[]-7794/親
負の遺産
omame

 十六の時に母親を事故で亡くし、父親は私が十八の頃、五十五歳で再婚した。
 再婚相手は二十二歳。
 まさに娘と言っていいような若い女性だった。
 しかも恐ろしいほどの美人だった。
 なぜ彼女、優華が、資産家だけれど凡庸な父と結婚したのか、その目的が金にあることは明らかだった。
 父と優華は夜になると地下室に籠もり、朝は私が大学に行く頃まで起きてこなかった。
 そんな生活が二年も続いた。
 そして父は仕事中に脳梗塞で倒れ、寝たきりになり、一月で息を引き取った。
 最期の言葉も何も無かった。
 悲しみに暮れるある日、私の部屋に優華がやってきた。
 アンタがパパを殺したのよ、とそんな目で睨んでやった。
「来て。見せたいものがあるの」
「何よ?」
「来ればわかるわ」
 優華は地下室の鍵を指先でクルクルと回した。
 地下室に入ったことはなかった。
 私は優華に従った。
   ※
 ムン、と異様な匂いが鼻についた。
 後でそれが、汗と精液と愛液と排泄物の混じり合った匂いだと知った。
 灯りがつけられた。
 私は「アッ」と声を上げた。
 噂では聞いたことのある、でも実際に見るのは初めての、鞭や、巨大な注射器や、様々な大きさの人工ペニス、その他その他、何に使うのかわからないものが壁に掛けられていた。
 そして天井からは鎖。
 磔台。
 木馬。
 床はタイル張りで、排水溝も。
 その隣にベッド。
「お父さんがどんな趣味だったか、わかるでしょ」
 私は頭を振った。
 振って、振って、振りまくった。
「私が毎晩、どんな目にあってたか」
 私は泣きながら頭を振った。
「これから毎晩、その身体に教えてあげる」
「い、嫌よ」
「嫌って言えるのかしら? あなたの後見人は私なのよ。私のサイン一つで、あなたは路頭に迷うのよ。大学だって、あんな授業料のバカ高いお嬢様学校、ヤメなきゃならなくなるのよ」
「嫌、嫌……」
「私の本当の目的はあなただったの。あなたをここで責めさいなむことだけを夢みて、あなたのために、少しずつ、こういう器具を買い揃えたの」
「な、なぜ?」
「おねだりするのに、恥ずかしくもなんともなかった。だって、あなたのお父さん、男としてはもう終わってたの。こういう器具を使わないと女を満足させられなかったのね」
「もう、もうヤメて!」
「覚悟なさい!」
 その言葉を合図にしていたかのように、とてつもない体格をした女が二人、地下室のドアを開けて入って来た。
 そしてあっと言う間に私は全裸にされ、天井と床の鎖に、X字に拘束された。
 胸も、下も、何にも隠せなくなった私の身体を、優華は舐めるように眺め回した。
「素敵ね、素晴らしいわ。とりあえず、今日は金曜だから、日曜までに腫れが退くくらい、お尻を徹底的にやって」
 そう言ってベッドの上に横たわった。
「始めて」
 風を切る音と共に、お尻に火のような痛みが走った。
 ヒュン、ヒュン!
 連続した音と激痛が走った!
 何度も何度も!
 痛い!
 キャァァアァアアァ……
「痛い?」
 優華が聞いた。
「痛い! ヤメて、こんなこと!」
「いいわぁ、さあ、ドンドン続けて」
 ヒュン、ヒュン、ヒュン……
 連続して左右から!
 叫ぶ、叫ぶ、泣きながら叫ぶ!
 見れば優華はベッドの上で自分の胸を揉みしだいているのだった。
 いつの間にか全裸で!
 そして自分の指を股間へ……
 オナニー?
 オナニーしてるの?
 私が鞭打たれるのを見ながら?
 そこへもう一人、優華とそっくりな女が入って来た。
 鞭の嵐が止み、私は荒い息をやっとの思いで整えた。
「やってるわね、ああその子?」
「そう。私たちの共有財産にしましょ」
 そう言って優華はその女に抱きつき、ゆっくりと服を脱がせた。
 女が全裸になり横たわると、優華はその上に、それも股間に頭を埋め、自分の股間を女の顔に押しつけた。
「始めて」とくぐもった声がした。
 鞭が始まった。
 ベッドの上の女達は妖しげに身もだえを始めた。
 卑猥な音が聞こえてきた。
 互いのそこを、舐め合ってる!
 私が鞭打たれるのをオカズに!
 私は泣きながら叫び、叫びながら泣いた。
 泣いて許しを乞うた。
 痛い、あまりに痛い!
 二人の全裸の女は上下を入れ替わりながら、妖しく汗にぬめ光る身体を絡み合わせ、同時に痙攣して絶頂を訴えた。
 鞭の嵐はやっと止み、お尻に薬が塗られるのがわかった。
 私は泣いて、泣いて、泣きじゃくった。
 見れば、足下のタイルには水たまりが出来ていた。
「お漏らししたのよ」
「お漏らしするところも、素敵だったわ」
 二人は顔を見合わせて、目を閉じると、ウットリとした表情で唇を重ねた。(続く)


01/22 17:01
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Re[1]: 負の遺産

亜里沙
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omame
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