■play of words  
□秋 (2006/03/02(Thu) 02:22:18) 

 気まぐれな戯れに、
付き合ってくれてありがとう。


言葉遊びをしましょうか。



私は全くと言っていいほど信仰心は皆無だけれど、それでもやはり死者は空へと住まうのだと信じずにはいられない。 だから可愛い可愛いウサギのリックが私の元から消えた時、空に手向けの花を捧げてみたのだが、 悲しいかな、天高く投げた花束は重力を考慮しなかった私に向かって容赦なく降り落ちて、 それを横目で見ていた彼女に「馬鹿みたい」と言われたり、何だか散々だった。 ひらりと私に後ろ姿を見せ。 「もしわたしがもう会えない人になっても、そんな事しないでね」 そう言い捨てて、相変わらず自分勝手な彼女はすたすたと先を行ってしまう。 慌てて背中を追いながら。 「めそめそされるの大っ嫌い」 厳しい言葉が胸を打つ。 そしてどこまでも勝手な彼女は、ふらりとひとりで逝ってしまった。 どこまでも人の話を聞かない私は、やはりぼんやり空を見上げては空へと花を贈るのだ。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■13791 / inTopicNo.3)  【yearning】 ▲▼■ □投稿者/ 秋 一般♪(14回)-(2006/03/02(Thu) 02:25:15) 小さなカウンターを隔てた向こうで、ガッシュガッシュと尖ったピックで氷を砕く無口なあなた。 拗ねたふりして「お喋りしないの?」尋ねても、「まだ開店準備中」ぶっきらぼうに一言言うだけ。 いいわ、待つわよ。いつまでも。 その氷であたしに美味しい水割りを作ってくれるんでしょう? その為なら待つわ。 「シーバス。ダブルでね」したり顔でそう言うあたしに、慣れた手つきで瓶を掴んだあなたは「生意気」ふっと笑って目を細めた。 …あぁもう、待つわよ。いつまででも。 あなたが振り向くその日まで。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■13792 / inTopicNo.4)  【go】 ▲▼■ □投稿者/ 秋 一般♪(15回)-(2006/03/02(Thu) 02:26:43) ─好きよ。 場所も時間も無遠慮に鳴く着信音。 ちらりと目をやったディスプレイにはただの三文字が映し出される。 指先一本で語れる、そんなお手軽な愛だ。 私もすぐにかちかちとボタンを押して、安っぽい愛を囁いてもいいのだけど。 ここはひとつアナログになって、両腕いっぱいで伝えよう。 さぁ、あなたの元まで出掛けようか。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■13839 / inTopicNo.5)  【out】 ▲▼■ □投稿者/ 秋 一般♪(16回)-(2006/03/06(Mon) 23:54:30) 「さよなら」 グラスの中の氷はもうすっかり溶けていて、一口含んだアイスティーはやはり薄まっていた。 それに構わず水のようなそれをごくごくと飲み下し、ようやく彼女のその声が耳に届いた時でさえ、「うん?」なんて間抜けに聞き返した。 だって「天気がいいからどっか行く?」って言うみたいな、いつもと変わらない軽い口調だったから。 「さよなら」 けれど彼女は先程と吋分違わぬ一言一句を繰り返したので、成程、聞き違いではないらしい。 あぁそーゆー事。 そして彼女は、まるで最初からそこにいなかったように小さなふたりの部屋から出て行った。 消えたのはボストンバック一つ分の彼女の一切。 なんて手軽、なんて身軽。 そうして残されたあたしは空っぽで、手にしたグラスも空っぽで。 あなたがいなくちゃこの部屋には何の意味もないのにと、彼女が消えたドアをじっと眺めた。 もうそこがあたしの望む誰かに開かれる事などないって、とっくにわかっていたけれど。 あの娘に愛を囁く唇で、 あたしにサヨナラを告げるんだ、あなたは。 そんなあなたが、 憎らしくて、 腹立たしくて、 けれどどうしたって 愛おしいのです。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■13840 / inTopicNo.6)  【thief】 ▲▼■ □投稿者/ 秋 一般♪(17回)-(2006/03/06(Mon) 23:55:59) 廊下でばったりと、普段挨拶もろくにせず無言で睨みつけてくるだけのクソ生意気な後輩と遭遇した。 