■蜜香  
□葉 2009/04/09(Thu)


桜日和、現世(うつしよ)忘れてそぞろ歩かん。 ふいに思い立って仕事を休み、古都を訪れた佳織の心境はまさにそれだった。 元々神社仏閣は好きな方で、一人でも寂しくはない。 観光客も少なく木々に埋もれたような小さな寺を選び、花見と森林浴を兼ねてリフレッシュでもするつもりだった。 それが今、思いもよらぬ事になっている。 本堂の裏の遊歩道、木立の陰に隠れた小さな東屋で、佳織は柔らかな胸と腕に抱きとめられていた。 相手の顔はまだ見ていない。 冷たく滑らかなブラウス越しの豊かな乳房と、むせ返るような甘い匂いに混乱し、動くことも忘れている。 甘い匂い――花とも違う、ムスクのような動物性の香水とも違う、でもそれら全てが混じっているような匂い。 それがこの女の後を追った理由だった。 すれ違いざまにふと佳織を捉え、観光客のいない林にまで誘った香りだった。 「あっ‥‥」 女に抱きすくめられたまま佳織は呻き、微かに下半身をくねらせた。 (何?これ‥‥) 女はそれ以上動いていない。 けれども佳織の身体は熱くなり、股間の奥に何かが響いた。 むず痒いような感覚――疼きだ。 「嫌…っ」 佳織は初めて我に返り、女の抱擁から逃れようとした。 怖いと言うより恥ずかしかった。 身体の芯が疼くような思いなど、経験の少ない自分には独り寝の寝床での手慰みの時くらいしかない。 それも見知らぬ同性相手に―― 「だいじょうぶ」 突然の混乱に涙さえ浮かべる佳織の耳に、とろけるような声が届いた。 「分かってるわ‥感じてるんでしょう? 貴女のせいじゃないの、そのままでいいのよ」 穏やかで落ちついた、深みのある声だった。 佳織は恐る恐る女の胸元から顔を上げ、初めて女の顔を見た。 端正な目鼻立ちの、綺麗な女だった。 メイクは濃くもなく薄くもなく、まっすぐな黒髪が胸元まで垂れている。 どことなく古風で、和装が似合いそうな女だった。 「会えて嬉しいわ」 女は微笑んで佳織の目を覗き、その頭を抱き込んで自分の胸に押しつけた。 あの甘い匂いが再び鼻腔を満たし、佳織は頭がくらくらした。 両脚の間がむずむずし、身体から力が抜けるようだ。 (このひと‥) 無意識に頭を動かした時、佳織は気付いた。 (このひと、下着を着けてない‥) ブラウス越しに鼻先に、ぽつんと硬いものが掠めた。 (このひとも‥乳首、勃ってる‥) (携帯)
■蜜香・2 自分が何をしているかも分からず、佳織は自ら女のブラウスのとがりに顔を寄せた。 女の手が優しく髪を撫で、僅かに上半身を反らせるのが分かった。 「ああ…」 佳織の頬がそこを往復すると、女は満足気な溜め息を漏らした。 女の乳首は更に硬くなり、ブラウスの布地を押し上げる程になった。 「ああ…ん‥」 女は心地良さげに身をのけ反らせ、佳織の髪から背中をゆっくりと撫で下ろした。 そのぞくりとするような感覚の中、佳織はブラウス越しに女の乳首を鼻先や頬で転がし、 無意識のうちに唇で挟んで吸いあげ、甘噛みして布地を湿らせた。 佳織の唾液で濡れたブラウスに、女の乳首がくっきりと浮かび上がった。 「いい子ね…とっても上手よ‥」 女は甘くかすれた声で呟きながら、東屋の腰掛けに佳織を誘った。 腰掛けに座って佳織をひざまづかせる形で向き合い、自分からブラウスの前を開く。 「好きにして」 佳織は目眩を覚えた。 むき出しになった女の乳房は白く豊かで、オリーブ色の乳首は佳織自身の唾液で濡れてつやつやと光っていた。 佳織は迷いもなくしどけなく開いた女の脚の間にひざまづき、両の乳房を両手で包み、やわやわと揉みしだきながら顔を寄せた。 「あっ‥ああ‥はあ‥」 女の乳房は柔らかくて熱かった。 その谷間に顔を埋め、佳織は夢中で舌を這わせ、硬い乳首を転がした。 「ああ‥いい、いいわ、上手よ‥」 女は白い喉を仰向けてよがり、佳織をますます強く引き寄せる。 身体が密着する度にあの匂いが強くなり、佳織は初めてその出所に気付いた。 「えっ‥?」 夢中でむしゃぶりついていた乳房から顔を上げ、佳織は視線を落とす。 たくし上げられたスカート、乳房と同じくらい白い太ももの奥――甘く狂おしい香りはそこから強く立ち上がっていた。 「気付いたのね」 女の声につられて顔を上げると、佳織はそこで初めて女に唇を塞がれた。 長い長いキス――それだけで気が遠くなるような――の後、ふいに両脚の間に指を這わされて佳織は呻いた。 下着越しに確実にクリトリスを捉えられ、熱い愛液がどっと溢れる感覚の中、佳織はほとんど夢うつつに女の囁きを聞いた。 「私のここは媚薬なの――いえ、媚香と言った方がいいかしら」 「媚‥香?」 女の指から逃れようと下半身をよじりつつ、佳織は呟いた。 「ええ」 女はしかし事もなげに片腕で佳織を抱き寄せもう一方の腕を伸ばし、ショーツの上から佳織の花芯を撫で上げた。
