2004/03/04(Thu) 00:04:26 sakura 足 音1
夜、マンションの廊下に靴音が響くと、私は思わず目を覚まして耳を澄ませてしまう。
こんな癖がついたのは彼女と出会ってからだった。
香乃・・・
もう呼ぶ事のない人の名前を呟く。
私に全てを与え、私の魂さえ奪っていった人・・・。
私と香乃は2年前の夏、バイト先のレストランで出会った。
私は調理をし、彼女はフロアチーフをしていた。
いつからか彼女を好きになり、彼女も私に好意を持ち、誰かの送別会の夜、酒の勢いもあって結ばれた。
「これも不倫って言うのかしらね。」
彼女はそう言って、私の腕の中でくすっと笑った。
彼女に夫がいる事は好きになる前から知っていた。
「もっと神聖なものだと思うよ・・・。」
そう言った私に優しくキスをして、彼女は身繕いをし始めた。
その日から彼女は私の部屋に通うようになった。
携帯を持たない彼女はいつもいきなりやって来る。
カツ カツ カツ・・・と容姿とは釣合わない勝気な足音をさせて、私の部屋のチャイムを鳴らす。
「いつも急に来るんだから。どうすんの?私が他の娘とエッチしてたら。」
やきもちを妬かせたくてそう言うと、
「その時は3Pね。体がもつかしら・・・?」
とジョークで返してくる。
その余裕の態度は、私が彼女以外を愛せるはずがないという自信からだ。
実際、私は彼女に夢中だった。
2004/03/04(Thu) 19:11:18 sakura 足 音2
香乃が私の部屋に来ると、私は必ずある『儀式』を行う。
彼女を裸に剥き、電気をつけたままで恥ずかしがる彼女の体中を舐めまわす。
首筋からつま先まで舐めると、『儀式』の本題にとりかかる。
足を思いきり開かせ、ぱっくりと開いた割れ目の隅々まで舌を這わせ、潤み始めた蜜壷へ指を沈ませる。
その瞬間に私は落胆したり、歓喜したりするのだ。
指を沈ませればソコの『具合』が分かる。
つまり、最近夫と交わっていればすぐに私の指は分かるのだ。
「最近旦那さんとえっちしたんだ?」
「・・・そうよ。夫婦だもの・・。」
嘘をつかない香乃が大好きなくせにこんな事を聞いてしまう。
「旦那さんのどれくらい?これくらい?」
指を増やして蜜壷の奥へ沈ませる。
「んっ・・・言わないわ。」
「どうして?私より気持ちいいから?」
少し乱暴にクリを親指でグリグリする。
「くっ・・ぅん・・。違うわ・・・」
「じゃあどうしてっ・・・?」
―どうして旦那さんと交わるの・・・―
指を入れたままで彼女にのしかかり、乳房を力いっぱい掴む。
「紗枝が本当はそんな事聞きたくないって分かってるからよ。」
いつだってそうだった。
彼女は私の何もかもをお見通しで、私の嫉妬に満ちたこの『儀式』を何も言わず受け入れてくれていた。
情けなくて泣き出してしまいそうな私をいつも包み込んでくれていた。
2004/03/04(Thu) 19:33:57 sakura 足 音3
時々彼女は私の部屋をぱったりと訪れない事があった。
携帯を持たない彼女と連絡を取り合う事も出来ず、眠れない夜を過ごす日々もあった。
職場で彼女に話し掛けてもはぐらかされ、私は狂ってしまいそうなほどだった。
そんな夜を7日も過ごしたある日私の欲望は爆発した。
他の従業員達が隣の部屋で話を弾ませているのが聞こえる程狭い空間の中、ドア1枚挟んだだけの更衣室で私は彼女を犯した。
彼女をロッカーに押し付け、口を塞ぎ、スカートの中に手を滑り込ませ、パンストを引き千切りショーツの中に突っ込んだ。
はじめは抵抗していた彼女も徐々に熟し、口を塞いでいる手の間からいやらしい声を漏らし始めた。
キスで口を塞ぎ、空いた手でブラウスの上から乳首をつねる。
じゅくじゅくに濡れた彼女のヒダの奥の締め付けがきつくなってくる。
―イキそう・・・―
私は指を引き抜き、非常階段へ向かう。
すぐ後をお預けを食らった彼女がついて来る。
今度は彼女から抱きついてきて、唇を貪る。
彼女を階段に座らせ、片足を手すりに上げさせ、ぐっちょりと濡れたショーツを片足から抜き取る。
彼女は自分から指でヒダを開き、私を待つ。
私は待ちぼうけの苛立たしさを忘れ、夢中で完熟したソコへむしゃぶりついた。
待ちわびた彼女の汁はこの上なく美味しかった。
私は足首にショーツが絡みついている片足を肩に乗せ、顔中を彼女のエッチ汁まみれにしながら、自分のショーツの中へ手を入れてこね回した。
