■12308 / inTopicNo.1)  あなたへの想い  
□投稿者/ 雅 一般♪(36回)-(2005/08/24(Wed) 06:05:08) 

珠美は、インドネシアにある、バリ島の某スペイン系ホテルで勤務して3年。 日本人フロント係として、外国語が不慣れな日本人観光客にサービスを行っている。 珠美の、1週間ぶりの休日だった。 エアメールで届いた分厚い大きめの封筒・・ 中身は、詩集だった。 珠美は、ゆっくりその詩集を開いた。 珠美は、静かに詩集を閉じた・・。 珠美の目に、涙が溢れた。 「帰ろう・・・。日本へ・・・。」 3年前・・・・・ 旅行代理店で勤める知り合いの紹介で日本を離れ、そこで働くことになった。 英語は、会話程度に嗜むことはしたが、インドネシア語は聞いたこともなかった ので、就職が決まってからというもの、忙しい毎日だった。 インドネシア語、おまけに、ヒンズー教徒が90%というバリ島では、生活するに おいての、ある程度の宗教的知識をつけることも必要だった。 珠美は書店に行って、バリの文化、風習などの書かれた本などを買いあさり 殆どは、インドネシア語の習得に、時間を割いた。 その日は、頭の切り替えも大事と、久しぶりに一人、スーパー銭湯に出かけた。 友人から、結構お薦めのスーパー銭湯だと聞いていたので、 少し遠いが足を伸ばして、行って見ることにした。 最寄駅から、送迎用のバスがあって、それに乗り込んだ。 大阪にこんなとこがあったのか・・・と思えるくらいに、 バスからの景色は、自然が一杯だった。 ちょっとした小旅行に出かけた気分になって、珠美は少し嬉しかった。 バスを降りた珠美は、大きく息を吸い込んだ。 (はぁ〜。山の匂い・・) 珠美は、玄関で靴を脱ぎ、靴箱に入れた。 (あっ・・100円いるのか。) 慌てて、財布を取り出した。 (えっと・・10円玉・・これ50円玉・・1円・・・。ない・・・) ゴソゴソ財布の中身を探っていたその時、背後から声がした。 「100円無いなら、これ。」 「・・・・あの・・両替してき・・ 」 珠美は、最後まで言葉を伝える間もなく、その女性は、 いきなり100円手渡したかと思うと、さっさと中へ消えていった。 (後でかえさなきゃ・・) フロント前の券売機で、入浴券を買って、靴箱キーを渡し、脱衣ロッカーの鍵を もらった。 お風呂は2階、3階らしい。 どうも、ここは天然温泉らしく、3大美人の湯と言われる○○温泉と同じ 泉質で、それより濃度が高いらしく、療養温泉として、登録されているらしい。 そしてパンフレットには、ここの女将が龍神様の夢でのお告げで掘ったと言う 不思議な話が書かれてあった。 そう言えば、建物の横に、龍神様が祭られてあった・・ (へぇ〜。そんな不思議なことってあるんだなぁ・・) 珠美は、2階から順番に温泉に入った。 (あの人、どこにいるんだろう・・) さっきの女性は、3階の露天風呂にいた。平日の昼間なので人も少ない。 珠美は、ゆっくりその女性に近づいた。 「あの・・さっきはすみませんでした・・」 その女性は、そっけなく答えた。 「いいよ。別に気にしないで。」 「後で、必ず返しますから。」 その女性は、目をつむって何か考え事でもしているようだった。 珠美は、のぼせそうになったので、その女性に、また後でと言い 立ち上がった。 「きゃーっ」 バッシャーン 珠美は、足を滑らせて、湯船に顔面からこけた。 「大丈夫?」 その女性は、珠美の手をとって、起こしてくれた。 「・・・すみません・・大丈夫です・・」 その女性は、珠美がどこも打ってないし、怪我をしてないことが分かると お腹を抱えて笑い出した。 珠美は恥ずかしくて、どこかに潜ってしまいたい気持ちだった。 「ごめん。あんまりおかしくて。。アッハッハッハ」 「・・・・・・」 「だって、だってさ、普通滑って転ぶって身体後ろにいくのに、顔面から つっこんでいっちゃうんだもん。」 その女性は、お腹がよじれると言いながら、まだ笑っている。 それを見て、珠美も自分のことながら、おかしくなってきて、一緒に笑った。 「あなた、面白いわね。」 その事がきっかけになって、智子と話すようになった。
■12336 / inTopicNo.8)  あなたへの想いA □投稿者/ 雅 一般♪(40回)-(2005/08/25(Thu) 05:43:42) 「あの、ここの常連さんですか?」 珠美が尋ねた。 「そうねぇ。この1週間は常連かしら。私、この奥に泊ってるのよ。」 智子の話によると、約1ケ月の予定で、1週間前から一人近くの旅館に泊まってい るらしく、ここのお風呂が、余りにも気持ちいいので毎日来ているらしい。 「でもさ、あんな滑稽なこけ方したの、あなたぐらいのものよ。」 クックと笑いながら、智子は、湯船から立ち上がり、岩にかけた白いタオルを 手にして、軽く顔を拭った。 珠美は、目が釘付けだった・・・。 さっきまで気がつかなかったけど、すごい身体してる・・。 贅肉など全くない、鍛えられた筋肉 括れたウエスト・・・大きいのにしっかり張ったバスト・・ 「何、じっと見てるのよ。のぼせるわよ。さ、こっちで休まない?」 智子は、さっさと、露天風呂の横にある少し休憩するスペースに行った。 珠美は慌てた。 (見てたの・・バレてる・・) 智子は、休憩スペースで持ち込んでたお茶を飲みながら言った。 「あなた、仕事は?」 「今は会社辞めてて、次の仕事のために勉強中です・・」 「何の勉強してるの?」 智子は、すっと飲んでいたお茶のペットボトルを珠美に差し出した。 「インドネシア語の勉強です。」 「へぇ〜。また変わった言葉を勉強してるんだねぇ。スッチーか何か仕事って?」 「バリ島のホテルで働くんですよ、来月から。」 「そうなんだぁ〜。やっぱ海外だと何かと大変なんだろうなぁー」 智子は、珠美の手から、サっとペットボトルを奪いゴクッと喉を鳴らして 飲んだ。そして、それをまた珠美に差し出した。 珠美は、えっ?という顔をしてると智子は言った。 「水分とったほうがいいよ。のぼせて、また顔面ジャンプしちゃうよ。クック」 珠美は赤面した。 平気にズバズバものを言うし、結構ぶっきら棒なとこもあるけど、 こういう人好きだなぁって思った。 珠美は、ペットボトルのお茶を飲んだ。
