ビアンエッセイ♪

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■15660 / inTopicNo.1)  うさぎ病
  
□投稿者/ れい ちょと常連(58回)-(2006/08/06(Sun) 21:52:28)
    ねえ、あたしを見て。


    ぎゅって、抱きしめて。


    だれかにハグをしてもらえたら、

    あたしそれだけで生きていける。



    あたしを受け入れて。

    あたしを嫌いにならないで。



    おねがい。

    あたしの乾いた心を癒して頂戴。



    寂しいの。


    寂しくて、こころが死んじゃいそうよ。




    だれか。

    だれか。


    あたしを、愛して。





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■15662 / inTopicNo.2)  おひさしぶりです or はじめまして
□投稿者/ れい ちょと常連(59回)-(2006/08/06(Sun) 22:25:24)
    2007/02/03(Sat) 23:20:37 編集(投稿者)

    冬は、寒いですね。



    いつも読んでくださっているみなさま
    ならびに、偶然ここをクリックしてしまったみなさま


    おひさしぶりです。
    はじめまして。

    れいと申します。


    ええと。

    こちらで書かないつもりだったのですが。

    書いちゃいました。


    理由は、ここに書かないと、

    読者の目を意識しないと、

    仕事に感けてあんまり更新しない予感がしたからです。笑


    予感は的中してしまいました。

    真夏のお話だったのに、もう冬ですね。


    仕事の合間に頑張って書きます。


    短編、と言って自身のHPで書き始めたのに、

    すでに短編じゃないところが、

    もうどうなんだろうという話ですが。


    ゴールデンウィークには終わらせます。笑


    宜しければお読みください。





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■15663 / inTopicNo.3)  うさぎ病>1.ランチタイムの憂鬱
□投稿者/ れい ちょと常連(60回)-(2006/08/06(Sun) 22:28:53)

    「…△△化粧品がぁ、いまなら更に20%引きですよぉー。いらっしゃいませぇー」


    通りを挟んだ向かい側のドラッグストアの店員が炎天下の中、

    叫ぶのがここまで聞こえてきた。

    全く大変なお仕事だ。暑いのに、よくやる。

    あれでお給料、いくら貰えるというのだろう。


    そんなことをぼーっと考えて、通りの向こうを眺めながら、

    通り向かいのファーストフード店のベランダ席にてたばこをふかした。

    数日振りの照り付けるような日射しは、もう梅雨が過ぎ、

    夏が本格的に到来したかのように思わせる。


    夏、ねぇ。厭な季節だわ。暑いし、蒸れるし、最悪。

    夏には、あまりいい思い出はない。

    恋に破れるのはいつも夏だったし、

    貧血を起こしやすくなるし、

    この気候自体が好きではなかった。


    ハンバーガーを食べ終え、アイスコーヒーを何口か飲み、

    ポテトを半分ほど食したころ、携帯電話がヴヴヴ、と鳴った。


    ――またか。

    予想通りだわ、そう思って一息ため息を吐く。

    私の仕事も、そんなに簡単じゃないらしい。


    「はい、江藤ですが」

    「しゅに〜ん…!」


    職場の番号からの電話は、予想通り出来の悪い部下からのヘルプだった。


    「お客さまがお探しのものがなくって…登山靴なんですけどぉー。

    どこにあるんでしょおかぁ…」

    「…すぐ行くわ。まってて」


    そう言って電話を一方的に切る。

    切って、ひとつため息を吐いて、口の中に、残ったポテトのうち数本を放り込む。

    何回か咀嚼し、アイスコーヒーで流し込み、その勢いでアイスコーヒーを飲み干して、

    トレーを持って席を立った。

    慌てていたせいか、机の上に灰皿を置き忘れて、慌てて手を伸ばす。

    背中越しに、席を立った私の気配に気付いた店員さんの

    「そのままで結構でーす、ありがとうございましたー」という声が届く。

    席を立って、店舗まで走った。






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■15664 / inTopicNo.4)  うさぎ病>2.昔の女
□投稿者/ れい ちょと常連(61回)-(2006/08/06(Sun) 22:40:19)
    2006/09/17(Sun) 23:10:44 編集(投稿者)



    裏手の受付にいる守衛さんに会釈をして、社員用入り口から入って、

    すぐ突き当たりの店内に出るドアを出たところが私の職場、

    百貨店のスポーツ用品売り場だ。


    一組のお客さまの相手を必死でしている女の子の姿が見える。篠原だ。

    …私から、ランチの貴重な休み時間を奪った張本人。

    毎度のことなので、もう怒る気にもなれない。


    篠原の一歩後ろから、篠原の背中を軽く叩いて、お客さまに声をかける。


    「いらっしゃいませ。何をお探しでいらっしゃいますか」


    私の顔を見上げた途端、明らかにほっとした顔をする篠原。

    そんな顔をするんじゃないの。お客さまに見られるでしょう。


    「あ、主任、こちらのお客さま…」


    「登山用の、この靴を探しているんだが」


    お客さまは、雑誌の切抜きを手に持って私の方を向いた。

    小柄な初老の男性の方だ。


    やっとハナシの分かる人間が出てきたか、という顔をしているけれど

    予想以上に大柄な女だったことに驚いたのか、

    私に圧倒されていらっしゃる。


    篠原が私の影に隠れるように、一歩退いた。


    「あ、こちらの靴ですね、どちらにいかれるんですか」

    「今度、妻と富士山に登ろうという話になってね」

    「何合目まで行かれるんですか」

    「頂上までだよ」

    「あら、すごい。よくお登りになるんですか」


    そんな話をしながら、お客様が探していらっしゃるブランドの登山靴は

    どこの店舗で扱っていたっけなと思い返す。

    うちの店舗では、残念ながら取扱いのないブランドだった。

    確か、△△店にならあったかもしれない。

    サイズと色をお客さまに確認して、


    「確認して参りますので、少々お待ちくださいませ」


    そう言って、バックに引っ込み、△△店に電話をかける。


    …3ヶ月前まで私がいた店舗だ。

    正直言えば、あまりかけたくない。

    理由もある。けれど…




    「おつかれさまです、○○店の江藤ですが」


    ―あ…おつかれさまです、上条です。


    落ち着いた、少し動揺している若い女性スタッフの声がする。

    思わず、額に手を当てた。


    …こともあろうに、ビンゴだ。


    タイミングが悪すぎる。他のスタッフがいるのに、上条が出なくても。

    反射的に受話器を置きたくなったが、自分から名乗ってしまっている以上、

    そしてお客さまの対応中である以上、そんなことはできなかった。


    「そちらの在庫を確認したいのですけど…」

    ―はい、どうぞ。


    冷静な声で、彼女は応対をしている。

    私の心はこんなに掻き乱されているというのに。

    この違いは、一体なんだというのだろう。

    まるで、私と彼女の間には何も無かったと言わんばかりの。


    「〜〜の登山靴、色はブラックで、26なんですが」

    ―あ、一点だけありますね。持ってきましょうか。いつまでですか?