二人とも何度イッただろう・・・。
外側からは当然鍵もかからない非常階段で、いつ誰に見付かってもおかしくない状況が私達を余計燃え上がらせた。
今思うと、待ちぼうけも彼女の演出だったのかもしれない。
2004/03/05(Fri) 22:17:09 sakura 足 音4
香乃はぱったり来ない事があるかと思えば、いつものように突然やってきて
「主人が出張でいないから2、3日泊まれるの。」
と私をこの上なく喜ばせる事もあった。
愛する人と朝を迎えられることがあんなに幸せだったとは・・いや、私にとっては彼女の存在自体が幸せだったのだ。
ベッドの端で身繕いをする彼女を眺めていても、足音に耳を澄ませ眠れない夜が続いても・・・
彼女がいてくれるだけで私は生きていられた。
突然の訪問を心待ちにしながら、待つ時間さえも幸せに感じられる。
そんな日々がずっと続くと信じて疑わなかった。
あの日、あの足音がするまでは・・・。
2004/03/05(Fri) 22:24:25 sakura 足 音5
いつものように彼女の足音がする。
チャイムを鳴らす前に待ちかねた私がドアを開ける。
いつもの笑顔がない。
「どうしたの?元気ないね・・・。」
彼女は俯いたまま言った。
「今日が最後になる。」
「・・・・え?」
聞き取れなかった。聞こうとしなかった。
「私達、もうこうしては会えないわ。」
「ど・・・してかな?何かあった?旦那さんにばれたの?」
鼓動が早くなる。
「子供が出来たの。」
血液が一気に足元へ下がってゆくのが分かる。
「妊娠・・・。」
あまりにも恐ろしくて今まで考えようとしなかった。
夫婦であればごく自然の事。
そして決して私には真似できない事・・・。
「だから今日が最後のエッチ。存分にしてね。」
明るく彼女が言い放つ。
めまい・・・吐き気・・・私を襲う。
意識が遠ざかった時、私は彼女を押し倒していた。
2004/03/05(Fri) 22:31:10 sakura 足 音6
彼女の服を乱暴に剥ぎ取る。
露になった彼女の裸体。
30を超えていても張りのある肌。
つんと上を向いた乳房、くびれた腰、締まった尻・・・。
―子供が出来たって?この体もその子の犠牲になるのか・・・?―
私は許せない気持ちで一杯だった。
彼女がではなく、この美しい体を壊すものが。
彼女に覆い被さると、無意識に下腹をかばう。
唇を、乳首を、クリトリスを吸っても彼女のソコはもう先客がいるとばかりに応えてはくれない。
怒りが私を支配する。
彼女が遠くへ行ってしまう。
彼女を取り上げられる・・・。
気がつくと私は彼女に馬乗りになり、細い首に両手をかけていた。
2004/03/05(Fri) 22:51:02 sakura 足 音7
彼女は目を閉じたまま、全く抵抗しない。
彼女を誰にも渡したくない。
この両手に全体重をかければ、彼女は永遠に私のものになる。
私だけのものに・・。
膝を浮かし、体重を両手に移動させる。
彼女の顔を見た。
彼女も私を見つめていた。
怯え一つない、いつもの眼差しだった。
私ははっと我に返った。
何よりも愛しい存在を殺めようとしていた自分に怯えた。
彼女は未だ自分の首にかかった私の震える両手に手を添えた。
「いいのよ・・・。」
私は何も答えられない。
声が出ない。
「紗枝になら、何されてもいい。殺されたって本望よ。」
「香乃さ・・・ん。」
「ホント言うと私、母親になるなんてとても不安なの。それに・・・」
弱々しく彼女が微笑んだ。
「紗枝のいない人生なんて・・・考えられないし。」
涙が溢れる。滝のように。
私にだって彼女のいない人生など・・・。
しかし、その時ようやく分かったのだ。
香乃も私を誰よりも愛してくれているのだと。
自分の中に芽生えた命よりも・・・。
私は嗚咽を上げ泣いた。
香乃は私の髪をずっと撫でてくれた。
夜明け前、ようやく涙も枯れ果て、私は彼女にさよならを言った。
それから彼女は妊娠を理由に仕事を辞め、私の前からいなくなった。
私は無意識に彼女を探しながら日々を送っている。
今も彼女のいない職場に残り、彼女と過ごした部屋にとどまっている。
いつかあの足音とおぼつかない足取りの子供の足音が尋ねてくるような気がして・・・。
完
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