■11365 / inTopicNo.1)  CLUB ANGEL's T  
□A 一般♪(1回)-(2005/07/27(Wed) 03:29:05) 

[じゃあ、今日の夕方から向こうに顔出しにいってね★よろしく、エリナ♪] 『わかったよ、理沙も会社頑張ってね、うん、ばいばーい』 エリナの友人、理沙の就職が決まったのでエリナは理沙のバイトを引き継ぐ事になった。 『めんどくさいなぁ。』 パタンと携帯を閉じ、理沙に渡された地図と名刺を眺める 『キャバなんて忙しそうだし。酔った人の相手しなきゃなんないしなぁ。』             燃えるような夕日が西に傾くころ、エリナは家を出た 名刺に書かれている店の名前を探すためエリナの視線はきょろきょろしていた。 「お姉さん♪俺らと遊びに行こうや」 「何してるの?暇なの?」 「おごりだから♪友達も呼べばいいから♪」 歩くたびに男が群がるのも無理はない。 綺麗な長い茶髪に白く透き通った肌。切れ長の目がどこか艶やかな印象を与える。 全てのナンパをシカトして、エリナは目的の店をようやく見つけた。 店の周りには男が誰一人いなかった。 『…潰れるんじゃない?』 多少不安を抱えつつ、エリナは扉を静かに開いて、地下に続く階段を降りていった。
■CLUB ANGEL's LT □A 開かれた扉の前にいる人物に目が釘づけになった。 エリナが19年見続けていた人物。 「お…母さん…」 母と呼ばれた女、涼子はうっすらと笑みを浮かべて、エリナからは見えない扉の横にいる人物に話し掛けている。 笑みを浮かべられただけで自分には目もくれず話し込む涼子に、エリナは頭に血が上った。 「なんとか言えよ!何話してんだよ!!」 勢い良く扉に向かい、涼子の胸ぐらを掴みあげた。 涼子は冷たい顔でエリナを見ていた。 今までに見たこともない涼子の顔にエリナは体が固まった。 (……こんな顔…あんた出来たんだね…) 一瞬考え事をしていただけで、涼子の胸ぐらを掴んでいた腕は離された。 同時にエリナの体が床に崩れ落ちる。 「ぅ…ゲホ……かは…」 みぞおちに強烈な痛みが走り、うずくまったまま腹を押さえ込んだ。 苦しさで目の前が歪む。 自分が母親だと思っていた女は、目の前で封筒を受け取って消えた。 (今度は私を使うのか……本当…むかつくよ…) 首が持ち上げられ、態勢がきつい。 息苦しさと痛みで、エリナの意識は飛びそうだった。 男だと思い込んでいた人物は、後ろに結っていた髪をほどいた。 驚くほど整った顔が夕日に照らされる。何も見えていないとような冷たいガラス玉の眼がエリナをじっと見つめていた。 今のエリナにはその美しさが恐怖にしか感じられない。 何の為に自分は売られたのか。 何の為にこの人は女を買ったのか。 『気に入ったわ……』 その日、エリナはくらい闇に引きずり込まれた。 エリナの光が失われる。 『あの人に渡すなんて…。あなたの価値が無くなってしまうわ…』 あの女の声が頭をよぎった
ギシギシと使い古されたベッドが軋む。 夕日は間もなく無くなり、代わりに青白い月明かりが部屋に入り込んだ。 「あ…ぁ…はぁ…お願い…もぅ…やめ…て…」 涙を流しながら四つんばいになったエリナの願いは聞き入られなかった。 腕に力が入らず、しかし腰だけは高々と上げられ押さえられていた。 『まだよ。あなたの身体に打ち付けるとき…肌が触れるでしょ?それがたまらなく気持ちいいのよ』 冷静な口調とは異なり、女の腰は激しくエリナを責め立てた。 「やめて…痛い…あっ…あぁ…助…けて…」 ベッドに顔を埋め、苦痛に耐えていると、女は四つん這いのエリナに覆いかぶさるようにエリナの耳に唇を近付けた。 『助けは来ないわ…。あなた達…親子のお金出してたのは若西組よ?』 エリナの消えかけた意識が呼び戻された。 『涼子の娘なら見てみたいと思ってね…。気に入ったから涼子から買っちゃった…』 耳元にあった唇はゆっくりと背中を舐め回し、胸を指で愛撫しながらお尻へと下がっていく。 母親があっさりと自分を売ったことは、エリナに大きなショックを与えた。 生まれてから一度も母親から愛をもらった事は無い。 けれどエリナには優しい父親がいた。父のおかげでマトモに生きてこれた。 その優しい父親はもういない。 小さくて情けなくて、守らないといけない人間にしたのは涼子だった。 数年前からの浮気相手はに金持ちで、毎月涼子が生活費をもらってきた。 父親は自分の腑甲斐なさに小さくなっていったのだ。 「あんたが…あんたがいるからいけないんだ!!」 家族を壊した張本人に無理矢理犯されている事に気が狂いそうだった。 叫んでも叫んでも、エリナの声は女には届かなかった。貫かれたまま頭を押さえられ、泣き叫ぶエリナを楽しそうに犯していった。
―――昼・PM 1:00 ― 蝉の鳴く道路を潜り抜け、地図を見ながらエリナの自宅を探す。 『ん〜。あ?ここかな?』 地図に書いてある場所と一致した家の前に車を停め、アリサはサングラスを外した。 『ふぅ…緊張する…』 高鳴る胸を抑え、小さなインターホンを押した。 慌ただしく中からは足音がし、乱暴に玄関が開けられた。 『エリナ!!あ?!どちら様ですか…』 明らかに落胆した男の顔が引っ掛かる。 挨拶をして、自己紹介を手短に済ませると、 男はエリナの父親だという事が分かった。 『で、エリナはどこにいるんですか?』 頭を抱えた父親に尋ねると、力ない首の振りだけが戻ってきた。 『家の前に…エリナに渡した自宅の鍵が落ちてたよ…携帯も繋がらないし…』 父親の手には銀色に輝く鍵がしっかりと握られていた 『そんな…。心当たりはないんですか!?』 座り込む父親の肩を乱暴に揺さ振る。 悲痛な顔がアリサを見ていた。 『他人を巻き込むことは…出来ない…。』 うなだれる父親にアリサはビンタをした。 『家にいるくらいなら自分がなんとかしろ!!私はエリナの手がかりが分かっているなら飛び出して行くわよ!!父親なら守れよ!』 茫然とアリサを見上げ、殴られた頬をさする。 『俺は…俺には……』 涙目になりながら頭を抱えて苦悩する。 『早く!何でもいいから…お願い…言ってよ!』 焦りと心配からアリサの目にも涙がたまる。 『わ…若西が…あいつらがエリナを…』 頭が真っ白になった。 エリナを守るため綾と付き合い、母親を守るため紗織と付き合い。 結局は若西の誰かがエリナをさらった。 『なんで……うまくいかないの……』 無力感を味わっている暇はない。 若西の事なら紗織を使うのが一番いいと思い、アリサは紗織を呼び出した。
短い呼び出し音。 すぐに紗織が電話にでた。 『どうしたの?めずらしいじゃない』 アリサからの初めての電話に、受話器ごしから聞こえてくる紗織の声は弾んでいた。 期待している紗織にエリナの事を話すか迷ったが、躊躇している暇は無かった。 『エリナが…紗織の所の誰かに誘拐されたの』 沈黙がつづいた。 紗織の返事を待たずにアリサは言葉を投げ掛ける。 『お願い…今頃何をされてるか…何でも紗織の言うこと聞くから…お願い…』 アリサの泣き声に、紗織は吸っていたタバコを消して車を出す。 『アリサ、今どこにいる?そっち向かうから』 『え…今は…店の前に…』 『分かった』 紗織との電話が切られた。その後すぐに掛け直したが繋がらず、何をしていいか分からないアリサは店の前に座り込んでしまった。 〔お願い…エリナ…無事でいて…〕 10分後、ブレーキ音と共にスポーツカーが目の前に止まった。 助手席の窓が開けられ、紗織が乗って、と合図を出した。 信号の待ち時間すら気に障るように、アリサは顔の前で手を組んだ。 願うようなアリサの仕草に心がえぐられる。 それでも紗織は車を走らせた。 大きな門をくぐり、人の歩く道でありながら紗織は庭まで車を入れて玄関先で車を停めた。 『ここ。アリサは私の恋人を演じて…』 [恋人を演じて] 思わず紗織を見た。 その顔はもう、傲慢で身勝手だった昔の紗織ではなかった。 『さ、行くよ!』 アリサの手を引き、紗織は堂々と屋敷に入っていった。 『お帰りなさいませ』 この前の運転手が紗織に挨拶をし、後ろにいるアリサに気が付き会釈をする。 『うん、私の離れには誰も近寄らせないでね』 すっとアリサの腰に手を回してキスをする。 『かしこまりました。』 運転手の姿が見えなくなる曲がり角まで行くと、紗織は小さく謝って回した腕を解いた。 『いいよ。エリナはどこか分かるの?』 凛としたアリサの横顔に目を奪われるが、すぐに目を逸らして自分の部屋へと連れていった。
――昼・PM2:00 ―― 紗織の話からすると、昨夜明け方近く、自宅に部下が誰かを連れにきたと言っている。 行き先は紗織の母親、恭子の部屋がある棟らしい。 焦るアリサはすぐにでもそこへ行きたかった。 棟の場所を確認すると、そのまま部屋を出ていこうとする。 『下手に動かないで。不審者だと思われたら追い出されるか殺られるかだよ』 いつもよりも強い力でアリサの腕を掴み、アリサの安全を思っての事だった。 『ごめん…つい…』 顔を俯かせ、アリサはソファに座る。 『仕方ないよ。アリサにとっては大事な人だから』 アリサと顔をあわせずに紗織は言うと、地図らしき物を取り出した。 『母さんの棟には地下室がある。そこは物置につながっていて、鍵は簡単に外せる。場所は私の部屋のすぐ近くに繋がってるの。だから…』 赤いペンで矢印を書き、アリサに分かりやすく説明していく。 なるべくその場所にいても自然に見えるように会話が決められ、たくさんの合図が決められた。 『それに母さんは昼間に女を抱くことは……っ…』 アリサを気遣い言葉につまる。 『…続けて…』 冷静に今やるべき事を理解しているアリサは、自分の感情を必死に抑えた。 アリサの深い気持ちを知り、紗織は話を再開させる 『昼間は抱かない…。だから行動は夜…。母さんは部屋を出るときに必ず決まったメイドを呼ぶの。メイドを呼ぶときは電話を使うから、ランプが付けば会話を聞けるわ。』 『じゃあ、ランプが付いて呼び出しの電話なら私たちは地下から行くのね?』  頷く紗織。アリサが自分と別れた明け方にさらわれたなら、翌日アリサが仕事をしている時にはすでに抱かれていた事になる 遣り切れない思いで、アリサはひたすら夜を待った。
――昼・PM3:00 ―― 鉄格子から昼の光が差し込み、ベッドに横たわるエリナを優しく包み込んだ。 体中が軋み、下半身からは味わったことが無い痛みが込み上げる。 「っ……」 痛む体を引きずるようにしてバスルームへと向かう。 お湯はすでに用意されていて、24時間いつでも入れるようになっていた。 浴衣を脱ぎ、ゆっくりと足先から湯槽へとつかる。 エリナの泌部には想像以上にひりひりとした痛みが走り、歯を食い縛ってこらえた。 体も撫でるようにしか洗えず、殺菌の為にも泌部を洗う。 「痛い……エグ‥グシュ…もう嫌だよぉ…ヒック…」 こんな痛みに自分が惨めな思いをしなければならない屈辱感から、今まで堪えていた涙が一気に溢れだした 涙はシャワーに流され、随分と泣き続けた事で苦痛は和らいだように思える。 風呂からあがり、冷蔵庫から水を取出してベッドに座る 「…今日もやられるのかな…。」 想像しただけでゾッとした。冷たい瞳は、エリナの苦痛に満ちた顔を見た途端に光を放ったのだ。 鈍く光る、貪欲な瞳。 エリナにとって初めて恐怖を抱いた人間だった。 光は帰ってしまう。 代わりに闇を連れてきて。
――夜・PM22:00 ― 鈴虫の聞こえる窓辺に、アリサはぼんやりと視線を向けていた。 紗織が運んできた食事には手を付けず、ひたすらエリナの安否を祈っていた。 『…アリサ。辛くても食べないと…』 何時間も食物を口に運んでいないアリサを見兼ねて強引に食べさせようとする。 『いらないって言ってるでしょ!!』 紗織が持っていたトレーを払い除けた。食器は床に叩きつけられて料理は無残にも散らばった。 『………』 紗織は無言で散らばったものを片付ける。 アリサの瞳にはうっすらと涙が溜まっていた。 『紗織…ごめん…私が片付ける…』 『いいよ。』 食器に手を掛けるアリサの腕をそっとどけ、紗織は手早く片付けを済ませた。 無力感で小さくうずくまるアリサの肩を紗織は優しくさすり、少しでも不安を和らげようとした。 その時、部屋の内線電話にランプが点灯した。 急いで電話の主を確認する。 『母さんだ…』 受話器を取り、話を聞く。 [私よ。いつもの道具とタオル…お願いね。] ほんの数秒の会話。紗織はアリサの手を引いて窓の外にある庭へと向かった。 薄暗い茂みを抜けると、大きな池があり、紗織は池の近くにある鉄の蓋を持ち上げた。 『ここから行くのね…』 月夜の光すら届かない暗い穴の中からは、空気の流れる不気味な音が響いていた 紗織はペンライトを二つ取り出して一つをアリサに手渡した。 『早く行かないと。私の後にちゃんと付いてきて』 そう言うと紗織は梯子に掴まって降りていった。 〔待っててね…エリナ…〕 二人の影はどんどん闇に飲まれていった。
「はっ…ぁ…はっ…」 『…可愛い顔…』 四つんばいで後ろから突き上げられているエリナの呼吸はすでに乱れていた。 大きく広げられた秘部は綺麗に剃られ、ピンク色のエリナの肉が見え隠れしていた。 荒々しく軋むベッドで、必死に耐えるエリナを楽しむように恭子は攻め立てる。 『ふふ…本当はあなたが苦しむ顔をもっと見たいのだけど、快感に浸る顔は…まだ見たことが無いわ…』 そう言うと、恭子はメイドから預かった箱から何かを取り出した。 突き上げられる感覚からの、束の間の休息にエリナは虚ろな瞳で恭子の動きを追った。 『ほら…。少し冷たいだろうけど、じきに慣れるわ』 長い指がエリナの綺麗な秘部に当てられる。 「ゃ…あ……冷たい…あっ…何…したの?」 エリナの声を無視して、恭子はうっすらと笑みを浮かべて丹念に液体を塗り込んでいく。 『あと、これ。ちゃんと飲み込むのよ』 半ば強引に口を広げられ、エリナは小さな錠剤を飲まされた。 「っ…ケホ…ケホ…」 乾いた口内に無理矢理入れられた薬を飲み込まされた為に、思わず咳き込んだ。 『あら、仕方ないわね。ここまでするつもりは無かったんだけど…』 そう言うと恭子は箱からジュースのようなビンを取り出して蓋を開けた。 『飲みなさい』 恭子の差し出した物を一瞬受け取るかためらったが、喉の渇きと異物感を無くすために渋々手を伸ばした。 「…はぁ…っ…コレは…何なの?」 濡れた口元を手で拭き取り、ビンのラベルを探す仕草する。 『余裕そうね…。それが何なのか、知る必要は無いでしょ?あなた自身が答えを教えてくれるわ…』 ギッと恭子がベッドに乗り、ゆっくりとエリナに近づいてゆく。 やがて互いの頬が触れ合う程になり、恭子は優しくエリナの頬に手を添えた。 ドクン エリナの身体が大きく脈を打った。 「…何…身体が……」 血が全身を駆け巡っていく感覚。 『思ったより効き目が早いわね…』 頬にあった手を、鎖骨に滑らせていく。 「あ…っ」 普通なら何とも無いような軽い刺激にすら反応するエリナ。 その様子を満足気に見届けると、恭子はエリナを押し倒した。
階段を降りるとそこには大きく♂の記号の上に×が描かれていた。 (は?何これ…男に×なんか付けて…) かなりの不安を抱えつつ、エリナは真っ赤な扉を開けた。  落ち着いたオレンジの光、さりげなく空間を仕切るようにレースの布が天井から幾重にもさげられている。 あまりに落ち着いた店。ぼんやりとその場に立ち尽くしていると、店の奥から着物を着たママらしき人が歩み寄ってきた。 『お客さん?あいにくですがまだ開店前なんですよ』 少し京都らしい言葉のイントネーションが気品を漂わせてエリナを固まらせる。 「い、いえ、私、理沙の引継ぎなんですよ。」 手を広げて名刺と地図を見せる。 『あら…ごめんなさいね。あまりに若いし変やとも思ったんです。私は奈保、店にいるときは奈保さんて呼んで下さい』 可愛らしい笑顔を向けられ、エリナの緊張は大分取り去られた。 奈保に店の奥へと案内され、控え室に連れていかれた。 煌びやかな衣裳、露出度が高いものばかりだ。 奈保は皮張りのソファに腰をおろし、テーブルを挟んだ向い側のソファにエリナを座らせる。 『じゃあ、基本的な事教えます…。と言っても媚びるとかしなくていいわ。エリナはただ会話をする。それだけやな。』 (??まじ?失礼な事とか恋愛とか規制無いの?) 困惑した顔のエリナに微笑み、奈保は付け加えた。 『お客も大事だけど、はっきり言ってあなた達ホステスの方が大事よ。別に客と恋愛しても、客があなた達に対して怒って帰ったとしても…。店に来なくなった人は一人もいないのよ』 「どうしてですか?店にとって命の客ですよ?怒らせたりしたら…」 奈保の言葉の意味が分からず、ただ質問をする。 『あなた達は客の天使だから。天使は…客に媚びなくても怒らせても、求められ続けるんよ』 堂々と言い放つ奈保にエリナはなんとなく納得させられた。 (そっかぁ。まぁ楽だし。時給もいいし。やってみよっかな♪)
胸が大きく開いた黒のドレス。大人びた顔のエリナには良く似合った。 「先輩達が来るから適当に挨拶しときなさい。」 そう言うと奈保は控え室から出ていってしまった。 特にする事もないエリナは奈保を見送った後、再びソファに座った。 (はぁ…久しぶりの仕事は緊張するなぁ…。先輩達とかめんどくさいし…) エリナは去年の高三の時にキャバに勤めていた。 しかし先輩の客を奪ったという逆恨みを受けて先輩の顔にビンタをかまして辞めたのだった。 去年の事を思い出して憂欝な顔をしていた頃、控え室のドアノブが下に下がった。とっさにソファから立ち上がる。 そこにいたのは背の高い、美人と言う言葉がピッタリの人だった。 『あれぇ?新しい子?』 綺麗に手入れされた長い爪に細い指。ここに来るまでに多少乱れた髪を手櫛で整えながらエリナの隣に座る 「はぃ、エリナです。よろしくお願いします」 波風を立てないように丁寧に返事をする。 『そんな固くならなくていいから♪私アリサ。まぁ座りなよ』 ポンッとソファを叩きエリナを座らせる。 固まって床に視線を落としているエリナをマジマジと観察するアリサ。 アリサの視線を痛いくらいに感じるエリナ。 (見られてる…やだなぁ…目線合わせ辛いし…) エリナの背筋に冷たい汗が滲む頃に、アリサの口が開いた。