    「わかりました、ありがとう。じゃあちょっとお客様に聞いてみますね」

    ―お願いします。


    「また電話します、おつかれさまです」

    ―お疲れさまでーす。


    電話を切った後、ふーっと力が抜けるのが分かる。

    上条…可南子との、先々月のやりとりが、頭を掠めた。



    ――淳子さん、あたし…やっぱりマサヤが好き。これ以上、マサヤを裏切れないよ。


    私の店舗移動とほぼ同時に、二人の関係は別れを告げた。

    彼女に男がいたなんて、そのとき初めて知ったのだった。

    可南子と過ごしたのは、たった半年。

    その間、彼女は私を裏切り続けていたというのか。

    甘く甘く過ごしていたと思っていたのは、私だけだったのか。

    人を信じていいのか分からない、なんて言うつもりはないけれど、

    あの時ばかりはしばらく人間不信に陥った。


    私は未だに、失恋の痛手から抜け出せずにいる。





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■15665 / inTopicNo.5)  Re[3]: うさぎ病>3.背が高い女は嫌ですか
□投稿者/ れい ちょと常連(62回)-(2006/08/06(Sun) 22:45:49)
    軽く頭を振って、気持ちを切り替えて、店舗に出る。

    篠原と雑談をしているお客さまの視線が、私に移った。


    「お客さま、お探しの商品なのですが」


    そう言って距離を縮める。


    「当店では取扱いがないんですよ、申し訳ありません…」


    お客さまの落胆した表情が見て取れた。


    「ただ、弊社の△△店には一足、在庫がございまして、」


    そういうと、少し明るい表情になる。


    「もし宜しければ取り寄せさせて戴きますが…

    いつ頃までに必要でいらっしゃいますか」

    「今週末までには必要なんだ」

    「明日までにこちらにご用意できますが、こちらの店舗には…?」

    「会社が近くてね。じゃあまた明日寄るよ」


    ありがとうございます、と頭を下げる。

    連絡先とお名前をお伺いして、丁寧にお見送りをした。

    店舗を出られる途中、よほど私の身長に圧倒されたのだろう。


    「君、身長たかいねぇ、何センチあるの?」


    お客さまからそんな質問が出た。

    よく聞かれる質問だ。もう慣れてしまっていた。


    「私、高いでしょう。178cmあるんですよ」


    物心つく前から、同級生の中では飛びぬけて身長が高かった。

    とにかくそれが人目を引いて。

    バスケやバレーをやっていれば、別だったかもしれないけれど。

    闘争心などまるで無かった私にはそんなスポーツは好きではなくて。


    成長期だった高校時代は水泳部として過ごした。

    今でも泳ぐのは好きだ。

    あのころと比べると、ずいぶんと太ってしまったけれど。


    今では肩幅も、下手したら、体格も。

    そこらへんのひょろひょろしている男よりはしっかりしている自信がある。

    筋肉量では敵わないとしても。


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■15666 / inTopicNo.6)  Re[4]: うさぎ病>心弾む来客
□投稿者/ れい ちょと常連(63回)-(2006/08/06(Sun) 22:48:18)
    「篠原さん、お昼。行ってきていいわよ」

    「え、でも主任…」

    「私はもう食べたから」

    「す、すみませんっ。行ってきまーす」


    お客さまをお見送りし、ぼーっと突っ立っている篠原の背中を叩き、

    お昼に行かせる。

    今からお昼休みの続きに戻るのはなんだか馬鹿らしかった。


    篠原の背中を見送って、ため息をひとつ吐く。

    彼女の教育担当になって、3ヶ月が経とうとしているが、

    彼女を教えるようになって、何度教えても覚えない人間、

    成長性が見られない人間に対しても、寛容な心が生まれるようになった。


    女も30を過ぎると、ずいぶん心が広くなるのかとも思う。

    20代の頃にあんな子を持たされていたら、

    ストレスで胃に穴があいていたかもしれない。


    この仕事で私は、お客さまにしろ、従業員にしろ、

    様々な人に接し、色々なタイプの人間がいるのを知った。


    周りの人間を、自分の都合だけで動かす人、

    自分を立ててくれないと気がすまない人、

    あからさまにマイナス感情を表に出す小学生のような人、

    店員や部下は自分の下僕だと思っている人……


    そんな人たちを見ていると、篠原の手のかかり具合など

    ずいぶんかわいい存在のように見えてくるから不思議だ。


    そんな事を考えていると、店舗に1人の女性が入ってくるのが視界に映った。


    「いらっしゃいませ」


    頭を切り替え、接客モードに入る。

    20代中盤〜後半の女性だ。何かを探しているようだった。

    身長がわりと高い。一般的に見ればの話だけれど。

    168cmくらいだろうか。

    手足が細く白く、長くてすらっとしている。

    モデルのように華奢な体付きに、思わず目が奪われた。

    どうせ身長が高いのなら、ああなりたかったなと思わされるような

    モデルのような体型。

    どうやったらあんな体型が維持できるのだろう。

    身長とともに体重も増えてしまった私の体と、つい比べてしまう。


    ショートパンツから覗く、

    筋肉のないほっそりとしたふくらはぎに、釘付けになる。

    自分でスポーツをやるために、

    このお店に来たのではないだろうなと思った。


    「何かお探しでいらっしゃいますか」


    声をかけると、顔を上げて、まっすぐにこちらを見た。

    透き通るような白い肌、柔らかそうな頬、

    長い睫毛に縁取られた茶色の瞳。

    緩やかにウェーブしている、長くてきれいな髪の毛。

    薄くてピンク色の唇。

    ぱっちりした二重の瞼。

    どこかのモデルさんのようだった。


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■15667 / inTopicNo.7)  Re[5]: うさぎ病>探し物はなんですか
□投稿者/ れい ちょと常連(64回)-(2006/08/06(Sun) 22:50:08)


