Sweet Angel
 Honey 2003/08/19(Tue) No.2202


同じ様な事の繰り返しが続く、退屈な毎日の中での突然の奇跡。 とびっきりの笑顔で微笑みかけてくる真っ白な天使が、目の前に舞い降りた。 「本当にいい娘さんに育って」 「本当に…自慢のお孫さんでしょうね」 お盆で、遠い親類の家を訪ねた。 10年ほど前に1度だけ来た事がある。 家の人と、母やおばがしている話を聞き流していた。 「もう中学3年になりました。よく先生からもほめられるんですよ。  笑ってるだけで皆を惹きつける不思議な子だって。何かとリーダー役だそうで」 ふーん。そんな子いたっけ? たいして興味もわかない。 「会ってきたら?奥にいるって」 「いや…いい」 ただでさえ中学1年のいとことずっと一緒にいたのに…これ以上はマジ勘弁! うちの家系は女が強い。はっきり言っておとなしい人なんて、1人としていない。 社会に出てもリーダー役してる人達ばかりだから、クラスでリーダーにならない子なんていない。 よって、めずらしくもない人種。 「そろそろ帰ろうか」 「チビ呼んできて。奥で咲希ちゃんに遊んでもらってるから」 もう1人の台風の目、やんちゃな幼稚園児を回収に向かった。 「美紀ちゃん帰るよ」 「さっちゃんに遊んでもらってた」 「そっかぁ…よかったねー」 御礼を言おうとして、作った笑顔の先には… 少しもじもじしてはにかんでる『さっちゃん』がいた。 めずらしい…うちの家系にこんな子がいたなんて… 厚めの銀縁めがね… 真っ黒な髪に女の子らしい服… まるで『素朴の塊』を絵に書いたような子。 「お世話かけたね。ありがとう」 「いえ…」 見かけの通り、大人しい。 優しくて物静かだっていってたおばさんの言葉を思い出す。 知らないうちに凝視していた。恥ずかしそうに微笑みかけてくる。 …かっ、かわいい 透き通るほど真っ白な肌と、折れそうに細い腕… あ…なんかヤバイ… もう一度微笑みかけられたら、心を奪われそう… 「今年、受験?」 「はい…」 「大変だ…頑張って」 「はい」 何気なく話した言葉に、速攻でニッコリと微笑まれてしまった…私のハートはこの時に盗まれてしまったのだ… 私は前から、子供に異様なまでに好かれてしまう。 女の子は特にくっついて離れようとしない。 2人から取り合いをされて、両方から腕を引っ張られたり、膝に乗って抱きついてきて、 トロンとした目で顔を覗きこまれたり…どう反応していいのかわからない。 恋をすれば小さくてもしっかり女の顔をする 「いやぁ…ははは」 そうやって、笑ってごまかすのがやっとだ。 幼稚園児から50才手前の『お姉様』まで、我ながらなんと広いストライクゾーンかと感心する。 「あー、こっちもさっちゃん、あっちもさっちゃんだぁ」 美紀ちゃんが大きな発見でもしたように、くりくりと目を動かして2人のさっちゃんを見比べる。 「住所…教えてください。お手紙かきます」 さっちゃんはそっとメモとペンを差し出す。 「ありがとう」 そういいながら住所を書き、渡した。 「また来てください」 「うん」 来るさ!来るとも!その笑顔の為に!