2252 2004/08/09(Mon) 12:00:00 sakura  真夏の夜の夢


 2004/08/16(Mon) 11:43:02 編集(投稿者)

「ふー・・・」

大石遼子は重い体をオフィスの長い背もたれに預けた。
もう一週間以上も熱帯夜が続いている。
エアコン嫌いの遼子は30度を越す真夏の夜に、扇風機の風だけで眠る。
さすがに寝苦しく、十分に睡眠の取れない日が続いていた。

あと一人か・・・。
遼子は心理カウンセラーをしている。
客・・・いや、患者は割りとついている方だった。

16時ちょうど、ノックの音がした。
今日最後の患者の訪問だ。
「どうぞ。」
姿勢をただし、患者を迎えた。
「失礼します・・・。」
橋本有香。20歳の女子大生でここへ来るのは今日が初めてだ。
きれいな顔立ちだが、青白い顔にうっすらと目の下にくまを作っている。
不安げに遼子の前におかれたソファに腰を下ろすと、遼子が何か話しかけようとするのを遮るように口を開いた。

「私・・・レイプされてるんです。」


2274 2004/08/10(Tue) 15:18:45 sakura  真夏の夜の夢

 レイプ・・・確かにそう言った。
これはまたデリケートな問題だと遼子は思った。

「いつの事ですか?被害届は出しましたか?」
「いえ・・・。」
うつむいたまま答える有香。
「それは相手が分からないから?それとも・・・。」
知り合いからの暴行であれば、心の傷もまた変わってくる。
「いえ・・・。人間ではないんです・・・。」

ゆっくり顔を上げた有香の表情は、何かにひどく怯え、それが冗談や冷やかしではない事を証明していた。

「人間ではない・・・というと?相手が何か分かってるのかしら?」
「・・・私です。」
有香はひざに置いた両手をぎゅっと握り締めた。
「あなた本人・・・と言う事ですか?」
「はい・・・。いえ、正確に言うと、もう一人の私です・・・。」

多重人格障害・・・。
本人が症状を自覚している事も稀ではない。
レイプとは解離状態によく見られる自傷行為の種類なのだろうか。
あるいは幻覚・・・。

「多重人格障害でも、幻覚でもありません。」
有香が言った。
遼子は胸のうちを見透かされたようでぞっとした。

「もう一人の私が現れて・・・犯すんです・・・。」

窓を閉め切っていても、蝉の声が耳鳴りのように響いている。
遼子は、こんな都会に蝉たちが鳴く場所がそんなにあるのだろうかと、怯える患者を目の前にしてぼんやりと思っていた。


2278 2004/08/10(Tue) 18:34:32 sakura  真夏の夜の夢

 2004/08/10(Tue) 18:34:53 編集(投稿者)

1ヶ月ほど前、有香は恋人と別れた。
別段未練もなかったが、ぽかんと空いた時間が寂しかった。
−早く次の彼氏を見つけなきゃ・・・。
気持ちは焦るが、合コンでもなかなか相手は見つからなかった。

そして1週間前の夜、眠っていると何かが体を触っているような気配がした。
はじめは気のせいかと思い、眠気もあって再び眠りにつこうとした時、急に体が動かなくなった。
−金縛り・・・?
そのうち、またさっきの気配が蘇る。
明らかに何者かが自分の体をまさぐっている。
またそれは、動物や虫ではなく、確かに人の手だった。
−誰?正弘?
有香は別れた恋人が部屋に忍び込んできたのかとも思った。
しかし、別れた際に合鍵は返してもらっている。
それに必ずドアチェーンをかける事を習慣にしているので、有り得ない。
−まさか・・・強姦魔?
恐怖が込み上げてくる。
有香が住んでいる部屋は2階。忍び込もうと思えば可能である。
有香は抵抗しようとしても、体ばかりか声すら出ない。

『手』は容赦なく有香の体を這い回っている。
両方の乳房をゆっくりと揉み上げ、乳首を摘み、転がす。
その『手』の冷たさに、体中に鳥肌が立った。
執拗に乳首をいじっていたかと思うと、その『手』は徐々に下半身へと下りてくる。
−いや!やめてぇ!
心の中で叫ぶ有香の声は、もちろん誰の耳にも届かない。
ジャリ・・・
ヘアを撫でる音がした。
−いやぁ!!許して!
心の声も虚しく、『手』はそのままヘアをたどるように下へと下りていった。
氷のように冷たい『手』は、ひだをゆっくりとなぞり、クリトリスを揉む。
この恐怖の中で感じるはずもなく、有香はどうにか声を出そうと必死だった。
しばらくクリトリスを弄ぶと、濡れてもいない有香の中へいきなり挿入した。
メリメリメリ・・・・!

−ひいっ・・・いやぁぁぁ!!