    ストレートに言おう。

    私の好みだった。

    ど真ん中もいいところだ。


    何かの雑誌のモデルかもしれない、と思い始めた頃に


    「スニーカーを、探しているんですけど…」


    その女性が想像していたよりもハスキーな声で口を開く。


    「メーカーやモデルなど、もしお分かりでしたら…」


    接客マニュアルのようなコメントが口をついて出たところで、


    「これ、なんですけれど…」


    そう言って差し出されたのは、ぼろぼろになった雑誌の切抜き。

    写っていたのは、ナイキの限定モデルスニーカーだった。

    一時期若者に大ブームを起こして、プレミアまでついたモデルの

    最新版の2〜3代前のヴァージョンだった。

    あるとしても、専門店でしか見かけられないだろう。


    「あー、こちら、ですか。これはうちでは扱ってないんですよ」

    「そうですか…」


    落胆の色が見て取れて、少し可哀相になる。


    「このあたりの専門店ですとー…」


    そう言って、思いつく限りの専門店を列挙していくと、

    最初は縋るような目で私を見ていた彼女も、

    次第に落胆の色を濃くしていくようだった。


    「…あ、もうこのあたり、全部回られたんですか…?」


    目の前の美女はこくんと頷いた。


    「あー…」


    かける言葉か見つからない。

    彼女にとってそれだけ探さなくてはいけない大事なものらしかった。

    彼女が身につけるためのものじゃないだろう。

    雑誌の切抜きを持ち歩いていたということは彼氏へのプレゼントだろうか。





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■15668 / inTopicNo.8)  Re[6]: うさぎ病>勇気の一歩
□投稿者/ れい ちょと常連(65回)-(2006/08/06(Sun) 22:51:54)

    「これ、どうしても必要なものなんですね…?」


    この店員、立ち入ったことを聞くなー、と思われるかと思ったが、

    このまま彼女を帰すのが惜しくて、そんな質問を投げ掛けた。


    「大事な友達に、あげたかったんです」

    「彼氏、ですか」

    「…いえ、…あ、女の子なんですけれど」


    ん、と少し引っかかりを感じる。

    もしかして、とは思うものの、さすがにそこまでは聞けず、

    「そうなんですか」と言って流した。

    それはさすがに、私の都合のいい解釈というものだろう。


    「それでしたら…私のほうでも手配をしてみましょうか。

    もし宜しければ、ご連絡先、教えて戴けますか」


    仕事のためだ、と頭の中で言い聞かせて、

    彼女との繋がりをまだ持っていたいと思っていたとき、

    私の口から、びっくりするくらい自然に言葉が出てきた。


    自分の大胆な発言と、公私混同じゃないかという良心に

    心臓がばくばくしていたけれど

    彼女は「ありがとうございます」とものすごく嬉しそうに言って

    うちの顧客管理カードを書いてくれた。


    「杉山 美春」


    携帯電話とメールアドレス、そして

    ご丁寧に住所まで書いてくれている。

    しかも、驚くことにわりとうちの近所だ。


    「あ、家、私とちかいですね」とはさすがに言えなかった。

    心臓がうるさいくらい、高鳴っていた。

    今まで私が、こんなに恋愛に対して頑張ろうとしたことなんてあっただろうか。





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■15669 / inTopicNo.9)  Re[7]: うさぎ病>第一ミッション完了
□投稿者/ れい ちょと常連(66回)-(2006/08/06(Sun) 22:53:27)



    彼女が私に顧客管理カードを渡し、

    「必ず連絡しますね」

    そう言って彼女を見送り、

    顧客管理カードをポケットに忍ばせてから二組の接客をしたあとに、

    篠原はやっと帰ってきた。


    「ただいま戻りましたぁ。」

    「おつかれさまです。ちょっとチェック行ってくるから、篠原さん宜しくね」

    「はーいっ」


    お手洗いに行くことを篠原に伝えて、バックに入る。

    そのままお手洗いに行き、顧客管理カードを小さく折りたたみ、

    本来、ブラのパッドを入れるところにカードを織り込んだ。

    これで、帰る時の荷物チェックで引っかかることも無いだろう。


    ユニフォームである紺のポロシャツの上から胸を押さえ、

    ブラの中の彼女の個人情報の存在を確認する。

    まだ心臓がバクバクいっていた。

    鏡の中の自分を見る。


    彼女と比べて冴えない容姿、

    太い二の腕、肉のついたおなか、

    細くない、足。

    身長が通常サイズよりもずいぶんと高いので、

    それらの太さは余計私を大きく見せていた。


    よくこんなルックスで彼女の連絡先を聞けたと思う。

    …女だからできる技だろう。自分を褒めてやりたい。

    普段の自信の無い私だったら、そんなことできなかっただろうけど。

    仕事中の私は、違うのだ。

    仕事をしている間は、自信を持って生き生きしているのが自分でも分かる。


    少し乱れていたひとつに結んでいた髪の毛を、

    撫で付けるようにして結びなおし、前髪を整え、

    紫のふちのセルフレームの眼鏡を直す。

    それまで地味一辺倒だった私が、結構冒険して、

    勇気を持って買い換えた眼鏡だ。

    たまに派手かな、とも思うけれど、

    地味すぎる私にはちょうどいいんじゃない、と友達は笑う。


    厚くて少し色の沈んだ唇に、リップクリームを塗りながら、

    さっきの彼女の、ピンクで柔らかそうな薄い唇を思い出した。









引用返信/返信 削除キー/
■15696 / inTopicNo.10)  Re[8]: うさぎ病>思わぬ申し出
□投稿者/ れい ちょと常連(69回)-(2006/08/08(Tue) 00:43:25)
    彼女がうちの店に来店して2日。

