| しばらくの間、和沙がボーっと見とれていると、 ふと肩を叩かれた。 「気になるの?」 振り向くと、そこに居たのは希実ではなかった。 彼女は確か…学級委員長を務めている子だ。 しかし、とっさのことだったので和沙は名前が思い出せなかった。 「あの人は、御舘篤子先輩。バスケ部のエースで、 この学校では生徒会役員に次ぐ人気があるの。 お母様は、百合園学校の総合理事長をしていらっしゃるわ」 「そ、そうなんだ…」 説明はありがたいが、何故にこんなに詳しいのかと 不思議に思っていると、彼女は笑いながらこう続けた。 「ああ、ごめんなさい。ボールを持ったまま凝視しているから」 にこやかに笑う彼女は、何だかおっとりしていて、 お嬢様というよりお姫様みたいだ。 「私は、同じクラスの二階堂菜帆です。よろしくね」 「あ…ああ、よろしく」
…二階堂?
一瞬、アレと思い首をかしげていると、すかさず彼女が説明してくれた。 「姉がいつもお世話になっています。私、斎の妹なの」
…
「ええっ!?」 一呼吸おいてから、和沙は思いっきり仰け反った。 クスクス… リアクションが良い和沙の反応が面白かったのか、 菜帆は笑っていた。 いや、確かに少し大げさに驚きすぎたかもしれないが、それも仕方ない。 何故なら、彼女と斎は全然似ていないからだ。 斎が王子様なら、菜帆はお姫様。 もちろん姉妹なのだから、顔立ちとか色白な肌とかは なんとなく似ている気がしないでもないけど… それでも、長身で筋肉質の斎と小柄で華奢な菜帆は、 ほぼ対照的なタイプに位置するのではないか。 おまけに、菜帆は天然パーマのふわふわした髪型が特徴的で、 どちらかというと真澄の妹と言われた方が信じてしまいそうだった。
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