短い間の―・・・        投稿者:真尋 投稿日:2003/03/16(Sun) 16:11 No.1067

 彼女の名前はあき。
 彼女を知ったのは中1の三学期。
 ほんと最後の方だった。
 きっかけは、僕もあきもB'zが好きだったから。
 でも話すコトは少なくて、中2になった。
 僕の学校は、毎年クラス替えがある。
 下駄箱に張ってあるクラス表を見て教室に向かった。
真:おはよー。
 教室に行くと、そこにはあきがいた。
あ:真尋〜。一緒のクラスなんだー。やったね。
 正直、この頃僕はあきが嫌いだった。
 なんてゆうのかな…自慢が大好きでいやみだったんだ。
 僕は聞こえなかったフリをした。
あ:なんで無視すんの?
 笑いながら聞いてくる。
 そんな態度に僕はイラついた。
真:うっさいなぁー…。
あ:…ねえ。
真:どうでもいいじゃん。
 そう言って僕が睨むと彼女は他の友達の所へ行った。
真:(これでもう寄りつかないだろ)
 僕はそう思った。
 けど、次の日もその次の日も彼女はしつこくする。
 何度冷たくしても。
 どんどんしつこくする。
 思い切って、僕は聞いた。
真:僕をからかって楽し?
あ:からかってないよ?
真:じゃあなんでしつこくすんの?
あ:…気になるから。
真:はぁ〜?からかってんだろ?
あ:ち、違うよ!!
 あきははずかしそうに下を向いた。
あ:真尋ってさーいつも一人じゃん。
真:ん?ああ、そうだね。
あ:それにあたしになつかないから…
真:・・・?
あ:あたしって結構みんなから慕われるのに。
真:(なに自慢してんだよ…)
あ:なのに、真尋は冷たいじゃん。
真:なんでも手に入れたいってのか?
 僕が強い口調で言うとあきは涙目になった。
あ:なんかうまく言えないけど…気になる。
真:…
 それから僕は少しあきに優しくなった。
 厳しくもなった。
真:おまえ、男遊びと自慢やめなよ。
あ:そうゆうの嫌?
真:うん。嫌。
 僕は彼女が嫌いではなくなった。

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 短い間の―・・・ (2) 真尋 - 2003/03/17(Mon) 00:35 No.1070    
 

真:おはよっ。
あ:真尋ぉ〜聞いてよ、昨日さ―…
  最近、学校に行くのが早くなった。
  あきと話がしたくて。
  外に出れない僕はあきと話すのは楽しくて、色々知った。
  その頃、あきのウワサがすごかった。
  援交してるとか、ヤリマンだとか。
  僕は別に気にしてなかった。
  事情があると思ってたから。
  ある日僕は先生に呼び出されて帰りが遅くなってしまった。
  教室にカバンを取りに行くと、まだ電気がついていた。
真:(下校時刻とっくに過ぎてんのに…)
  ゆっくりドアを開けると、そこにはあきがいた。
真:あき?何してんの?
あ:真尋!?
  あきはすぐに顔を伏せた。
真:(泣いてる?)
  僕はびっくりした。
  あきは悲しみとかそういうのに縁がないと思ってた。
真:(僕は…)
  何にも知らないくせに勝手に決めつけてた自分を憎んだ。
真:あき…どした。
あ:何でもないよ、大丈夫。
  大丈夫なわけない。
真:無理して笑うなよ。
あ:…無理なんてしてないよ。
  僕はあきの頭をなでた。
  あきは声を出して泣いた。
  小さい子供みたいに…。
あ:ごめんね。
真:ん?
あ:いきなり泣いちゃって…。
真:んや。いいよ。
  もうすぐクラス替え。
  そう考えると僕は寂しくなった。

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 短い間の―・・・ (3) 真尋 - 2003/03/17(Mon) 03:50 No.1073    
 