    その間に私は彼女が探していたスニーカーを押さえていた。

    全ては、学生時代の友人たちのおかげといっても過言ではないだろう。

    こういう時に、友達というのは便利だ。



    心当たりある学生時代の友達数人にそのスニーカーのことを尋ねると、


    「確かうちの近くの靴屋にあったぜ。

    おれはバンズにしか目がないけどな」


    スニーカーバカ(うちにバンズのコレクションが、もう20以上あるという)

    のうちの一人からそんな回答が帰ってきたので

    そのショップの店員に電話をして商品を押さえた。


    次の日にお店まで現物を確認しに行くと、

    それは彼女が探していたまさにその靴だった。

    お店のお兄ちゃんに事情を話し、直接交渉すると

    卸値、とまでは行かないけれど、

    特別安くしてくれることになった。



    「△△百貨店スポーツ売り場の江藤と申しますが」


    彼女に電話したのは、その次の日。


    ―あ、杉山です。


    午前の遅い時間、連絡を入れた彼女の声はハスキーで

    寝起きであることが容易に想像できて、

    私は一人、電話のこちら側で申し訳なく思った。


    「お客様がお探しでいらっしゃいましたスニーカーが

    確保できたのですが…」

    ―本当ですか!?ありがとうございます!


    電話の向こうで彼女が起き上がり、テンションも跳ね上がったのがわかった。

    こちら側も、ついつい嬉しくなってしまう。


    「いつ頃、取りにいらっしゃいますか」

    ―……。あ、そうか…。


    しばらくの無音。


    ―江藤さん、でしたよね?

    「はい?」


    彼女の突然の呼びかけに対して、動揺する私がいた。


    ―大変申し上げ辛いのですが…今日、何時上がりですか?

    今晩何かご予定などありますか?


    「えっ……」


    彼女の思わぬ発言に、一瞬パニックに陥る私。


    ―あ、いえ。あのですね。

    私、どうしてもそれ、明日か明後日の朝までに必要なのですが、

    今日も明日も、取りにいけそうにないのです…。


    私、バーで働いておりまして、

    もし、もしですよ?

    江藤さんさえ宜しければ、

    食べ物、飲み物、全て私が持ちますので

    いらして戴けないかなと思いまして…


    …やっぱり、勝手なお願いですよね…すみません。


    「…場所は、どちらになるのですか」

    ―! ○○線、□□駅歩いてすぐなのですが。


    予想通り、うちから歩いていける距離だった。


    「構いませんよ。本当はこういうことは絶対しないんですけど…

    内緒にしておいてくださいね」


    釘を刺して、同意をすると、彼女は嬉しそうに笑って


    ―ありがとうございます!いや、本当すみません。


    そう言った。

    見た目からして意外とずいぶんさばさばとしている子だ。

    見た目はファッション誌に出てきそうなくらい、

    ずいぶんと女の子らしい子だったけれど。


    でも、逆に、そんな彼女にまた会ってみたいのも事実だった。

    そして翌日、私は彼女の店に伺う約束をした。







引用返信/返信 削除キー/
■15697 / inTopicNo.11)  Re[9]: うさぎ病>街角のバーで。
□投稿者/ れい ちょと常連(70回)-(2006/08/08(Tue) 00:45:19)
    2007/08/17(Fri) 16:29:42 編集(投稿者)

    「ね、本当に大丈夫?」

    「だーいじょーぶですよぅ!主任は心配しすぎですって!!」


    帰り道にお客さまに頼まれた靴を届ける…、そう彼女に告げると

    篠原は非常に嬉しそうに、翌日の遅番を自ら引き受けた。

    篠原が1人で遅番をやるのは、今までに無いことだった。


    「そうですかぁ。ついに主任にも春が…!!」

    「ち、違うわよ!何言ってるの、ばかね。女性よ?」


    そういうものの、胸が高鳴った。

    女性だからと言って、私の場合、恋愛対象にならないわけじゃないのだ。

    いやむしろ、女性だからこそ…と言うほうが正しい。


    「ほら、主任!帰ってくださーい。残業するとSVに怒られますよ〜」


    いつも私が彼女に言う台詞を、ニヤニヤしながら投げ掛けてくる。


    「では、お先、失礼致します…。」

    「はーい♪後は任せてください!」


    篠原を残して行くことに対して、大きな不安はあったけれど。

    彼女と出会ってから4日後、

    私は彼女の働いているお店に顔を出すことになっていた。





    確かここを右に曲がってすぐのはずだ。

    先程駅を降りて見た地図を思い出しながら歩く。

    こんなうちの近くの地図を見るのなんて、

    このあたりに住むようになってから初めてかもしれない。

    いつも目に入るお店にしか行ったことなかったから。


    繁華街から少し歩いて表通りから裏路地に入り、

    二回右折、一回左折したところに、入り口に白熱灯が

    灯っている階段が見えた。入り口に店の名前が書いてある看板がある。

    フランス語だろうか。b e a u ……読めない。

    けれどあそこを降りていったところにあるのが、彼女の働く店だろう。

    隠れ家のような雰囲気を醸し出していて、気になるけれど入りづらい、

    そんな趣を持つ店だった。


    階段を一歩一歩降りていくと、音楽が聞こえてくると共に

    クーラーで冷やされた空気が足元から感じられた。

    ボサノバのリズムに心躍らされて、緊張しながら階段を降りきると、

    左手にはバーカウンターがある、こじんまりとしたお店に辿り着いた。

    カウンターが8席、テーブル席が4つ。

    20人も入ればいっぱいになってしまう店だった。

    カウンターの向こう側に並ぶリキュールの棚が赤とオレンジの照明で

    ライトアップされていて、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

    まだ早い時間のせいか、私の他にお客さまは、テーブル席にいる

    3人組の女性客だけのようだった。


    「いらっしゃいませ」


    カウンターの向こうから、私に向かって声が掛かる。

    ふと視線を上げると、カウンターには彼女がいた。




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■15921 / inTopicNo.12)  Re[10]: うさぎ病>ホストとゲスト
□投稿者/ れい ちょと常連(72回)-(2006/08/15(Tue) 09:24:05)
    彼女が、カウンターから出てきて、私を迎えてくれた。