2283 2004/08/11(Wed) 13:04:54 sakura  真夏の夜の夢

 「気がつくともう朝でした。私は汗でぐっしょりと濡れていました。窓やドアを見ましたが、ちゃんと鍵も閉まっていて、誰かが侵入した形跡はなかったんです。」

遼子はあえて口を挟まずに黙って聞いていた。

「悪い夢だと思いました。でも、局部がひりひりと痛むんです。夢じゃない・・・っ。」

遼子はうつむき、黙り込んでいる有香に静かに話しかけた。
「よくある話です。眠っている間に自慰行為をしたり、自傷行為をしたり。精神的に不安定なときは起こり易い現象です。」
励ますように言った遼子に、有香は反抗的な目を向けた。
「私も最初はそう思いました。そう思う事で少しは気が紛れましたから。でも・・・。」
有香はまた不安げな顔をしてうつむいた。
「その日だけではなかったんです。いいえ、その日から・・・始まったんです。」

有香は握り締めた拳に、さらに力をこめた。

「あいつは・・・あいつはどんどん変化し始めました。」


2299 2004/08/12(Thu) 16:47:09 sakura  真夏の夜の夢

 有香は昨夜の事を忘れることにした。
気にする事はない。悪い夢だ。

大学へ行き、友人とおしゃべりをし、バイトをし、その日はいつも通りに過ぎた。
夜にはすっかり昨夜の事は現実のものではなくなっていた。
とは言え、念入りに窓の鍵やドアのチェーンをチェックしてからベッドに入った。
昨夜あまり眠れなかった事もあり、すぐに深い眠りに落ちていった。

深い眠りの淵で何かが体を這っている。
二度目と言う事もあって、昨日抱いた恐怖はなかった。
気のせいにして有香はそのまま眠りの中へ戻ろうとした。
その時、『手』ではない感触が有香の乳首を捕らえた。

ヌチャッ・・・

その異様な感触に、有香は一気に現実へと引き戻された。
またしても体はぴくりともしない。

ピチャッピチャッ・・・

−な・・・何なの?
異様な湿った感触・・・しかし、初めて出会うものではなかった。
少し前に味わった事のある感触・・・。

舌だ。
明らかに乳首を舐められている。
有香の全身に鳥肌が立った。
舌だけではない。
乳房を揉みながら乳首を舐め、下半身をまさぐっている。

−誰?誰なの!?
有香は恐る恐る目を開けてみた。
部屋はまだ暗く、目を凝らしても何も見えない。

チュパチュパチュパ・・・

有香の恐怖など関係なく、乳首を舐めたり吸ったりして愛撫は続く。
そして『手』は昨日通った道をたどるように、ヘアを撫で、更に下へと伸びてくる。

−助けてっ・・・・!


2309 2004/08/13(Fri) 19:02:50 sakura  真夏の夜の夢

 昨日と同じ朝だった。
体は汗でぐっしょりと濡れ、パジャマの乱れはない。
しかし、夢にしてはあまりにもリアルな・・・。

自分はどこかおかしいのだろうか。
有香は昨日のように忘れ去る事ができなかった。
友人に相談したところで、欲求不満だと一笑されるだけだろう。
部屋に帰るのが気が重く、誰かの家に泊めてもらおうかとも思ったが、何が起こっているか自分でも分からない以上はそれもできなかった。
仕方なく深夜部屋に戻り、すぐに眠る気にもなれずに何となくテレビを見ていたが、連日の寝不足もあってついうたた寝をしてしまった。

遠くから人の声や音楽が聞こえる。
−あ・・・テレビつけっ放しだったんだ。
目を覚ましかけた時、有香はまた気配を感じた。

−・・・来た・・・

体の自由を奪われ、至る所を撫で回されている。

カリッ・・・

噛まれた。
紛れもなく歯だった。
有香は『それ』が日々変化している事に気付いた。
恐怖を通り越して、怒りが込み上げてきた。
−毎日私の体を弄び続けて・・・正体を現しなさいよっ。
『それ』は有香の心の声に応えるかのように、ゆっくりと有香の腹の辺りから這い上がってきた。

−正体を見てやる・・・っ

電気は明々とついている。
有香は目を見開いた。
その目に映ったものは・・・・。


2344 2004/08/16(Mon) 20:37:59 sakura  真夏の夜の夢

 「気がつくと私は床に寝ていました。気絶したんだと思います。記憶を辿り、思わず悲鳴を上げました。」
有香は話しながらがたがたと震えていた。
「いったい何を見たの?」
膝の上に置かれている有香の両手は、あまりにも強く握りすぎて血の気を失っていた。
「・・・私自身です。私自身が自分を・・・犯していました。」
「夢だと言う事も・・・。」
「これでもまだ夢や幻覚だと言えますか?」
有香は声を荒げ、シャツの胸を開いて見せた。

・・・・!