■蜜香・3 あまり罰当たりな事もできないからと女は笑い、中途半端に昂ぶったままの佳織をホテルに誘った。 「名前はお互いに知らない方がいいと思うわ」 部屋に入るなり佳織を抱きすくめ、ベッドに優しく腰掛けさせながら女は言った。 「教えて‥」 寺を出るまで散々弄られ焦らされた花芯は恥ずかしいくらいに濡れそぼち、ショーツはぐしょぐしょになっている。 女は指だけでなく唇でそこを愛撫し、生かさず殺さずで責めたてた。 佳織は歩くのもやっとでこの部屋にたどり着き、相手が同性なのも見ず知らずの相手なのも、もうどうでもよくなっていた。 「教えて‥」 女の唇が首筋を這い、指が胸元をまさぐるのに息を弾ませながら佳織は繰り返した。 「何を?」 女はからかうように言い、唇を下に滑らせる。 佳織は仰向けにベッドに倒れ込み、両脚を上げて女の腰に絡ませた。 「教えて‥媚香って‥なに‥?」 「もう分かってるじゃない」 女は器用に唇と歯で佳織のブラウスのボタンを外し、両手で乱暴にブラジャーを引き下ろす。 はずみで佳織の乳房がぶるんと揺れて露わになった。 「嫌‥っ」 反射的に隠そうとする佳織の手を女は払い、容赦なく掴み、撫で回した。 「んんっ‥」 左右の乳房からざわざわと快感が広がり、背筋を駆け上る。 佳織はこらえきれず身体を仰け反らせた。 「可愛いわよ‥すごく」 指の腹で片方の乳首を転がし、首筋を強く吸いながら女が囁く。 「さっき貴女にしてもらった事、全部してあげる‥貴女乳首が感じやすいのね。オナニーする時、いつも弄ってるの?」 「嫌‥そんなの‥」 「嫌じゃないでしょ? こんなに硬くして‥ほら、びんびんよ?」 「‥ああっ!!」 「ふふふ、もっと虐めてあげる‥敏感なのはどっちの乳首かしら?」 佳織はびくんびくんと上半身を痙攣させて叫び声をあげた。 女は両方の乳首を代わる代わる摘み、撫で、甘噛みと吸い上げるのを繰り返す。 自分で愛撫するのとは違う、先の見えない快感が乳首から全身に広がるのを感じ、あられもなく叫び続けた。 「ああん、あああ‥いい‥すごい‥」 「気持ちいい?」 「気持ちいい―――すごい‥すごいよぉ‥」 佳織は涙声になっていた。 女は絶妙のタイミングで乳首への愛撫を指と唇に使い分け、舌で丹念に舐め上げ虐め抜く。 さらに露わにした自分の乳房と乳房をこすり合わせ、乳首で乳首を弄られる。
■蜜香・4 乳首と乳首がこすれ合うもどかしさ頼りなさはたまらなく、佳織はすすり泣きながら身体を弾ませた。 女は佳織に両脚でがっしりと腰を捉えられつつも上半身を巧みに揺すり、揺れる乳房は佳織の顔のすぐ上を上下左右する。 佳織は両腕で女に抱きつき頭を起こし、揺れる乳房の先端に吸い付き乳首を舐める。 「ああっ―――」 女は身体を仰け反らせて声を上げ、佳織の舌技に笑みを漏らした。 「いやらしい子ね‥こんなにしてもまだ足りない? こんなに淫乱な子は初めてよ」 「もっと‥」 「もっと何?」 「もっと、して‥」 「何をしてほしいの? ちゃんとおっしゃい」 女の乳房と自分の顔を唾液でぐしょぐしょにして佳織は喘いだ。 「もっと虐めて‥佳織の乳首も‥あそこも‥」 名前を口にしたが、女は聞こえないふりをした。 代わりに指先で佳織の乳首を摘み、軽く捻った。 「‥ああっ!」 「乳首と、どこ?」 佳織は悔しくて泣きそうになった。 分からないわけないじゃない! 散々弄って、焦らしておいて――― けれども佳織にできるのは女の腰に絡ませた両脚に力を込め、腰を浮かせておねだりする事だけだった。 「あそこ―――佳織のあそこ‥お願い‥弄って‥虐めて‥お願い‥お姉さま‥」 女はくすっと笑い、佳織のショーツの端を掴み、ぐいっと引き上げた。 「ここ?」 「――ああッ!!」 「痛かった?」 