホストクラブ行ったんか? そんな散財したらあかんやろ! うちらが稼いどんねんで。アホらし」
「ちょっと」と理性派のふうか(源氏名)が口を挟んだ。「話がまたアサッテや。お母さん、私らがそのコースを解禁したとして、客単価はどのくらい変わるもんなん?」
「コンサルの概算で、だいたい、三千円くらいは上がるらしいわ。プレイ時間も長ごなるやろ。特に浣腸はプレイ自体もそうやし、その後の回復にも時間かかるから、2時間以上のコースでしかやれへん。そしたらこれまでショート専門やったお客も2時間にしてくれよるがな」
三千円……
嬢達の嘆息が漏れた。
確かにそれは大きい。
「耐えられるかどうか、私ら同士で練習してみいひん?」
神戸出身でいちばんオシャレなりんか(源氏名)が言った。
「浣腸とかも?」とふうか。
「もちろんやんか。いきなりお客さんの前じゃ辛すぎるで」
こうして「練習」という名の、女同士のSMプレイ大会が始まった。(新しい話だよ。今度は軽く行くね)
11/05 15:32
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