    カウンターから出てきて、服装が視界に入った。


    襟が少し高くなっているアイロンのかかった

    厚手の白い七分袖のシャツに、黒のギャルソンエプロン。


    「お待ちしておりました」


    そう言って、カウンター中央のスツールを軽く引いて

    座るように促してくれる。

    黒のパンツ。足がすらっと長い。

    やっぱりモデルさんのようだと思う。


    「あ、こちら…お持ち致しました」


    普段の接客姿勢を維持して、紙袋を差し出すと


    「あ、ありがとうございます!申し訳ありません」


    そう言って、嬉しそうに、そしてすまなそうに

    私を見て、困ったように笑って言った。

    茶色く、ウェーブした柔らかそうな髪の毛を

    今日は後頭部の低い位置でひとつに結んでいて、

    お辞儀をした拍子に少し前に垂れた少し長めの前髪が

    ずいぶんと色っぽかった。


    「おいくらですか」

    「あ、ええと」


    そういえばそうだった。

    プレゼントではないのだし、お金をもらわなきゃいけないのだった。

    慌てて靴の値段を調べようと財布を出したところ、


    「あ、後ででもいいですよ。ゆっくりで。

    お金は必ずお支払い致しますので」


    私の慌てように驚いたのか、彼女がふんわりと笑って言った。


    「今日は、江藤さんがお客さまで、わたしがおもてなししますから。

    ゆっくりおくつろぎになって、楽しんでいってくださいね」


    その笑顔にほぉっとなってしまう。

    だめだ、私。

    彼女の美しさに、

    まぶしさに、やられる。




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■15922 / inTopicNo.13)  Re[11]: うさぎ病>キール・ロワイヤル
□投稿者/ れい ちょと常連(73回)-(2006/08/15(Tue) 09:25:03)
    「江藤さんって、かわいらしい方ですよね」


    カクテルを、ひとついかがですか、と言われて。

    よく分からないから、お任せしてもいいですか、と返して。

    そうして出てきたのは、紫色のカクテルだった。

    カシスソーダかと思ったけれど、ちょっと違う。


    一口、それを口に入れたところで彼女が私に話しかけたのが

    その台詞だった。思わずふき出しそうになって、ぐっとこらえる。

    口の中で、炭酸がしゅわしゅわと弾む感じがした。

    独特の芳香が、鼻を抜けていく。


    「かわいらしい?私が?!」


    かわいげない、だったら、何度でも言われたことがある。

    かわいくない、だったら、それよりもっと言われたことがある。


    それでも「かわいらしい」と言ったのは、

    親戚以外では彼女が、私の人生上二人目なんじゃないだろうか。


    一人目の顔が、不意に脳裏に浮かんで、胸の奥に痛みが走る。


    薄くて細い眉。

    短い前髪。勝気そうな意思の強そうな瞳。

    なめらかで肌理の細かい肌。

    意外と低く落ち着いていて、硬質的な声。

    笑うときだけ少し高くなる、笑い声。


    ――淳子さんってさ、すごくかわいらしいよね。意外と!


    …こんなときに出てこなくてもいいのに。




    「ええ、…失礼でしたらごめんなさい。なんだか、

    仕事のときはきりっとしていらっしゃるけれど、

    こういうところでお話してみるとそんなことないのかなって…」


    私の顔を見ながら、彼女は話し続けた。

    目が逸らせなくて、顔が赤くなってやしないか、気になった。

    白熱灯の明かりは、私の顔の火照りを目立たなくすることは

    できるけれど、カウンターに立つ彼女をより一層

    魅力的に見せるから、困り者だと思う。


    「そうですねー…オンとオフは、使い分ける方ですね」


    そんなことを言って、私は彼女から目を逸らした。

    今そんなことができる相手すらいないけれど。


    「へぇ、そうなんですか。見てみたいなぁ」


    そう言って彼女は笑った。

    その笑い方があまりにもまるで私を誘っているかのように見えて、

    私は少し動揺した。


    ―わかってる、あれが接客用スマイルだってことくらい。

     初対面で、同性である彼女が私を誘うということ自体が

    2丁目以外ではありえないことだ。

    何より、私みたいな女がまず相手にすらされないことだってわかっていた。 


    …でも、わかってはいるけれど、惹かれてしまうのが

    現実問題として私に起こっているのが現状で。

    いけない、この人はきっとノンケだし。と思いつつ、

    私は彼女から視線が外せなかった。





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■15946 / inTopicNo.14)  Re[12]: うさぎ病>挑発合戦
□投稿者/ れい ちょと常連(74回)-(2006/08/16(Wed) 09:06:40)


    「あら、いらっしゃいませ。あなたがハルちゃんのお友達?」

    一杯目のカクテルを飲み終えて、オーダーした食べ物が出てきた頃、

    奥から一人、女性が出てきた。

    40代くらいだろうか。エネルギーと雰囲気のある女性だ。


    「あ、マスター。江藤さんって言うんですよ」

    「はじめまして、江藤さん。…えーと、下の名前は?」

    「淳子です」

    「ジュンコちゃんね。はじめまして。カワカミと申します」

    「はじめまして。カワカミさんがこちらを…?」

    「そうよ。気に入って戴けると嬉しいのだけれど」


    そう言いながら、私の空いたグラスを見て、

    次、何お飲みになりますか、と言葉を続けた。


    私が何にしようか困って美春さんを見ると、


    「ジュンコさん、気をつけてねー。マスター、女もいけるクチだから。

    名前聞いたってことは好みだってことだから」


    笑いながらそんなことを、突拍子もなく彼女は口にした。

    思わぬフリに同反応したらいいのかわからなくて、カワカミさんを見た。


    「あら、ハルちゃん、あなただってジュンコさんのこと、相当タイプでしょ」

    「え…?」

    「やだーマスター。それ言っちゃだめですよ。ジュンコさん、構えちゃうじゃないですか」


    そう言って、美春さんは困ったように笑った。

    ちょっと待って、それってどういう…?