■12337 / inTopicNo.9)  あなたへの想いB □投稿者/ 雅 一般♪(41回)-(2005/08/25(Thu) 06:38:47) 「そろそろ身体も冷えてきたし、釜風呂いってみる?」 智子は、珠美を誘った。 休憩スペースの隣にある、3人も入ればいっぱいになりそうな、小さい釜のお風呂。 「はぁ〜、ほんと気持ちいい。。」 珠美は、手で腕や肩に、お湯を滑らせて言った。 智子は、そんな珠美を、にっこり笑って見つめていた。 「綺麗な肌してるね。スベスベ」 智子は、珠美の腕をなぞった。 珠美は、少しビクっとして言った。 「・・そっ、そうですか??」 「何緊張してんのよ。誰も取って食おうなんて思わないわよ。フフフ」 「あなた名前何ていうの?私は、智子。智でいいよ。」 「あっ。私、水野 珠美 みんな珠ちゃんって呼んでます。」 智子は、またプっと吹き出して微笑んだ。 珠美は何で笑ったのかさっぱりわからなかった。 お風呂から上がって、珠美は、マッサージの料金表を見ていた。 「マッサージ?よかったらやってあげようか?1,000円で。」 「100円なら考えます。」 珠美は冗談で言った。 「いいよ。じゃ、ついといで。部屋でやってあげるから。ついでに、散歩でもしよ うか。」 そう言って、さっさとフロントへ降りて行った。 珠美は、少しびっくりしたが、時間もあるし、このあたりの散策もしたかった。 「じゃ、お願いします。」 珠美は、智子について、フロントへ降りていった。 「このあたりは、街から、そう離れてないのに、水も綺麗だし、 空気がおいしいよね。」 智子と珠美は、摂津峡をゆっくり散策した。 綺麗な川のせせらぎと、まだ少し色づきだしたばかりの紅葉が、 二人の心をなごませた。 珠美は、思っていた。 誰かに、感じが似ている・・・と。 少し違うけど・・・・あの女性(ひと)に似てる・・・ 珠美は、忘れようとしていた、あの女性(ひと)と智子を 重ね合わせていた。 あの女性(ひと)、どうしているのかな。。 智子は、何気なく珠美に言った。 「珠ちゃんは、好きな人いるの?」 「うん・・いたけど・・もう忘れちゃった〜」 にっこり笑いながら答えた珠美を見て、智子は言った。 「今度好きな人できたら、ここにデートだね。」 「そうだね〜。そうなれば、いいね。」 珠美は少し寂しそうに答えた。 智子は、そっと頭を撫でた。
■12338 / inTopicNo.10)  あなたへの想いC □投稿者/ 雅 一般♪(42回)-(2005/08/25(Thu) 07:51:00) 少しゆっくり、森の散策をして智子の宿泊してる旅館へ向かった。 こじんまりした、和風の佇まいで、部屋の窓からも摂津峡の景色が見えた。 「いいですね。ここ。」 珠美は、外の景色を眺めながら言った。 「ここ、蛍もいるらしいよ。もう時期おわちゃったらしいけど。」 そう言って智子は、押入れから、敷布団を1枚ひいた。 「ほんとにやってくれるんですか?」 「ま、上手だから、試してごらんよ。御代はその後でいいからさ。」 珠美はその敷布団にうつむけになった。 智子のマッサージは本当に旨かった。下手なマッサージ師より、しっかりツボを 押えている。痛すぎないし、丁度いい揉み心地だ。 「何だか、眠気がさすくらい気持ちいい・・」 珠美はウトウトして目を閉じたまま言った。 智子は、何も言わずにそのままもみ続けた。 「はっ。」 珠美は飛び起きた。すっかり眠ってしまっていた。 身体には、薄い掛け布団がかかっていた。 「少しは楽になった?」 机のほうで、智子は、原稿用紙に何かを書きながら言った。 「はい。とっても気持ちよく昼ねしちゃいました。」 智子は笑いながら、「もう夜だよ」といった。 珠美は立ち上がって、窓から外を見ると、外は真っ暗で何も見えないが 止まる事のない、川のせせらぎが聞こえた。 智子は、ペンをおき、温かいお茶を入れてくれた。 「仕事ですか?」 珠美がのぞきこむと、原稿を裏返して「何もないよ」とさっさと片付けた。 そして、色々な話を智子にした。 今の毎日の忙しい生活の事、前に勤めていた会社のこと、そして 好きになった人を諦めようとしたこと。 珠美は余り人に言わないほうだったが、智子には素直に話せた。 自分の周りの人と関わりがないからか・・・ それとも・・あの女性(ひと)に似ているからか・・・ 智子は、うんうんと嫌がりもせず、珠美の話に耳を傾けた。 そして優しい目で、珠美を見つめた。 「いつでも、おいで・・。」