『綺麗な顔してるね』 唐突に言われた言葉。 「え…あ、ありがとうございます…」 精一杯答えた。またじんわりと冷や汗が流れる。 エリナの反応にクスクスと笑う。 思わず見とれてしまう程の可愛い笑顔に、自然とアリサに目が行ってしまう。 『あ、やっと目見てくれたね♪』 嬉しそうにエリナの顔を見つめるアリサ。 恥ずかしくなり、再び目をそらす。 「アリサさん綺麗すぎなんですよ」 初めてお世辞無しの誉め言葉が出てきた事にエリナは驚いた。 エリナの本音の言葉にアリサは照れ笑いを浮かべる。『はは♪ありがとうございます★』 また顔を見つめながらお礼を言う。 「恥ずかしいからあんまり見ないで下さい」 耳を赤くしながらも視線を合わせず抗議する。 エリナの反応が可愛くて、アリサはからかうのを止めない。 『もぉ♪エリナ可愛い♪チュウしちゃおっかな』 え?っと思う暇もなくアリサの唇はエリナの唇に触れていた。
柔らかい感触と驚きに思わず目をつぶってしまう。 エリナの様子を確認し、アリサは大きく開いたエリナの胸元に手を潜り込ませた。 ふわふわと撫でられるような感覚。体が火照りだす。 「ん…、アリサ…さん…」濃厚に舌を絡ませ、エリナとのキスを楽しむ。 強ばるエリナの身体を抱き締め、ラインをなぞるように手を移動させていく。 チュ…チュク…チュパ…。 口のなかを犯されながらも、初めて同性とキスをする感覚に嫌悪感は無かった。 むしろアリサのキスは男には無い優しさと清潔さが感じられた。 チュッと最後にエリナにキスをして、アリサは唇を離した。 『ふふ♪可愛かった♪』 テーブルに肘を乗せて頬杖をつきながらエリナを眺める。 呼吸を整えながら、質問したいと言いたげな瞳をアリサに向ける。 『何?なんか言いたそうだね♪』 分かっていながらもわざとエリナをからかう。 「アリサさんって…」 『おはよぉー♪』 突然入ってきた人物に会話を遮られた。 クスクス笑いながらエリナを見て、アリサはその人物に挨拶をする。 『おはよ、優奈♪』 (また綺麗な人だなぁ…。このキャバ…レベル高すぎじゃない?!  うー…。私大丈夫かな…。っていうか色々質問したいのに…優奈?さんいるし聞けない…) アリサは、グルグルと考えこんだエリナを楽しそうに眺めていた。
一通りアリサと優奈が話し終えた後、優奈がエリナの側に立つ。 『新人さんだよね?』 優しい笑顔を向けられ、少し緊張がほぐれた。 「はい、エリナです。よろしくお願いします。」 ふーん、とエリナを観察する優奈。 思わず視線をそらしてしまう。息が吹きかかる程に優奈の顔が近くなり、先程のアリサとのキスを思い出す。 『アリサ…』 ジロっとアリサをうらめしそうに見る優奈。 アリサはとぼけるように爪にマニキュアを塗っている。 『またチュウしたでしょ』 (え?また?) きょとんとした顔で優奈の顔を見つめる。 クスクスと笑いながら優奈を見るアリサ。 いたずらが見つかった子供のような顔。 (…可愛い…アリサさん可愛い…) エリナの胸がキューッと締め付けられた瞬間、優奈の唇には再び柔らかい感触が与えられた。 (…………!?) クチュ…レロレロ…チュ…クチュ、チュパ… 「ん…んぅ…ふ…ふぁ…」体中の力が抜け、思わず優奈の細い首にしがみ付く。 奥まで丁寧に舐めあげられ、歯をなぞられる。 エリナのショーツは湿り気を帯びてくる。 『ん…ん…チュ…チュパ…エリナ、腰が動いてるよ?』 唇を離され、腰の動きを指摘される。ハッと我に返り、絡ませた腕を放した。 『あぁ!もぅ。これからだったのにー。』 笑いながら残念そうな声をだす優奈。 『ふふ、優奈には本気のお客さまがいるでしょ?』 長い脚を組みながらアリサが言う。 『分かってる、エリナ、これは挨拶みたいな物だから本気になっちゃダメだよ』 エリナの顔を片手で包むように撫でる。 『優奈、早く行きなさい。指名の声聞こえなかった?』 急かすように優奈を控え室から出すアリサ。 扉が閉まった時、エリナにはアリサの艶やかな笑みが向けられていた。
ドキっとするような瞬きの仕方。 しっとりとした艶のある唇。 指先を動かす仕草でさえ色っぽい。 エリナはアリサに見られるだけで意識がおかしくなりそうだった。 静かな沈黙を破ったのはアリサだった。 ほんの少し、興味深気に身を乗り出す。 『優奈が言った…、また・って言葉。ひっかかる?』 優奈とのキスで、その事について動揺していた事を忘れかけていたのに。 真っすぐアリサを見つめていた目が床に落とされ、 エリナの頭が徐々に下がっていく。 自分に好意があると分かり嬉しいのか、乗り出した身体をアリサは満足そうにソファに委ねた。 『どうして俯くの?いきなりキスされたのに。』 俯いているエリナには自分の顔が見えない為、アリサはわくわくとした顔でエリナを見続けた。 『エリナは…』 「アリサさんは…」 言い掛けた時、沈黙していたエリナの声と重なった。 バツが悪そうに再び頭を垂らすエリナ。 『ふふ♪なぁに?』 テーブルを人差し指で小さく叩き、エリナに質問の内容を話させる。 「あの…アリサさんって…。っていうか優奈さんも…。」 聞きにくそうに唇を噛むエリナを余裕たっぷりの様子で楽しそうに見るアリサ。 『なぁに?気になる♪』 「なんでもないです…」 ソファの背もたれに身体を引くエリナ。しかしすぐに背中は柔らかい壁に当たり、それ以上アリサからは離れられなかった。 『そんなに怯えなくてもいいじゃない、聞きたいなぁ。エリナが何を知りたいのか♪』 甘く鳴くような声がエリナの耳をかすめる。
目の前のアリサを直視出来ず、距離は取れず、エリナは非常に気まずい雰囲気を味わわされる。 質問をされる側のアリサはとても楽しそうに、にこにことエリナを直視している。 なかなか言いだせずにいるエリナを残し、ふいにアリサは席を立った。 ビクッとエリナの肩に力が入る。 (やば…。イラつかせたかな…。)         不安な表情で勇気を出してアリサの方を見る。 すると先程よりも距離を近く…。と、いうか鼻先くらいの近さにアリサがいた。 「ふわっ!?」 猫のような可愛い驚きの声に、アリサが思わず微笑む。 『ははっ♪何その声。初めて聞いた♪』 「え?あ、あ…。あの…ごめんなさい…」  特にエリナが悪いわけではないが、何となく謝ってしまった。 ビクビクと主人に嫌われたくない飼い猫の様な雰囲気に、ただ可笑しくて笑っていたアリサの顔は優しい顔になっていった。 〔エリナ…めちゃ可愛いんだけど…。やば…。〕 アリサは、エリナの座っているソファの肘掛に手を置き、しゃがんだ。 『大丈夫だから。そんなにビクビクしないで?ね?』暖かく柔らかい手がエリナの手を包む。 そうしてやると、エリナの肩の力が少し抜けた。 『ごめん、エリナ可愛くていじめたくなるんだ。』 ふにふにと柔らかなエリナの頬を摘みながら言う。 『エリナがいつまでたっても質問しないからってイラついたりしてないからね♪出来る時に…っていうか、そろそろエリナの知りたい事は分かるよ♪』 そう言うとアリサはエリナの額にチュッとキスをして頭を撫でた。
(そろそろ分かる?) アリサにキスされた額を手で撫でながら考える。 エリナの困った顔を愛しそうに見つめるアリサの胸は高鳴っていた。 〔可愛い…かわいぃー! 人前出したくないなぁ…。あー。顔綺麗だし…睫毛長っ…。側に置いて置きたい…。〕 たくさん考え事をしていたせいで、目はエリナに釘づけのままアリサはぼんやりと立っていた。 「………さん」 「アリサさん!」 ハッと意識を取り戻し、少々ムラムラした顔でエリナを見てしまう。 「顔…エロいです…」 エリナの事を妄想していたとはさすがに言い辛く、笑ってごまかした。 『へへ♪……えー…と、とりあえず挨拶して回らなきゃ♪お披露目だよ』 控え室を出ると控えめなBGMとは対照的に盛り上がりを見せる席。ホステスと二人きりで話す席などが見られる。 アリサは控え室から見渡せる席では無く、奥にチラリと見える個室に、エリナの手を引いていった。 奥には[黒][赤][青]の三つの扉があり、そのうちの黒の扉をゆっくりとノックする。 カチリとロックの外れる音がすると、エリナを部屋に引き入れた。 半円を描くような大きなソファには派手な感じの美人と、その周りには四人のホステスがはべらされていた。 一瞬ひるんだエリナとは違い、アリサは媚びた顔などみじんも出さずに客に接する。    『綾、新しく入った子♪』綾と呼ばれた客と、ホステス達に観察されるように見られるエリナ。 客とホステスを交互に見るエリナ。 (女?あれ…。女だけでもいいトコあるよね…でも…変な雰囲気…) エリナの困惑した顔を見たい衝動を抑え、淡々とアリサは行動する。 『綾と話したい気分だから…。いいかな』 アリサがそう言うと、他のホステス達はアリサの願いを聞くことが当然と言うように素早く部屋の外に出ていった。 扉が閉まったのを確認し、アリサはソファにもたれかかる綾に近づいた。 綾は一呼吸置くかのように手に持っているグラスを傾け、中のシャンパンを飲み干す。          じっと隣で綾を見つめるアリサ。 綾の瞳は扉の前で動けずにいるエリナに向けられていた。 『………アリサのツボね』苦笑いを浮かべてボトルからグラスへと酒を注ぐ。 その言葉を聞いたアリサの顔は、ふっと笑みを浮かべた。 『当たり、顔綺麗で性格可愛くて、仔猫みたいなの♪』 アリサに『おいでA』と手招きをされてエリナは不安そうにアリサの側に行く。 横にならんだ途端にアリサの手に包まれ、膝の上で抱っこされた。 『アリサ甘やかしすぎ↓あたしの気持ち知ってるくせに…。』 さっきまでのホステス達と一緒にいた風格は無くなり、アリサの前では甘えた声にる綾。 『まぁまぁ♪あたしに会いたかったら通い続けてよね♪チュウのご褒美あげるから♪』 (チュウ?何で女の人がチュウしてもらいにアリサさんに会いにくるの?) アリサの腕の中であやされながらもエリナは考える事が増えていく一方だった。
細いアリサの膝のうえは見た目より骨張っていなく居心地がよかった。 アリサには見えづらい綾の嫉妬した顔を除いては。 ヤケ酒のようにどんどんお酒を飲み込んでいく綾。 エリナにべったりのアリサは、つんつんと背中を押し、初仕事だよ♪と耳打ちをする。 あやされている間に自分の立場を忘れていたエリナは、とっさにボトルに手を掛ける。 「お酒お注ぎします…」 綾の動きが止まる。不愉快そうにだが、アリサの手前仕方なさそうにグラスを差し出す。 (やだやだやだぁ…めっちゃ嫌われてるんだけど…) お客の前ではエリナはプロになりきる。 不安な気持ちを抑えて柔らかな笑顔を綾に向けた。 その笑顔に綾は一瞬ひるんだが、しかしまた不愉快そうに脚を組み、グラスを傾けた。 『まぁ、ただ若いだけが売りの女じゃないわね』   「ありがとうございます」『よくできまちたぁ♪』 少し頭を下げたエリナをすぐにアリサは膝のうえに戻す。 綾にジロっと睨まれる視線が痛い。エリナは苦笑いを綾に向ける。 『エリナは可愛いねぇ♪』能天気に自分を抱き締めて触り続けるアリサの腕に思わず手を掛け立ちあがった。     「なんですか。可愛がってくれるのは嬉しいし、アリサさんの事は嫌いじゃないですけど、お客さんの前でくらい仕事して下さい!」 強気なエリナの面が一気に吹き出した。 元々おとなしい性格では無く、かつ真面目な性格のため仕事中もべたつくアリサの態度には我慢ならなかった。     黙ってエリナを見つめるアリサ。しかしすぐにアリサに笑顔が戻る。 『エリナ、おいで♪』 笑ってるアリサを睨む。  「嫌です」 ふいっと顔を反らして扉に向かう。
後一歩で扉に手を掛けられる。その絶妙なタイミングでエリナは体を扉の前で固定された。 アリサの白い腕に挟まれ、その腕はピッタリと扉に手を付いていた。 「出ますから…手を退けて下さい」 くるりと身体を返しアリサを見る。 その顔は自信たっぷりと言わんばかりの顔でエリナにそっと口付けをした。 「っ………」 キスをされながら、スゥ…と指先で首から胸にかけてなぞられる。 開いた胸元の服にその指を引っ掛けてアリサはいたずらっぽく笑い、唇を首筋に這わせる。 「…ん……っ……」 綾の視線が気になる。嫉妬に満ちたその顔を、エリナは高揚した顔で見ていた。 『綺麗…。エリナの身体全部…ここで舐めたい…』  ぞくっとする程に耳元で甘く囁かれる。 アリサはクスっと笑い身体を離した。 『エリナ…おいで』 再び言われた言葉に逆らう気はおきなかった。 指先を軽く引かれ、今度はちゃんとソファに座る。  アリサがソファの中央に座る異様な光景。 綾はやっと戻ってきてくれたアリサの腕に擦り寄っていた。 『アリサの意地悪…。私の事好きじゃないならこの部屋に来なきゃいいのに…』 今にも泣きだしそうな顔で綾は訴える。 『嫌いならわざわざ来るわけないじゃん。バカだね』 チュッと頬にキスをして頭を撫でる。綾の泣きそうな顔は安心したような顔に変わった。 『その子みたいなキスはしてくれないの?』 しゅんとした瞳。アリサの腕をきゅっと掴んでいる。 『仕方ないなぁ♪綾のヤキモチやき♪』 チュ…チュ…ピチャピチャ…チュパ…チュ… 綾の腕がアリサの首に絡まる。アリサは綾の服のなかに手を入れて胸をまさぐった。 互いの唇は離れ、アリサは首筋をペロペロと舐める。 『ん…んぅ…はぁ…アリサ…あ…ぁん…』 二人の姿を見て固まるエリナがいる事を忘れ、綾は歓喜の声を上げ続ける。 ころころと指先で乳首を弄ばれ、その度に綾からは甘い吐息が漏れた。 『アリサ…胸舐めて…ペロペロして…』 自分で服を捲くし上げ、脚を開き、綾はアリサに淫らな格好でお願いをする。 しかしアリサは優しい笑顔だけを向けて綾から唇を離した。 『やだ。綾の事、そこまで好きじゃない♪』 (ひ…ヒドイ…アリサさん言いすぎだよ…) 思わず綾を心配して目を向けると、綾は悲しそうな顔をしていたが、当たり前だと言うように理解した顔をしていた。 綾の服を直してあげ、アリサは席を立った。 『また来なよ♪』 綾はその言葉で笑顔になった。まるで…ホストにはまって男に言いなりになった女の様だった。 「アリサさん…。」 『エリナ、行くよ。』 ぐっと手首を掴まれて部屋の外に出された。
先程のアリサの態度にエリナは我慢ならなかった。 同じ女をあんな風に扱うなんて。という怒りが込み上げていた。 しかしその怒りはすぐに別の疑問により掻き消されていた。          (え?あれ……?) 目の前の光景に目を疑った。各テーブルに男の姿が無い。いるのは全て女性で、なかには男とは違う雰囲気のスーツ姿や男装した女性ばかりだった。 「アリサさん…ここ…もしかしてビアンの人達が来る…」 不安気な顔でアリサに質問する。エリナとは対照的にアリサは笑顔で笑っていた。 「やっと分かった?ここはビアンの人達しか来ないよ♪興味本位の客は見た目で分かるし、そんなのはお断わりなんだ♪」 エリナは苦笑いをするしかなかった。 それを見たアリサに急に不安気な表情が浮かんだ。 『エリナは…私が女だったら好きになってはくれない?』 困った顔で周りのテーブルに目をやるエリナ。 今にも泣きだしそうな顔のアリサを直視できなかった。 『ここ…辞めちゃうの?』 潤んだ瞳でエリナを見つめる。 (可愛い………。綾さんの時と態度違いすぎ…。好きか…分からないけど…アリサさんにそんな綺麗な顔で言われたら…) エリナは結論を出さずにアリサにキスをしていた。 照れた顔を見られるのが嫌で、すぐに唇を離した。 泣きだしそうだったアリサには笑顔が戻った。 『えへへ♪えへ♪エリナ、今のキス…。どういう意味?』 アリサに背を向けるエリナを後ろから抱き締める。 耳を赤くしたエリナは無言で照れ臭そうにアリサの腕からのがれようと身体をよじらせる。 『えへへー♪離さないもーん♪チュッ♪チュッ♪』 「やーめーてくださいーアリサさん、離して。」 テーブルにいる人達が羨むようなくらい二人は楽しそうにじゃれていた。
二人の楽しそうな雰囲気は、扉が閉まる大きな音と共にピタリと止まった。 綾が部屋から出てきたのだ。泣いたのか、すこし目蓋が赤い。 『綾、扉は静かに閉めなって言ったじゃん。』 綾の状態を知っているはずなのに、アリサは優しい言葉など掛けなかった。 むしろ言い付けを守らなかった事に対して怒っていた 俯いた綾は、ごめんなさい。と弱々しく謝ると、アリサの前を足早に通り過ぎようとした。 『綾!』 その声に綾の身体はビクッと動きを止め、その場に立ち止まる。あまりに透る大きな声に、エリナはもちろん、店にいた客達が一斉にアリサを見る。 『私に…バイバイのチュウ無しで帰るつもり?♪』 あんなに大きな声をだした後の甘い声。 飴と鞭を使いこなすアリサを、綾は愛していた。 どんなにヒドイ事を言われても必ず後で優しくしてくれるアリサ。 綾はアリサに駆け寄って抱きついた。 『また来るから、アリサに会いに…』 『ん…綾の好きにしていいよ。ぢゃあ、またね』 チュッとキスをして笑顔で綾を見送った。 (アリサさんって…人の扱いうまいのかな…) 綾の姿が見えなくなると、エリナはアリサを避けるように控え室に足早に向かった。
