[]-7804/親
あなたを離さないで
omame

 何不自由なく育ってきた。
 ただ、十八になると「学校」を出て行かなければならないのだった。
 出て行った女の子で、帰ってきたのは一人もいない。
 どこに行ったのかもわからない。
 私にもその日がやってきた。
「先生」や「きょうだい」たちに別れを告げて、わたしは「学校」を後にした。
 今月十八歳になる「きょうだい」たち二十人とバスに乗り、私たちはこれから待ち受ける将来について語り合った。
 もしかしたら「恋」も?
 そう思うと胸は高鳴るのだった。
 私とルリという女の子が同じ場所で下ろされた。
 そこで待っていた女性は、私たちを、なぜか汚いものを見るような目で見た。
 そんな目で見られるのは初めてで、一瞬、不安がよぎった。
 通された部屋には鉄格子が入っていて、廊下から丸見えだった。
 他の部屋にも女の子たちが二人ずつ、無気力に私たちに視線を向けていた。
 私たちもそれぞれ部屋に入れられた。
 トイレも便器の椅子が無造作にあるだけで、ドアもなかった。
 ここは、何?
 一つしかないベッドには女の子が寝そべっていた。
「ここは?」
「今知る必要なんてないわよ。すぐにわかる」
 ……キャァァアアアアァァァ……
 遠くで、女の子の絹を裂くような叫び声がしていた。
 同室の子の目に涙が浮かび、スウッとこぼれた。(続く)


02/16 08:28
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