■12339 / inTopicNo.11)   あなたへの想いD □投稿者/ 雅 一般♪(43回)-(2005/08/25(Thu) 09:08:58) 食事は追加で頼んで一緒に食べたが、 帰りの送迎バスが終わっていた事もあり、珠美は旅館に泊まる事になった。 旅館の女将は、長期宿泊者ということで、周りには内緒ねと、 こっそり、布団を用意してくれた。 「何だか不思議。珠ちゃんが隣で寝てる。」 部屋の明かりを消して、二人は天井を見上げながら布団の中で話した。 「そうだね。私も、不思議。」 そう言って二人で笑った。 「今日は、私ばっかり話して・・ごめんね。」 「全然気にしないでよ。結構楽しかったよ。」 「智ちゃんは好きな人はいるの?」 「うん、いるよ。ってか、気になっている人はいる・・かな。」 「どんな感じの人?」 「んー、結構可愛い感じだよ」 「智ちゃんって、結構ロリータ趣味だったりして。年下の男の子とか?」 智子は笑った。 「私、男でも、女の子でも好きになっちゃうよ。」 珠美はびっくりした。智子には言ってないけど、私の好きな人も、女性・・。 智子は天井を見たまま言った。 「私、その人間を好きになるから。うまく説明できないけどさ・・」 「ううん。そんな事ないよ。」 「実はね・・」珠美は囁いた。 「私の諦めようとしている人って、智ちゃんに似てる・・」 智子は黙ったままだった。 珠美も静かに、目を閉じた・・。 珠美はその夜、夢を見た。 あの女性(ひと)の胸に抱かれて、安心して眠る夢を。 「・・!」 目が覚めると、隣の布団で智子の胸に抱かれている。 智子は笑みを浮かべ、小さな声で囁いた。 「いきなり布団にもぐってきたから驚いた。」 「ごめんなさい・・・あっ・・」 智子は、珠美の唇に自分の唇を重ねた。 優しいキスだった。
■12348 / inTopicNo.12)  あなたへの想いE □投稿者/ 雅 一般♪(44回)-(2005/08/25(Thu) 16:53:55) 珠美は、目を見開いた。 でも、全くイヤな気分はしなかった。 智子は、その抱きしめた腕を離そうとしなかった。 その目は、じっと珠美を見つめたままだった。 珠美の心は、智子にあの女性(ひと)を重ねた。 珠美はそっと目を閉じた。 (あ・・・感じる・・。) 智子は、珠美に舌を絡めながら、珠美の肌蹴た浴衣に手を伸ばした。 「好きだよ・・・珠ちゃん・・」 珠美の耳元で、智子は囁きながら、珠美の白い乳房を弄った。 「ああっ・・ん」 珠美の身体は、あの女性(ひと)を思い出した。 身体の内側から、どんどん熱いものがあふれ出してくる。 珠美の身体は、智子を求めた。 (もっと、もっと・・・) 智子は、それに答えた。自分も身に着けている全てを取り、そして珠美の 全てをゆっくり取り去った。 窓から入ってくる、かすかな月明かりに照らされて、 珠美の白い肌が浮き上がる・・・。 「綺麗だよ・・」 智子は、優しく珠美のその白い肌にゆっくりゆっくりと舌を這わせた。 その舌は、珠美の柔らかな膨らみの、一番感じる部分を捉えた。 「あっ、あぁぁん・・」 珠美の腕は、智子の頭をしっかり抱いでいる。 智子の豊満な胸が腹部を刺激する。 (あたるよ・・智ちゃんの固くなってる乳首・・智ちゃんも、感じてる) 智子は、舌で胸へ愛撫をしながら、その右手は、珠美の脚を愛撫する・・。 珠美は、感じた。全身が性感帯になったように・・。 触れられる全てが珠美を快感へ導いた。 智子のその手は、上へあがり珠美の熱り潤った秘部へと触れた。 「ああぁぁぁ・・ダメェ・・すぐイっちゃうぅ・・あぁ」 智子はニヤリと笑い、珠美の全てを分かってるかのように その寸前で、止める・・・ 「そんなに、すぐイカせてはあげないよ。」 智子は、その敏感な草むらを掻き分け、その溝に舌を滑りこませた。 「あぁぁぁぁっぁぁぁ」 珠美の身体は仰け反った。静かな部屋では、珠美の激しい喘ぎ声と智子の ピチャピチャと舌の音がこだまする。 その舌は、大きくなった突起した敏感な部分を刺激した。 激しく音を立て、その部分を吸い、舌は、その先端にねっとりと絡みつく。 その音がまた、珠美の脳を刺激し、更に快感を深めた。 何度も、何度も、絶頂の寸前で、止められ、珠美の身体は、もう限界へと ちかづいた。 智子も、珠美の妖艶な声と身体に、どんどん潤ってきていた。 智子は、珠美の潤った部分に、自分の潤った部分を重ねあった。 敏感になった突起した部分は、相手を感じさせ、前後、左右させるごとに お互いに絶頂へと向かっていく。 「あぁぁ、珠ちゃん、とっても綺麗だよ、あぁぁ、珠ちゃん・・」 二人の喘ぎ声と、迸る愛液は混じりあい、更に動きが激しくなる。 「あぁぁ智ちゃん、イクぅぅ・・イッちゃうぅ」 「た・ま・・ちゃん、あぁぁぁーん」 激しい快感と共に、二人は一緒に果てた。
■12351 / inTopicNo.13)  あなたへの想いF □投稿者/ 雅 一般♪(45回)-(2005/08/25(Thu) 23:11:41) 智子は、ゆっくり片腕を広げ、珠美を引き寄せた。 智子は、静かに語り出した。 「私さ、今逃避行中なんだ・・」 「えっ?どういうこと?」 「ちょっとスランプ中でさ。」 「何のスランプなの?」 「作家なのよ。そんな売れてないけどさ。」 智子は、笑っていった。でも珠美はその笑顔の後ろの寂しい影をみた。 「もう、これで書けなかったら、働こうかと思ってる。」 智子は身を起こし、煙草に火をつけた。 「初めて応募した本が大賞をとってね。期待の新人とかって騒がれて・・ で、その後2冊出した本も結構売れたんだ。。だから、こうやって、何もせず 好きな事できるんだけどね・・。」 珠美も、智ちゃんって何してる人かな?