エリナは静かに扉を閉め、外から聞こえる客達の声をぼんやりときいていた。  ほどなくして再び扉が開いた。ソファに横たわるエリナの側にアリサが座る。 『さっきと態度違うよ』 拗ねたようにエリナがいるソファに肘を付く。 「アリサさんもね」 投げ遣りにその言葉を吐くと、エリナは身体を起こしてアリサを見つめる。 少し考えたような仕草をして、アリサは自分の目線より高い位置にいるエリナを見上げる。 『もしかして綾の事?』 はぁ…とため息をついてエリナは部屋から出ようとする。 『待って…エリナ…待ってよ…』 (また泣きそうな声…。) 自分のせいで人が泣く事を嫌がるエリナは、仕方なくアリサに目を向けた。 アリサは置いていかれた子供のように悲しそうな顔をしていた。 『綾の事で怒ってるんだったら…ごめ…ん…。もぅしないから…ごめん…』 ぽろぽろと綺麗な涙がアリサの服に染みを作る。 (なんで…そんなに…) エリナの胸がキュンキュンと締め付けられる。 「別に…今日入ったばっかの新人に謝る事無いじゃないですか。」 気持ちとは裏腹にあまり優しく接することが出来ないエリナは、近くにあったティッシュを2、3枚手に取りアリサに近寄る。 「上から押さえるんで、顔上げて下さい…」 『やだ…化粧くずれ…てる顔…ヒック…エリナに…ヒック…見られたくない…もん』 (あー…なんなのこの人…何でこんなに可愛いの…) もう少しで抱き締めたくなる衝動を押さえてエリナは淡々と言葉を続ける。 「アリサさん仕事あるんだし、指名呼ばれてるんですよ。早く行かないと」 『やだぁ…エリナがいてくれないと行きたくない…』 「わがまま…。」 そう言うと、クイっとアリサの顎を上げる。 「綺麗な顔してるよ」 ぽんぽんと涙をティッシュで押さえていく。 『変な…顔じゃ…ない?』 「大丈夫です」 右、左と、順番に拭き取る 『エリナの…前に出れる…顔してる?』 「余裕で出れます…」 ファンデを取出し、うっすらと残る涙の跡を綺麗に消した。 「うん…。綺麗…」 ファンデをしまい、アリサを立ち上がらせる。 『エリナ来てよ…。』 「アリサさんが指名されたんですよ」 『やだ…。エリナも来てくれなきゃ行かない』 扉の前で指をもじもじさせながらアリサはホールに出ていかない。 「…分かりました。」 その言葉を聞いたとたん、いつものアリサの笑顔が溢れた。 『やった♪どっちにしてもお披露目しなきゃだしね♪早く行こっ♪』 「態度違いすぎです、まったく」 エリナにも笑顔が溢れた。
アリサは全ての客に対して全く媚びていなかった。 タメ口でも愛敬があり、他のホステスより群を抜いて綺麗だったせいもある。 『新しく入った子♪エリナです、可愛がってあげてね♪』 自分のお気に入りだと周りに知らせるように、エリナを大事そうにエスコートしながら紹介していく。 一通りテーブルを廻ると、アリサは再び指名の席へと足を運ぶ。もちろん、エリナをヘルプにつけて。 『摩弥、さっき紹介したエリナ付けるよ』 『別にいいよ、綺麗な子好きだし』 摩弥は水商売の帰りらしく、とても疲れた様子でアリサの肩に頭をあずけていた。 『アリサに会うと幸せになれる…』 摩弥はため息を付いた後、バッグから煙草を取り出した。 カチッ とエリナが反射的に火を点ける。 『はは♪久々に火、つけてもらっちゃった』 摩弥に笑顔が浮かぶ。 「…ダメなんですか?」 きょとんとしたエリナを少し冷たい腕が包んだ。 『かぁーわいぃ♪さすが新人だね♪』 摩弥にすりすりと頬を擦り寄せられる。       アリサも頬摺りしたいくらいにエリナにときめいていた。 〔可愛い…あーもぉ!だから人前出したくないのに!エリナにチュウしたい!〕 「アリサさん、顔、エロいです…」 また同じ注意をされ、アリサは少し顔を赤らめた。 (あ…照れてる…。) 摩弥の腕のなかでアリサを見る。 摩弥の腕からやっと解放されると、グラスが空になりかけていた。 なんとなく継ぎ足すと、また二人から笑いが出る。 『あははは♪してくれると思ったんだぁ♪』 『摩弥も?私も思ってたとこ♪あははは♪』 何を笑われているのか分からず、エリナは不満気に二人を見る。 『あはは♪あー…ダメ。我慢出来ない♪エリナ、こっちおいで♪』 ぷいっとアリサから顔をそらし、摩弥の影にかくれる。 ふっとアリサに笑顔を向けると、摩弥はエリナの頬に指先を当てる。 『エリナちゃん♪アリサの所なんか行きたくないよねー♪あたしの所にきなさいねー♪』 きゅっと摩弥のドレスを掴み、小さく頷くエリナ。 『えー!?何で摩弥なのー?ちょっとbPで綺麗だからって摩弥に行かなくてもいいじゃん』 『綺麗で優しいからエリナは来るんですー♪オッサン相手に仕事してきた甲斐があるねー♪』 (摩弥さんbPだったんだ…。楽しそうな人だし綺麗だから当たり前だよね…) 急に上下関係の気持ちか浮かび、掴んでいたドレスを離して摩弥から距離を取る。 服の重みが無くなり、ふとエリナの方を見る。 『え?何その距離?!』 微妙な距離を取られていた事に多少ショックを受けた摩弥。 『やった♪エリナは変に真面目だからねー♪上下関係の距離を取っただけですよねー♪』 むっとした顔でアリサを見る。しばらく考えていた摩弥の口が突然開いた。
『つか、アリサもbPじゃん。エリナちゃん♪あいつもbPだよ♪同じ店のbPと、他店のbPだったらー、どっちが気楽かな?♪』 (え…。私そのbPさんに物凄くなれなれしくしてたんですけど…。ヤバくないですか?) ぎりぎりになるまで二人と距離を取るエリナ。二人ともエリナに対して好意剥き出しの分、どちらにもいけないでいた。 『ほら困っちゃったじゃん↓わざわざソレ言わなかったのに↓』 デコピンの要領で摩弥の頭を何度もぺしぺしと叩くアリサ。 『痛っ、やめてよぉ。大事な身体に傷付けないで♪』 『うるさい、エリナ困らせたお仕置きだもん。』 『あはは♪ごめんね♪あ、アリサあんなんだけどよろしく♪』 「はぁ…。こちらこそ。」 困惑した表情を浮かべ、摩弥に頭を下げた。 『もぉ!帰るなら早く行きなよ!』 照れ臭そうに摩弥を席から立たせる。 『分かったって、アリサもたまにはお母さん所来なよ♪』 (へ!?摩弥さんとアリサさんって…姉妹??) 『分かったよ!分かった。早く行って』 摩弥は会計をせずにそのまま扉を開けて出ていった。 がっくりとうなだれるアリサの姿が妙に可愛く見える。 「お姉さんだったんですね…。」 むーっと摩弥と同じような顔でふてくされるアリサ。そのままソファに身体を倒してエリナの膝に頭を乗せた。 「…何してるんです。」 『………膝枕?』 「膝枕?じゃなくて…。こんな所で寝ないで下さい」 『…………赤に行こう』 急に頭を上げてエリナの手を引っ張っていく。 行き先が分からずに手を引かれているため、エリナの体はふらふらと右往左往しながらアリサについていった。 『入って』 エリナの了解を得る前にアリサは背中を押して強引に部屋の中に入れる。 エリナの目は、ラブホさながらの設備が整った部屋が映し出されていた。 「なんなんですかコレ?」 振り向くと同時にアリサの腕に包まれ、そのままベッドに押し倒された。
ふわっとしたアリサの香水の匂いが鼻をくすぐる。 倒れたままエリナに抱きついて動かないアリサ。 (どうしたんだろ…。アリサさん、何か辛そう…) 原因が分からず、アリサに何もしてやる事が出来ないエリナは、黙ってアリサの頭を撫でてやった。 ピクっと肩を揺らしたアリサだが、安心したようにエリナの胸に顔をうずめた。 きゅん…とエリナの心が高鳴る。 アリサの小さな頭を包み込み、自分の頬を擦り寄せた 「アリサさん辛いなら控え室…行った方がいいですよ。薬もあるし…」 体を起こそうと身をよじらせる。しかしアリサの腕が上からエリナを押さえ付けた。 「アリサさん…」 『私はエリナと二人でいたいの!』 悲痛な声に聞こえた。思わず体を起こす力を弱めてしまう。 「……私は仕事あるんで」 アリサへの気持ちがはっきりしていない。だからと言ってこんな言い方で突き放してしまう自分にエリナは嫌気がさした。      『ごめ……、そうだよね…こんな所入れてごめん…』 涙の交じった声がエリナの気持ちを揺るがす。 アリサの力は緩み、スルリと部屋から出ていったエリナを追い掛けては行かなかった。         
店内は静けさを取り戻し、店仕舞いの支度をしていた 赤い扉の中で一人泣いているアリサが気に掛かる。 「…ごめん…アリサさん」 控え室に戻ると、たくさんのホステス達が疲れた体を休ませていた。 「お疲れさまでした。」 ペコリと挨拶をして部屋に入る。 『お疲れー♪』 『そこのジュース飲めばいいからねー』 『煙草吸う?』 優しいホステス達の態度にエリナはいくらか救われた気がした。 エリナはヒールを脱ぎ捨て、床に敷かれた絨毯に正座の足を崩した形でちょこんと座った。 エリナのドレスから出された白く透き通る足がいやらしく光に照らしだされる。 それまで口を開いていたホステス達の視線はエリナに釘づけになった。 こくっと貰ったジュースに口を付ける。アリサの事を考えていると、とても片手でグラスを持つことが出来なかった。 両手でグラスを持つエリナの弱々しく、かつ可愛らしい姿は、そこにいる全員の胸をときめかせた。
エリナの座る絨毯へと一斉にみんなが詰め寄ろうとする。 その時、ダンッという大きな音と共にテーブルにグラスが叩き置かれた。 『優奈さん……』 他のホステスが名前を呼ぶ 静まりかえる室内。 エリナの耳にもその音と異様な雰囲気が伝わった。 (何?何?え?静かすぎなんですけど…) 不安気にきょろきょろと周りを見るエリナ。 カッとヒールの音が鳴り、長い脚がエリナの目の前で立ち止まった。 (ゆう…な…さん?) 目線を合わせるため、優奈はかがみ、エリナに笑顔を向けてから立ち上がる。 『みんなよく聞いて!エリナに手出したら分かってるね?』 bPアリサのお気に入りという事は先程のお披露目で十分理解していた。 『やっとアリサが忘れかけてんだ…。恋愛感情は出さないで欲しい』 はい、と口々に返事が聞こえる。 エリナはわけが分からず、ただ目の前の状況を眺めていた。 一通り話をした優奈が再びエリナの方に振り返り、かがみこみながら笑顔になる。 『へへ♪エリナは普通にしてればいいから♪』 優しく頭を撫でられる。 優奈は首をホステス達に向けて、『みんなもエリナ可愛がってあげてね、私が言ったのは、避けたり、スキンシップ無しって意味じゃないから』 それを聞いて安心したように先程とは違う、明るい返事が返ってくる。 誰もがエリナに近づきたかった。 アリサは慕われていて人気もある。恋人にしたら攻めをしてほしい美人だ。 しかしエリナはいじめたい。可愛がりたいという雰囲気を漂わせる受け側の美人だった。         優奈の話が一段落すると、控えめにエリナに話し掛けるホステス達。 エリナは全員に対して可愛らしい笑顔で会話をする。 長い夜は終わった。
部屋のなかの蒸し暑さでエリナは目覚めた。 怠い身体を起こし、クーラーのリモコンスイッチを入れる。 ふぅっとベッドに身体をあずける。 心地いい冷たい風がエリナの火照った皮膚を冷やしていく。 (アリサさん…) 考える事をやめた。 エリナは冷蔵庫からお茶を取出し、ペットボトルに直接口を付けて飲む。 「っ……はぁ…」 口に付いた雫を拭き取り、エリナは母が作ったご飯を食べに一階に下りていく。 小さな紙切れが食事の横に置かれていた。 《えりちゃんへ。 お母さんはしばらく親戚の家に行ってきます。お父さんをよろしくね》 紙切れの下にあった封筒にはお金が入っていた。 「勝手な事言ってんなよ」 冷めた目でメモを捨て、封筒をポケットにしまう。 さっと食事を済ませ、今日は車で店に行く為、ゆっくりと支度をして外に出た。
昨日と同じように地下に下り、赤い扉をあけて中に入る。まだ誰もいない店内を抜けて、奥の控え室へと迎う。 「おはようございます」 挨拶をして中に入ると、そこにはソファに腰掛けたアリサがいた。 『おはよぅ…』 明らかに元気がなかった。アリサの横を通り、与えられたロッカーに荷物を入れる。 中には今日の衣裳が用意されていた。 着ていた服を脱いで衣裳に着替えると、丈の短い淡いピンクのドレスだった。 『似合うじゃん♪』 後ろからアリサの声が聞こえる。 「ありがとうございます」 着替えを済ませ、まだ時間がある為、エリナはアリサとなるべく離れるように反対側のソファの端に座る。 気まずい空気が流れる。 しばらくお互いが黙っていると、ちらほらと他のホステス達が出勤してき、途端に控え室は賑やかになった。 『アリサさんおはようございます』 『エリナおはよぉ♪』 互いに声をかけられているのに、互いに相手の事が気に掛かる。 話し掛けて欲しくない。 誰とも話さないで欲しい。挨拶ですら声を出さないで欲しい。 二人の気持ちは通じあっていた。 腕を組み、エリナに視線をやるアリサ。 気まずい関係を直したいと考えていた。 〔赤の部屋空いてるよね…話す場所ってソコくらいしかないし…。また誘ったら嫌われるかな…。〕 (アリサさん何か悩んでる…仲直りしたいなぁ…。あー。クルクル悩んだ顔犬みたいで可愛いんだよね) 〔エリナに見られてる?うー…可愛い。どうしたらいいかなぁ…。誘う?てか強引にまた…〕 (目、合いすぎだなぁ。お互い目ぇ反らさないから当たり前か。昨日の部屋誘おうかなぁ…。めんどくさ!早くアリサさんと話したいし……。よし!) エリナはアリサに向かって軽く手招きをした。 〔え、あれ?エリナが私に手招きしちる!?何♪すぐ行っちゃうよ♪〕 バッと立ち上がりエリナの側に駆け寄るアリサ。 (ほんと…犬みたい…) 微笑みたい気持ちになる。 「アリサさん、ちょっと来てください」
控え室から出る二人。 アリサの瞳は期待と不安に満ちて無邪気な子供のようだった。 そんなアリサを前に、二人が気まずくなった赤の部屋に誘う勇気が無くなりかける。 (あー…。あんな所に誘うのも悪いかな…。嫌がるかな…。) 自分で連れ出した事に後悔しはじめるエリナ。 〔……エリナ困った顔してる。しかもめっちゃ言い辛そうな感じ…。〕 「えー…っと、」 〔やだやだ!もしかして辞めちゃうとか?言われる前に連れてかないと!〕 アリサは思ったと同時に、ほぼ叫んでいるなと変わらないくらい大きな声で口に出した。 『「赤の部赤の部屋に来て!……」』 二人の声が重なって、思わず笑みがこぼれる。 「あはは♪アリサさん必死すぎですよ」 『エリナ辞めちゃうかもとか思って叫んだだけだもん!笑わないで!』 顔を真っ赤にして照れ隠しで怒っているアリサ。 そんなアリサを、エリナは好きだと確信した。 赤の部屋に行ったらアリサに伝えようと決めた瞬間だった。
店内の扉が開け閉めを繰り返している頃、アリサ達は静かな部屋で照れ臭そうに見つめ合っていた。 『あ、なんか飲む?』 「すいません、いただきます…。」 (緊張する…あ、背中開きすぎ…。背骨浮き出てる…細いなぁ。あ、あ、こっち向いた…) 振り返ったアリサから素早く目を逸らす。 にこにこと笑いながらアリサがグラスを二つ持ちながら近づいてくる。 『ね、ね♪今見てたでしょ?背中かな?♪』 エリナの目の前で身体を反転させ、背中を見せる。 「見てません、てか見せないで下さい。」 (近い近い近い!触りたくなるじゃん!バカ!早くこっち向いて!) 『えー?本当に見てなかった?』 アリサが身体をエリナの方に向け、両手をソファにつけて前かがみになる。 「見るわけ無いです。」 (ヤバい…胸見えそう…アリサさんブラ付けてなかったし…) 『エリナはいつもクールだよね〜♪可愛い時の方が多いけど♪』 そう言うとアリサも背もたれに背中をつけた。 (……なんて言おうかなぁ。好きです?好き?流されたら嫌だなぁ…。好きかも…ぢゃ、偉そうかな…。) 隣でグラスを口に付けながら考え事をしているエリナにありさが気付く。 〔ぷっ…子猫みたい♪エリナはいつも考え事の時、そんな可愛い顔してんだね…もぅ…独り占めしたいよ〕 ふいにエリナがアリサを見る。真剣な顔。しかし、とても優しい顔で。          「アリサさん…」 高鳴る心臓が耳のなかにドンドンと響き渡る。 味わったことの無い緊張感。上手く言える自信が薄らいでいく。 『なぁに?♪』 いつもの口調でありながら、アリサも緊張していた。エリナがあんなにも悩んで口に出した話を聞きたかった。 組んでいた脚を直し、身体をエリナに向ける。
五分程エリナは、顔を上げたり俯いたりを繰り返していた。 そしてグラスに余っていた酒を一気に飲み込み、消えいるような言った。   「私は…ビアンじゃないし、他の女の人にときめいたり…触れたいとか…お、…思えない」 アリサは黙ってエリナの瞳を見つめている。 「で、でも……でも…。アリサさんには触りたい、もっと知りたいと思うんです…私は…アリサさんの事を……好きになりました」 両手を膝の上で握り締める。初めて自分から告白したエリナは、相手からの返事を待つ時間がこんなにも切なく、苦しい事を初めて味わった。 小さく震える肩に、アリサは暖かい腕を絡ませる。 自分の頭をエリナの小さな頭に乗せ、包むように抱き締めた。 『私は、初めて見たときからエリナに惚れてた♪エリナの告白の返事は、私でよければ付き合ってください、だよ♪』 アリサの優しい瞳を見上げ、エリナは安心したのか、たくさんの涙を流した。 「よかった…ヒック…本当に…本当に好きなの…ウェ…アリサ…さんに…冷たくしたし…優しくできなかったから…ヒッ…」 『うん♪エリナからそう言ってくれるなんて思わなかった♪』 「アリ…サ…ヒック…さんが…好きです…」 『泣かないでエリナ…大好きだよ…泣かないで。』 あやすように頭を撫でてやるアリサ。バッグからハンカチを取出し、エリナの涙を拭いてやる。 子供のようにアリサに顔に流れる涙を拭いてもらうエリナ。 〔可愛い…エリナは本当、可愛い…。守ってあげなきゃいけない感じ…。〕 涙を拭いてもらい恥ずかしくなったのか、エリナはハンカチを顔にあてたままアリサを見る。 『エリナ、顔のハンカチ返して♪』 〔照れてる♪いじめたくなっちゃうよぉ♪〕 「や、です」       ぷいっとアリサに背中を見せる。 『それ使うんだ。』 仕事に使う物だから、と、返すか返さないか少し考えた。 「私の使ってください」 〔今悩んだ?エリナ♪返す仕草見せたけどやめた?あー♪かぁわいいー♪〕 我慢出来なくなり、アリサは背中を見せたままのエリナを後ろから抱き締めた。 『かぁわいい♪可愛い♪ちゅーしたい♪』 不貞腐れるエリナの顔中にアリサはキスをする。 「やめっ…アリサさん。や…やーめーて!!」 ぐいぐいとアリサの頭を手で押し退ける。 『ふふふ。やめにゃいもーん♪』 きゃあきゃあとじゃれあっていると、突然奈保が扉を開けた。 『そろそろ止めてもらえるか?アリサ』 母親が言い付けるようにほほ笑み、アリサとエリナに手招きをする。 また、長い夜が始まった。
