夏の思い出  投稿者:あや 投稿日:2003/07/17(Thu) 23:51:45 No.1716


 それは昨年の今頃の話。 私は受験生で、彼女もまた同じクラスで… 私は彼女が好きだった。 彼女はそんな事など知るはずもなく、友達として私に接する。 私は下級生から告白される事が何度かあったし、彼女はそれを知ってたけど、私が同性を好きな事は知らなかった。 だから友達として付き合えた。  あれはそう…夏休みに入ってすぐの頃。 受験生に休みがあるはずもなく夏期講習で学校に来ていた。 彼女−朋香も同様に。 受ける科目は違ったけどお互い授業が終わると階段とか空き教室でだらだら話したっけ。 進路の事、受験の事、恋愛の事… そう。 あの頃は一緒にいるだけで、話ができるだけで嬉しかったんだ。 でも私の中の朋香を想う気持ちは日に日に増していった。 なんでだろう。 側にいられるだけで満足だったのに。  あの日も夏期講習が終わった後教室で話していた。 朋香はいつものように笑い、私はいつものようにそれを見て。 自分の中のどす黒い感情を感じながら。 彼女が余りにも無防備だから。 余りにも私を信頼しすぎるから。 ごめんなさい。 私の理性はもろいんです。 簡単に欲望に負けるんです。 気付いたら私の下に朋香がいた。 無意識的に私は彼女を組み敷いていたのだ。 朋香は何が起きたかわかっていなかった。 「何?どうしたの?」とでも言いたげな目。 私は妙な苛立ちを覚えた。 彼女が悪いわけではない。 でもその時は彼女に対して腹が立ったのだ。 気付けよ!いい加減気付いてくれよ! 朋香が好きなんだよ。もう限界だ…。 私は言葉にならない憤りを感じ、そのまま彼女にキスをした。 一瞬彼女の動きが止まり、その後何が起きたか理解したようだ。 勢いよく彼女の平手が飛んできた。 「何すんの!?」 あーぁ、せっかくここまで信頼築いたのにな。 しょうがないか。 「…したかったんだよ。隙見せる方が悪いんだろ」 「信じらんないっ!」 そりゃそうだろう。 「誰にでもこんな事するの?てゆーか女の子好きなの?」 「…キスぐらいでわめくなよ。ちょっとからかっただけなのに」 もう一度朋香の平手が私の頬を打った。 「…ばかっ!」 教室から出て行き廊下を駆けてく朋香の足音。 あぁ遠ざかる…最低だ。 最後に朋香は泣いていた。…気がする。 あいつ、強がりだからな。 私の前でしか泣けないからな。 でももう関係ないか…。 ちゃんとした告白もできず、私の恋は最悪な形で幕を下ろした。 でも好きだったよ。 からかいなんかじゃない。 朋香だからしたんだ。 私の声は届かない。