私の姿を捉らえても、やはり相変わらずの無視を決め込んで脇を通り過ぎようとするので、私もそのまますれ違おうと歩みを進める。 どん、と。 強く肩がぶつかった。 少しでも頭を下げたのならまだ可愛いげがあったものを。 顔を上げてこちらを見たそいつは、煩わしそうにちらりと私に一瞥をくれただけだった。 かちんときて。 何食わぬ顔で去ろうとする後輩の肩を掴んで強引に振り向かせる。 「何か用?」とでも言いたげな目。 なんて生意気。 それをやんわり無視して、強く強く唇を重ねてやった。 目を丸くする、後輩。 何が起きたかをようやく理解して私を睨みつけたけれど、もう遅い。 耳まで染まったその赤さを、隠しきれてないからね。 こーゆーのは、奪ったもん勝ちだよ。 にやにやと笑う私を、真っ赤な顔してひたすら睨む後輩。 怒りからではない事に気付いてしまっている私には、もはや恐るるに足りずだ。 その新鮮な反応に。 なかなか可愛いじゃないか、初めて彼女をそう思った。 今度は何を盗んでやろうか。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■13841 / inTopicNo.7)  【for】 ▲▼■ □投稿者/ 秋 一般♪(18回)-(2006/03/06(Mon) 23:56:57) 今日のあいつは何だか元気のない顔をしていた。 同僚に話し掛けられればへらへらと締まりなく笑うし、 あそこの路地裏に美味しいパスタ屋ができたよとか、相変わらずオフィスの話題の中心にいる。 けれど時折覗かせる、浮かない顔と上の空。 私は、席を立って喫煙室へと向かう彼女の背を追い掛けた。 シガレットケースから煙草を取り出している彼女に、「ねぇ」声を掛ける。 ゆっくり振り向いた彼女は、「ん?」やっぱりへらっと笑った。 『元気ないね』 『どうしたの?』 『何かあった?』 そんな事はどうでもいい。 「今晩飲みに行くよ」 唐突に言うと、 「へ?」彼女は笑みを忘れて目を見開いた。 「今日はとことん飲むから、付き合いな」 ちらりと目だけを向けたら、 「…うん、へへ」 目尻を下げて、ようやく私の好きな笑い方をした。 誰かの為に、なんて。 らしくはないのかもしれない。 だけどさ、 友達じゃん。 あんたの事好きだから。 元気になれる方法を考えよう。 それまで私といればいい。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■13843 / inTopicNo.8)  【rain】 ▲▼■ □投稿者/ 秋 一般♪(19回)-(2006/03/07(Tue) 23:38:47) 久し振りに見た国府津の海は、ただひたすらに優しかった。 だから思わず緩んでしまったものがいくつかあっても、それは仕方がないのだと思う。 ─3ヶ月なの。 そう。 ─籍は入れるつもり。 それがいいと思うよ。 ─ごめんなさい…。 何で謝るの。 ─………。 ねぇ。 ─……なに? おめでと。 ─……っ。 おめでとう。 ─ありがと…っ。 うん。 ─ありがと…ごめんっ…ありがとう……! 幸せに、なってよ。 最後まで私は笑っていて、最後まで彼女は顔を上げなかった。 私が、自身の匂いが強く残る彼女の部屋を去って故郷の海へと戻る日も、「私の事恨まないの?」そう言われた時でさえ。 「元気な赤ちゃん、産んでよね」 玄関の前で振り返った私は、答える代わりに笑った気がする。 もう元には戻れないと知っているから、どこまでも優しくなれるのだ。 海は、穏やかに凪いでいた。 「相変わらず磯臭いな…」 潮風に頬を湿らせ、独りごちる。 霞がかった空を仰いで。 明日は、荒れそうだ。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■13844 / inTopicNo.9)  【nightfall】 ▲▼■ □投稿者/ 秋 一般♪(20回)-(2006/03/07(Tue) 23:40:23) あなたがひとりになれるのは、瞬きをする一瞬だけ。 長い睫毛が陰になり、悲しみまでも伏せてしまうの。 お酒は強いと自負してます。 だからとことん付き合いますよ。 聞き上手だと言われます。 だからじっくりお相手しますよ。 陽が落ちるまで待ちましょう。 夜になったら会いましょう。 誰彼時の逢瀬なら、表情までは見えないでしょう? いいのです、つまらなければ無理矢理笑顔を作らなくても。 