    「あ、ジュンコちゃんにはココのこと、言ってないの?」

    「言ってないですって」

    「あら、じゃあ…」

    「もう、マスター。向こう行っててください!」


    そう言って美春さんはカワカミさんをキッチンの方に追いやろうとする。

    カワカミさんも、私の方を向いて微笑んで、

    「じゃあね、ジュンコちゃん。また今度ゆっくりね」


    そう言って奥へ引っ込んでしまった。


    「…えーと?」


    カワカミさんと美春さんの会話についていけず、

    説明を求めて美春さんを見ると、

    美春さんは困ったような顔で私を見た。


    「はー…マスターのばかー…」


    美春さんは私から一度視線を逸らして、

    手に握っていたタオルとお皿に向かって悪態をついた。


    「ジュンコさん、軽蔑しないで聞いてください。

    ここのお店ね、女の子が好きな女の子が集まるバーなんです」

    「え」


    それって、2丁目によくある…?


    私の心のつぶやきを見透かすかのように彼女は答えた。


    「まぁ、簡単に言えばそういうことです。

    普段は男の人も入れますけど、週末は女の人のみなんです。」


    声が出なくて、とにかく驚いた。


    「じゃあ…美春ちゃんも?」

    「…はい。女の人しかだめなんですよ。」


    衝撃を受けた。まさか、彼女が「そう」なんて。

    とてもそうは見えない。

    男の人を手玉にとって遊んでそうなくらいの美女なのに、


    「女らしい、ジュンコさんみたいな人、好きですね。

    あ、でも。襲ったりしないし、そういうの、キョーミない人には絶対手出さないので。

    安心してていいですよ。今日は、もっとジュンコさんとお話したかったからお呼びしたので」


    彼女からの思わぬ形でのカムアウトに、私の体は反応した。

    急激に咽喉が渇くのが感じられた。

    カクテルグラスに残った、氷の溶け残りを思わず口に入れる。


    「キョーミがあったら、どうするの」


    まっすぐに彼女の瞳を見据えて、そう聞いた。

    美春さんの動きが止まる。私の顔を戸惑いに満ちた眼で凝視した。



    「おかわり、頂戴。別のがいいわ。強いやつ」


    彼女の眼には答えずに、じっと瞳を見据えてそう言ってグラスを差し出した。

    平気な素振りで堂々と振舞ってはいるけれど、

    実のところ、心臓はバクバクしていた。


    白熱灯の明かりが、今の私にはいい助けになってくれた。





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■15947 / inTopicNo.15)  Re[13]: うさぎ病>泥酔
□投稿者/ れい ちょと常連(75回)-(2006/08/16(Wed) 09:11:34)
    あれから出てきたカクテルは、甘ったるいもの、辛いもの色々あったけれど、

    全て香り高く、癖があって、アルコール度数も非常に高いものだった。

    それはまるで彼女からの挑戦状、もしくは挑発のようで、

    彼女は私がカクテルに口付けるとき、必ず私に視線を送ってきた。


    私はそれら全てを彼女からの視線を逸らさずに飲み干した。

    時には舐めるように、

    時には彼女を凝視したまま、見せ付けるように。



    そうして気づくと飲み干したカクテルは7杯目を越えていて、

    お店は弊店の時間を迎えていた。

    終電なんてとっくになくなっていて、

    お店の客は私しか残っていなかった。


    普段カクテル3〜4杯でほろ酔い気分になる私には、

    とびきり強いカクテル7杯なんて未知の体験で。

    どうなることかと思ったけれど、

    視界が少し回るくらいだった。


    「送りましょうか」


    美春さんが気づくと私服に着替えて隣に立っていて、

    彼女のほうに立とうとスツールを降りたら、


    ぐらりと、視界が揺れた。


    「ぅぎゃ、」

    「おっと…あぶない」


    お酒は思ったより、腰に来ていて。

    私は一人で立てないことにショックを受けた。

    そう言えば、学生時代にこんなことがあった気がする。

    30にもなって、みっともないと思うのと同時に、

    とっさの時に「きゃあ」と声を上げられない自分に

    腹が立った。ぅぎゃ、って…。


    「ジュンコさん、大丈夫ですか」

    「…」


    心配そうに、美春さんが私の顔を覗き込んだ。


    「おうち、帰れます?タクシー呼びますか?

    うちここから近いんで。うち来ますか?」

    「…好きにして」


    言葉は、もうそれしか出てこない。

    全てがもう、どうでもよかった。

    ここに置いていかれても、道端で寝られる気がした。

    思ったより、かなりの勢いで酔いが回っているみたいだ。


    「…そんなこと言ったら襲っちゃいますよ」


    美春さんが私の耳に、吐息混じりにそう囁いた。


    ハンザイだ、理性の聞かない泥酔女にそんなこと囁くなんて。

    そんなことされたら、

    そんなことされたら、




    快感を求めるスイッチが、


    際限なくONになってしまうではないか。




    私は彼女の首を捕捉して、

    その首筋に軽く噛み付いたあと、


    「襲えるのなら、襲ってみせて」


    そう言って、





    …意識を失った。




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■15952 / inTopicNo.16)  Re[14]: うさぎ病>淫夢
□投稿者/ れい ちょと常連(76回)-(2006/08/16(Wed) 13:41:38)
    2006/08/16(Wed) 19:37:46 編集(投稿者)