とは、疑問に感じていたけど、 まさか、作家とは思わなかった。 智子は、少し厳しい顔で言った。 「書けないのよ・・。どんなに考えても、書けないのよ。」 珠美は、智子に何も言えなかった。 ただ、智子の苦悩に満ちた背中を、そっと抱きしめた。 どれだけ時間がたっただろう・・。 智子は、珠美を抱きしめて、笑顔で言った。 「ごめん・・。ありがとう・・。」 次の朝、送迎バスの時間までの間、珠美は智子を散歩に誘った。 「あ〜、気持ちいいね。空気が美味しいよ」 そう言って、大きく伸びをした。 智子も夕べは余り眠れなかったらしく、少し疲れた表情だった。 「あのさ・・。偉そうには言えないけど。。無理して書くことないと思う。」 歩きながら、珠美はつぶやくように言った。 「他の人のために書くんじゃなくてさ・・、書かないとダメだから書くとかでも なくて・・、自然に書きたい時に書いたらいいんじゃないかな?」 「・・・・」 智子は、いきなり大声を出して言った。 「それは、わかってるのよ!わかってて、書けないのよ!」 珠美は驚いた。智子は、ただ、澄んだ川の流れを一点に見つめていた。 「ごめんね・・。智ちゃん・・。」 智子は、黙ったままだった。 帰りのバスの中で、珠美は智子の事を考えていた。 (このままで、いいのかな・・) 珠美は、もう1度、智子に会おうと決めた。
■12356 / inTopicNo.14)  あなたへの想いG □投稿者/ 雅 一般♪(46回)-(2005/08/26(Fri) 00:07:59) 珠美は相変わらず、忙しい毎日を送っていた。 まだ、智子に会いにはいけなかった。時間が無いというだけではなかった。 最後に智子を怒らせてしまって 何って会いにいけばいいのか、会ってくれるのだろうかと不安だった。 その日は、インドネシア語の教室に行く日だった。 授業まで少し時間があったので、前の会社で一緒だった、貴子とお茶を することにした。 会社は辞めたが、貴子とは、たまにお茶をする。 「珠ちゃん、何か疲れてるね」 ケーキを口運びながら、貴子は言った。 「最近ちょっと考えることもあって・・。疲れてるんです・・。」 「もしかしてさ・・あんた、好きな人でもできたんじゃないの?」 貴子は、ニヤリと笑いながら言った。 「ううん。いませんよ。そんな人。」 貴子は、疑ったような目で珠美を見て微笑んだ。 「そうそう、うちの社長さ、地区の祭りでギター弾くらしいよ。」 「・・・そうなんだ。」 地区のお祭りイベントということで、何かお願いしますと、自治会から強く 頼まれたらしく、社員に声をかけたものの、誰も名乗りをあげず、 仕方なしに、自ら出ることになったらしい。 珠美は心が締め付けられる思いだった。 (社長・・・。) 「よかったらさ、珠ちゃんも見においでよ。」 貴子は、場所と時間を珠美に言って、そろそろ帰らないとと、慌てて 会社に戻っていった。 (どうしようかな・・・。) 午後9時、インドネシア語の授業が終わった。 受付から出席カードをもらい、外へでた。 「みーつけた・・」 後ろから、声がする。 そこには笑顔の智子の姿があった。 珠美と智子は、すぐ近くにあるファミレスに入った。 「探したよ・・。携帯電話も聞いてなかったし・・」 「でも、どうやって、ここがわかったの?」 「インターネット!便利だねぇ〜。」 智子は笑いながら言ったが、いきなり真剣な眼差しで珠美を見た。 「もう、会えないかと思ったよ・・・」 珠美は、嬉しくて涙がでてきた。自分は、智子に会う勇気もなくて・・ なのに、智子は、インドネシア講習をやってるところを探し回って、 私を見つけてくれた・・・。 ファミレスを出て、家へ泊まる?と珠美が言ったが、 家族も一緒に住んでるのを聞いて、迷惑だからと、近くのビジネスホテルに行った。 部屋に入って、智子はいきなり、珠美を抱きしめた。 「好きだよ・・。珠ちゃん・・。ずっと側にいたい・・。」 智子は、珠美を押し倒し、珠美のくちびるを奪った。 「智ちゃん・・アァ・・」 そして夜は流れていった。 今日も、月は、ただ静かに二人を照らしていた。
■12367 / inTopicNo.15)  あなたへの想いH □投稿者/ 雅 一般♪(47回)-(2005/08/26(Fri) 01:59:26) それから、2日置きに、智子は珠美に会いに行った。 その日、珠美は、智子をお祭りに誘った。 智子はいいよと言ってくれた。 珠美は、思った。。私、智ちゃんにひどいことしてる・・。 お祭りの日、珠美と智子は、貴子との待ち合わせの場所に向かった。 貴子には、前もって、智子を連れていくからと言っておいた。 「こんにちわ。初めまして。」 ぺこりと智子は貴子に頭をさげた。貴子は、大歓迎と笑って、3人は すぐ側の会場の広場へと向かった。 広場は、地域の子供たちや、お年寄りもいて、人で溢れかえっていた。 貴子は、社長の出番は、もうすぐだからと特設ステージへと急いだ。 「社長・・・」 珠美は、久しぶりに見る、その顔を見上げた。 珠美の心は、懐かしさと説明のしようのない、切ない気持ちで一杯だった。 社長は、こっちには気づいていなかった。 社長は、クラッシックギターを手に、白いブラウスに黒のロングスカートで ゆっくりと、ステージの真ん中にある、椅子に腰掛け、静かにギターを 構えた。 拍手と共に、静かに演奏がはじまった。 ポロロン・・ポロロン・・ 珠美の目は、ただひたすら、ステージの上の人に釘付けだった。 