 中3になってあきとクラスが離れた。
 それでも休み時間になるといつも僕を迎えにくる。
あ:真尋ぉ?
真:何?
あ:あのねー…
真:あき。
あ:ん〜?
真:話あるんだけど…。
 僕はあきにあることを相談することにした。
真:こないだ、地元の子に告られたんだ。
あ:え?
真:あ、びっくりした?女同士なんて。
あ:ううん…付き合うの…?
真:いや…なんて断ればいいのか…。
あ:好きな人がいるって言えば??
真:それでも付き合うって…
あ:…じゃあ…あたしと付き合ってるって言えば?
 僕は驚いた。
 あきがそんなこと言うと思わなかった。
 でもよく考えたら
真:(あ、フリをするだけか)
 あきには彼氏もいる。
 名前はゆきや。
 僕にもよく話す。
 26歳のヤクザ。
 けしてイイ恋愛ではなさそうだった。
 ゆきやは借金があって、それを返さないと殺されるらしい。
 あきに1ヶ月100万を用意させる。
 あきはバイトはできない。
 学校もある。
 だからあきは体を売り続ける。
 彼女はゆきやが離れて行かないように必死になる。
あ:真尋?
真:ん?あ、じゃあ今日断ってくるよ。
 そう言って僕は教室に戻った。

 それから一週間後。
 いつものようにカラオケにいた。
あ:なんかうたってよー。
真:んー?う〜ん…。
 僕は雑誌とにらめっこ。
 しばらく考えているとあきが抱きついてきた。
真:どしたー?
 笑って頭をポンポンとたたく。
あ:真尋…あたしのこと嫌い?
真:なに急に…
あ:だって付き合っても何も変わんないから…。
真:え!?あれってフリじゃ…。
あ:違う…
真:でも、あきは彼氏いるじゃん。悪いし…別れた方が…
あ:いやっ!!いゃ…
 あきは泣き出した。
 僕はどうしていいのかわからなくて、ただ抱きしめた。
あ:行かないで!一人にしないで…
 泣き叫ぶあきを強く抱きしめた。
真:大丈夫だよ。ここにいるよ。
 僕は確実に彼女を好きになっていった。

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 短い間の―・・・ (4) 真尋 - 2003/03/17(Mon) 15:54 No.1076    
 

  初めてキスをあきは知らない。
あ:今日真尋ん家行っていい?
真:またー?
あ:行きたいんだもん。
 あきが家に来るのは4回目くらい。
 付き合う前にも来たから。
真:じゃあ今カバン持ってくる。

 僕の家は友達を連れてくるのは駄目だ。
 だからいつもばれないようにしていた。
 家に着いたら、すぐにあきを部屋に案内する。
あ:相変わらず綺麗にしてるねー。
真:そうか?
あ:あたしの部屋すごいもん。
 他愛のない話をしてると時計は7時近くになっていた。
 僕の家からあきの家までは遠い。
 1.5時間はかかる。
真:あき、帰らなくても平気?
あ:今日も泊まろうかなー。
真:また?
あ:うん、駄目??
真:しょうがないなー・・・。
 そういって僕はカーペットに布団をしいた。
あ:んー眠い・・・。
真:電気消そうか?
あ:うん。
 それからまた話をした。
 僕はいつのまにか寝てしまって、目が覚めると外が少し明るかった。
 ふとあきを見る。
 僕は無意識に手を伸ばし、あきの髪をなでていた。
 そして無意識にキスをする。
 付き合ってから1ヶ月後のコトだった。
 
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 短い間の―・・・ (5) 真尋 - 2003/03/19(Wed) 00:54 No.1087    
 