    気づくと、そこはさっきまでいたはずのバーの中で。

    何故か私はカウンターに寝ていた。


    「やっと気づいたのね」


    そう言って近づいてきたのは、


    「可南子…!?どうして…?」


    この前終わったばかりの彼女で。

    可南子は妖しい微笑を浮かべて、バーカウンターにもたれ掛かっていた。


    「かわいい淳子さん。まだあたしが好きなのね」

    「可南子…」


    可南子の瞳は優しくて。

    図らずしも胸が高鳴った。


    可南子とは、終わったんだ。

    告げてきたのは彼女からのはず。

    それなのに、どうしてだというのだろう。

    マサヤ、と別れたとでもいうのだろうか。


    私は、そのときふと身動きが取れないことに気がついた。


    「…!!可南子、これは…?!」


    見ると、私の体は何も身に着けておらず、

    両手は手枷をつけられて頭の上でまとめられており、

    両足はバーカウンターの両サイドに足を落とす形となっていて、

    股が全開となっていた。これでは入り口から入って来た人に

    私の中身を全て曝け出してしまう。


    必死で足を閉じようとしたけれど、

    首から下には、まるで磔にでもするかのように

    無数の赤い紐が横にめぐらされており、

    左右を鋲で留められていた。


    ちょうど、御伽噺のガリバーのように。



    「どういうこと…?」


    動こうとするけれど、動けない。

    可南子は愉しそうに私をじっと見つめていた。

    少し体を左右に振って、少しでも動こうとすると、


    「…んぁっ…!」


    赤い紐が乳首を擦って、思わぬ刺激となる。

    紐の刺激と、そのアブノーマルな状況に感じたのか、

    乳首がみるみるうちに勃って、赤い紐の間から顔をのぞかせた。


    「ふふふ、感じるの…?」


    彼女の勝気そうな瞳が嬉しそうに笑って、

    磔にされている私の、勃っている乳首の先を指で撫でた。


    「あっ…」


    期待された刺激に、体がびくんと跳ねる。

    その反動に、赤い紐が体を動かせまいと体に食い込んだ。

    可南子が、こちらを見て笑った。


    「ずっと、あたしとこういうセックス、したかったんでしょう」


    その笑顔は、先ほどの笑顔から一層温度を失っていて、

    不気味なくらい美しかった。


    「ね、もっと刺激が欲しかったの?あたしだけじゃ満足できなかった…?」


    可南子が私の乳首を摘まみ、爪を立ててぐりぐりと刺激を加える。

    今までの可南子にはない、強い刺激。


    「あっ…い、痛っ…でも、きもちイイッ…!」

    「淳子さんって、淫乱なんだね」


    可南子が冷たく笑う。


    「いやッ…可南子、許してぇ…あ、イイッ…あン、あぁッ!」


    胸を苛められていることに対して、異常に感じる私がいた。

    可南子の冷たい視線も、溜まらなく感じる。

    私は、どこかおかしくなってしまったのだろうか。

    頭にもやがかかったみたいに、頭が働かない。

    とにかく、快感だけが私の体を支配していた。



    …ピチャ、ペチャ…ペチャ…


    「っく…ぁああ…!」


    股間から水っぽい音がして、更なる快感に、思わず身悶えする。


    「あら、もう私が舐める前からぐしょぐしょだったわよ。

    そんなに溜まっているのね。私が思う存分気持ちよくしてあげるわ」


    必死で声のするほうに目を向けると、そこにはカワカミさんがいて。

    こっちを見てにっこりと笑うと、中指で、まるで挨拶でもするかのように

    私のクリトリスに触れて、振動を加えだした。


    「あ、あぁ、…き、きもちイイ…!はぁぁっ…も、もっとぉ…」


    気付くと私の体は快感によって溶け出していて、

    液体になった私の体は、赤い紐の支配を抜け出して、

    カワカミさんを取り込もうと、カワカミさんの体すらも溶かしていった。


    カワカミさんの体には、いつの間にか股間に

    黒いペニスのようなものがつけられていて。


    「もっと、気持ちよくしてあげる…」


    そう言って、カワカミさんはいつの間にか

    バーカウンターの上に上がっていて、

    私の膣をめがけて、狂ったように腰を振っていた。


    そうして、私の体もそれを待ち望んでいて。


    「あ、もっと、もっとぉー…あああッ!」


    二人で、体がどろどろに溶け合うまで、突き合った。

    もう体の境目がどこか、どこからどこまでが私かなんてわからなくて、

    ひたすら腰だけが動いていた。


    可南子は、気付くと私の視界にはいなかった。


    そんなことは気に留めず、私は快感を貪っていた。







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■15953 / inTopicNo.17)  Re[15]: うさぎ病>実験の時間
□投稿者/ れい ちょと常連(77回)-(2006/08/16(Wed) 15:51:31)
    「…あれ、気付いた?」