あでやかな女達が各テーブルに華を咲かせる。 志保が二人をある席へと連れていく。 『よく来てくれました、若西様。ご指名の二人連れてきましたんで、どうぞごゆっくり…』 ふかぶかと挨拶をして志保は奥へと消えていった。 若西と呼ばれた女性は二人を見上げ、ソファに座るよう指示をだす。 『アリサがここのbP。エリナは新人だけど…すぐにアリサに並ぶ人気を得るわね…』 訳が分からないまま二人は黙って座っていた。 エリナの不安な顔を見て、アリサが若西に質問をする。 『若西さん、初めて見るけど…。綾と繋がりあるね』 「綾さんと…?」 驚いたように笑う若西。 タバコに火を点けてアリサに顔を近付ける。 『はは、見る目が違うわね…。』 そう言うと、若西はアリサに何かを囁いた。 アリサの表情に変化は無かったが、エリナはただならぬ雰囲気に気付いた。 『それだけ伝えたかった。あと、次来るときは沙織って呼んでよね。アリサが他の客に接するみたいに』 茫然と二人の様子を見ていたエリナ。 沙織はエリナにバイバイっと手を振り、アリサには妖しく微笑んで帰っていった。
沙織が帰ったあとのアリサの顔は、明らかにほっとしていた。 なだれこむように沙織がいた席へと倒れ、側にあったグラスに入った酒を飲み干した。 苦痛な顔をしているアリサにエリナが駆け寄る。 「アリサさん、大丈夫ですか?…」 倒れているアリサの口についた酒を拭く。 唇からおしぼりを離そうとした時、急にアリサがエリナの手を握った。 「どうしたんです…。」 心配になり、アリサの顔を覗き込む。 アリサはとても切なそうにエリナを見つめていた。 瞬きすら出来ない程のアリサの綺麗な顔に引き寄せられる。 一瞬二人の唇は触れ合い、離れてはまた求めた。 ついばむようにキスを繰り返す。 アリサの腕はエリナを引き寄せ、エリナはアリサの首に腕を絡める。 互いの吐息が聞こえる距離で、周りの目を気にする事無く深いキスをした。   やがて唇は離れ、エリナが優しくアリサの髪を撫でる 「アリサさん……」 『…ん……』 「離さないでね……」 『離さないよ…。』    アリサの顔を覗き込んで、エリナは本当に?と不安気な顔をする。 『ふふ♪大丈夫、タメ口きいたエリナに誓って♪』 「あっ!ごめんなさい!」 ふにふにとエリナの柔らかい頬を掴みながら微笑むアリサ。 『エリナならタメ口の方がいい♪付き合ってるんだからさ♪』 そう言うと頬を摘んでいた手はエリナの頭を撫でた。 「悪いですよ…」 『悪くない♪』 寝たまま肘をついてエリナを見つめるアリサ。 「先輩だし、優奈さん以外の他の人もタメ口なんかきいてないですから」 『私がいいんだからいいの♪いじめられたら私がそいついじめるから♪』 「やっ!まずいですから!止めてください」 手をバタバタと振り、アリサを止める仕草をする。 〔あは♪焦ってる、かぁわいいなぁ〜♪みんなエリナ大好きだからいじめるわけないのに♪〕 『もぉ〜♪可愛いでちゅね〜♪』 目の前にいるエリナに思わず抱きついてキスをする。 「あ!もぅ!やめてくださいよアリサさん!」 アリサを離そうとするが、いつもより強い力で締め付けられている事に気が付き、手を緩めた。 (アリサさん?)     アリサの肩は少し震えていた。 『離さないで…』 「……え?」 『離さないでよ……』 泣きそうな声。怯えた子供のように守りたくなる声。 エリナはアリサをキツク抱き締めた。 「大丈夫だよ…離さないよ…」
閉店になっても一晩中エリナはアリサについていた。やがて朝になり、アリサはいくらか気分がよくなり帰っていった。 「ただいま…」 車のキーを玄関に置き、エリナは自室へと向かう。 パタンっと静かに扉をしめてベッドに寝転がる。 (アリサさん…何を言われたの?……私には言えないこと?) [ギシ…ギシ…] エリナは木の床が軋む音を聞き起き上がる。 ぎゅっと枕を握り締め、扉を見つめた。 『エリナ!いるんだろ!あぁ!?』 乱暴に開かれた扉の外には、顔を真っ赤にした父親が立っていた。 目は正気ではなく、父親の手にはベルトが握られていた。 ドクンと心臓が鳴り、エリナの瞳は悲しそうに、しかし全て受け入れているかのように父親を見ていた。 『なんなんだその目は!俺が悪いのか!?』 肩を押され、エリナはベッドに倒れこむ。 『お前まで俺が邪魔なのか!?』 容赦なくエリナの背中にベルトを叩きつける。 ただ父親は力任せにベルトを振り下ろした。 何度も何度も、エリナの背中や肩にはみみず腫れが出来、中には血を滲ませるものまでがあった。 動かなくなったエリナを見て、ようやく正気に戻ったのか、倒れているエリナを抱き起こす。 『あ…あ…ごめんな…ごめんな……俺は…もう…どうしたらいいのか……ごめんな…』 先程の怒り狂った父親の姿はなく、今はただ泣き崩れる小さな男になっていた。 エリナは力が入らない腕を上げ、笑顔で頭を撫でてやった。 「父さんは…悪くない。私がいるよ…。泣かないで…私がいる…」 エリナはそれだけ言うと気絶したように眠りについた。
夕方、痛む背中をさすり、隣で眠っている父親に毛布をかけて家を出た。 ロッカーの衣裳を確認して安心する。 ランジェリー風のキャミにタイトスカートだった。 多少肩は見えるが引っ掻き傷程度で背中程ではない。 ひどいみみず腫れはかろうじて見えなかった。 顔を合わせた全員に挨拶を済ませてエリナはアリサのヘルプについた。 『赤の間からエリナさん指名です』 一瞬、アリサの表情が凍った。 「すいません、アリサさん。行ってきます」 『あ…う、うん。いってらっしゃい♪』 ウェイターの声でエリナはアリサに一言交わして赤の間へと迎う。       アリサの表情が気に掛かったが、仕事中という事もあり考えないようにした。 トントンっと軽くノックをすると、カチリとロックが外れた。 「失礼します。」 中は薄暗い明かりで照らされており、真ん中のソファには女性が一人座っていた。 エリナは名刺を取り出してその人物に近づく。 「あ………」 見覚えがある綺麗な顔が目の前にあった。 『久しぶりね、エリナ。』 グラスを傾けてうっすらと微笑む綾。 「お久しぶりです…」 綾を前にし、エリナの身体は動かなかった。 (アリサさんの事好きなのに…私を呼ぶなんて…) クスっと笑い、綾はソファを軽く叩く。 『座って』 おずおずと綾の隣に腰を下ろすと、バシャッと水音と共に全身が濡れた。 腫れている背中に酒が凍みる激痛にエリナは歯を食い縛ってこらえる。 満足そうに綾はグラスをテーブルに置くと、エリナのキャミを引き契った。 ガリっと綾の爪が傷跡の上から引っ掻いた。 「っ………!!」     『変な傷が見えたから破ってみたけど…。何?エリナはMなのかな?』 エリナの瞳に涙が溜まる。 (アリサさん呼んだら…迷惑かけちゃう…私の問題だ…私が原因なんだ…) 『何?泣きそうね。ほら』 綾は爪をたてて引き裂いたキャミから見える背中を力一杯引っ掻いた。 エリナの瞳からは涙が流れる。 それを見た綾は楽しそうにボトルから直接酒を飲む。 『逃げないの?ここにいたらヒドイ事しかしないわよ?』 うとましそうに見ると、綾は脚を組みソファにもたれかかった。  「アリサさんや、店に迷惑はかけたくありません。あなたと私の問題なんだから…」 エリナの言葉を鼻で笑い、綾はエリナの首を掴んだ。 『あんたがいなければアリサはもっと私を見てくれたのに…!いきなり現われてアリサの心を奪うなんて許せない!』 ググッと力を強められ、エリナの器官が押しつぶされる。 『エリナ!!』 アリサが綾を突き飛ばし、倒れかかるエリナを抱き抱える。 冷たく綾を睨むと、綾は怯えてアリサに手を伸ばす。 アリサは綾の手に見向きもせず、軽蔑するようにエリナを抱いて部屋を出ていった。 一人残された部屋からは、綾の悲痛な叫び声が聞こえていた。
『どいて!どいてよ!』 アリサの涙まじりの叫び声がエリナの耳に届く。 ぼんやりと見える周りの客達は、エリナを見て驚いた顔で道を開けていく。 控え室の扉を開け、エリナをソファに横にさせる。 『アリサ!エリナどうしたの!?』 優奈が駆け寄るが、アリサは耳も貸さずに救急箱を必死に探している。 『どこ?無いよ…。優奈!優奈!どこにあるの!』 パニック状態になり、なかなか救急箱を見つけられないアリサを、優奈が落ち着かせる。 『落ち着いてアリサ!あたしが探すから!アリサはタオルでエリナの身体拭いてやりな!』 崩れるようにエリナに寄り添うアリサ。 『ごめんね…ごめんね…痛いよね…ごめん…』 たくさんの涙が頬を伝い、やがて涙は握られたエリナの手にも伝わりはじめた。 「ケホ……泣かないでください…っ……。大丈夫ですから…」 アリサを安心させる為、エリナは一生懸命に背中の痛みをこらえた。 『ヒッ…グシュ…エリナ…あたしのせいだ……』 「……?」 ぼんやりと泣いているアリサを見つめていると、優奈が救急箱を掴んで駆け寄ってきた。 『エリナ、痛むけど我慢してね…』 消毒液をたっぷりとしみ込ませたガーゼを背中に付けられる。 ヒリヒリとした痛みが走ったが、エリナは黙って耐えた。 手当てが済み、店においてあったバスローブを借りて上から羽織った。 優奈は仕事に戻り、控え室にはアリサとエリナの二人だけになる。 手当てが済み、安心したのか、アリサは座っているエリナの膝に頭を乗せて手を握った。 『よかった…間に合って』 「どうして…来てくれたんですか?」 エリナの問いに、顔を曇らせる。ぎゅっと握られた手に力が加わる。 『知ってたんだ…』 「え?……」 『綾がエリナにひどい事するって…』 アリサの顔はどんどん俯いていく。 『沙織は…綾を愛してる…。綾が望むことは必ず叶える…』 エリナの身体は固まった。綾が望むことは…… アリサと付き合うこと。 「……必ず?」 アリサがこくりと力なく頷く。エリナの背中には嫌な汗がにじみ出た。ズキズキと胸がえぐられているような痛みに顔が歪んでいく 「どうして…紗織さんがそんな事出来るんですか」 『沙織は…ここの地域を仕切ってるヤクザの跡取りなんだ…』 「……だからって何をするんです…」 『あいつが声をかければ私はもちろん、お姉ちゃんも働けなくなる!お金が無いとお母さんが手術出来ないの!』 涙をぽろぽろとこぼしながら、アリサは痛いくらい悲しい声で叫んでいた。 「手術……」 エリナの声で我に返り、アリサは背を向けて控え室から出ていった。
綾の願いを叶えるということ。それはアリサと綾が付き合うという事だ。 痛む身体を引きずるようにエリナは控え室の扉をそっとあける。 アリサの姿が見えた。 笑ってはいるが、その瞳は悲しい輝を放っていた。 赤の間にはまだ綾がいるのだろう。扉は閉められ、人が入っていると合図するためのプレートが下げられたままになっていた。 志保に今日は早退する事を伝え、エリナはアリサに気付かれぬよう静かに店を出ていった。 『赤の間!アリサさんご指名です!』 ビクッとアリサの身体が固まる。客が不思議そうにアリサの顔を覗き込む。 『あはは♪何?ちょっと行ってくるよ♪』 客に悟られぬように精一杯の笑顔を向ける。 アリサの笑顔を見た客は、嬉しそうに笑い、すぐ戻ってね、とアリサを送り出した。 真っ赤な扉が気分を重くする。 ノックを少しゆっくりとすると、鍵が開いた音と共に綾がアリサに抱きついた。 泣きじゃくる綾を部屋の中へと連れ込み、なだめるようにソファに座らせた。 『さっきはごめんなさい……ヒッ…エグ…も…もうしないから…もうしない…』 アリサのドレスが綾の涙で湿り気を帯びる。 胸元に綾がしがみついて震えていた。 アリサは黙って綾の頭を撫でてやる。綾に対する愛情からではなく、エリナを綾から守る為に…。母親を助ける為に…。 綾に優しくする。たとえ嘘の愛情からでも、それで大切な人は守られる。 アリサは、綾に身体を売ることを決めた。
泣きじゃくる綾を抱き締めた後、そっと顔を撫でた。 後ろに身体の支えとして置いていた片手を綾の肩に起き、そのまま綾をソファへと押し倒した。      『アリサ……?』 アリサは諦めたように微笑み、綾の首筋に舌を這わせた。 『…あ…んん……』 ぞくっとする程に絡められるアリサの舌の感触に綾からは歓喜の声があがる。  ぎゅっとアリサにしがみ付き、アリサもそれに答えるように綾を愛撫する。 綾の上着を強引に捲り上げ、一気に脱がせた。 『こんなに乳首立たせて…気持ち良くなりたい?』 細い指先で、固くなった乳首をくるくるとなぞる。 『んっ……あぁ…気持ち…よくなりたい…です…』 ピクンっと脚を上げ、アリサの身体が綾の股の間に入り込む。 右手で乳首を摘んだり、転がしたりを繰り返し、左手の親指をショーツの上からぐりぐりとあてがう。 『あ…ぁ…もっと押しつけて……乳首も…痛くして…アリサの歯で…』 顔を赤らめ、恥ずかしげもなくいやらしい言葉を口に出す。 『……こう?』 カリっと乳首を甘噛みし、綾のショーツを横にずらして指を一気に2本入れた。 『あぁ!……はぁっ…!あん……いぃ…』 グチュグチュと綾の蜜壼からはとめどない愛液が流れ出る。 『ほら…こんなに蜜が溢れてる…』 綾の目の前にたっぷりと絡まった愛液を見せると、綾は顔を赤くしてアリサの指から目を背ける。 『ダメだよ。ちゃんと見なさい。』 ぐいっと綾の顔を戻し、濡れた指を口に入れる。 『んんっ…ふぁ…っ…』 綾の舌に指を擦り付け、くちゅくちゅと出し入れを繰り返す。 『…こっちが淋しくなってきてるかな?』 冷めた顔で勢い良く綾の蜜壼へ指を入れた。 『んん…あぅ……ふ……んっ…』 口に入れた指を引き抜くと、アリサは綾の秘部を広げてクリを舐め回す。 『あっ…あっ…吸って…アリサの指で…もっと掻き回して…』 ピチャピチャとクリを貪り、指は休む事無く綾を攻め続けた。 綾の腰は上下にいやらしく動き、声はどんどん大きくなった。 『あ…いぃよぉ…イッちゃう…あっ…』 チュッ…グチュ…ピチャピチャ… 綾の腕に力が入り、アリサの頭を自分の秘部に押し当てる。 『あぁぁ!…イく!イっちゃう…あっ!…はぁ……あぁん…!!!』 ビクンと腰を揺らし、綾に絡まっていた腕の力が抜けていく。 アリサは口に付いた愛液をティッシュで拭いた。 綾はぐったりしていた身体を起こすと、背中を向けるアリサに抱きついた。 抱きついた綾の腕を優しく解き、アリサはスッと立ち上がりる。 『また呼んでよ♪綾が来たら嬉しい♪』 綾の顔は不安な顔から一気に明るくなった。 『絶対呼ぶ♪ぢゃあ見送りしてね♪』 『ぢゃあね』 綾の頬にキスをする。 『うん。またね♪』 綾は頬にではなく、アリサの唇にキスをする。 アリサは綾が階段を上がり見えなくなるまで茫然と立っていた。 アリサの頬には心とは反対に熱くなった涙が伝っていた。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■11871 / inTopicNo.46)  CLUB ANGEL's ]]]U ▲▼■ □投稿者/ A 一般♪(39回)-(2005/08/07(Sun) 23:17:09) 客や他のホステス達に見つからぬように、アリサは涙をハンカチで拭い、いつもの華やかな笑顔で店に戻っていった。 すぐに指名が入り、アリサはテーブルに付く。 そこには今のアリサには最も会いたくない人物が座っていた。 『沙織…』 不機嫌な顔で沙織の隣に座り、自分の酒を作る。 沙織はタバコに火を点けてアリサをじっと見ていた。 作った酒のグラスを傾けて、アリサは沙織を睨む。 『くくっ…睨まないでよ。アリサは物分かりいいね…さっそく綾を抱いてくれたの?』 ふっと煙をアリサに吹き掛けると、嫌そうな顔をしているアリサに自分の携帯を見せた。 その内容はアリサの顔を蒼白にさせた。震える手で携帯の画面を確認する。 [アリサとエッチできたよ。泣いたら優しくしてくれた。やっぱりアリサの事好きだよ。でもアリサはエリナの事が好きなんだ…。エリナが邪魔なの。] アリサから携帯を取り上げて、沙織はアリサの耳に舌を入れる。 『きゃあっ!!』 沙織の身体を突き飛ばし、耳を押さえる。 『可愛いね…。アリサからそんな声が聞けるなんて思わなかった。』 妖しい笑顔でアリサの胸元に指を沿わせる。 沙織を睨み付けて、自分の肌に這う沙織の指を振り払う。 沙織は楽しそうにアリサに近付き、携帯をちらつかせる。 『私、アリサの事好きになったみたい…。だから綾のお願いも聞く必要無いんだよね。』 え?っとアリサが沙織を見つめる。 