彼女の肌には無数の痣があった。
自分ではつける事のできない場所に、明らかにキスマークだと思われる内出血、そして歯型・・・・。

「先生・・・、私、どうなるんでしょうか・・・・?」
有香は震えながら真っ青な顔をして聞くともなしに呟いた。

有香の言葉をすべて信じれば、夢や幻覚ではないことがはっきりしていた。
彼女の言葉にしていない事をこれから聞き出さなければ・・・。
これからが本当の治療なのだ。


2361 2004/08/18(Wed) 12:59:21 sakura  真夏の夜の夢

 遼子は簡単な催眠療法を試みた。
「目を閉じて、一週間前、その前後の事を思い出してみましょう。何が見えますか?」
「部屋・・・私の部屋です。」
「何かいつもと変わったところはありませんか?気になった事とか。」
「いえ・・・、あ、風鈴のような音が聞こえました。」
「他にはないですか?」
「それまで聞いたことがなかったのに・・・あの音が聞こえると・・・あいつが・・。」
突然有香が言葉を詰まらせ、肩を揺らして激しく呼吸をし始めた。
「有香さん?大丈夫ですか?」
「あいつが・・・来た・・。いっいやぁ!!」
有香はソファに倒れこみ、必死に手足をばたつかせている。

催眠療法に失敗した?
遼子は立ち上がり、有香のもとへ駆けつけようとした。
次の瞬間、すごい力で突き飛ばされ、遼子は床に尻餅をついた。
「有香さん!」
有香はソファの上で仰向けになり、何かから抵抗しているのか、手足をばたつかせている。
遼子には、有香が抵抗しているようで、実は自分で衣服を乱しているよう見えた。
もう一人の彼女・・・。
有香の胸ははだけ、スカートもばたつく足で腰まで上がっている。
態度では抵抗しつつも、ブラをずり上げ、ショーツもまた引きちぎろうとしている。
本当に『見えざる手』によって暴行されているのを阻止しようとしているようにも見えてきた。

遼子には分からなくなった。
あるはずのない事を私が錯覚しているなんて・・・。


2412 2004/08/23(Mon) 22:25:55 sakura  真夏の夜の夢

 「いやっ離して・・・っ!」
有香は両手を頭の上にピンと伸ばし、動かなくなった。
いや・・・動けなくなった。
露になった乳房は不規則に揺れている。
まるで誰かに揉みしだかれているように。

チュパッチュパッチュパッ・・・・

異様な音に気付き、遼子は揺れている乳房を見つめた。
乳首が上下左右に動いている。
まるで見えない舌に弄ばれているかのように。
そしてその乳首は十分なほど勃起していた。

あり得ない、こんな事。起こり得るはずがない・・・・。

今度は有香の両足が大きく開かれた。
スカートは腰まで捲り上げられ、ショーツは引きちぎられ、有香の下腹部は遼子の前にさらされた。
遼子は声を出す事も、目をそらす事もできず、有香の恥ずかしい姿を目の当たりにしていた。

ピチャッピチャッ・・
湿った音がして、有香のヘアの辺りが風もないのに揺れている。
開かれた有香のヒダの辺りが濡れ始めた。
「いやっいやぁっ」
有香は必死に抵抗している。
しかし、その体は徐々に桃色に染まり始めた。

クチュックチュックチュッ・・・
音と共に有香の肌がしっとりと汗ばみ、見ている遼子も首の辺りがじっとりとし始めた。
遼子の前に大きく開かれた有香の腿の付け根から、液体が幾筋か流れている。

グチュッ・・ズブズブズブ・・・
艶かしい音がしたかと思うと、有香の体が前後に激しく揺れ始めた。
「うっうっ・・くっうぅっ・・・!」
有香の苦しそうな声が漏れる。
有香の乳房が、今度は規則的に激しく上下している。

有香の体がいきなり起き上がり、今度は遼子の正面を向いた。
またもや両足を大きく開き、激しく体が上下に揺れている。
遼子は目の前の有香のみだらな姿に釘付けになり、確信した。
間違いなく『何か』を挿入され、激しく突き上げられている。

グチュッグチュッグチュッ
有香の体が揺れるたび、みだらな音が響く。
普通なら直視できるはずのない光景を、遼子は身じろぎもせず見つめている。
ゴクッ・・・
無意識に生唾を飲み込み、遼子は体が火照るのを感じていた。

どうしたと言うの・・・。
有香さんも、私も、目の前の出来事も・・・。

「うっぅっ・・・はっ・・うっ・・・」
有香の噛み締めた唇から切ない声が漏れ始めた。
有香の開かれたワレメからも甘い匂いのする汁が漏れている。
上下のピストン運動が更に激しくなる。
有香の声も、遼子の息遣いもそれに連れて激しくなる。