いいのです、悲しみの途中に突然の可笑しさが込み上げて笑みが漏れても。 呼んでください。 どうかどうか。 呼んでください。 早く早く早く。 私の名前を。 あなたと繋がる為に在る、私の名前を。 ねぇ、 気付いているんでしょ? 叫びます、傷ついている友人に。 叫びます、届いてほしいと。 私にしては珍しい、消極的な積極性で。 いくつの夜も越えましょう。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■14222 / inTopicNo.10)  【laugh】 ▲▼■ □投稿者/ 秋 一般♪(2回)-(2006/04/17(Mon) 13:55:13) あぁ、嫌な所に遭遇した。 隠れて煙草を吸おうと校舎裏へとやってきたあたしは、足を止めて思わず舌打ちをした。 「…ごめん」 「謝んないでよ〜。他に好きな人出来たならしょうがないよ、うん」 「お前強いな。こんな状況でも笑ってて」 「あはは、それしか取り柄がないもので」 「別れ際に笑ってられる程度の気持ちだったんだろ?」 「…え?」 「俺の事大して好きじゃなかったんだろ。そのお陰でこっちも罪悪感感じなくて済むけどな」 「へへへ…」 彼女が一人残された時、くわえ煙草でのそのそ近付く。 「ばかみたい」 煙を吐き出しぶっきらぼうに言うあたしに、 「もー、また学校で煙草吸って〜」 マスカラでぐちゃぐちゃになった顔を向けて、怒る振りをしながら笑った。 笑える人は強いのだ。 優しい人は独りで泣くのだ。 まだ彼女が声を上げられる場所ではないあたしは、 駅前で貰ったティッシュを取り出し、そのパンダ目を拭ってやる事しかできない。 それでも彼女は「ありがとうー」と、情けない顔をしながらも、笑う。 だからあたしも、つられて苦く笑ってしまう。 まったく、敵わない。 本当に。 笑える人は強いのだ。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■14223 / inTopicNo.11)  【handclap】 ▲▼■ □投稿者/ 秋 一般♪(3回)-(2006/04/17(Mon) 13:56:37) 私の夢はお嫁さんです。 ただのお嫁さんではありません。 あの人の、花嫁になりたい。 けれどそれは、どうしたって叶わないので。 口にすれば、いつだってあの人を困らせてしまうだけなので。 いつまでも私は、夢を見続けるのです。 しかしながら、 最近になってようやく気付く事ができました。 私はあの人の花嫁になれやしないし、 あの人は私の花婿にはなれないけれど。 ふたりで居る事はできるのだ、と。 あの人が隣で笑う日々は、それはそれは幸せだから。 紙キレ一枚に誓う愛などいらないと、私はようやく気付いたのです。 だから、願いません。 あの人とのこの先以外は。 何も、いりません。 それでも、ささやかな何かを望んでいいのなら。 純白のドレスを纏って寄り添うふたりへ。 皆さん、どうか。 どうか、小さな拍手を。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■14224 / inTopicNo.12)  【pillowtalk】 ▲▼■ □投稿者/ 秋 一般♪(4回)-(2006/04/17(Mon) 13:57:51) 隣で眠る彼女がもぞもぞと動く気配がした。 「ねぇ、まだ起きてる?」 掛けられた声の方へ寝返りを打つ。 「眠れない?」 手を伸ばすと、わずかに冷えた彼女の頬に触れた。 「寝たくないの」 私の手に自身の手の平を重ねた彼女は、吐息を漏らすように答えた。 「何だかもったいなくて」 くすりと笑う。 「…二人で夜を過ごすのが?」 私は彼女の小さな頭を引き寄せた。 「そう、二人で夜を越えるのが」 目が覚めれば一緒に朝も迎えるよ、耳元で囁くと「ほんと嘘みたい」また小さく笑った。 「今度はいつ、こんな夜が来るかしら」 独り言のように呟く彼女は、何だか心許ない。 「寝るわ」 私に答えを求めるでもなくそう言うと、私の腕からすり抜け、枕に顔を埋めた。 「もうちょっとお喋りしようよ」 私を起こしたのはあなただ、拗ねた口調で言ってみせたら、小さく吹き出す声が聞こえた。 「子供みたい」 「どうせ」 「いいわ、どんな話を?」 「そうだな…それじゃあ少し未来の話を」 布団の中で彼女の手を探り出す。 指と指とを絡めて。 