アリサの表情に機嫌を良くしたのか、沙織はアリサの顔に近づいて見とれるようにため息を吐く。 『アリサが恐いのは誰?』 フッと耳元に息を吹き掛ける。 アリサは動くことが出来ず、沙織のする事をじっと見ていた。 『ふふ…。綾と手を切ってあげる。』 ぴくっとアリサの肩が揺れる。沙織はアリサに腕を絡めて唇を重ねた。 瞳を閉じ、アリサは沙織のキスに耐えた。      『本当に…。物分かりがいいのね。』 チュッと再度キスをする沙織。携帯を取出し電話をかける。 『あ、綾。これからは綾のお願い聞かないから。』 電話の向こうで綾の叫び声が聞こえる。 『綾より好きな子見つけたから。だからもう連絡しないし、綾もしないで』 そう言うと綾は携帯を閉じて酒の入ったグラスに投げ入れた。鞄に手を入れて300万の札束をアリサの目の前に置いた。 『月にそれだけあげるよ。あたしと付き合えばね。』 『あとは、今日の飲み代』 ぽんっと帯のかかった札束が一つ置かれた。 『こんなに飲んでないよ』 アリサが伝票を確かめる。 『いい。アリサへのチップだよ。いろいろした』 そう言うと、笑いながら沙織は席を立ち店を出ていった。           (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■11874 / inTopicNo.47)  Aさんへ ▲▼■ □投稿者/ 蓮 一般♪(12回)-(2005/08/08(Mon) 01:30:14) こんばんわ。毎回楽しみに読んでます。 うーん、切ない展開に心打たれちゃいました。 お水の花道、光あれば闇あり・・う〜ん事実は闇あればこそ光ありなのかな。 アリサとエリナにも早く光あれと祈りながら続き楽しみにしています。 頑張って下さい 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■11875 / inTopicNo.48)  CLUB ANGEL's]]]V ▲▼■ □投稿者/ A 一般♪(40回)-(2005/08/08(Mon) 01:53:32) アリサはテーブルに置かれていた札束を茫然と見つめていた。 〔これだけ月にくれれば…お母さんは助かる…。早くしないと危ないんだ…〕 アリサの頭にエリナの姿が浮かんだ。 大好きなエリナ。可愛く、綺麗で、とても弱く、強い。 『……っ……』 顔を両手で覆い、声にならない程アリサは涙を流した。 失いたくない想い。しかしその想いの為に失うものは大きかった。 『………私は…幸せになれないのかな…』 アリサの様子に、店内がきずき始めざわつきだした。 優奈が客に一言いい、アリサを抱き抱える。テーブルに置いてある札束を見て、アリサの様子の理由が理解できた。 優奈は控え室へと連れていくと、ソファに座らせ、アリサに冷たいお茶を出してやった。 『………ありがと…』 消え入る声でお茶に口をつける。 優奈はアリサの隣に座ると、優しく肩をさすった。 『アリサ…あんた、どうするの?』 テーブルから運んだ札束を取り出してアリサの目の前に置く。 『分かんない…。どうするのがいいのか…。分かんないよ…』 俯くアリサを心配するように優奈は見ていた。 『もらったらエリナとは別れなきゃいけないね…』 『………ぅん』 『もらわなかったら…。どうなるの?』 『働けなくなる…かな…』 小さな肩が震える。優奈はアリサを抱き締める。 姉のようにアリサを支え、慰めてきた優奈。アリサが涙を流す所は見たくなかった。悔しいという思いで、優奈の腕に力が入る。 夜はやがて去っていき、眩しい朝がやってきた。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■11876 / inTopicNo.49)  CLUB ANGEL's]]]W ▲▼■ □投稿者/ A 一般♪(41回)-(2005/08/08(Mon) 02:40:44) 昼過ぎ、エリナは軽い背中の痛みで目が覚めた。 傷が塞がり、服を着ても痛くはなかった。一階に下りていったが父親は出掛けているのか、家には誰もいなかった。 エリナは出前を取り、母親の残した封筒からお金を取り出す。 (結局…私もあの女に助けられてんだね…) 皮肉な思いでエリナは届いた出前に箸を付ける。 昼食を済ませてたまっていた洗濯や食器を洗い、掃除をしているとすぐに六時すぎになった。 まだ蒸し暑い外に出て、車に鍵をさす。外とは違う車の中に流れる冷たい空気はエリナの肌を冷ましてくれた。 店の近くにある駐車場に車を停めて、エリナは歩いて店に向かった。 『どこみてんだ!!』 突然怒鳴り声が聞こえた。 エリナは足を止めて、声の主を探すと、目線の先には上品な服装をしたおばあさんに怒鳴るチンピラがいた。 今にもそのおばあさんを突き飛ばそうとしそうな雰囲気に、エリナは思わず走った。 案の定男の手はエリナの胸元に当たり、エリナは地面へと倒れこんだ。 突き飛ばした相手が違う事にとまどいを感じたが、男はエリナを掴みあげた。 『何してんだてめぇ!文句あんなら言ってみろよ!』 『やめなさい!この子は関係ないでしょう!』 おばあさんは男の腕を掴みやめさせようとする。 力の差は歴然で、あっさりと男の片手でエリナと同じように突き飛ばされた。 じろじろとエリナを見て、男は腕の力を弱めた。 『綺麗な顔してるな。このババァの代わりにあんたが謝るなら許してやるぜ?』 男の視線はいやらしくエリナの身体を舐め回すように注がれた。 「ケホ…ケホ…分かった…」 にやっと笑った男がエリナを地面に下ろす。 『へ…。近くにホテルあるから、そこ行くぞ』 男が背を向ける。その瞬間にエリナは脚を思い切り振り上げて男の股間を蹴りあげた。 痛さで声もなく倒れこむ男を見て、エリナはおばあさんを抱き上げてその場から離れた。携帯で警察を呼び、男は間もなく捕まった。 公園のベンチに二人は座り、エリナは自販機で買ってきたお茶をおばあさんに渡す。 『ごめんなさいね…。綺麗な肌にこんな跡を…』 エリナの首に付いた痣を心配そうに見つめる。    「大丈夫だって。こんなのすぐ消えるよ」 首をさすりながら笑顔でおばあさんに答える。 『今度お礼がしたいわ。あなたの連絡先、教えていただけるかしら』 ほんわかとした雰囲気のおばあさんに、エリナは出会ったばかりだが心を許していた。 「あ、ぢゃあ名刺あげる。そこに番号もアドレスも書いてあるから。」 エリナはまだアリサにしか渡していない番号を書き込んだ名刺を取り出した。 『クラブ…エンジェルズ』 「私そこで働いてるから♪もし、もし店に入れたら指名してね」 ふっと可愛い笑顔をおばあさんに向けると、おばあさんも暖かい笑顔を返した。 遅刻しそうになったエリナは、おばあさんに別れを告げて店に向かっていった。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■11903 / inTopicNo.50)  さやさんへ ▲▼■ □投稿者/ A 一般♪(42回)-(2005/08/08(Mon) 22:26:22) 毎日見てくれたのに一日さぼってごめんなさい↓(*_*)なるべく一日一話でも書くつもりです☆ (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■11904 / inTopicNo.51)  まみさんへ ▲▼■ □投稿者/ A 一般♪(43回)-(2005/08/08(Mon) 22:31:29) ドロっとしてきました☆ 嫌な感じでこのあとどうすればいいか分かりません♪絡まりすぎです☆でも頑張ります(´∀`) (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■11914 / inTopicNo.52)  CLUB ANGEL's]]]X ▲▼■ □投稿者/ A 一般♪(44回)-(2005/08/09(Tue) 02:48:13) 全身に汗がまとまりつくような外とは違い、店内はとても冷たい風を流していた。 ほてった身体を冷やすように手をぱたつかせて控え室へと入る。 見慣れた顔がエリナの目にとまる。 「アリサさん、おはようございます」 疲れたような顔をして、しかし笑顔でエリナに返事を返す。 (…アリサさん。何かあったのかな…) 心配そうにアリサを見ながら、ロッカーを開いて着替えを済ませる。 ホステス達が控え室からいなくなっていく。アリサは一番初めに指名が付き、とっくにいなくなっていた。 まだ入りたてで客に名前を知られていないが、一度エリナの名前と顔を覚えた客は、必ずエリナを指名した。 その客がエリナを指名していき、控え室に戻るのはほんの十分程だった。 「あ…。アリサさん。」 煙草を吸い、疲れた様子でソファに深く腰を掛けていた。 エリナに気が付き、冷たいお茶を差し出した。 『ん、水分取らなきゃバテるよ♪』 カランっとグラスの中で鳴る氷が涼しげだった。 アリサからグラスを受け取り、次の呼び出しが来るまでの束の間の休息をとる。 隣でおいしそうにお茶を飲むエリナの頭を、アリサは撫でた。 照れくさそうに顔を赤らめたエリナは、アリサに背中を向けてグラスをテーブルに置いた。 「アリサさんも煙草じゃなくて、お茶とか飲んだほうがいいですよ」 エリナの言葉にアリサは何も言わずに黙って後ろから抱き締める。 「離してください。」   いつものようにアリサを離そうとする。しかしアリサは力を緩める事無くエリナを自分の胸に抱き寄せた。 「酔ってるんですか?」 すっぽりとアリサの胸にうずくまりながらアリサの表情を伺う。 「…………」 エリナの瞳には、アリサの綺麗な顔に伝う涙が見えた。言葉を失うくらい綺麗な顔が、皮肉なことに涙によってより一層輝きを増していた。 ぐっと痛いくらい抱き締められ、エリナの鼓動が早くなる。 『……ごめんなさい……別れて……』 熱い涙はエリナの頬にあたり、やがて互いの涙が交じり合うのに時間はかからなかった。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■11927 / inTopicNo.53)  CLUB ANGEL's]]]Y ▲▼■ □投稿者/ A 一般♪(46回)-(2005/08/09(Tue) 04:40:19) 別れて。その言葉が頭から離れなかった。 指名が次々に入ってもエリナはうわの空で、客も困った顔をせざるをえなかった。 見兼ねた志保がエリナを控え室へと連れ戻す。 『せっかくお客さんがエリナ指名してるんよ?仕事は気張りすぎ無くていいけど、もう少しシャンとして』 怒っているのでは無く、エリナに元気を出させるために呼び出したのだ。 ぴっとデコピンをされ、志保は微笑みながら出ていった。 一人になったエリナは、ぼんやりとアリサといたソファに目をやる。 (どうして……。アリサさん…。) 瞳が涙で滲むのをこらえ、エリナは部屋を出ていった。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■11963 / inTopicNo.54)  CLUB ANGEL']]]Z ▲▼■ □投稿者/ A 一般♪(47回)-(2005/08/10(Wed) 01:31:01) 店に戻ると早くも指名が入っていた。 ざわめく店内が欝陶しく感じる。エリナはそれでも笑顔でテーブルについた。 整った顔と、綺麗に巻かれた髪がエリナの目に入る。以前から何度も来ていたという紗理と言う女性。 エリナには初対面の相手だった。 ソファに座っている紗理は両手を上に上げると、横に立って自分に挨拶を済ませたエリナを抱き寄せた。 『ん〜♪やっぱ可愛い。初めて見た時は帰る寸前で指名出来なかったんだぁ♪』 身動きが取れずに胸の中で暴れるエリナ。 それに気付き、紗理は慌てて腕を解く。 にこにこと可愛い笑顔を向けて紗理は自分の酒と、エリナの酒を作る。 「あ、私がやりますから」 自分のやるべき事をやらせてしまい、慌てたエリナは紗理の細い腕に手を当ててしまった。 反射的に紗理から身体を離すと、紗理は楽しそうに笑った。 『くすくす♪照れなくていいのに♪』 全体的に小さく細い紗理は、アリサに負けないほどの美人だった。身長の差で可愛い、と見えがちだが、近くで見ると目が大きく、色っぽさも備わっていた。 (何か…あゆに似てる…) 芸能人よりも自然な綺麗さを持つ紗理の横顔に思わず見とれてしまう。 『はい♪乾杯♪』 互いが相手よりも低い位置にグラスを持っていく為、なかなか乾杯が出来なかった。 「すいません」 エリナに笑顔が戻る。 さっきまで泣きそうだった気分が、紗理といる事で和らいだ気がした。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■11964 / inTopicNo.55)  CLUB ANGEL's ]]][ ▲▼■ □投稿者/ A 一般♪(48回)-(2005/08/10(Wed) 02:34:15) 酒が回ったのか、紗理はエリナに倒れ込むように頭を肩にあずけていた。 「紗理さん、飲みすぎです。タクシー呼びますか?」 紗理を支え、崩れそうになりそのまま膝に寝かせる。 ふにゃっとした顔で、嬉しそうにエリナに甘える紗理。手を握り、まるで猫のようにうずくまっている。 (可愛いなぁ…。紗理さんもきっと、どこかの店で人気あるんだろうな…) 酒の作り方、派手さ、明らかに普通の職業でない事が分かる。 エリナの可愛さと綺麗さ、仕草。それら全てが愛されるエリナには自然と人が集まった。 『エリナ、お水…』 ふいに紗理が甘えた声でエリナに声をかける。 「はい、身体起こしてくれないと…」 紗理を起こそうと身体に手を回す。すると、紗理の腕がエリナの首に絡まった。 『口移し…』 とろんとした瞳で見つめられ、エリナは身体が固まってしまう。 「ダメです。起きてください…」 言い掛けた時、紗理の唇がエリナの唇に軽く触れた。 『敬語は嫌。エリナも私を紗理って呼んで…』 ふっと和かい笑顔が向けられ、エリナは照れ臭くなり紗理から目を離す。 紗理の腕に力が入り、逸らされた顔を自分に向け直す。 『やだ…。こっち見て』 甘い香水の匂いがエリナの鼻をかすめる。 「向くから、起きて…」 首に絡まった腕を解こうとする。 紗理は微笑み、自分で腕を解いてソファに座り直した。 『敬語じゃなくなった♪今日はそれだけで満足♪』 クッと水を飲み、紗理は財布からお金を出した。 三万円をエリナの胸元に入れる。 「もらえないよ、こんなに多いの」 お金を取ろうとするエリナの腕に、紗理が手を重ねる。 『あげる♪』 チュッと軽いキスをして紗理はタクシーで帰っていった。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■11965 / inTopicNo.56)  CLUB ANGEL's ]]]\ ▲▼■ □投稿者/ A 一般♪(49回)-(2005/08/10(Wed) 04:01:51) 紗理を見送り、エリナは店に戻る。後ろ手に扉を閉めようとしたとき、スッと女性が横を通り過ぎた。 すらっとした身体が印象的で、すぐにその人物が紗織だと気付く。 紗織はすぐにテーブルに案内され、アリサを指名した。 アリサが付いていた席を離れて紗織の元に向かう。 エリナとは真逆の位置に座り、紗理との様子は見られていないと分かっていてもエリナは重い気持ちになった。 控え室に戻ろうとアリサ達のテーブルを横切る。 その瞬間、エリナを見つけた紗織が声をかけた。 『エリナもおいで』 有無を言わさない迫力に、エリナは従うしかなかった。 黙って席に座り、アリサと目が合わないように紗織の身体を盾にする。 ふいに紗織がアリサを抱き寄せ、エリナのほうを向いた。 何をするのか分からないエリナは、二人をぼんやりと眺めていた。 エリナの瞳を真っすぐに見つめ、紗織はアリサに軽くキスをする。 胸が押し潰される気がして、その場から逃げたくても身体が言うことを聞かなかった。 勝ち誇ったように笑う紗織を見て、エリナの目からは一筋の涙が溢れた。 (どうして?…だって…。紗織さんは綾さんが好きだったはずだよ…?) 『くく…。アリサは私と付き合うことになったの。エリナには、それを知らせたくてね。』 紗織の腕の中で、アリサは哀しげな顔をして俯いている。 「そんな…。なんで…」 紗織はおかしくてたまらないといった顔をして笑う。 アリサの首筋に舌を這わせ、肩に回した腕をアリサの胸元に忍ばせる。 「アリサ…さん…。どうして?…私はもう…いらないの…?」 アリサの顔が苦しそうに歪む。 エリナの泣く姿を見たくないというように顔を俯かせてしまった。 『いらないよ。エリナはアリサにとって邪魔なの』 アリサの胸を触り、いやらしく腰に手を回した紗織が冷めた声で言い放つ。 乳首を摘み、腰に回した腕をドレスの中へと入れ、その手はアリサの脚の隙間へと移動する。 『……っ…』 ピクンっと顔を反らし、紗織の肩に頭を乗せると、紗織はアリサの唇にキスをする。 涙で濡れるエリナに見せ付けるように、アリサの脚を開かせる。 『アリサ、元カノに見られてる気分はどう?』 涙を流し、紗織の行為に耐えるアリサに答える隙も与えずに再び強引なキスを繰り返す。 「っ………」 エリナはアリサの乱れる姿を見ていられず、くしゃくしゃになった顔で控え室へと走った。 (嘘…。やだよ…やだよ……なんで…泣いてたの?…なんで他の人に…泣きながら抱かれたの?…) 苦痛に満ちたアリサの顔が浮かぶ。 望んで抱かれている表情ではなかった。 胸が苦しくなり、息があがる。エリナはその場に倒れこんだ。