あ:ゆきやと別れる。
 そう言ったのは夏休みに入ってすぐのコトだった。
真:別れられる?何してくるかわかんないぞ?
あ:だから…ヤクザの人に頼んだの。
あ:はめるの、ゆきやを。
真:…それでそいつに体売ったのか?
あ:うん…
 僕は泣きそうな気持ちを抑えて言った。
真:薬やらされてまで?
 あきは驚いた顔で僕を見た。
あ:なんで知って…
真:バックの中に入ってんの見えた。
 :最初見たときは何かわからなかった。
 :透明のパイプみたいなのと、透明な固まりで。
 :でもさっき足が痙攣してただろ?
 :それでもしかしたらって―…
あ:ごめん…ごめんなさい!ごめんなさい!
 泣きながら何回も謝る。
真:(あきが悪いんじゃない…)
 そう思いながら、何もできない自分が嫌になった。
真:(なんで何もしてやれないいんだ!
   なんでこんな無力なんだ!
   守ることさえもできないのか…?)
あ:真尋…?
 あきの顔がかすんでよく見えない。
あ:…泣かないで…
 僕は泣いていた。
 それはあきへの同情の涙じゃない。
 自分の惨めさ。
 ただ『頑張って』としか言えない。
 情けない自分。
あ:泣かないで…泣かないで…
 あきが僕を抱きしめる。
 すごく安心した。
 目を閉じて、あきの鼓動だけが聞こえる。
あ:真尋?
真:…あきさ、どうして僕が好きになったの?
あ:えっ…
 いきなりの質問にあきは驚いた様子だった。
 あきは僕を離してゆっくり話始めた。
あ:最初は真尋が謎な感じがしたんだ。
  それですごい知りたくなって、いつの間にか目で追ってたんだ…
  しばらくしてだんだん好きになってることに気付いた。
  でも…認めたくなかったんだ…
真:女同士だから?
あ:うん。
  あたしね、そゆうの気持ち悪いとか思ってたから…。
  だから『そんなわけない』って言い聞かせてた。
  でも、地元の子に告られたって話を聞いたとき、はっきりわかった。
  好きなんだって。
真:…。
あ:もし真尋がその子と付き合ったら…。
  もし他の人とキスとかしたら…嫌だって思った。
  『触らないで!』って心のなかで叫んでた―…
真:僕はあきに何もしてやれない
あ:そんなことない!あたしは真尋が必要なの―…
 この時は、あきのこの言葉の意味がわからなかった。

 3期の終わりに、全校生徒に配られた本にあきの詩が書かれている。
 その詩は僕へ向けてだった。
 その中に、あの時あきが言いたかったことが書いてあった。
【私は弱い人間だから
 強さという鎧をかぶって生きている
 君だけが気付いてくれたから
 君を求めてしまうのかもしれない】

 『これみどりのコトだろー?』
 みんなが口々に言う。
 僕はすぐにあきの所へ行った。
真:あき!
あ:あ、それ読んだの…?なんか恥ずかしいな…
真:あき、あきだけじゃないよ。
あ:んん?よくわかんないんだけど…
真:あきが僕を必要としてるように僕もあきが必要だよ!
あ:ちょ、誰か聞いてたら―…
真:いいじゃん。いいじゃん。
 僕らは笑ってた。
 お互いが存在理由。
 君がいるから僕はいるんだ。
 あきがいなくなるなんて想像もつかない。
 考えたくもなかったんだ。

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 短い間の―・・・(6)  真尋 - 2003/03/27(Thu) 02:52 No.1127    
 