演奏曲は、タルレガのアルハンブラの思い出・・・ その静かで流れるような、もの悲し気な曲は、珠美の心の奥深くに 染み入ってきた。 智子は、珠美の横顔を見ていた。 演奏が終わり、社長はステージから降りてきた。 珠美は、軽く会釈した。 「珠ちゃん、久しぶり。」 社長は、智子の方をチラっと見て会釈し、珠美に微笑んだ。 (上月加奈さん、上月加奈さん。受付までお願いします。) 「じゃ、また。」 そう言って微笑み、社長は受付へと走っていった。 珠美は、人ごみの中に消える社長の後姿を見つめていた。 「ちょっとトイレにいってくるわ。」 貴子は、トイレの場所を教えて、ここで待ってるからねと智子にいった。 「珠ちゃん・・。まだ社長の事吹っ切れてないのね・・。」 珠美は、貴子の顔を見た。貴子の顔は真剣だった。 「知ってたわよ・・。会社いた時から。でもさ・・」 貴子は、うつむきながら言った。 「社長と何があったか知らないけど・・。あんた、智子ちゃんの気持ちを知って て、もしここに連れてきたんなら、とんでもない事してるよ。」 「・・・・・・」 珠美は無言だった。何も言えなかった。 「智子ちゃんの、あんたを見る目・・、結構マジだと思うよ。」 智子がトイレから、帰ってきた。貴子は何もなかったかのように、振舞った。 貴子は、この後用事があるからと、そそくさと帰っていった。 智子は、少し見て回ろうかと、珠美と一緒に会場を一回りした。 その日は、智子の泊まっている旅館に行く予定だった。 珠美は智子が話しかければ答えるものの、自ら智子に話かける事はなかった。 夕食を食べてから、二人は旅館に戻った。 「今日のギター、とても良かったね・・」 智子は珠美に言った。珠美は、軽くうなづいた。 「あのさ・・・・」 智子は、考えたように、珠美に言った・・。 「今日で、もう終わりにしよう・・・・。」 珠美は、びっくりして智子の顔を見た。 「・・・どうして?・・」 智子はゆっくりと話だした。 「あのさ、私たちの関係って、蛍と一緒だよ・・」 「蛍?」 「蛍はね、羽化して2週間しか命がないんだよ・・。蛍の逸話って聞いたことあ る?蛍はね、夢をもう一度・・って光り続けてるんだって。」 珠美には、智子が何を指していっているのか、わからなかった。 「もうじき珠ちゃん、バリ島に出発だよね。」 「うん。あと10日かな・・」 「幸せになりなよ。」 珠美は、声を出して、泣き崩れた。 智子は、珠美を抱き寄せ頭を撫でた。 その夜は、智子は激しく珠美を求めた。 智子は、何度も何度も珠美を絶頂へと、のぼり詰めさせた。 自分の存在したという証を、珠美の身体に刻み込むように・・。 その夜、珠美は初めて気づいた。 一緒にいたいのは、この人だということを・・。
■12406 / inTopicNo.18)  あなたへの想いI □投稿者/ 雅 ちょと常連(50回)-(2005/08/27(Sat) 01:51:58) あの日・・ どうして、言わなかったんだろう・・ 貴女が好きだって・・ あの日・・ どうして、しがみつかなかったのだろう・・ 貴女の背中に・・ どうして、もっと早く気づかなかったんだろう・・ 貴女にあの女性(ひと)を重ねて 影を求めていたけれど・・ いつしか、貴女自身を思っていた事実に・・ 影は、確かに懐かしく、切ないけど それはいつしか、 心に刻まれた単なる投影に過ぎなかったいうことに・・ もう・・遅すぎた・・。 −3年後− 珠美は、その日も日本から来た観光客に、ホテルの説明などを行っていた。 フロントに戻ると珠美宛の1枚のメモがあった。 「ジャジャ〜〜ン!さっきついたよ。1102号だから。休憩時間に来てね。待っ てる♪  貴子」 (貴子、遊びにきてくれたんだ〜) 珠美は少し時間が取れたので、1102号へ向かった。 この部屋は、ジュニアスイートと言われる、メゾネット式で、2階にベットルーム 広いバルコニー付きという、豪華な部屋だった。 珠美とは、去年日本に帰った時に会ったきりだ。 ベルを鳴らすと「はーい」と中から声がした。 ガチャ・・ 「珠ちゃ〜〜〜ん。来ちゃったわよ〜。」 貴子は、嬉しさの余り、珠美に抱きついた。 「元気だった?」 「うん。連絡くれればよかったのに。」 「いきなり来て、フロントで驚かしてやろうと思ったのに、いないんだもん。」 「この間、手紙に旅行にいくって・・こっちにくることだったんだね。」 貴子と珠美は顔を見合わせて、笑った。 「ところで、誰ときたの?ここ、ツインだけど・・。」 エヘヘと貴子は笑った。 部屋を見回しても、他に誰もいない。シャワールームから音がした・・。 部屋の端にはスーツケースが二つ・・。新しくできた彼氏?・・・。 「すっきりした〜。貴子ちゃん、入っていいよ〜。」 シャワールームから声が近づいてくる。 女のひと・・?  どっかで聞いたことあるような・・・。 貴子は、にやっと笑った。