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■11983 / inTopicNo.57)  Aさん☆ ▲▼■ □投稿者/ さゃ 一般♪(4回)-(2005/08/11(Thu) 00:00:07) エリナがまた倒れたぁ(´Д`) 続き楽しみすぎです!! (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■11989 / inTopicNo.58)  CLUB ANGEL's ]L ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(50回)-(2005/08/11(Thu) 03:21:46) 額に冷たい感覚があった。エリナはその心地よい冷たさと重さに目が覚めた。 目の前には濡れた手をした優奈がいた。おそらくエリナのタオルを替えていてくれたのだろう。 「優奈さん…私…」 ソファに寝かされ、まだ怠い身体を起こし、タオルを手に取りながらエリナが声をかける。 エリナの声を聞き、優奈が安心したように振り返った。 『よかった…。多分昨日傷に入った菌とか身体濡らしたのが原因だと思うよ』 そういうと、えりなに水を差し出す。 「ありがとうございます…。迷惑ばかりかけて…」 自分の腑甲斐なさに悔し涙が零れ、ソファを握り締めてエリナは俯いた。 何も言わずに優奈はエリナの肩を抱いた。 優しく身体をさすってやり、エリナを安心させるように頭を撫でてやる。 「エグ…ヒック…すみません……ウェ…すみません…」 自分を責め、謝り続けるエリナを見ていられなかった。 優奈はアリサの気持ちと、エリナの気持ちを痛いくらい分かっていた。 理不尽に互いを想う二人が引き離される事に怒りが込み上げる。 今にも消えてしまいそうな弱いエリナに真実を伝えたかったが、アリサは固くそれを拒んだ。 もどかしい気持ちに、優奈はエリナを抱き締めることしかなかった。 『エリナが辛いときは私がいる。ちゃんと守る。』 エリナを妹のように大事に想う優奈は、二人を見守ることを決めた。 「うぁ…ああぁ…。アリサさん…アリサさ…ん…」 悲しい程のエリナの叫びは十分アリサに届いていた。 同じくらい辛いアリサも、エリナの悲しみをなくしてあげたかった。 いつか二人が笑い合える日まで、そう信じてアリサは耐え続けた。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■11996 / inTopicNo.59)  CLUB ANGEL's ]LT ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(51回)-(2005/08/11(Thu) 03:53:05) エリナが寝ている横をアリサは静かに立ち去った。 優奈にエリナの世話を頼み、泣きながら紗織の元へと向かっていった。 車の中で煙草を吸って待っていた紗織に頭を下げる。 『ごめん、待たせて…』 紗織はにっこりと笑い、運転手にドアを開けさせる。 アリサを自分の隣に招きいれ、冷蔵庫から酒を取りだしてグラスに注ぐ。 『暗いわね。アリサじゃないみたい。』 窓の景色を眺めているアリサの顔にグラスをあてる。 その冷たさにピクっと肩を揺らして紗織を睨む。 『くく…。そんなに恐い顔しないで。』 笑いながらグラスを渡し、座席に深く座り込む。 アリサはグラスに口を付けずにテーブルに置いた。 『どうしたの?飲まないの?』 アリサの置いたグラスを指先で弾く。 『いらない。』 紗織に目も向けずに窓を見ながらアリサが答える。 苦笑いをして紗織はまた深く座り込む。 やがて車は細い路地へと入り、今まで流れていた綺麗な町並みはアリサから姿を消した。 スモークの窓越しからかすかに光るビルのネオンには、明らかにホテルと書かれていた。 茫然とビルを眺めているアリサの手を引き、紗織は強引に車の外へと出す。 『いやだ!離して!』 強い力で握られている自分の手首に片手を添えて引き剥がそうとする。 しかしアリサは紗織の力にまったく歯が立たず、そのまま紗織が運転手と話し終えるまで、ビルの前に繋がれている状態になった。 『ぢゃあ、明日の夜まで。また連絡する。』 『かしこまりました』 バタンと扉が閉まり、アリサ達が乗ってきた車は去ってしまった。 『さ、部屋に行こう♪』 ぎりぎりとアリサの手首を握りしめ、紗織は笑顔でアリサをビルへと連れ込んでいった。 エレベーターの中も、紗織の力が弱まることはなかった。 『痛い…紗織…』 涙目でアリサが抵抗する。紗織はそれを満足そうに眺めている。 『離して欲しい?』 自分が降りる階を確認し、振り返りながらアリサに聞く。 弱々しく、こくりと頷くアリサを見ると、紗織は優しい顔になり力を緩めてやった。 17階でエレベーターは停まり、紗織は少しばかりゆるく握ったアリサの手を引いて無言で部屋へと向かっていった。 ■12003 / inTopicNo.61)  CLUB ANGEL's ]LU ▼■ □投稿者/ A ちょと常連(53回)-(2005/08/11(Thu) 13:40:46) 紗織は部屋の前で立ち止まり、静かに扉を開けた。 大きな窓からはきらきらと光る海が見えた。 紗織がアリサを先に部屋に入れ、自分は後から入り鍵を締めた。 紗織の行動を不愉快そうに眺めるアリサ。 『今更逃げないよ。あの店からは離れられないし…』 鞄とヒールを投げ出し、アリサはベッドに倒れこんで顔を埋めた。 投げ遣りなアリサの態度に苦笑いをし、紗織はバスルームへと消えていった。 シャワーの音がアリサの所にまで聞こえてくる。 不安な気持ちを抑え、アリサはエリナの事を想った。 〔エリナ…会いたいよ……こんな所…逃げたい…〕 手を握り締め、枕にはアリサの涙で染みが出来ていた。冷たいシーツがアリサを包んだ。 しばらくしてバスルームの扉が開く音がした。 ぐっと涙を指先で拭い、凛とした顔で紗織の横を通りすぎてバスルームに向かっていく。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12016 / inTopicNo.62)  これから… ▲▼■ □投稿者/ 楓 一般♪(5回)-(2005/08/12(Fri) 00:40:12) 一体どうなるんですか?? 続きが楽しみですっっ (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12017 / inTopicNo.63)  CLUB ANGEL's ]LV ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(54回)-(2005/08/12(Fri) 03:23:09) 紗織はシャワーで濡れた頭を乾かし、ベッドへと向かっていった。 [濡れてる?] 枕に点々と付いた水跡に指を這わし、それがアリサの涙であることに気が付く。 『…泣くほど嫌か…』 心にチクッとした痛みのようなものが生まれた。 紗織はその痛みに納得のいかない顔をしてベッドに体を寝かす。 何分か後にアリサがシャワーから上がり、紗織が寝そべるベッドルームへと裸足で戻ってきた。 紗織とは目も合わせずに電気を消しに行く。 『電気は付けといてよ』 体を起こして、アリサにそう言った。 一瞬アリサの体が止まり、諦めたようにスイッチを切らずにベッドの端へと座り込む。 『こっちおいでよ』 紗織の呼び掛けに何も言わずにただ座っているアリサに痺れをきらし、紗織が強引にアリサの体を後ろに倒した。 まだ乾いていない濡れた髪から雫が垂れる。 雫はバスローブから覗く白い肌に流れ落ち、アリサをより艶っぽく見せる。 『…脱いで。』 掴んでいた肩を離し、紗織は自分から電気を消しに行った。 そしてベッドの横にあるスタンドのスイッチを入れる。 部屋はオレンジ色に変わり、アリサの肌は淡い光のもとにさらされた。 紗織はその姿を見ると、アリサを力任せに自分の方へ引き寄せ、そのまま押し倒した。 微かにアリサの柔らかそうな唇が震えている。 その唇を紗織は指先で優しく撫でた。 『気丈だね…』 薄く微笑み、唇にあてた指先を徐々に下へと這わせていく。 ピクッとアリサの身体が揺れ、それを合図に紗織の唇はアリサの乳首へと向かった。 『あっ………』 微かなアリサの声を楽しむように、舌を絡ませ、硬くした舌で乳首を弾いたり周りを舐めたりする。 チュ…ピチャピチャ…チュパ…チュパ… 静かな部屋に水音が響き渡る。 片方の胸を舌で愛撫している間も、もう片方は指先で突いたり摘んだりを繰り返している。 執拗な紗織の攻めに、声を出すことを拒むようにアリサは唇を噛み、シーツを握り締める。 声を出さないアリサを不思議に思い、チュッと唇を離して様子を確認する。 目の前には自分の愛撫を必死に耐えているアリサがいた。 紗織の胸がチクチクと痛み出す。 自分が力によってアリサを手に入れている事を痛感させられた。 人を傷つける事が、こんなに苦しいものだという事に、紗織は気が付きたくなかった。 その考えをかき消すように、紗織は狂ったようにアリサを抱いた。 強く掴みすぎて爪痕が残る乳房。 大きなペニバンを無理矢理何度も打ち付けて血が流れた泌部。 手首を縛り自由を無くしたための痣。 体中を叩いた鞭の跡。 次の日の夕方。紗織の行為から解放されたアリサの目に光はなかった。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12054 / inTopicNo.64)  最近… ▲▼■ □投稿者/ まみ 一般♪(5回)-(2005/08/13(Sat) 23:00:58) 私の一日は《CLUB ANGEL's》を読むことから始まります(*^_^*) アリサさんがどうなっちゃうのかが心配ですけど…。 続きも楽しみにしてます☆ (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12055 / inTopicNo.65)  CLUB ANGEL's ]LW ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(55回)-(2005/08/14(Sun) 02:04:17) 夕方の光の中、新しいドレスを紗織に着せてもらった。 無言のまま着替えを済ませエレベータが階を減らしてアリサ達を地上に送る。 ビルの出口では、昨日アリサ達をこのビルに送り、走り去った迎えの車が停まっていた。 紗織はアリサの腰に手を添えて車に連れていこうとする。 『いやぁっ!!』 突然アリサが悲鳴を出す。昨日の行為により、紗織に対しての拒絶反応を起こしていた。 アリサの悲鳴を聞いた周りの人々は振り返り、紗織達を怪しむように見ていた。 運転手は慌ててアリサを車に乗せ、茫然としている紗織も連れていった。 震えているアリサを黙って見つめ、ぼんやりと考えた。 嫌がられているのに強引にアリサを抱いた事。 金でアリサを繋いでいる事 自分に逆らったら働けなくすると脅しをかけた事。 そこまで追い詰めて手に入れたアリサを手放したくない反面、アリサを解放してやらなければという思いが頭をかすめる。 流れる窓の景色を見続けるアリサを、紗織は苦しい思いで見つめていた。 やがて車は店の前に停まる。アリサは見慣れた看板に安堵した表情を浮かべ、車を下りようとする。 『アリサ!!』 紗織は、まだ痣が残る手首を思わず握りアリサを引き止めた。 紗織の体温にビクッと体を固まらせるアリサを、悲しさと淋しさが入り交じった表情を浮かべ、笑った後、仕事頑張って…とだけ言い車を発進させた。 紗織の浮かべた顔が気に掛かったが、それ以上に紗織から解放された安心が上回った。 アリサは顔を引き締めていつもの笑顔で店の扉を開けた。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12056 / inTopicNo.66)  さやさんへ ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(56回)-(2005/08/14(Sun) 02:10:16) また倒れました(*_*)残念★でも起き上がる★笑 どんどん複雑になっていくから話が分からない(;_;)頑張ります♪ (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12057 / inTopicNo.67)  楓さんへ ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(57回)-(2005/08/14(Sun) 02:14:08) どうなるかなんて分かりません(⊃Д`)゚。゜このままいくと何十話にもなりそうで…。前の話みたいに40くらいで止めようとしたら長引きました(;_;)見捨てないで見てください★ (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12058 / inTopicNo.68)  まみさんへ ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(58回)-(2005/08/14(Sun) 02:18:56) これ読んで一日が始まるなら、始まらない日もあるかもぢゃないですか(;□;)笑 アリサにはかなり傷ついてもらいました(´^`)仕方ないです★話が進まないんすよ(⊃Д`)゚。゚ とりあえず前みたいに最後に疑問が残るような分け分かんないのを残さないよう気を付けます(;_;) (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12060 / inTopicNo.69)  Aさん! ▲▼■ □投稿者/ さゃ 一般♪(5回)-(2005/08/14(Sun) 07:22:07) すごい悲しいです(;_;)アリサが精神的にやばそうですね(>_<)話が複雑でも好きです♪♪頑張っちゃってください(^^)最近特に暑いですけどAさんも倒れないように気をつけてくださいね☆笑 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12085 / inTopicNo.70)  CLUB ANGEL's ]LX ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(59回)-(2005/08/15(Mon) 01:32:36) 昨日店を出たばかりでありながら、アリサはもう何日も通っていないような気がした。 それだけ紗織との時間が苦痛だったと改めて感じさせた。 『おはよう』 全員に挨拶を済ませ、一番愛しいエリナに挨拶をしたときはたった一言の言葉を交わすことですら幸せだと思えた。 エリナの挨拶は気まずそうで、悲しい声だったが、アリサはそれだけで頑張れた。 アリサとエリナは早々に指名が入り、それぞれ別のテーブルに付いた。 『エリナ♪』 可愛らしい笑顔が目に入る。紗利が前と同じようにエリナを迎え入れる。 エリナは笑顔で紗利の横に付いた。 「来てくれたんですね」 エリナの顔を見て嬉しそうに酒を飲む。 『だって会いたいから♪』 そう言うと紗利は照れ臭そうにグラスを置いた。 紗利を見ていると、アリサと紗織の出来事を忘れられる気がした。 エリナは少なくなったグラスの中に酒を継ぎ足し、自分用の酒を一気に飲み込んだ。 『ちょ…エリナ大丈夫?』 紗利は笑いながらエリナの頭を優しく撫でた。 無くなった酒をどんどん注ぎ、エリナは嫌なことを流すように飲んだ。 「全然大丈夫です」 いつものクールさは無くなり、酒のおかげでエリナはふにゃっとした顔をした。 『あはは♪今日は飲みまくろう♪』 二人は酒を追加し、一時間もすると、エリナは完全に酔いが回っていた。 身体は紗利にもたれかかるようにぐったりとし、とろんとした瞳でキラキラ光るグラスを眺めていた。 『エリナぁ♪酔っちゃったのかな?』 酒に強い紗利はまだまだいけると言うように平然とした顔でエリナの柔らかい頬を突つく。 「いやぁ…。突かないで下さいよぉ…。」 眉間にしわを寄せて紗利の指を掴み、じっと紗利を見つめた。 いつもと違う可愛さのエリナを愛しく思い、紗利は少しづつ顔を近付けた。 「あはぁ♪あゆがいるぅ〜。ちゅうして〜♪」 紗利がエリナを迎え入れる時と同じように両手を広げて紗利を抱き寄せる。 『あはは♪あゆでーす♪エリナにちゅうしまぁす♪』 どさくさに紛れ、紗利はエリナの柔らかい唇にキスをする。 初めは軽く、時に深い、絡めるようなキスを繰り返す。 『…リサ…アリサ!』 客がアリサの手を握りながら顔を覗き込む。 はっと我に返り思わず客を何度も見なおす。 『ごめん、ぼーっとしてた♪』 顔の前で手を合わせ、いつもの顔で謝るアリサ。 客はすぐに笑顔になり、アリサに話をしはじめる。 しかしそれら全てが耳に入らなかった。適当に相づちを打ち、笑顔を作っていた。 今にも泣きそうになりながらも、アリサは耐えた。 エリナと紗利がキスをしていた事を見ていながらも。アリサは仕事を続けた。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12086 / inTopicNo.71)  CLUB ANGEL's ]LY ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(60回)-(2005/08/15(Mon) 02:24:48) 周りの客が振り返るような濃厚なキスをし、紗利はエリナのドレスに手を掛けた 「んぅ〜…。