| ハァ、ハァ…。
夕暮れ時のホームは、人多過ぎ。 しかも仕事着の上にヒールじゃ走りにくい。
─三番線に電車が入ります。お下がり下さい。
アナウンスの声に一息ついて、ボタンを外す。
何とか間に合った。
やっと、だね─
ドアの窓に映るニヤケた顔を引き締めて。
一番にどんな言葉をかけようかと頭を働かせる。
あー…。 思い浮かばない。
彼女は。 どんな顔を見せてくれるだろう。
忙しかったここ最近。
夜12時過ぎにかかって来る電話に、 きちんと対応も出来ずに寝ぼけていた私を。
…まだ怒ってるかなぁ。
不安もよぎる。
でも、 会いたい気持ちには敵うはずもない。
今日は─
待ちに待った日だから。
それなりの決意と、 言葉を。 沢山あげたい。
…不安だったよね。
でも─ ごめん、なんて言っても喜ぶはずもないから。
きっと会えた瞬間に心は決まるはず。
はやる気持ちが、 私の額に汗を浮かばせる。
待ち合わせの駅へと電車は滑り込み─
再び走り出し、 改札を抜ける。
周りを見渡し、 上着のポケットから携帯を取り出す前に。
…ああ、いた。
口元が緩む。 一歩、二歩と近寄ると。
振り返り。
目が合い。
疲れてた、 はずだったのに。
肩の力が抜ける瞬間。
「…お疲れ様」
どんな事があっても。
笑ってくれるね。
いつも。
「うん、お疲れ様」
照れくさくて、目が見れないけど。
「汗かいてるし」
彼女は自然な手つきで私の前髪に触れるから。
「暑くて」
「何食べようか」
「とりあえずシャワー浴びたいなーなんて」
「…馬鹿」
冗談を交わしながら、街へと歩いて行く。
くっつきたくなるのに、きっと時間はかからないと感じる瞬間。
頑張って来た自分を、素直に許せる瞬間。
ホッとする。でもドキドキする。
今日は─ 今日は大事な話しがあるから。
覚悟しといてね。
「青だ」
「お腹すいたねー」
黄昏時のスクランブルの交差点─
会えずに交錯していた二つの気持ちが一つになる。
はい(^O^) 次は…「引っ越し」で。
(携帯)
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