■12412 / inTopicNo.19)  あなたへの想いJ □投稿者/ 雅 ちょと常連(51回)-(2005/08/27(Sat) 03:35:56) 珠美は、目を見開いた。 「あっ。・・・久しぶり。」 そこには、智子の姿があった。 「私の、新しい彼女だよ♪」 貴子は、ニヤリと笑って言った。 「えっ・・」 珠美は、驚きを隠せない。 「な訳ないでしょ。私はちょっと、出てくるから。。」 そう言って、貴子は部屋を出て行った。 智子との再会・・・。 それは、ずっと心に封印してしまった願い・・。 二人はただ、見つめ合った。 智子は、優しいあの懐かしい目で、珠美をみていた。 「元気だった?」 「うん・・・。智ちゃんこそ・・。」 「今回、こっちへ仕事で来たのよ。貴子ちゃん一緒に来たいっていうから、連れてきた。」 「何か・・突然で・・びっくりしちゃった・・。」 「突然は、昔からでしょ。」 智子は、ウインクして珠美に言った。 智子は、珠美に、ゆっくり説明した。 2,3ヶ月くらい前、たまたま出版社の人と食事に行った店先で、貴子から声をか けられ、初めは分からなかったらしいが、珠美の元同僚と言われ、思い出した。 智子もかなり驚いたらしい。 それから貴子とたまに、メールで連絡を取り合っていたとの事だった。 智子の口調、しぐさ・・・笑い方・・昔のまま全く変わっていなかった。 それが、珠美は何だかとても嬉しかった。 今回は、雑誌のバリ特集記事にヌサドゥア地区のコメントを書く仕事があるよう で3日間の滞在ということだった。 「あっ私、そろそろ、仕事に戻らないと・・。」 珠美は、慌てて席を立った。 「珠ちゃん。あのさ・・」 智子は、珠美を呼び止めた。 「やっと・・・本・・出版することになったよ。」 「そっか。良かった・・・。おめでとう。」 珠美は、心の底から、嬉しかった。 あの苦悩していた智子が本を出す・・。 珠美は、喜びと、切ない気持ちで一杯だった。 智ちゃん・・良かったね・・・。 珠美の目にはうっすら、涙が浮かんでいた。
■12413 / inTopicNo.20)  あなたへの想いK □投稿者/ 雅 ちょと常連(52回)-(2005/08/27(Sat) 04:34:33) 昼間、智子は、仕事でヌサドゥア地区の情報収集に出かけ、貴子は、珠美も智子も 仕事中だということもあって、ホテルのプールで楽しんだり、ガイドを雇って一人 観光にでかけたりしていた。 でも夜は、ホテルの部屋で、3人楽しく語り合った。 あっという間の3日間だった。 智子と貴子が帰国する日、ホテルでチェックアウトの手続きを済ませ ロビーで二人は、珠美が来るのを待っていた。 その日は、週末という事もあり、日本からの観光客が多く、珠美は忙しくかった。 「・・・遅いね。。もう少ししたら、車きちゃうね・・。ちょっと覗きにいって みようか?」 智子は無言だった。 フロントの前で、智子と貴子の迎えの運転手が二人を探しているのが見えた。 「さ、貴子ちゃん、行こうか・・」 智子は立ち上がり、フロントへ向かった。 珠美は、時計を見ながら、観光客の説明をしていた。 (もう時間がない・・。) 珠美は、肩を落とした・・・。 きちんと、さよならを言いたかった・・・・。 観光客の案内が済み、フロントへ戻った。 もう二人の姿はなかった・・。 珠美は、哀しかった・・ どうしようもなく、寂しかった・・・。 フロントの同僚が、にっこり珠美に2枚のメモを渡した。 珠美は2枚のメモに目を通した。 「もー、遅すぎ。でも、仕事だから仕方ないよね。 本当に3日間楽しかったよ。また、手紙書くね。 身体に気をつけて、仕事がんばってね。  貴子 P.S  素直になれ。この言葉、珠ちゃんに贈るよ(笑)」 「 珠ちゃん。  最後に顔がみれなかったのは残念だったけど、前と変わらない笑顔を見て安心したよ。  本当は、もっと話したい事もあったんだけど・・・。  3日間、本当に楽しかった。  本、出版したら、送ります。  本当にありがとう。  智子」 珠美は、メモを手に、うつむいた・・。 涙が止まらなかった。
■12414 / inTopicNo.21)  あなたへの想いL □投稿者/ 雅 ちょと常連(53回)-(2005/08/27(Sat) 05:34:04) 珠美は、その日、夜勤で朝まで仕事だった。 仕事を終え、片付けをしていると、郵便が届いていると、分厚い封筒をもらった。 智子からだった。 すぐ裏にある、従業員専用アパートに戻り、自室で、その封筒を開けた。 中には、1冊の本と、短い手紙が添えられてあった。 「珠ちゃん、ようやく、出版したよ。一番に読んでほしくて、送りました。  今回は、詩集です。  こないだ、言えなかった事、この本を読んでくれたら分かると思います。  智子」 (あなたへの想い      高橋 智子) 本の表紙は、蛍の写真だった。 珠美はページをめくった。  伝え切れなかった全てを想いをここに詰めて、        この詩集を、あなたのために捧げます。 そこには、珠美との出会いから、あの3年前の別れの事、そして、その後の気持ち が詩になって、綴られていた。 珠美は、切なくて、涙がでた。。 社長の事も・・・全部気づいていたんだね・・。 それでも、私を愛してくれていたんだね・・・。 珠美は胸が一杯になった。 「智ちゃん・・・・」 珠美は、本の最後の詩のページをめくった。        蛍 蛍は、羽化してから、2週間しか命はないけれど その前までの方が長いんだ 川で生まれて、何度も脱皮して 色んな経験を積んで そして、地中にもぐって、さなぎになり、羽化して蛍になるんだ。 あの時、私たちの関係は、蛍と一緒だねっていったけど 本当は  まだ蛍になんかなってなかったんだよ それに気づいた今  もう手遅れかもしれないけど 私は、蛍になって、 毎夜  君だけのために 光を放ちたい・・ 命ある限り・・ 君だけのために  愛の光を放ち続けたい・・ もし、君が   その光に気づいて  もう1度受け入れてくれるなら 私は、一生を  君と共に歩みたい・・ 月明かりの中で  今度は言いたいんだ・・・ 愛してるって
完結!