「うっくうぅっ・・・んぁああああ!!」
有香は大きな声をあげ、体をぶるぶると震わせた。
それでもしばらくはピストン運動はやまず、有香は上下するたび激しく痙攣した。
ソファにドサッと倒れこんでからも、有香の痙攣はしばらく続いた。

遼子は動くどころか、声さえも出すことができなかった。
静寂を取り戻した部屋で、遼子は恐怖がものすごい勢いで膨れ上がるのを感じずにはいられなかった。


2414 2004/08/23(Mon) 23:36:47 sakura  真夏の夜の夢

 「ううん・・・」
有香の声に、はっと我に返った遼子は、震える足で近づき、自分の上着をかけた。
「先生・・・私・・・?」
「何から話していいのか・・・。私も混乱しているの。」
有香は仰向けになったままぼんやりと天井を眺めていた。
突然うつろな目がかっと開かれ、ソファに飛び起きた。
「あいつ・・・あいつが来たのね・・・・それで・・・私・・・。」
有香は遼子を見た。
遼子は明らかに狼狽していて、自分が今思い出した事が現実の事だったと思い知らされた。
「私・・・化け物と交わった?それで・・・絶頂を・・・?」
有香の顔が見る見る蒼白になっている。
「お、落ち着いて、有香さん・・・。」
遼子が有香の肩に手をかけようとした途端、有香は勢いよく立ち上がった。
「いやっいやあぁぁぁ!!」
有香は遼子の手を振り払って窓のほうへ走り出した。
「有香さんっ!だめぇっ!!」

窓が開け放たれた瞬間、有香の姿が消え、ドスンと鈍い音が下から聞こえた。
「有香・・・さん・・・。」
遼子は力なく、その場に座り込んだ。
まだ頭の中は混乱している。
有香のみだらな姿、見えざる相手、そして・・・。

き、救急車を・・・。
遼子は足ががくがくして思うように立ち上がれず、机の脚を掴みながらようやく這い上がった。
震える手で受話器に手をかけた。

チリンチリン・・・・

後ろで音がした。
『風鈴のような音』・・・。
一瞬、有香の話が頭の中に蘇った。

―あの音が聞こえると・・・あいつが・・・

遼子はゆっくりと後ろを振り返った。
そこには、さっき飛び降りたはずの有香が立っていた。
「ゆ・・・かさん・・・?」
有香はうつむいたまま話し始めた。
「もう少しで私のものになってたのに、台無しだわねぇ・・・。」

チリンチリン・・・
まだあの音は鳴っている。

「次はあんただよ。」

そう言って、上げた顔は有香ではなく、遼子だった。

遼子は意識が遠のき、自分が深い闇の奥底へ落ちていくのを感じた。


2457 2004/08/26(Thu) 17:10:47 sakura  真夏の夜の夢

 息苦しさに目を覚まし、遼子は飛び起きた。
自分の部屋。いつものベッド。
鼓動は早く、滴るほど汗をかいているにも関わらず、ガタガタと震えが止まらない。

夢・・・?
あまりにも非現実的でそのくせリアルな・・・。

時計を見ると、いつもよりも30分は遅い。
遼子は慌てて身づくろいをし、部屋を出た。
通勤電車の中で、まだ昨夜の夢が頭から離れない。

カウンセラーともあろうものが、あんな夢。
きっと連日の熱帯夜のせいだわ・・・。
苦手でもエアコンつけて寝なきゃね・・・。

熱帯夜のせいにしながらも、夢の舞台になった部屋へ来ると、また鮮明に思い出される。
遼子は不安にかられながらカルテを調べた。
橋本有香・・・そんな名前の患者はいなかった。

私ったら、どうかしてるわ。馬鹿馬鹿しい。
これじゃ患者さんに申し訳ないわね。
ようやく安心し、思わず噴出してしまった。

「ふー・・・」
今日の最後の患者を送り出し、遼子はため息をついた。
今日はことさら疲れていた。
時計を見ると16時少し前。
遼子が帰り支度を始めると、ノックする音がした。
もう予約を受けている患者はいない。
「すみません、初診の方はまず電話で予約を頂くことになってますので。」
患者同士が鉢合わせしないためであり、待合室も設けていない。
ドア越しに遼子が言っても、またノックの音が聞こえる。

聞こえないのかしら・・・

遼子はドアを開けかけて、凍りついた。

チリンチリン・・・
今度はノックの音の変わりに『あの音』が聞こえたのだ。

遼子は頭の先から血が一気に下がるのが分かった。
ドアノブに伸ばしかけた手が震えている。

まさか・・・・

ドアノブがゆっくりと回り、音もなくドアが開かれた。

チリンチリン・・・




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