やですよ…何するんですかぁ…」 だだを捏ねるような声を出してエリナは掛けられた手を掴む。 弱々しいエリナの力をいいことに、紗利はかまわずドレスの中に手を入り込ませた。 ぐったりと紗利の肩に頭を預けてエリナはされるがままの状態になっていた。 『エリナ…。そんな風にしてたら犯しちゃうよ?』 いつもと違う妖艶な瞳でエリナを見つめ、紗利はなおもエリナの身体を撫で回す 胸の辺りを優しく撫で、時折指先がブラの中の乳首をかすめる。 その度にエリナからは甘い声が漏れだす。 もたれかかったエリナをソファに寝かせ、紗利はエリナの脚の間に身体を入れた 開かれた脚を中心から足先にかけて指先を這わせ、それをなぞるように舌を使い丁寧に舐めあげた。 くすぐったいような感覚にエリナの脚は高く上がる。 長く伸びた脚はソファの背もたれに掛けられ、隣のテーブルの客の首筋に当たった。 驚いた客は振り返ると、そこで行なわれている事に目を奪われた。 正常な感覚がほぼ無くなり掛けているエリナは無意識にも色気を振りまいた。 「熱いよぉ…紗利…紗利…お水…」 火照った身体を冷ますようにドレスをはだけ、紗利から受け取ったグラスから氷を取り出して自ら肌に滑らせる。 冷たさが心地いいのか、ふっと微笑んだエリナの顔は誰もが欲情してしまいそうな色っぽさを出していた。 『ふふ♪気持ちいいの?』 紗利が残っていた氷を掴み、そっとエリナの身体に滑らせ。 「…んぅ…気持ちぃ…」 身体をくねらせ、紗利の腕を掴む。 氷はエリナの体温で溶け、それは肌の上で綺麗な雫となって残った。 エリナに引かれるままに紗利は首筋に舌を這わせる。 「ん……あっ……」 ぺろぺろと丁寧に舐め、徐々に移動させていく。 『は…ぁ…ん…。可愛い…エリナ…』 器用にドレスを上にたくし上げて脱がせていく。 脚の間に入った指先はエリナの泌部をショーツの上からなぞり、クリトリスを優しくこする。 「あぁ…紗利…ん…あぁ」 チュクチュクと擦られるたびに泌部から漏れる水音は紗利を余計に興奮させた。 隣の客が見ているだけでは我慢できなかったのか、掛けられたエリナの脚を舐めようとした瞬間、身体が横倒しになった。 『何するのよ!!』 キッと睨んだ先には冷たい眼をしたアリサがいた。 アリサを指名したくても出来ない客はいる。 それはアリサに対しての指名料が高いと言うだけではなく、付く客は金持ちや何らかの地位がある人間ばかりだった事もある。 つまらない料金でアリサを指名したくないという客のプライドも関係した。 それ故アリサに突き飛ばされた客は文句一つ言わずに黙って座りなおした。 エリナの泌部を直に触ろうとする紗利にエリナが近づいて、そっと顔の前に手のひらを向けた。 『お引き取り願います』 笑顔のない淡々としたアリサの声に紗利の動きが止まる。 ただならぬ雰囲気が店内を包む。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12095 / inTopicNo.72)  CLUB ANGEL's ]LZ ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(61回)-(2005/08/15(Mon) 05:59:19) 店の中には現在の状況と正反対の穏やかなBGMが流れている。 店内に話し声は無く、アリサと紗利も眼で会話をしているようだった。 寝そべるエリナを庇うように抱き抱え、アリサは紗利から目を離さなかった。 『ふふ…睨まないでよ』 脚を組み、紗利は余裕たっぷりと言うようにソファの横に膝立ちするアリサを上から見る。 その態度にアリサは多少不機嫌になったが、エリナの事もあり自分の感情を押し殺した。 『楽しんでるトコ悪いけどさ、この子に軽々しく手ださないでくれるかな』 いつもの口調でありながらその言葉には温かみは感じられない。 アリサの言葉に紗利は苦笑いをする。 『アリサ、それはあんたがエリナと付き合ってたら言える台詞だよ』 アリサの心が揺れた。 確かに自分はエリナを振り、彼女という立場から退いている。 『そんなに好きなら告白して付き合えばよかったのに。何してたの?』 紗織との記憶が蘇る。 本当はエリナといたかった。しかし自分にはもう出来ない事だ。 『気分悪い。帰る』 何も言わずに俯くアリサに怒りを露にし紗利は札束を置いて帰っていった。   〔私は……もう…エリナを好きでいちゃいけないのかな……。私は邪魔をしてるだけなのかな…〕 何も出来ない自分の腑甲斐なさに、エリナを抱き締めながらアリサからは今まで堪えていた涙が溢れだした。 店内にはアリサの切ないほどの泣き声が響いていた。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12099 / inTopicNo.73)  CLUB ANGEL's ]L[ ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(62回)-(2005/08/15(Mon) 08:47:56) (…ん……。誰か泣いてる……。近いな…隣くらいから聞こえる……) エリナは自分を包む暖かな感触と、時折かかる冷たい水滴で目が覚めた。 (あぁ……誰だろ……。私を抱きながら…どうして泣いてるんだろう…) ゆっくりとエリナの腕が上がり、アリサの頬にそっと触れた。 『エリナ……』 酔っていて周りが見えなくなっていたとしても、エリナはこの声を忘れていられる時は無いだろう。 愛しい声にエリナはすぐに自分を取り戻した。 触れた頬を何度もさすり、アリサの腕から身体を起こした。 「アリサさん…?どうして……。」 目の前で大好きなアリサが泣いている事に動揺を隠せないでい。 『なん…でもなぃ…っ…』 ぼろぼろと零れる涙をアリサは必死で拭おうとしている。 「何でもないのに…何で泣かなきゃいけないの?」 しゃがみこんだアリサをどうしてやる事も出来ず、あやすように抱き締めて頭を撫でた。 『大丈夫……。ごめんね…』 「謝らなくていいんだよ?どうして全部抱え込むの?私を抱き締めながらどうして泣くの?」 アリサが何かを一人で背負っている。 エリナはこの時確信し、今まで気が付かなかった愚かさに悔しくなった。 「私がいるよ…泣かないで…お願い…」 アリサはあくまで紗織の事は話さなかった。 言えばきっとエリナは許してくれる。 また彼女にしてくれる。しかしそれはアリサを共有していると変わり無い。 『私はエリナを愛してる。今はエリナに告白できないけど…。いつかは……』 その言葉を聞いて、エリナはこれ以上何も聞かないことにした。 互いに壁を乗り越えてから告白しよう。 その日は、二人の距離がほんの少しだけ縮まった日になった。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12116 / inTopicNo.74)  CLUB ANGEL's ]L\ ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(63回)-(2005/08/16(Tue) 04:33:33) アリサとエリナのよそよそしい関係は終わった。 付き合う前の自然な状態。しかしそれは何日も続かなかった。 『……エリナは?』 店が開いて間もない頃、まだ客はいなかった。 控え室に開店前にはいつもいたエリナの姿が無い事にアリサは不思議がる。 『さぁ、エリナだって遅刻しちゃう時くらいあるよ。気長に待ってな♪』 化粧直しを軽くして優奈はアリサの肩を叩く。 客に付いてからもう一時間は経ったであろう。 エリナが店内にいる様子はなく、ましてや出勤している様子もない。 不安になったアリサは、指名が途絶えたほんの少しの間を使い、エリナに電話を掛けた。 長い呼び出し音の後、繋がったと思えば機械的な女の声と留守電の指示がだされる。 他のホステス達も口には出さないが、エリナの無断欠勤に心配そうな面持ちで接客をしている。 夜中の三時を回り、アリサ達は控え室へと戻った。 『エリナ来なかったね』 『今まで真面目だったのに…変だよ』 『私エリナの番号知らない〜悲しい↓』       『アリサさん以外知らないって』 口々にエリナの話題を言い合う中、急に奈保が扉を開けて入ってきた。 ドレスを脱ぎ、ラフな格好のアリサに近づいて奈保は心配そうな顔で紙切れを手渡した。 『エリナこんな無断欠勤した事ないし、なんや知らんけど、胸騒ぎがするんやわぁ。アリサ仲いいやろ?ちょっと様子見てきてくれんかな…』 畳まれた紙切れにはエリナの自宅までの地図が書かれていた。 『いいけど、こんな時間に行ったら普通に迷惑じゃん…』 今すぐにでもエリナの顔を見たい衝動を抑えてアリサは紙をカバンのなかにしまった。 『そやなぁ…。普通の家庭やったら迷惑やって言う事忘れてたわぁ』 がっくりと腰を下ろし、残念そうにうなだれる奈保。奈保もエリナに好感を持ち、大事にしていた分心配は大きい。 『今日の昼にでも向かってみるよ♪そんなに心配しないで』 その言葉に奈保は安心したような顔をして控え室から出ていった。 アリサも明日は早起きをしようと思い、早々に挨拶を済ませて店を出ていった。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12152 / inTopicNo.75)  Aさんへ♪ ▲▼■ □投稿者/ まみ 一般♪(7回)-(2005/08/19(Fri) 13:27:12) エリナちゃんに何があったんでしょう…心配ですね(>_<) (話は逸れますが) Aさんのコメントが可愛くて好きです(*^_^*) (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12166 / inTopicNo.76)  この作品ゎ♪♪ ▲▼■ □投稿者/ ミッキー 一般♪(2回)-(2005/08/20(Sat) 02:05:27) 以前までTさんHさんの小説目当てで見に来てましたが、最近はこれが一番の楽しみです☆続きが気になる〜♪昨日の電車男も(笑)更新お待ちしております(^∇^) (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12169 / inTopicNo.77)  CLUB ANGEL's  L ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(64回)-(2005/08/20(Sat) 02:54:18) 暗い部屋。外の気温を全く感じさせないような寒さで目が覚めた。 (誰か……。私は…なんでこんな所にいるの?) アリサと店を出て 少し話しをして 自宅に…… 必死に記憶をたどると、思いだしたくもない生々しい記憶がよみがえった。   『動いたら刺さるわよ』 自宅のドアに手を掛けた瞬間だった。 エリナの腕は左右から二人の人間に取り押さえられ、首には何か鋭利な刃物が押し当てられていた。 口は自由だがエリナは恐怖のあまり言葉を発することは出来なかった。 『ふふ…。騒がないでくれて助かるわ♪』 首筋辺りで囁かれ、後ろにいる女はエリナの首に舌を這わせた。 気持ちの悪い感覚に鳥肌が立ち、怖さで握り締めた手の力が強まった。 『あの人に渡すなんて…。あなたの価値が無くなってしまうわ…』 『葉月様…。そのような事を言われては…』 女はふっと皮肉を込めた笑い方をして、腕を押さえている二人に手錠を後ろ手にかけるよう指示を出した。 目隠しの為、車はどこに向かうか分からず、会話しか聞くことが出来なかった。 『葉月様、この、エリナという女は何をしたんですかね』 『さぁ…。あの人に関係してるのかしら』 葉月と呼ばれた女は、声からして先程エリナの後ろにいた女という事がわかった そして目的地に連れていかれ、目隠しと手錠を取られた。部屋のなかは夜の為か暗く、目隠しを外した人物の顔すら見られなかった。 「息苦しい……」 部屋の中は風呂などもあり快適に近い設備だか、窓には鉄格子と監視カメラが付いている。 食事は一日2食。 する事もなく、部屋はそんなに広くない。 エリナは恐怖と諦めの中を耐えていた。 アリサの顔が浮かび、自然に涙がこぼれた。 「アリサさん…会いたい…会いたいよ……」 突然…堅く閉ざされていた扉が開かれた。 ■12201 / inTopicNo.82)  CLUB ANGEL's LT ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(69回)-(2005/08/20(Sat) 21:50:14) 開かれた扉の前にいる人物に目が釘づけになった。 エリナが19年見続けていた人物。 「お…母さん…」 母と呼ばれた女、涼子はうっすらと笑みを浮かべて、エリナからは見えない扉の横にいる人物に話し掛けている。 笑みを浮かべられただけで自分には目もくれず話し込む涼子に、エリナは頭に血が上った。 「なんとか言えよ!何話してんだよ!!」 勢い良く扉に向かい、涼子の胸ぐらを掴みあげた。 涼子は冷たい顔でエリナを見ていた。 今までに見たこともない涼子の顔にエリナは体が固まった。 (……こんな顔…あんた出来たんだね…) 一瞬考え事をしていただけで、涼子の胸ぐらを掴んでいた腕は離された。 同時にエリナの体が床に崩れ落ちる。 「ぅ…ゲホ……かは…」 みぞおちに強烈な痛みが走り、うずくまったまま腹を押さえ込んだ。 苦しさで目の前が歪む。 自分が母親だと思っていた女は、目の前で封筒を受け取って消えた。 (今度は私を使うのか……本当…むかつくよ…) 首が持ち上げられ、態勢がきつい。 息苦しさと痛みで、エリナの意識は飛びそうだった。 男だと思い込んでいた人物は、後ろに結っていた髪をほどいた。 驚くほど整った顔が夕日に照らされる。何も見えていないとような冷たいガラス玉の眼がエリナをじっと見つめていた。 今のエリナにはその美しさが恐怖にしか感じられない。 何の為に自分は売られたのか。 何の為にこの人は女を買ったのか。 『気に入ったわ……』 その日、エリナはくらい闇に引きずり込まれた。 エリナの光が失われる。 『あの人に渡すなんて…。あなたの価値が無くなってしまうわ…』 あの女の声が頭をよぎった (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12204 / inTopicNo.83)  まみさんへ ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(70回)-(2005/08/20(Sat) 22:12:39) 笑って言うトコぢゃないですね(´∀`)仕方ない仕方ない☆エリナには本当苦労してもらわなきゃ困るんだよ〜(⊃Д`)゚。゚ 私は普通に学生やってるだけの奴だよ☆こういう話を書きたいから書いただけ♪変な妄想しないでよ★このぉ〜〜痴漢★(・∀・)笑 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12213 / inTopicNo.84)  CLUB ANGEL's LU ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(71回)-(2005/08/21(Sun) 00:35:12) ギシギシと使い古されたベッドが軋む。 夕日は間もなく無くなり、代わりに青白い月明かりが部屋に入り込んだ。 「あ…ぁ…はぁ…お願い…もぅ…やめ…て…」 涙を流しながら四つんばいになったエリナの願いは聞き入られなかった。 腕に力が入らず、しかし腰だけは高々と上げられ押さえられていた。 『まだよ。あなたの身体に打ち付けるとき…肌が触れるでしょ?それがたまらなく気持ちいいのよ』 冷静な口調とは異なり、女の腰は激しくエリナを責め立てた。 「やめて…痛い…あっ…あぁ…助…けて…」 ベッドに顔を埋め、苦痛に耐えていると、女は四つん這いのエリナに覆いかぶさるようにエリナの耳に唇を近付けた。 『助けは来ないわ…。あなた達…親子のお金出してたのは若西組よ?』 エリナの消えかけた意識が呼び戻された。 『涼子の娘なら見てみたいと思ってね…。気に入ったから涼子から買っちゃった…』 耳元にあった唇はゆっくりと背中を舐め回し、胸を指で愛撫しながらお尻へと下がっていく。 母親があっさりと自分を売ったことは、エリナに大きなショックを与えた。 生まれてから一度も母親から愛をもらった事は無い。 けれどエリナには優しい父親がいた。父のおかげでマトモに生きてこれた。 その優しい父親はもういない。 小さくて情けなくて、守らないといけない人間にしたのは涼子だった。 数年前からの浮気相手はに金持ちで、毎月涼子が生活費をもらってきた。 父親は自分の腑甲斐なさに小さくなっていったのだ。 「あんたが…あんたがいるからいけないんだ!!」 家族を壊した張本人に無理矢理犯されている事に気が狂いそうだった。 叫んでも叫んでも、エリナの声は女には届かなかった。貫かれたまま頭を押さえられ、泣き叫ぶエリナを楽しそうに犯していった。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12215 / inTopicNo.85)  CLUB ANGEL's LV ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(72回)-(2005/08/21(Sun) 01:31:32) ―――昼・PM 1:00 ― 蝉の鳴く道路を潜り抜け、地図を見ながらエリナの自宅を探す。 