「ううん‥気持ち‥いい‥」 ショーツは佳織の花芯をきつく締め上げ、Tバックのように食い込んだ。 佳織の腰は無意識に動き、緊縛感を更に強めようと淫らにくねった。 「ああ‥お姉さまあ‥」 腰をくねらせ、女の乳首を音を立てて吸い、佳織は空いた手で自分で乳房を揉みしだき、乳首を弄り始めた。 しかし独りよがりを女は見過ごさず、強引に身体を引き剥がすと69の体勢で佳織に覆い被さり、 自分のショーツをずらして佳織の鼻先に花芯を突き出した。 「教えてあげるわ」 佳織は涙にかすむ目で剥き出しの女の花芯を見つめ、そこから立ち上る芳香にむせた。 「お舐めなさい」 有無を言わせぬ声だったが、言われなくてもそうしたように、佳織はそこに顔を埋めた。 「あ‥はああ‥あっ‥」 女もかなり感じているのか、腰がびくんびくんと痙攣する。 佳織は女の太ももをがっしり掴み、熱く潤んだそこを懸命に舌でなぞり、舐め回した。
■蜜香・5 「ああ――あ、あ、あっ‥」 女のクリトリスは硬く勃起し、弾けんばかりになって震えている。 佳織は自分もこうしてほしいと伝えたい一心でそれを舐め、舌先でつつき、吸い込んだ。 (ああ‥なんて甘いの‥) 舌先の奉仕の最中にも、女の花芯から溢れる愛液が佳織の顔に垂れ落ちる。 それは蜂蜜ともメイプルシロップとも違う、濃厚で甘い蜜だった。 「待って‥慌てないで‥」 一心不乱に奉仕する佳織の口から蜜の花が離れ、佳織の太ももがふわりと抱え上げられる。 佳織は喜びで胸を詰まらせた。 「蜜香というものを作る人がいるの」 女の息を内股に感じ、佳織は気が遠くなりかけながらも耳を澄ませた。 「普段は香道――お香の香を作る職人さんよ。でも、媚薬になるお香を作る事があるの」 ショーツがずらされ、熱い息がかかる。 女の鼻先が触れる―― 「あ‥はあッ!!」 柔らかい唇が花芯を包み、女が喋る震動が電気のように奥に伝わる。 「そのお香はオーダーメイドでね、作られる人自身が原料を提供するの。何かは言わないでも分かるわね」 女の唇がゆっくり開き、熱い舌がちろちろと動き出す。 「ああ―――‥あ‥」 耐えに耐え続けた後のあまりの快感に、佳織は腰をくねらせた。 「その香りを嗅ぐとね、嗅がされた人は獣になるのよ‥貴女みたいにね」 誰にでもと言うわけではない。 その香りに惹かれる相手には、と女は続けた。 「貴女がこんなになってくれるのも、当然と言えば当然よね‥私の蜜に反応してくれたんだもの‥そうでしょう?」 答える暇は佳織にはなかった。 女が語り終えると同時に蜜の花芯が再び間近に迫り、佳織は殆ど反射的にそれに顔を埋めた。 「んっ‥ん‥ん‥」 佳織が花芯を舌でなぞると女も同じ動きで佳織の花芯を責め、クリトリスを舐めると舐められ、 いつしか秘穴にも後ろの穴にも舌と指が滑り込み、達しようとすれば退き、退けばまた責め、二人とも気が狂わんばかりになるまで責め合った。 「ああっ、もう、もう―――」 女がクリトリスを震わせて高く叫びかけた時、佳織は思わず身体を起こし、両脚を大きく開いて女に向けた。 「お願い――来て‥」 女はすぐに理解し、素早く身体を起こして開いた両脚をさし違いに佳織のそれと組み合わせ、肘で身体を支えて花芯と花芯をぴったり合わせた。 「ああ――あ、あ‥」 「ああ‥いい―――」
■蜜香・6 乳首と乳首とのこすれ合いとは比べものにならないもどかしさ、そして快楽の鋭さに二人は叫び続けた。 「いく―――だめ、いっちゃう‥」 「気持ちいい‥お姉さまのクリトリス‥硬い‥大きい‥」 「貴女のも、すごい‥犯して――もっと犯して‥」 「ああ――あ、あ、もう‥ああッ!!」 佳織は腰を浮かせたまま痙攣し、女もまた仰け反ったまま硬直した。 「安易に勧められる事じゃないけど‥」 古都の外れの住所を記したメモを渡す際、女は苦笑いを浮かべていた。 「セックスも麻薬の一つだし。‥まあ、お前が言うなって感じだけどね」 古都住まいだけれども蜜香を持つ者にはまだ会った事がない、と女は言った。 「だから楽しみではあるのよね。またお会いする事は」 ホテルを出て女と別れ、その足で立ち寄ったコーヒースタンドで、佳織はしばし考え込んだ。 桜日和、現世を忘れてそぞろ歩かん もう一日仕事を休もう。 そう決めると楽になった。
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