 その日は美術の課題があって一人居残りだった。
真:(あぁ…めんどくさー…)
 僕は美術が嫌いだ。
 絵具とかとくに。
 ダルそうにパレットに絵具を出して筆で混ぜる。
真:(早く終わらせよう)
 しばらくすると廊下から僕を呼ぶ声が聞こえた。
あ:真尋ぉ!
真:あき?どしたの?
あ:どしたじゃない!
 :今日、真尋の家に行くって言ったじゃん!!
真:あぁ…ごめん…
 :(すっかり忘れてた…)
あ:ほんとに悪いと思ってる??
真:うん。
あ:じゃあおねがい聞いてくれる?
真:お願い?
あ:ん、それは後でね。早く行こう!
 僕は急いで用具を片づけて学校を出た。
 家に着き服を着替える。
 今日は家に誰もいない。
 コーヒーを入れて部屋に向かう。
真:そういえばお願いって?
あ:あのね…いつも別々に寝てるでしょ??
 :だから今日は…一緒に寝たい…
真:寂しいの?
あ:それもあるけどギューってして。
真:いいよー。
 あきを抱き寄せて頭をなでる。
 うれしそうに笑うあき。
真:寝よっか?
あ:うん。
 電気を消してベットに入った。
あ:暑い…
真:服脱げば?
 冗談で言ったつもりだった。
 けどあきは
あ:うん。脱ぐ。
 そう言って服に手をかける。
 電気は消していたけど月明かりが眩しい。
 僕は目のやり場に困った。
 下着姿になったあきを直視できない…。
あ:真尋?
真:ん、何?
あ:あんまり見ないでね…
 恥ずかしそうにベットに入ってくる。
 小声でいろんなことを話してた。
 すると突然
あ:真尋…キスしたい
 とあきが言った。
 まず軽くする、何回も。
 いったん離して今度は深く。
 
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 短い間の―・・・ (7) 真尋 - 2003/03/28(Fri) 13:00 No.1140    
 

 あ:真尋…やめないで…
 僕が唇を離すと泣きそうな声で言った。
 舌が絡み合う音が部屋に響く。
あ:…真尋っ…
 理性をなくした訳じゃないけど、僕はだんだんあきの体に触れてく。
 あきもそれを受け入れるかのように背中に手まわす。
 唇を離してあきを見つめる。
 なにかを確認するように…。
真:あき…
 耳元で囁くとあきのからだがビクッと反応した。
 肩にそっとキスをして、胸まで舌でなぞる。
あ:ふっ…あぁ…
 甘い声をだして僕の背中に爪をたてる。
 胸に手をあて指で先端をつまんだりはじいたりする。
あ:んっ…触るだけじゃ嫌…
 :舐めて…
 その声に反応して激しく責める。
 手はすでに濡れている部分に触れようとしている・・・。


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 短い間の―・・・(8)  真尋 - 2003/03/31(Mon) 02:34 No.1165    
 

 キスをしながらゆっくりとあきの下着をはずしていく。
 滑るように腕からおちてあきの胸があらわになった。
あ:ん…
 あきが唇を離して両手で胸を隠した。
真:…嫌だった?
あ:ううん…したいけど汚いよ…
 :思い出しちゃって…
 あきの体がかすかに震えていた。
 きっと援交の時の光景がフラッシュバックしているのだろう。
 あきの頬に触れる。
真:あき
 少し強めの声であきを呼んだ。
真:あき…よく見て。
 :よく聞いて…
 :僕だから…
 優しくキスをして抱きしめる。
あ:うん…真尋…
 
あ:ん…はぁぁ…真尋っ…
 指で濡れている部分を刺激する。
あ:だめ…イッちゃうよ…
真:いいよ…
あ:だって足りないっ…まだ…してほしい…
 僕はいったん手をとめた。
あ:真尋…?
 すこし不安気な表情で僕を見る。
あ:真尋っ…
 あきが僕の名前を呼ぶと同時に、指を欲しがっている部分に入れた。
あ:あっ!
 僕の背中にまわした手に力が入る。
あ:真尋っ…愛し…てる……んっ!
 言い終わると同時にあきの全身の力が抜けて、僕の胸にもたれかかった。
 息が整えながらキスを求めてくる。
 長いキス。
 きつく抱きしめて耳元で囁いた。
真:愛してる…
 
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短い間の―・・・(9)  真尋 - 2003/04/01(Tue) 04:24 No.1179    
 

