964 2004/05/18(Tue) 18:45:22 sakura Αρκαδια -アルカディア-
繁華街の喧騒から逃れるように、狭い路地の奥、ひっそりとその店はあった。
ギギギと軋む一枚板のドアを開けると、薄暗いランプの灯りと10席ばかりのカウンター。
ここには夜な夜な女達だけが訪れていた。
哀しい女、幸せな女・・・
使い込んだカウンターにそんな女たちが涙をこぼしてたっけ。
何ていったかなぁ、あのバーの名前は・・・。
アルカディア・・・理想郷っていったっけ・・・。
965 2004/05/18(Tue) 19:38:14 sakura First Love
『私、ドランブイください。』沙耶が言った。
「じゃあ私は・・・ジンライム。」千賀子が続けた。
沙耶はこの店に恋人とよく来ていた。今日は高校からの友人の千賀子に会い、2軒目にここを訪れた。
「沙耶、また彼女変わったの?」
『すごい!どうして分かるの?その通りよ。』
「あんたは相手に合わせて飲む物が変わるのよね。自分がないって言うか。」
『失礼ね。順応性があるって言ってよ。』
千賀子は溜息をついて幸せそうに微笑む沙耶とグラスを合わせた。
二人はしばらくお互いの会社の話や、昔の話などをしていた。
「あんた、何考えてるの?」
突然、千賀子が大きな声を出した。
『びっくりした。怒鳴る事ないじゃない。』
「じゃあ彼女には家庭があるって言うわけ?」
どうやら沙耶は不倫をしているらしかった。
『いいじゃない、別に。彼女が独身だからって結婚できるわけじゃないんだし。』
「沙耶、それでいいの?もうちょっとちゃんと考えなよ。そんなのSEXだけの関係じゃない。」
千賀子は続けた。
「だいたい、高校の頃からそうなのよ。誰かを好きになったと思ったらすぐに体許してさ。後で泣くのはいつも沙耶の方だったじゃない。」
沙耶は痛い所をつかれたのか、不機嫌を露にした。
『女を愛した事のない千賀子に何が分かるの?ほっといてよ!!』
「関係ないでしょ。私は沙耶のためを思って・・・。」
『何が私のためよ!私の事本当は軽蔑してるくせに!』
だんだん声が大きくなり、カウンターの隅に座っていたカップルが興味深そうに観察している。
瑞樹はさりげなくかかっているレコードを、静かなジャズからテンポのいいボサノバに変えた。
二人の声がBGMにかき消され、カップルは再び二人の世界へ入っていった。
「軽蔑って何よ。いつ私が・・・。」
『千賀子はいつもそうだったわ。誰に告られたって女と付き合う事もなかったし、私が告った時だって・・・。』
「あれは・・・。」
『千賀子はレズビアンを軽蔑してるのよ。そんな人に知った風な事言われたくないわ。』
「・・・違うよ。」
千賀子はグラスに残ったジンを飲み干した。
「私に告ったの、早川先輩と分かれた直後だったじゃない。沙耶はいつも失恋すると手っ取り早く新しい彼女を作ろうとしてた。」
沙耶は言葉もなく千賀子を振り返った。
「私は早川先輩の代りなんてなりたくなかった。他の娘から告られても断ってたのは、沙耶を一人にできなかったから・・・。」
『千賀子・・・。』
「沙耶の傍にいたかったの。だけど・・・誰かの代りにはなりたくなかった・・・。」
そうだ・・。いつも千賀子が傍にいてくれた。
傷ついてる私を、厳しい言葉だったけど慰めてくれた。
誰よりも私を理解してくれていたのは、千賀子ではなかっただろうか。
沙耶はようやく千賀子の気持ちに気付く事ができた。
涙がこぼれた。
長い沈黙を破るように、二人の前に瑞樹がグラスを置いた。
「どうぞ。店からです。」
千賀子と沙耶はグラスを手に取った。
『ありがと・・・。何て言うカクテル?』
涙を拭いながら沙耶が聞いた。
「First Loveです。」
二人は顔を見合わせた。
甘酸っぱい味がした。
1004 2004/05/20(Thu) 16:35:33 sakura Horse's Neck
「何か作りましょうか?」
『そうね・・・任せるわ。』
久美は頬杖をついて空のグラスを差し出した。
「ホーセズネックです。どうぞ。」
出されたのはらせん状に剥いたレモンの皮をグラスの縁にかけた、ブランデーベースのロングカクテルだった。
『螺旋階段みたいね・・・。』淋しげに久美が呟いた。
昨夜、久美は京香に別れ話をするために部屋へ彼女を招いた。
久美が洗い物をしながらどう切りだそうかと考えている時、京香がそっと後ろから抱きすくめた。
『待って京、大事な話があるのよ・・・。』
「どうせ嫌な話なんでしょう?顔みたら分かるよ。」
そう言いながら京香は久美の乳房を力強く揉んだ。