    気付くとベッドの上だった。

    ふかふかの、羽毛布団。バーカウンターの上じゃない。

    洋服も、身に着けていた。


    薄明かりが照らされている室内に、

    人が一人、立っている。

    私が目覚めたのに気付いたらしく、こちらに寄って来た。


    「美春、さん…?」

    「大丈夫ですか?うなされてたけど。ちょっと、飲ませすぎちゃったかな」

    「ここは…?」

    「わたしのうち。…本当に、覚えてないの…?」


    そう言いながら、少しがっかりした素振りを見せて、

    美春さんは隣に勢いよく、横になった。

    このベッドはセミダブルのようで、

    彼女が並んで横になるスペースは十分にあった。


    「…ううん、覚えてるわよ」


    そう言って、彼女のほうに寝返りを打つ。

    眼鏡を、したままのようだったので、眼鏡をベッドサイドに外して置いた。


    さっきのは、夢だったのか。

    あまりにも強烈で、

    あまりにもいやらしい夢。


    あまりにもリアルだったから、

    体が完全に臨戦態勢になっている。

    この疼きは、現実で対処しなくては収まらないだろう。


    「私を、襲ってくれるんでしょう…?」


    そう言って、美春さんを誘う。

    美春さんは、嬉しそうに笑った。


    「美春って呼んで」

    「美春」

    「ジュンコ…きれいだよ。眼鏡を外した顔も、セクシーだわ」


    そう言って、美春は私の頬を引き寄せて、

    キスをした。最初は軽く。

    徐々に口付けの時間が増えていく。




    彼女とのセックスは、

    まるで私が実験台になったかのようだった。

    一方的に私が脱がされ、ブラもショーツも剥がされた。


    私が既に前戯が必要ないほど、濡れていたせいもあるかもしれない。

    私の乳首の勃起具合、マンコの洪水具合を見た美春は、

    かわいらしい顔に意地悪そうな笑みを浮かべて、


    「そんなにして欲しかったの?ジュンコはやらしいね」


    そう言って、彼女は何も脱がないまま、指を3本入れてきた。


    「あぁ…!」


    私の膣は易々とその指を受け入れた。


    「まだ、3本じゃ足りないみたいだね。どれくらい入るのかな。試してみようか」


    そう言って、彼女は徐に指を私の中から引き抜き、

    ベッドの下に手を伸ばした。


    彼女がベッドの下から持ってきたのは、

    ひとつのダンボールで。


    「好きなの、使っていいよ。全部新品だから。何にしようか」


    中には、まだ袋に入ったままのおもちゃたちが詰め込まれていた。


    「これ、どうしたの」

    「貰ったのよ。マスターとか、お店の常連さんに」

    「そう…すごいわね」


    そう言って、手に取ったのは、

    夢に出てきたカワカミさんの股間を髣髴とさせる黒のバイブ。

    夢に出てきたものよりも、太い気がする。


    「また、グロテスクなものを選んだね。

    これはね、スイッチを入れるとここが回るんだって。

    あとね、動きが、ほら」


    スイッチをONにすると、黒いそれはうねうねと動いた。

    パールのようなものが埋め込まれている。

    こんなものが私の中を掻き回すなんて…想像するだけで濡れてしまう。



    「あとは、これと、これも使おうか」


    そうして箱から取り出したのは、細くてすっとしたデザインの小さなバイブ

    のようなものと、ピンクのローターで。

    ローターはともかく、そんなバイブで私は満足できるだろうかと

    不安になり、そんな大胆な思考の自分を思いつきざまにすぐに否定した。


    「うつぶせになって。お尻、突き出して」


    私が言われるままにすると、美春は私のお尻を高く掲げさせ、

    私のマンコを舐めた。

    臨戦態勢が続いている私の体は快楽の元に

    いとも容易く理性を手放した。


    「ほら、ジュンコ。言ってごらん。どうしてほしいの?」

    「もっと、もっとぉ…あ、あぁ、太いの、入れてぇ…!」


    美春はまず、ローションのようなものを塗って、小さなバイブを

    なんと私のアナルに突き刺した。


    「あ、あ…そっち、じゃな…いいイィ!!」


    最初は異物感に排泄欲が増したけれど、

    バイブがONになって出し入れされるようになると、

    しばらくしてどんどんと快感が増していった。


    「あ、あぁ、いいッ…もっと、あ…あぁ!!」

    「気持ちよさそうね、ジュンコは本当に淫乱なんだね。

    言ってごらん、ジュンコは淫乱です、もっとお仕置きしてくださいって…」

    「じゅ…淳子は淫乱ですぅ…もっと、もっとお仕置きしてくださぁい…!」


    言ってから、自分の言葉に濡れる私がいた。

    この台詞を言う私を、篠原が見たらなんて思うだろうと思うと

    より一層背徳感が増して、ぞくぞくした。


    「よく言えたね、ご褒美をあげないとね」

    「もっと、もっとくださいー…あ、あぁん、いいッ…んあっああああ!」


    そうして私のクリトリスには最初から「強」に設定されたローターが

    押し当てられ、あまりの刺激に私はあっけなく、絶頂を迎えた。





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■15954 / inTopicNo.18)  戯言
□投稿者/ れい ちょと常連(78回)-(2006/08/16(Wed) 15:54:48)
    …やりすぎたかな。

    ちょっと、危険な方向に走りすぎましたでしょうか。。。

    引いてしまわれた読者の方、ごめんなさい。

    (と謝ってみる)

    もうちょっとだけ続きますのでお付き合いくださいませ。
引用返信/返信 削除キー/
■15955 / inTopicNo.19)  Re[16]: うさぎ病>実験の時間
□投稿者/ れい ちょと常連(79回)-(2006/08/16(Wed) 16:23:07)
    あっというまにあっけない絶頂を迎えさせられたけれど、

    1回で2〜3回はイってしまった気がした。

    それくらい、体力の消耗が激しい。

    そんな若くないって、こういうときに体感するとは思わなかった。

    20代の子のペースについていけないとは…


    「気持ち、よかった?明日も仕事でしょう。

    今日はこのくらいでやめておく?また続きは次回、かしらね」


    そう言って、満足そうに美春は笑った。


    絶頂を迎えられて、体は満足できたと思っていたけれど、

    肝心の真ん中を責めてもらえてないところでフラストレーションが

    溜まっていたらしく、驚くべきことに、まだ私の中は疼いていた。


    「お願い。中まで、責めて」


    そう言って、美春のきれいな喉元に舌を這わせ、

    美春の身に着けていた白いシャツを剥ぎ取ってお願いをする。


    「まだ、満足してないの。しょうがないなぁ、淫乱なんだから」


    そう言って、美春は私の胸を大きく円を描くように揉みほぐし、

    私を仰向けに押し倒した。


    「マンコにぶっといの、入れてあげるから。足、自分で開いて持っときなさい」


    そう言って、大きなバイブにローションを塗りたくって、


    「いくよ」

    「うああ、あああぁ…!」


    こんな大きいもの、入れたのは初めてだったから。

    快感と、痛さがごちゃ混ぜになった感覚に、痺れた。


    「うわ、すごい。入った。…スイッチ、入れるよ」

    「ま、まだ待って…わ、あああああ!」


    彼女の宣言に、翻弄される私。

    どうなることかと正直思ったけれど、

    と、とにかく押し寄せる快感の波に耐え切れなくて、


    …すごかった。今となってはそれしか言えない。

    私は快感の渦に飲み込まれて、簡単に意識を手放してしまったから。


引用返信/返信 削除キー/
■15956 / inTopicNo.20)   うさぎ病  れいさんへ☆
□投稿者/ ゆらら 一般♪(19回)-(2006/08/16(Wed) 17:32:45)
    中盤まで普通の小説と思って素直に読んでましたぁ〜☆
    そうしたらこんなに「官能爆裂急展開」になっちゃって
    びっくりしちゃいましたぁ☆
    だってビアンエッセイには激しいの書く人
    少数で少ないもん最近っ☆でも官能物も好きです・・(小声)

    ジュンコさん、されまくりたい「M」ちゃんだったんですね☆
    「親友に恋した・・」シリーズのれいさんだから(ですよね?)
    なまなましい性描写有りは「有り」だったんだぁ〜☆
    もう、冒頭の始まりと可愛いタイトルに騙されちゃったっ☆

    エピソード的に10・11・12・13・の感じ、好きでした☆誘惑的で☆

    うさぎ病のれいさん、淋しくても果てないでねっ☆
    見守ってるよ・いつも・みんなここでっ☆
    反応ないのは、恥ずかしがり屋のうさぎさんがここには
    多いからという事で・・☆ねっ・・☆

    完成まで頑張って下さいねっ☆
引用返信/返信 削除キー/

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