1510 2004/06/18(Fri) 12:12:17 sakura かぐや姫
真夜中にふと目を覚ます。
隣の愛しい寝顔を見て安心する。
でも、こんな幸せもあと少しで・・・。
早苗は恨めしそうに窓の外に浮かぶ三日月を見つめた。
早苗がそっと杏を抱きしめると、寝ぼけながらも杏は抱き返し、唇に触れる早苗の素肌にキスをした。
私には時間がない。
逃れられない運命。
こんな事なら出会わなければよかった。
杏・・・
私は・・・帰らなくては・・・。
1582 2004/06/25(Fri) 00:21:41 sakura かぐや姫2
ある日杏が出て行った。
私の知らない男と結婚すると言って・・・。
私は懇願した。
杏なしでは生きてはいけない。
泣き叫ぶ私を振り返りもせず、ただ、「ごめんなさい」とだけ呟いて・・・。
あれからどれくらい泣き続けたのだろう。
二人で買ったダブルベッドに顔を埋めて、まるで猛獣のような声を張り上げて。
いくつの夜を過ごし、朝を迎えただろうか。
そして私は決めたのだ。
杏のいないこの星を捨てよう・・・
夜に浮かぶあの月へ帰ろう・・・
私はこの星の者ではないのだから。
1583 2004/06/25(Fri) 00:26:05 sakura かぐや姫3
ぽっかりと浮かぶ満月に祈った。
もう私を帰してくださいと。
月は応えてくれた。
次の満月に迎えに行くと・・・。
私の祈りが届いた日、杏は戻ってきた。
出て行った時のまま、大きなバッグ一つで。
「ごめんなさい。私やっぱり早苗と離れられない・・・。」
私は顔をくしゃくしゃにして杏の胸に飛び込んだ。
たった今、私の願いが届いた事も忘れて・・・。
1584 2004/06/25(Fri) 00:50:53 sakura かぐや姫4
何一つ変わらない・・・。
甘い香りも、絹のような肌の感触も・・・。
杏の細い指は、私の体の至る所を知っている。
私も杏の知らない彼女のほくろを知っている。
「あ・・・・ん・・・」
杏の細い指が、私の乳房を優しく揉み上げる。
私の乳首は乳輪をゆっくりとなぞられるだけで、すぐに勃起してしまう。
固くなった乳首を、杏が指先で転がすと、キュンと下腹部が痺れた。
「今日は沢山してあげる・・・。」
杏の舌が、私の首筋から鎖骨を横切り、ようやく尖った乳首を探し当てた。
「はん・・・。」
乳首を含まれると、私は仰け反り、杏の首に腕を絡める。
チロチロと舌で転がされると、もう私の下腹部は疼いて仕方がなくなる。
体をくねらせ、合図を送る。
杏がゆっくりと舌を体の線に沿って這わせると、私は自分から足を開き、その舌を待つ。
杏は舌だけで恥毛を掻き分け、そのまま突起に絡ませた。
「はぁ・・・・ん・・・。」
舌を尖らせて私の突起を弾く。
その度に私は短く声をあげる。
じゅるじゅる・・私の突起をすする音が聞こえる。
体の芯が、私自身が熱くなってゆく。
私はうわ言のように杏の名前を呼んだ。
こんなに幸せな日々が戻ってくるなんて・・・・。
いっそこのまま消えてなくなりたい・・。
近い未来の恐怖をかきけすように、激しく杏を求めた。
1586 2004/06/25(Fri) 14:50:13 sakura かぐや姫5
時間が経つのが怖い。
特に夜が来るのが耐えられないほど。
夜中、ふと不安で目が覚める。
隣には愛しい杏・・・。
彼女の存在さえ、私の内に広がる恐怖を拭えなくなっていた。
「早苗?眠れないの?」
「ううん、目が覚めただけ。起しちゃった?」
杏は何も言わず、体を起して私の背中を抱きしめた。
「安心して。もうどこにも行かないから。ずっと早苗の傍にいるから・・。」
「うん。分かってる。ホントにちょっと目が覚めただけだよ。」
背中に杏の温もりが伝わってくる。
杏は私の髪や耳や首に優しくキスをした。
私は体の向きを変え、杏の唇を求めた。
舌が絡まり、唾液が混じり、お互いの乳房を確かめ合う。
杏のTシャツをたくし上げると、大きくて形のいい乳房が弾み出た。
まだ固くなっていない乳首に吸いつき、舌で苛めて勃起させる。
「ん・・・ぁん・・・。」
片方の乳首も指で摘んで、同じように尖らせる。
杏は自分の手をショーツの中に突っ込み、自身を弄る。