『ね、京。聞いて・・・。』
京香は無視して胸を揉み続ける。乳首が勃起し始めた。
荒々しく久美のタイトスカートを捲り上げた。
『やめて。大事な話なの。真面目に・・・!』
制止しようとする久美の手を掴み、もう片方の手をショーツの中へねじ込んだ。
ヘアを掻き分け、丘の割れた辺りをゆっくりとなぞる。
『いや・・・やめて。お願い・・・。』
「やめないよ。やめたら嫌な話するんでしょ。」
京香は子供じみた理由を言って愛撫を続ける。
京香の指はワレメをなぞり、湿った園へと進んでいく。ヌルヌルとした液体が滲み出てきた。
クリトリスの辺りでそっと円を描くと、久美の口から言葉の代わりに吐息が漏れた。
京香は久美のショーツを膝までずり下げると優しく尻を持ち上げた。
久美は流し台に手をつき、尻を突き出した格好でもう何も言わなくなった。
透けるような白い尻をゆっくりと撫でまわし、色素の違う谷へ指を這わせる。
十分に熟れた秘所へ指を1本ズブズブと沈ませた。
「久美はココでも私の事を判別できるんだ。どの指か分かってるでしょ?」
人差し指だ・・・。久美は思った。
「久美はココをこうされるのが好き・・・。」
京香は暖かいその中で人差し指を折り曲げ、出し入れして久美の内部を擦った。
『んっ・・・あ・・・ぁう・・。』
「ココも恥ずかしくて好きなんだよね。」
京香は出し入れしながら久美のアナルにそっと口付けした。
『あんっ・・・!』
力が入り、アナルがギュッと締まる。同じく出し入れしている折り曲げた指も締め付けられた。
『あ・・ふん・・・はぅ・・・んっんっ』クチョックチョックチョッ・・・・
京香は舌で丹念にアナルを舐め始めた。指の動きに合わせて淫靡な音もし始めた。
『ああ・・・だめぇ・・・。』
崩れ落ちそうになる久美を抱え、流し台に座らせ、膝を立てさせた。
京香は立てた両足の間に顔を埋め、一気にクリトリスを吸い始めた。
『ああっ・・・あっあっ・・・いっ・・いいぃ!』
今度は2本の指を締まりのいいその中へ沈め、少し折り曲げて久美の天井を擦り上げる。
『あうぅ!だめぇ・・・そ・・んなにしたらぁ・・・!!』
久美は出されたロングカクテルに口をつけず、昨夜のことを思い出しながららせん状のレモンを見つめていた。
「いらっしゃいませ。」
瑞樹の声に振り向くと、京香が笑顔で立っていた。
今日こそ言わなければ・・・。
この愛しい笑顔のためにも・・・。
1018 2004/05/21(Fri) 13:59:38 sakura Horse's Neck
「私オーガズムちょうだい。」
「かしこまりました。」
京香は強烈な名前の割には度数の低いこのカクテルがお気に入りだった。
少し舌先で舐め、「甘い・・・。」と意味深な眼差しを久美に送った。
『京、私達・・・。』
「また別れ話?久美は私の事好きじゃなくなった?」
『好きよ。好きだから・・・。』
「馬鹿げてる。お互いが好きなのに別れるなんて。」
『京は不安じゃないの?まるで私達螺旋階段を上ってるみたいよ・・・。』
「螺旋階段?」
『上ってるとこの階段が永遠に続くんじゃないかって錯覚する。でもそれは錯覚に過ぎない。』
「じゃあ、上り詰めたらそこには何がある?」
『現実よ・・・。私達はいつか現実に戻らなくちゃ。』
京香はまだ沢山残っているオーガズムをごくごくと飲み干してギムレットを頼んだ。
「あんたの言う現実って何?結婚して子供作ること?」
あんた・・・京香は怒ると久美の事をこう呼ぶ。
京香は久美のニットの襟ぐりを引っ張った。
「私にとってはこれが現実なのよ。」
久美の鎖骨の下辺りに、京香が昨夜つけた赤い痕がある。
「あんたは誰が相手でもあんなに濡れるの?あんなに逝くの?」
『違うっ・・・。京だから・・・よ。』
「私達の未来はどうなるか分からない。でもいつ死ぬかも分からないんだし・・・。」
京香はやさしい眼差しに戻って久美を見つめた。
「私はその時一番愛してる人と一緒にいたい。それが久美なのよ・・・。」
微笑む京香を見て久美は涙ぐんだ。
いつもそうだった。
今まで何度別れ話を持ち出して言い合いをしただろう・・・。
その度に京香には負けてしまうのだ。
今度はいつ別れ話をする事になるだろう・・・。
本当に別れる時は、きっと京香から切り出す時だろう。
少し酔った京香は子供のように甘えて久美に寄りかかった。
「螺旋階段を上るからいけないんだ。降りていけばいいんだ。うん。それがいい!」
子供のような京香を見つめながら、それもいいかもしれないと少し納得した。
完
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