「この旅行から帰ったら、一緒に住もうか」 細く華奢な彼女の指は、強く強く私の手を握り返した。 そんな、或る夜のお話。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■14225 / inTopicNo.13)  【know】 ▲▼■ □投稿者/ 秋 一般♪(5回)-(2006/04/17(Mon) 13:58:57) がたがたと電車は走る。 平日昼間、田舎町のローカル線。 降り損ねてしまったあたしと彼女は、がらがらの車内で肩を寄せていた。 「今頃2限だ」 「数学か。プリントやってないや」 「やってても無意味じゃない?」 「そりゃそうだ」 他に乗客などいないのに声を潜めて、くだらない話にくすくす笑う。 「さて、どうしよう」 「そろそろ引き返す?」 「遅刻ついでだ。どうせなら終点まで行こう」 あたしはこくんと頷いた。 沈黙の中、ゴトゴトと軋む車輪の音がやけに大きく響く。 あたしは彼女の肩に頭を傾け、寝た振りをした。 それに気付いた彼女が「寝た?」尋ねても。 あたしはくぅくぅとニセモノの寝息を立て続ける。 彼女はほっと息をつき、「今日は、付き合ってくれてありがとう」呟いた。 「先生と不倫してる、なんて。驚かせちゃったね」 ゆったりと言う。 「でも昨日でちゃんと終わらせたから」 泣きそうな、優しい声だった。 あなたの終点が、あたしだったらいいのに。 「…好きよ?」 目を閉じたまま小さく漏らすと、 「知ってる」 苦笑するような、けれど柔らかなあなたの声が耳に届いた。 あたしの終点は、いつだってあなただ。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■14226 / inTopicNo.14)  【we】 ▲▼■ □投稿者/ 秋 一般♪(6回)-(2006/04/17(Mon) 13:59:55) ふたりで映画を観ていると、必ず彼女の機嫌を損ねる。 「一緒にいるのに何だか独りぼっちなんだもの」 そんな事を言われても、私は大の映画好きで、誰と居ようが一人で観ようがその世界にとっぷり浸ってしまうのだ。 困ったなぁ、苦笑する度に彼女は頬を膨らませる。 その仕草が小動物のようで、それはそれは愛らしいものだから、 昔飼っていたハムスターを思い出してめちゃくちゃに甘やかしてしまいたくなる。 「映画の後は構いたがりね」 本当に気まぐれなんだから、溜め息を吐く彼女にちょっかいを出しては睨まれて、それでも愛しくて堪らない。 その内にソファへと腰掛け大好きな推理小説を読み出す彼女は、べたべたと引っ付きたがる私を煩わしそうに払い除ける。 終いにはしっしっと犬にするそれのように、手をひらひらと振る始末だ。 私がうーと唸ってみせても、彼女は全く見向きもしない。 何とも言えない寂しさ。 ふと、思い当たって。 私のあれも。 彼女のこれも。 つまりはそう、同じ事。 だから黙って彼女の横にちょこんと座ると、視線を本へと落としたまま私の頭を優しく撫でた。 今度二人並んで映画を観る時は、隣へとそっと手を伸ばしてみよう。 (携帯) 引用返信/返信 削除キー/ 編集削除 ■14227 / inTopicNo.15)  【end】 ▲▼■ □投稿者/ 秋 一般♪(7回)-(2006/04/17(Mon) 14:00:57) 前の恋人に似てるんですって、私。 だからあなたと付き合っていたのだと、別れを切り出されちゃいました。 申し訳なさそうに顔を伏せて何度もごめんなさいを呟く彼女が何だかいたたまれなくて、 あぁこの華奢な肩を今すぐ抱き寄せてはいけないだろうか、などと別れ話の最中に本気で考えていた私です。 だってね、私。 悲しみよりも怒りよりも、何よりも先に。 その人に似ている¨私¨という存在があなたの救いになっていたのなら、私はそれで構わないのに。 ただ単純に。 心の底からそう思ったんです。 だってそれは私にしかできないんだから。 例え代わりだったとしても。 素直にそう伝えると、 「馬鹿ね…」 なんて悪態を吐きながら、彼女はようやく今日初めての笑顔を見せてくれました。 「私」を好きになっていきたい。 そう言ってくれたから。 私には小さくこぼれたこの言葉だけで十分です。 気まぐれなあなたに付き合えるのは、私だけでしょう。 戯れが過ぎる私に付き合えるのも、あなたしかいないのです。 今まで、を終わらせて。これから、を始めませんか。 ねぇ? 私と貴方で。
完 面白かったらクリックしてね♪ Back PC版|携帯版