■12432 / inTopicNo.26)  あなたへの想い(番外編 貴子バリ島にて@) □投稿者/ 雅 ちょと常連(56回)-(2005/08/27(Sat) 18:36:47) 智子は仕事でインドネシアに行くらしい・・。 智子に、珠美の勤め先のホテルを聞かれ、教える代わりに、智子に同行させてほし いとお願いした。 智子は、笑いながら構わないよと、OKしてくれた。 貴子は、バリ島は初めて・・。 早速、書店に行ってバリ島の旅行ガイドを買って、コーヒーを飲みながら 家でのんびりと旅行ガイドをめくった。 神々の住む バリ・・ 色の浅黒いバリ島の住民の生活・・頭に籠を乗せ、荷物を運ぶ女性 島のいたるところで、神に捧げられる花・・・。 ガムランの演奏風景・・・そして、煌びやかな衣装につつまれ、繰り広げ られるダンス・・。 エキゾチック・・・。 珠美ってこんなとこで生活してるんだなぁ・・。 でも、結構男前多いじゃない。。ムフフ ガイドブックの写真を見ながら、そんな事を考えていた。 早速、朝会社へ出勤するなり休暇届を出した。 社長が、側へ寄ってきて、貴子に行った。 「どこかに旅行にいくのかな?」 「そうなんです。前、ここにいた珠美に会いにいくんですよ。」 社長は懐かしそうな顔でいった。 「珠美ちゃんか・・。まだ連絡取り合ってるんだね。」 「はい。親友ですから。」 「そっか。彼女・・幸せそう?」 フフフと笑って貴子は言った。 「ええ。すごく幸せになると思いますよ。」 意味深だなぁと社長は笑ったが、貴子はそれ以上は答えなかった。 社長は、離れ間際に貴子に言った。 「珠美ちゃんによろしく言っといて。そして・・・。」 社長は少し間を置いて 「日本に帰ってきたら、幸せな顔見せにおいでって伝えて。」 貴子は思った・・。 絶対伝えてやるもんか・・・。ムフフ。 関西国際空港で智子とおちあった。 まずはシンガポール航空で、ジャカルタに入り、そこからバリ島へはガルーダイン ドネシア航空に乗り換えらしい。 飛行機の中で、智子は貴子に言った。 「珠ちゃんに、連絡してあるの?そっちに行くって」 貴子は、ニヤリと笑い 「な〜んにも連絡してない」 「えっ?じゃ、私も行くってこと知らないの?」 「そう。」 平然な顔で答える貴子に、智子は大笑いした。 「あっ。。それと・・」 貴子は思い出したように、智子に言った。 「ホテル、確かツインでしたよね。それもスイート」 「そうだけど・・」 貴子はにやっと笑い、こう言った。 「襲わないでくださいね!私はノーマルですから!」 智子は、プっと噴出した。貴子と智子は顔を見合わせて笑った。 二人を乗せた飛行機は、珠美のいるバリへと向かっていった。
■12433 / inTopicNo.27)  あなたへの想い(番外編 貴子バリ島にてA) □投稿者/ 雅 ちょと常連(57回)-(2005/08/27(Sat) 20:20:08) 二人は夕方無事、デンパサール空港へと到着した。 空港で入国審査を済ませ、外へ出ると、中年のインドネシア人のガイドが 待っていた。 日本人が今日は少なくて、すぐ私たちに気づいてくれた。 二人は空港を出て、そのままガイドに連れられて車へ向かった。 「ようこそ。バリは初めて?」 流暢な日本語でガイドは尋ねた。 智子は、ガイドと3日間のスケジュールを相談し、とりあえず今日は身体を休めた いと、ガイドにホテルに向かうよう指示した。 ホテル前に着くとガイドは次の日の朝の迎えの時間を確認した。 それと、注意事項。 「夜は、ホテル敷地内から一切でないでください。」 貴子は、さっぱり意味がわからなかった。 智子は、緊張していた。 珠美と3年ぶりの再会・・。 貴子は、智子の固くなったような、嬉しいような何ともいえない 表情を見て少し笑った。 「さ、感動、愛の再会ツアーのはじまりだぁ〜!」 智子は、微笑んだ。 二人はホテルのフロントへ向かって歩き出した。 ホテルというイメージより、壁がなくて、開放的な南の島のエキゾチックな雰囲気 のエントランス・・ さすが、バリだな・・と思った。 入り口では、数人の現地民がガムランの演奏を奏でていた。 宿泊客を迎えているらしい・・。 その不思議な音色・・何故か欲情する時の・・あの感覚に似た・・ 貴子は、心の高鳴りがした。 「これ・・ヤバイかも・・。」 広く高い天井を見上げた。そこにはバリ特有の絵が一面に描かれていた。 智子と貴子は、ホテルを見渡しながら、 フロントへ向かう。 そこには、珠美の姿はなかった。 智子は手続きしている間に、 フロント係りにメモを渡してもらうように頼んだ。 部屋に案内してくれたのも、現地の人だった。 色が浅黒く、ほりが深くて・・雰囲気は私の好きなジョンローン・・きゃ〜 智子は、その表情を見て、またプっと噴出した。 貴子は、思った。 あ〜、ここいいかもぉ〜
■12434 / inTopicNo.28)  あなたへの想い(番外編 貴子バリ島にてB) □投稿者/ 雅 ちょと常連(58回)-(2005/08/27(Sat) 21:50:19) 貴子は部屋に案内された。 2階建てのスイート・・。まず、トランクを置いてすぐテラスに行って景色を 見た。 ホテルの庭には、南国ムードたっぷりに、木が生い茂り、夕日が落ちていく様は 格別だった。 「ここ、いいよね〜。すっごくいいよ。この島!」 貴子は少し興奮気味に言った。 貴子は、メゾネットの2階に駆け上がった。 ツインのベットルーム。 貴子は上から智子に叫んだ。 「ちょっと、Hしたくなるかもだよ〜。」 智子は笑みを浮かべていった。 「現地のホテルマン、連れ込むなよ!」 智子は、先にシャワー使うねと、シャワー室に向かった。 貴子は、ベットに大の字になって横たわった。 シャワーの音が聞こえる。 