『ん〜。あ?ここかな?』 地図に書いてある場所と一致した家の前に車を停め、アリサはサングラスを外した。 『ふぅ…緊張する…』 高鳴る胸を抑え、小さなインターホンを押した。 慌ただしく中からは足音がし、乱暴に玄関が開けられた。 『エリナ!!あ?!どちら様ですか…』 明らかに落胆した男の顔が引っ掛かる。 挨拶をして、自己紹介を手短に済ませると、 男はエリナの父親だという事が分かった。 『で、エリナはどこにいるんですか?』 頭を抱えた父親に尋ねると、力ない首の振りだけが戻ってきた。 『家の前に…エリナに渡した自宅の鍵が落ちてたよ…携帯も繋がらないし…』 父親の手には銀色に輝く鍵がしっかりと握られていた 『そんな…。心当たりはないんですか!?』 座り込む父親の肩を乱暴に揺さ振る。 悲痛な顔がアリサを見ていた。 『他人を巻き込むことは…出来ない…。』 うなだれる父親にアリサはビンタをした。 『家にいるくらいなら自分がなんとかしろ!!私はエリナの手がかりが分かっているなら飛び出して行くわよ!!父親なら守れよ!』 茫然とアリサを見上げ、殴られた頬をさする。 『俺は…俺には……』 涙目になりながら頭を抱えて苦悩する。 『早く!何でもいいから…お願い…言ってよ!』 焦りと心配からアリサの目にも涙がたまる。 『わ…若西が…あいつらがエリナを…』 頭が真っ白になった。 エリナを守るため綾と付き合い、母親を守るため紗織と付き合い。 結局は若西の誰かがエリナをさらった。 『なんで……うまくいかないの……』 無力感を味わっている暇はない。 若西の事なら紗織を使うのが一番いいと思い、アリサは紗織を呼び出した。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12216 / inTopicNo.86)  CLUB ANGEL's LW ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(73回)-(2005/08/21(Sun) 02:13:25) 短い呼び出し音。 すぐに紗織が電話にでた。 『どうしたの?めずらしいじゃない』 アリサからの初めての電話に、受話器ごしから聞こえてくる紗織の声は弾んでいた。 期待している紗織にエリナの事を話すか迷ったが、躊躇している暇は無かった。 『エリナが…紗織の所の誰かに誘拐されたの』 沈黙がつづいた。 紗織の返事を待たずにアリサは言葉を投げ掛ける。 『お願い…今頃何をされてるか…何でも紗織の言うこと聞くから…お願い…』 アリサの泣き声に、紗織は吸っていたタバコを消して車を出す。 『アリサ、今どこにいる?そっち向かうから』 『え…今は…店の前に…』 『分かった』 紗織との電話が切られた。その後すぐに掛け直したが繋がらず、何をしていいか分からないアリサは店の前に座り込んでしまった。 〔お願い…エリナ…無事でいて…〕 10分後、ブレーキ音と共にスポーツカーが目の前に止まった。 助手席の窓が開けられ、紗織が乗って、と合図を出した。 信号の待ち時間すら気に障るように、アリサは顔の前で手を組んだ。 願うようなアリサの仕草に心がえぐられる。 それでも紗織は車を走らせた。 大きな門をくぐり、人の歩く道でありながら紗織は庭まで車を入れて玄関先で車を停めた。 『ここ。アリサは私の恋人を演じて…』 [恋人を演じて] 思わず紗織を見た。 その顔はもう、傲慢で身勝手だった昔の紗織ではなかった。 『さ、行くよ!』 アリサの手を引き、紗織は堂々と屋敷に入っていった。 『お帰りなさいませ』 この前の運転手が紗織に挨拶をし、後ろにいるアリサに気が付き会釈をする。 『うん、私の離れには誰も近寄らせないでね』 すっとアリサの腰に手を回してキスをする。 『かしこまりました。』 運転手の姿が見えなくなる曲がり角まで行くと、紗織は小さく謝って回した腕を解いた。 『いいよ。エリナはどこか分かるの?』 凛としたアリサの横顔に目を奪われるが、すぐに目を逸らして自分の部屋へと連れていった。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12222 / inTopicNo.87)  CLUB ANGEL's LX ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(74回)-(2005/08/21(Sun) 04:02:10) ――昼・PM2:00 ―― 紗織の話からすると、昨夜明け方近く、自宅に部下が誰かを連れにきたと言っている。 行き先は紗織の母親、恭子の部屋がある棟らしい。 焦るアリサはすぐにでもそこへ行きたかった。 棟の場所を確認すると、そのまま部屋を出ていこうとする。 『下手に動かないで。不審者だと思われたら追い出されるか殺られるかだよ』 いつもよりも強い力でアリサの腕を掴み、アリサの安全を思っての事だった。 『ごめん…つい…』 顔を俯かせ、アリサはソファに座る。 『仕方ないよ。アリサにとっては大事な人だから』 アリサと顔をあわせずに紗織は言うと、地図らしき物を取り出した。 『母さんの棟には地下室がある。そこは物置につながっていて、鍵は簡単に外せる。場所は私の部屋のすぐ近くに繋がってるの。だから…』 赤いペンで矢印を書き、アリサに分かりやすく説明していく。 なるべくその場所にいても自然に見えるように会話が決められ、たくさんの合図が決められた。 『それに母さんは昼間に女を抱くことは……っ…』 アリサを気遣い言葉につまる。 『…続けて…』 冷静に今やるべき事を理解しているアリサは、自分の感情を必死に抑えた。 アリサの深い気持ちを知り、紗織は話を再開させる 『昼間は抱かない…。だから行動は夜…。母さんは部屋を出るときに必ず決まったメイドを呼ぶの。メイドを呼ぶときは電話を使うから、ランプが付けば会話を聞けるわ。』 『じゃあ、ランプが付いて呼び出しの電話なら私たちは地下から行くのね?』  頷く紗織。アリサが自分と別れた明け方にさらわれたなら、翌日アリサが仕事をしている時にはすでに抱かれていた事になる 遣り切れない思いで、アリサはひたすら夜を待った。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12226 / inTopicNo.88)  CLUB ANGEL's LY ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(75回)-(2005/08/21(Sun) 06:52:24) ――昼・PM3:00 ―― 鉄格子から昼の光が差し込み、ベッドに横たわるエリナを優しく包み込んだ。 体中が軋み、下半身からは味わったことが無い痛みが込み上げる。 「っ……」 痛む体を引きずるようにしてバスルームへと向かう。 お湯はすでに用意されていて、24時間いつでも入れるようになっていた。 浴衣を脱ぎ、ゆっくりと足先から湯槽へとつかる。 エリナの泌部には想像以上にひりひりとした痛みが走り、歯を食い縛ってこらえた。 体も撫でるようにしか洗えず、殺菌の為にも泌部を洗う。 「痛い……エグ‥グシュ…もう嫌だよぉ…ヒック…」 こんな痛みに自分が惨めな思いをしなければならない屈辱感から、今まで堪えていた涙が一気に溢れだした 涙はシャワーに流され、随分と泣き続けた事で苦痛は和らいだように思える。 風呂からあがり、冷蔵庫から水を取出してベッドに座る 「…今日もやられるのかな…。」 想像しただけでゾッとした。冷たい瞳は、エリナの苦痛に満ちた顔を見た途端に光を放ったのだ。 鈍く光る、貪欲な瞳。 エリナにとって初めて恐怖を抱いた人間だった。 光は帰ってしまう。 代わりに闇を連れてきて。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12276 / inTopicNo.89)  え? ▲▼■ □投稿者/ まみ 一般♪(9回)-(2005/08/22(Mon) 22:38:06) ガ〜〜ン( ̄□ ̄;)!! Aさんに変態言われたーo(>_<)o しかもホントにエリナちゃん、大変なことになってるし!(*_*) 闇の向こうに明るい光は見えるんでしょうかね〜?? (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12312 / inTopicNo.90)  Aさんへ ▲▼■ □投稿者/ さゃ 一般♪(6回)-(2005/08/24(Wed) 09:46:48) 二人には近づいちゃ駄目なんですか。笑 てか今度は エリナが犯されてる…  (;_;) アリサ早く助けてぁげてー(>_<) 続き楽しみにしてます♪ (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12370 / inTopicNo.91)  Aさんへ♪ ▲▼■ □投稿者/ 雅 一般♪(49回)-(2005/08/26(Fri) 03:07:20) 初感想に参上しました(笑) 前から、ずっと、読ませてもらっていました。 こんなクラブがあったら、最高に楽しいなぁ。。エヘヘ な〜んて想像しながら読んでました。 エリナさん・・どうなるんでしょうね・・。 続き、ゆっくり待ってま〜す(^o^)/ 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12699 / inTopicNo.92)  CLUB ANGEL's LZ ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(78回)-(2005/09/06(Tue) 00:40:30) ――夜・PM22:00 ― 鈴虫の聞こえる窓辺に、アリサはぼんやりと視線を向けていた。 紗織が運んできた食事には手を付けず、ひたすらエリナの安否を祈っていた。 『…アリサ。辛くても食べないと…』 何時間も食物を口に運んでいないアリサを見兼ねて強引に食べさせようとする。 『いらないって言ってるでしょ!!』 紗織が持っていたトレーを払い除けた。食器は床に叩きつけられて料理は無残にも散らばった。 『………』 紗織は無言で散らばったものを片付ける。 アリサの瞳にはうっすらと涙が溜まっていた。 『紗織…ごめん…私が片付ける…』 『いいよ。』 食器に手を掛けるアリサの腕をそっとどけ、紗織は手早く片付けを済ませた。 無力感で小さくうずくまるアリサの肩を紗織は優しくさすり、少しでも不安を和らげようとした。 その時、部屋の内線電話にランプが点灯した。 急いで電話の主を確認する。 『母さんだ…』 受話器を取り、話を聞く。 [私よ。いつもの道具とタオル…お願いね。] ほんの数秒の会話。紗織はアリサの手を引いて窓の外にある庭へと向かった。 薄暗い茂みを抜けると、大きな池があり、紗織は池の近くにある鉄の蓋を持ち上げた。 『ここから行くのね…』 月夜の光すら届かない暗い穴の中からは、空気の流れる不気味な音が響いていた 紗織はペンライトを二つ取り出して一つをアリサに手渡した。 『早く行かないと。私の後にちゃんと付いてきて』 そう言うと紗織は梯子に掴まって降りていった。 〔待っててね…エリナ…〕 二人の影はどんどん闇に飲まれていった。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12712 / inTopicNo.93)  まみさんへ ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(79回)-(2005/09/06(Tue) 10:24:27) 書くのだいぶさぼりました(>_<)やっと話が動きだしますよ〜(´∀`) エリナにそろそろ光が見えだすんですが!何が起こるかわかりまちぇん♪またチマチマ書いてくようにします☆ (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12713 / inTopicNo.94)  さやさんへ ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(80回)-(2005/09/06(Tue) 10:28:33) 久しぶりデス(・∀・)♪ アリサがやっとエリナを助けまぷ♪遅いんすよ☆ 話が一気に進みます♪〔予定だから期待しないで☆〕夏休みボケでダルイれす↓さやさんも体調気を付けてね(>_<) (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12714 / inTopicNo.95)  雅さんへ ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(81回)-(2005/09/06(Tue) 10:33:54) 前から読んでもらってて感激です(≧∀≦)私もこんなクラブあったらいいなぁって思って書いてますよ☆ ビアンのクラブって無いのかなぁ(´^`)↓私は働きたいですね☆ お客さんに〔好みの〕めっちゃサービスしてあげたいですし★笑 じゃあ続き書いたんでよかったら読んでくだしゃい♪ (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12718 / inTopicNo.96)  いいですぅ♪ ▲▼■ □投稿者/ ももみん 一般♪(1回)-(2005/09/06(Tue) 23:53:19) お初です☆彡 凄く 楽しみに読んでます!これからも楽しみにしてます♪ (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12968 / inTopicNo.97)  すご〜いっはまっちゃいましたぁ(=^▽^=) ▲▼■ □投稿者/ こまち 一般♪(1回)-(2005/09/19(Mon) 08:41:13) めちゃ続きが知りたいですぅi。これからどうなるのか『どきっy×2』『わくっy×2』ですぅ。(*^o^*)続き楽しみにしてますねっy (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12969 / inTopicNo.98)  ワクワクしますね♪ ▲▼■ □投稿者/ 雅 ちょと常連(65回)-(2005/09/19(Mon) 13:09:39) http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/ あ〜、いいですねぇ。どうなっちゃうんだろう・・と 一人妄想に入っちゃってます♪(笑) それにしても、緊迫感ってなんか、いいんですよねぇ。 やっぱSM趣向のせいかしら。ウフフ(照) ボチボチ、お互い頑張りましょうね♪応援してますよ♪(私も、ここのそっち系で頑張ってます。) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■12981 / inTopicNo.99)  CLUB ANGEL's L[ ▲▼■ □投稿者/ A ちょと常連(82回)-(2005/09/20(Tue) 01:14:12) 「はっ…ぁ…はっ…」 『…可愛い顔…』 四つんばいで後ろから突き上げられているエリナの呼吸はすでに乱れていた。 大きく広げられた秘部は綺麗に剃られ、ピンク色のエリナの肉が見え隠れしていた。 荒々しく軋むベッドで、必死に耐えるエリナを楽しむように恭子は攻め立てる。 『ふふ…本当はあなたが苦しむ顔をもっと見たいのだけど、快感に浸る顔は…まだ見たことが無いわ…』 そう言うと、恭子はメイドから預かった箱から何かを取り出した。 突き上げられる感覚からの、束の間の休息にエリナは虚ろな瞳で恭子の動きを追った。 『ほら…。少し冷たいだろうけど、じきに慣れるわ』 長い指がエリナの綺麗な秘部に当てられる。 「ゃ…あ……冷たい…あっ…何…したの?」 エリナの声を無視して、恭子はうっすらと笑みを浮かべて丹念に液体を塗り込んでいく。 『あと、これ。ちゃんと飲み込むのよ』 半ば強引に口を広げられ、エリナは小さな錠剤を飲まされた。 「っ…ケホ…ケホ…」 乾いた口内に無理矢理入れられた薬を飲み込まされた為に、思わず咳き込んだ。 『あら、仕方ないわね。ここまでするつもりは無かったんだけど…』 そう言うと恭子は箱からジュースのようなビンを取り出して蓋を開けた。 『飲みなさい』 恭子の差し出した物を一瞬受け取るかためらったが、喉の渇きと異物感を無くすために渋々手を伸ばした。 「…はぁ…っ…コレは…何なの?」 濡れた口元を手で拭き取り、ビンのラベルを探す仕草する。 『余裕そうね…。それが何なのか、知る必要は無いでしょ?あなた自身が答えを教えてくれるわ…』 ギッと恭子がベッドに乗り、ゆっくりとエリナに近づいてゆく。 やがて互いの頬が触れ合う程になり、恭子は優しくエリナの頬に手を添えた。 ドクン エリナの身体が大きく脈を打った。 「…何…身体が……」 血が全身を駆け巡っていく感覚。 『思ったより効き目が早いわね…』 頬にあった手を、鎖骨に滑らせていく。 「あ…っ」 普通なら何とも無いような軽い刺激にすら反応するエリナ。 その様子を満足気に見届けると、恭子はエリナを押し倒した。
続く