杏の癖なのだ。これも変わっていない。
杏の手を強引にショーツから抜くと、すでに指から糸を引いていた。
両足を思いきり開かせ、ショーツの上から舐めてやると、布一枚のもどかしさに身をよじる。
「や・・脱がせて・・・早苗・・・。」
ショーツの上からでもクリトリスの突起がよく分かる。
その突起を強めに噛んでやると、杏は大きく喘いで身を仰け反らせる。
「はぅっ・・ああぁんん!」
ショーツを剥ぎ取り、顔を深く埋めて、歯と舌でクリトリスを苛める。
「あっあっあっ!うぅん・・・・!」
杏の愛液をすすり、ヒダを噛み、クリトリスを思いきり吸い上げる。
杏は私の頭をくしゃくしゃにしながら、片手では自分の乳首を抓っている。
「うぅっ・・・。ぁ・・・ぁ・・・ぃくうぅぅっ!!」
杏は足をピンと伸ばし、小さく痙攣させた。
杏の股座から顔を上げた私の唇や顎から、数本の糸が杏の恥毛をつないでいた。
余韻も冷めやらぬうち、杏が私を押し倒して前戯もそこそこに私のすでに濡れている恥部へむしゃぶりついた。
窓の外で白々と夜が明けていく。
ほんの少しの安心が私を包み始めた。
1647 2004/06/28(Mon) 19:54:37 sakura かぐや姫6
出会えて良かった・・・。
今ではそう思う。
ようやくそう思えるようになった。
いつか別れは来るのだ。
それが、こんな風に私が消えてしまう形だっただけ。
満月の日。
とうとうこの日が来てしまった。
私がいなくなったら杏はどうするんだろう。
私の記憶などなくなってしまうのだろうか・・。
いつもよりも激しく求め合った。
寝食も忘れ、気が遠くなるほど重なり合った。
愛してる・・・愛してる・・・
一体何度呟いただろう。
ぐったりして横になっている杏を起さないように、そっと起きあがった。
ベランダの真正面に満月が大きく、妖しく光っている。
行かなくちゃ・・・
最期のキスをしようとした時、杏が目を覚ました。
「早苗・・。また眠れないの?」
涙が込み上げる。
「杏・・・。愛してる。これからもずっと・・。」
「早苗?どうしたの?なんだか変・・・。」
自分の未練を振り切る様に、勢い良くベッドから抜け出した。
「さよなら・・・杏・・・。」
驚いて、杏もベッドから飛び起きた。
「何?どこ行くの?早苗・・・っ」
杏が私の背中に抱きついた。
満月がさっきよりも更に眩しく光り始める。
「帰るの。私・・・月に帰るの・・・。」
「何言ってるの・・・っ」
杏が私を抱く手に力をこめたのも虚しく、見えない力でぐいぐいと引き離されていく。
「愛してる・・・愛してる・・・杏・・・。」
光の中に吸い込まれてゆく。
「さ、早苗ー!!」
光に同化していく私の耳に、杏の声が遠くにいつまでも響いていた。
1648 2004/06/28(Mon) 20:15:17 sakura かぐや姫7
深夜のマンションの階下に大勢の人だかりと、パトカーと救急車。
黄色いテープが貼られ、その中を警官が何人も出入りしている。
―亡くなったのは1002号室の山崎早苗さんで間違いありませんね?
「はい、確かにお隣の早苗ちゃんです。でも・・・どうして・・・」
―最近山崎さんの身の回りで変わった事はありませんでしたか?
「いえ・・・特には。あ、そういえば・・・。」
―どんな小さな事でも構いません。「はい。1ヶ月前に早苗ちゃんと一緒に暮らしてたお友達が引っ越していったんです。何でも結婚するとか。それから・・・。」
―それから?
「ちょっとおかしかったんです。すごく痩せちゃって。月に帰る・・・とかブツブツと言ってたりして。」
―月?月って言うのはこの・・・空の?
「ええ、多分。迎えが来るからって・・・。ちょっとノイローゼっぽいっていうか。杏ちゃん、お友達の名前ですけど、とっても仲が良かったから淋しかったのかもねぇ・・。やっぱり自殺ですか?」
―事故と自殺との両方の可能性があります。ドアの内側からチェーンがかかっていたので、事件性は低いとは思いますが・・・。
「そうですか。それにしても可愛そうに。いい娘だったんですよ。明るくてねぇ・・・。」
その夜の月はいつまでも青く光りつづけていた。
まるで何かを悼むように
完
面白かったらクリックしてね♪