キャンディ Honey 2003/09/25(Thu) No.2531
ガチャ… テーブルの上に車と部屋の鍵を置く。 「キャンディ…」 私の呼ぶ声に、寝ぼけまなこで振り返る。 「ミルキー…」 こんな風に呼び合うようになってから久しい。 きっかけは単純。 ここにいる最愛のひとが、昨年のハロウィンの仮装パーティに、キャンディキャンディの仮装をして参加していた事に由来している。 「ねー…なんでキャンディキャンディ?」 「え?可愛いから」 「へー…そう…」 「あなた1人?」 「うん」 「はじめまして」 「はじめまして」 最初から、すーっと溶けあうキャンディのような関係だった。 しどけない寝姿で、ベッドに横たわる、愛しい人… 「寒かったでしょ…おいで?」 上着を脱ぐのももどかしく、キャンディの胸の中に飛び込んだ。 「よしよし…」 こぼれる微笑みに、たまらない温もりを感じる。 目を閉じて、がむしゃらに抱きついた。 「ミルキーは本当に甘えたがりね…」 あやすような優しい声に、焦れて身をよじる。 「こんぺいとう…買ってきた」 「ありがとう」 キャンディはこんぺいとうが好きだ。 変なものが好きだなと思ったが、今はそんな変わった所も全てがいとおしい。 「欲しい?」 無言で頷いた。 色とりどりの星々をグラスに注ぎ、嬉しそうに眺めては少女のような笑みを浮かべ、1粒ずつ口へ運ぶ。 何か、儀式を見ているような幻影が頭をかすめる… アロマポットに燈った明かりが瞬きゆらゆらと影が揺れ、ガラスの中の水面に浮かべた水蝋が、 時折パチパチと芯を燃やす音を立てると、炎が高くなり、また揺らぐ。 ミルキーって呼び名はキャンディがつけたもの。 それは私が乳離れしてない子供みたいに、ごくたまにどうしようもなく甘えるせいだ。 「はい…」 キャンディの舌の上でこんぺいとうは丸くなり、私の舌の上を転がる… 目を閉じたまま、口の中に広がる甘さを追いかけ、堪能する。 気配を感じまぶたを開けると、キャンディが微笑んでいる。 「おいしい?」 「うん…甘い…」 手をのばし、キャンディを抱き寄せる。 はぁ… 自分の甘い吐息が聞こえる…また目を閉じて、熱い体にすがった。 優しいキスが、星のように静かに降ってくる…キラキラ…さわさわと… こんぺいとうの甘さと、キスの甘さが胸に滲みてくる頃、キャンディが欲しくてたまらなくなる。 「欲しいよ…」 「いいよ」 相変わらず甘い笑顔… この一瞬に、全ての幸せがつまっていると感じさせる いつまでたっても好きでたまらない。 触れたくて手をのばし、抱いて抱かれると、胸の中に甘く切ないメロディーが流れる。 この部屋に入り、鍵をかけた瞬間から、キャンディ以外の事はどうでもよくなる。 この人のいる所が、自分のいるべき場所なのだと、命がそう感じる。 帰るべき場所を探してさまよっていた私の魂が、やっとたどり着いたのは、この人の胸の中だった。 「キャンディ…」 「ん…」 「もっと…」 求めて求めて、首に、乳房に、めちゃくちゃに吸い付く。 そんな私を微笑みながら見つめ、いとしい人は最中に頭をなでる。 「んー…っくぅ…」 「なぁに?泣いて…」 「わからない…キャンディが好きだから」 「ふふ…かわいい人」 涙と一緒に力が抜けて、宙に浮いているような気分になると、キャンディは優しく抱いてくれる。 今までこんな事はなかった。抱かれるなんて、考える事もできなかった…でも、この人になら抱いてとさえ言える。 「はぁ…キャンディ」 「愛してるよ」 優しく明るい声… 「うん…愛されてる」 じっと目を閉じて、身を任せる…いとしいこの人に… 胸の中のメロディーがやまない。そのメロディーとシンクロして、感覚が極みに達する。 「キャンディ…ふ…ん…もっ…もうっ…」 「うん…わかった」 焦らしたり、いらぬ駆け引きをしないこの人が好きだ。 ありのまま、まっすぐに煌めいている。 その美しさに魅せられて、余計に高まる… 「ぁっ…あぁっ…」 「ミルキーが好き」 だめ押しの一言で、天国に導かれた… 「はぁ…はぁ…」 「落ち着いた?」 「…うん」 変わらぬ笑顔… きっと、ずっと、離れられない… どこにも行かないで欲しい…永遠に輝く星のように… 今夜もまた、いとしい人に抱かれて眠る。 眠りに落ちる寸前に名前を呼んだ キャンディ…
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