| 新しい季節に咲誇る花が
新しい風に吹かれてひとひらずつ舞い上がる
何もかもが目新しいこの街で
私だけがまだ はじめの一歩を踏み出せずにいた。
だけど
2003年 春
泣けるほど晴れたあの日に
運命の歯車は 静かに廻り出してたんだ。
キーンコーンカーンコーン
新しい学校に来ても この音だけは全国同じ。
職員室の中の、煙草とコーヒーと紙の匂いが入り混じった、どこか酸っぱいような独特な匂いも…やっぱり同じ。
『じゃー櫻井さん、行こっか?』
突然手を取られて ハっと我に返る。
確かにこの人が今まで何か話しかけてきていた様な気はするが………
誰だっけ。
ぼーっとしていて、実際この人の話は何も聞いてなかった。
とりあえず掴まれた手の行方に困っていると その人は持っていた手を放し、今度は両手を私の肩に乗せかえ、満面の笑みでこう言った。
『そんなに緊張せんでも大丈夫!うちのクラスの子達、みーんな良い子やし、櫻井さんが転校してくるのをすごい楽しみにしとったけん!』
あぁ、この人担任か。 なんか誤解されてるみたいやけど…まいっか。 どーでもいいし、めんどくさいし。
作り笑いくらいならできるだろう。
『ありがとうございます。』
少し目を細めてこう返すのが、人見知りの私には精一杯。
担任の先生は、色白で背が小さく少しぽちゃっとしていて、笑うと目がなるなる可愛らしい人だ。
私の前をちょこまか歩くその可愛らしい先生は、教室に向かう間も何やら色々と話していたけど、良く喋るなぁ…とか、九州なまりが新鮮やなぁ…とか考えてたら、また話の内容が分からなくなった。
直さなあかんな、この性格。
(携帯)
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