 初めて愛してるって言った日から一年が過ぎた。
 その間に色々あったけど、それでも幸せだった。
 これからもそんな日が続くはずなんだ―…
 
 その日はよく晴れた日でさ。
 とても暑かった。
 クーラーをつけて、部屋でごろごろする。
 試験休み中の7/11。
 MDを聴いてボーっとして過ごす。
 何回も同じ曲を聴いて、寝て。
 目が覚めるともう夕方だった。
 親は買い物に行ったらしく静かだ。
 僕はすぐさま電話をとり、あきにかける。
あ:真尋ぉー。
 :どしたの?
真:ん、電話できるから…今何してんの?
 あきの周りがうるさかったから聞いてみた。
あ:今ね…梨歩と遊んでるの。
 僕はびっくりした。
 梨歩は僕の元彼女。
 あきとケンカして一時期別れていたときに告られて付き合った。
 すぐに別れたけれど。
 そんな梨歩とあきがメールをしているのを、ついこの前知った。
 メールの内容はすごかった…よく覚えている。
 :(二人が一緒にいる)
 僕は不安になった。
あ:真尋??
真:…あとでかけ直して…
あ:え?うん…

 7/11 PM10:00頃電話がなった。
真:もしもし…
あ:真尋さっき…どしたの?
真:あき…梨歩と…
あ:何??
真:梨歩とした…?
あ:!!
 図星だった。
 しばらく沈黙が続いた。
あ:真尋…
真:なんでしたの?
あ:あたしが好きなのは真尋だけだから…
真:そんなこと聞いてない!
 受話器ごしに怒鳴った
 あきの声が震える。
あ:…真尋は…あたしが彼氏作っても何も言わないじゃん…

真:だからしたの?
あ:あたしばっか…真尋に…
真:僕に妬いてほしかった?
 :僕が妬けばなんでもするんだ?
あ:違う!ただ…
真:じゃあなんなんだよ!!
あ:嫌!!怒鳴らないで!
 あきが泣き叫ぶ。
 いつもならここで僕はあきをなだめる。
 でも今日は怒りがおさまらない。
真:もういい。
 :勝手に梨歩としてろよ!
あ:やだ!真尋!!
真:…好きだよあきのこと。
 :もう…切るね
あ:切らないで!真尋っ!!
 泣き叫ぶあきの声を振り払って僕は受話器をおいた。
 その手に涙がおちる―…
真:(あき…)
 部屋に戻り放心状態でいた。
真:!
 予感がした。
 嫌な予感が。
 まさか当たるとは思わなかったんだ―・・・


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 短い間の―・・・ (10) 真尋 - 2003/05/18(Sun) 19:09 No.1295    
 
 前にあきが僕に勧めた本があった。
 DeepLove。
 少し僕らに似てたかな。
 援助交際。
 レイプ。
 禁じられた恋。
 そして―…

 7/12。
 今日は生徒登校日で午後から学校が始まる。
 僕が目を覚ますとすぐに電話が鳴った。
 まだ7:00なのに…。
 少し不思議に思いながら受話器をとった。
真:もしもし…
 『…』
 電話の相手は何も応答しない。
真:あの…
 『…真尋…梨歩だけど…』
 一瞬、頭の中が真っ白になった。
 そして怒りがこみあげる。
真:何?
梨:電話…きた?
真:誰から?
 強い口調で言う。
 梨歩は少しの間黙った。
梨:きてないんだね…
 泣いているのか、か細い声だった。
真:(まさか―…)
 昨日の夜の予感が頭をよぎった。
 その時、梨歩がポツリと言った。

梨:あきちゃんが…死んだって…

 ―真っ暗な闇―

真:…
梨:昨日の夜…飛び降りたって…
真:そっか…

 まだ実感がなかった。
 だから泣くこともできなかった。
 梨歩との電話を切り、また僕は眠りについた。

 目覚めて今日のことが夢であるように願ったんだ…。