ふと、貴子は、思った・・。 女のHってどんなんなんだろう・・・。 ピンポーン あっ、珠ちゃんだ〜。 「は〜〜い。」 貴子は、慌てて階段を下りた。 扉を開けると、懐かしい珠ちゃんの姿があった。 珠ちゃんと話しながら、まだかまだかと智子がシャワーからあがってくる のを待った。 智子がシャワー室から歩いてきた。 やったぁ〜、とうとう感動の再会だぁ〜。 二人の様子を最後までじっと見たかったが、そんなヤボできないし・・。 そうだ、ちょっとホテルの探検でもして、二人にしてやるか・・ムフフ じゃ、頑張って愛を深め合ってくれって、何頑張るねん、ププ 珠ちゃん・・・今度こそ素直に、なるんだよ・・ 貴子は、ホテルのフロントを通り抜け、エントランスに向かった。 もう、夕方いたガムランの演奏者はいなくなっていた。 薄暗いホテルの中は、更に幻想的な雰囲気に包まれている・・。 ちょっと外に出てみようかな・・。 ホテルの敷地と外との間の柵のところに何だか人がいるみたい・・ 暗いから、見えにくい・・。もう、少しそばまで寄ってみる。 ゲゲ! そこには、現地の若い男どもたちがびっしり、柵ごしに、こっちへ手招きしてい るではないか。 貴子は逃げるようにして、ホテルへ戻った。 何と恐ろしい光景だろう・・。 これか・・ガイドの言ってた、敷地内から出るなっていう意味。 あ〜、映画「ラストジゴロ」にでてくるジョンローンは、こんなんじゃなかった よ〜。もっとあま〜い・・・ 「はぁ・・」 ジョンローンも沢山いると・・怖いな・・・。 貴子は、そそくさとジョンローンたちを背に向け、ロビーに向かった。 そこでお茶でも飲んで時間つぶしすることにした。 コーヒーを頼んで、一人ゆっくりしていた。 周りを見渡しても、謎に日本人の姿らしきものがない・・。 もっと、多いのかと思ってたけど・・。 すると、一人の白人の若い男性が何やら話しかけてきた。 結構かっこいい。うん。かっこいい。 何か尋ねているらしい。。聞きなれない言葉・・・ ん? フランス語?スペイン語? 何じゃこりゃ〜。 すると、その白人、 (Do you speak English?) 貴子は、思った。 あ〜。もっと勉強しとくべきだった〜。 くそぉ〜、 No speak English. そうして、男前の白人は、去っていった。 コーヒーを飲み終えて、貴子は部屋へ戻った。
■12441 / inTopicNo.29)  あなたへの想い(番外編 貴子バリ島にてC) □投稿者/ 雅 ちょと常連(59回)-(2005/08/27(Sat) 23:42:57) 珠美はもう部屋にはいなかった。 智子に何も聞かなかった。智子は、ただ黙って外を見てたから。 何も言えなかったんだろうな。。多分・・。 バリでの時間は、あっという間にすぎていった。 何度も、気を聞かせて、二人になる機会を作ったのに、 何も変わらない二人・・・ あ〜。じれったい。 そうだ、最後の夜はあれしかない・・。 そうだ!あれだ・・。ムフフ 貴子は智子に、今日の夜はケチャックダンスを見に行きたいと言った。 智子もそれに賛成した。 確か、今日は珠美は早く仕事あがれるっていってたし・・。 3人で、現地ガイドに頼んで、ケチャックダンスを見れるとこまで つれていってもらった。 車が、ホテルを出る時、やはり、いた・・・。 ジョンローンの山が。 貴子はそ知らん顔し、車は、その横をするりと走り抜けていった。 3人は現地に到着した。 もう、すでにダンスが始まっている様子だった。 ケチャケチャと響き渡る男性たちの声 半裸の男性が100人はいるだろうか・・、円陣を組んで座っている。 ケチャッケチャッ 不気味な奇声でありながら、不思議なリズムをきざみ、 暗い場内では、そのリズムに合わせ、タイマツの灯りが揺れ動く。 貴子は、その不思議なリズムに酔いしれ、恍惚状態に陥ってしまったかのようだっ た。 本当だ・・・。 前に何かで読んだことがあった。 一種のトランス状態を作ると言われたそのダンス・・。 そしてそのリズムに合わせて、物語が繰り広げられていく・・。 3人は、ダンスに酔いしれた。終わるまで、ずっと無言だった・・。 その帰りに、近くのレストランで軽く食事に行くことになった。 ロブスターや、インドネシア特有の料理を数種類、珠美のお勧めで頼んだ。 お酒も入って、どんどんいい気分になる。 今夜は、この酔いしれた雰囲気の中、二人っきりの時間をつくってあげるんだぁ〜 そう、私は、そのために来たようなもんだ。 ん・・オイしい・・・。 コレ・・ ・・・・・・・・。 貴子は目覚めた。隣にいる智子は、もう下へ降りてシャワーを浴びた後みたい えっ? もしかして もしかして・・私 また、やっちゃった?? 申し訳なさそうに貴子は下へ降りた。 「おはよう。」 その後、智子に夕べの事を説明された。 いつもの、酒の後の自分の姿を聞かされたのであった。 飲みすぎた〜。 ごめんね、珠ちゃん・・。 計画失敗だ・・・。 ごめんね。。 出発の用意を済ませ、部屋を出てフロントへ向かう途中 智子に尋ねた。 「言った?」 智子は首を横に振った。 私のせいだ・・・。 貴子は、しょげた。 智子は、貴子の頭を撫でて、にっこり微笑んだ。 ロビーで珠美を待ったが、いっこうにこない。 とうとう、出発時刻がきてしまった。 貴子は、慌てていった。 「メモ!」 二人はメモに書き、フロントの人に預けた。 神様・・ どうか二人が素直になれますように・・ そう願って、貴子はバリに別れを告げた。 関西新空港について、別れ際に貴子は、 「はい。これ。」 智子は貴子が手渡した袋を開いた。 それは、バリの神 バロンの彫り物だった。 智子は、ありがとうと、にっこり笑って去っていった。 貴子は、そっと祈った。 二人をよろしく・・・。