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■20556 / inTopicNo.41)  返事ありがとうございます。
  
□投稿者/ たまき 一般♪(2回)-(2008/02/10(Sun) 11:58:34)
    ダイナだけじゃないんですか!?


    すごいですね,遊び心でこんなにも上手に書けていて!


    質問に答えてくださってありがとうございます。
    スッキリしました。笑


    無理をせず,頑張ってください。
    めっちゃ楽しみです。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20750 / inTopicNo.42)  ALICE 【86】
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(2回)-(2008/03/24(Mon) 08:24:55)
    各々のデスクに山積みになった業務に、

    私達は明らかに注意を集中出来ていない。




    リリーは右斜め向かいに、

    すみれちゃんは真向かいに、

    そして私は左横に、


    神経の恐らく半分を占領されている。



    3人の雑念の矛先は、同一だ。



    リリーの右斜め向かい、
    すみれちゃんの真向かい、
    私の左隣、


    とはつまり、


    アリスのデスクを意味する。


    今その場所は、

    危険な化学変化を試みる実験室と化しているのだ。




    ―――アリスと、三葉。



    この異様な組み合わせの2人が、

    一つのデスクに向かって、身を寄せ腰を下ろしている。








    気にならないで、いられようか。









    このところ内勤が増えており、

    (といっても暇な時期だという訳ではなく、
     4Fの人間がメイン案件の掛け持ち数を減らし、
     階下のフォローを大幅に受け持つという、
     今は体制の変化を試みている状態なのだ。
     つまり、暇な訳では、全くもってない)

    この機会を活かして、

    本日は丸一日、
    三葉の教育係に、所長直々アリスが任命されたのだ。


    突然の朗報ならぬ妙報に目を白黒させる部下達のリアクションを、
    満足げに眺めながら、

    女ボスは言い捨て御免で出張に立ったのだった。




    妙報が発せられた今朝、
    当初のそれぞれの反応といえば、


    三葉は「ぐぁ!」という蛙のような奇声を上げ、

    すみれちゃんは『第二キャビネットの施錠徹底』という注意書きを、
    30枚プリントアウトし、
    (第二キャビネットは1つしか存在しない)

    コンタクトをはめている最中だったリリーは、
    あっけにとられた隙に片方を落とし、
    しかもそれを自分の足で踏みつけ、

    ブラインドタッチで打ち慣れた自分の氏名を入力したはずの、
    私のPCの画面には、

    『だぃるいじ』

    という意味不明な文字が並んでいた。


    仕事場では無表情・無反応が売りのアリスでさえ、
    (別に売りではないが)

    所長の声に片方の眉を上げるのを、私は見逃さなかった。




    アシスト時のポイントや、
    司法試験に向けての要点などを学ぶようにという、
    所長の大雑把な指示通り、

    初めのうちは明らかにやる気の無い態度で、
    途切れ途切れに呟くような質問を投げていた三葉だったが、

    それに対するアリスの的確で明確、かつ奥深い回答を重ね聞くにつれ、

    だんだんと真剣な顔つきで、
    次第にメモをとるまでに変化していった。



    私は自分の作業に打ち込むフリをしながら、
    このストレンジ・ペアに意識を傾けずにはいられず、

    自分以外の2人も同様である事は、
    時折空中でぶつかる視線から充分伺えた。



    しかし、
    少し前から、

    三葉の言動に新たな変化が現れていた。


    少しずつ、アリスに反論をし始めたのだ。


    主張はそこまで強くないが、
    アリスの意見に何かと小さく異議を唱える声が、
    私の耳を刺激する。


    と、


    「納得いかない!!!!」



    突然、三葉のヒステリックな声が響いた。

引用返信/返信 削除キー/
■20752 / inTopicNo.43)  ALICE 【87】
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(4回)-(2008/03/24(Mon) 09:14:10)
    三葉の叫びは、

    私たち外野への『見て見ぬふり・解放宣言』となった。



    皆が手を止めて、

    遠慮無しに二人に注目する。





    「そういう考え方、正しくないと思う」


    ・・・恐れ多くも、アリスの仕事に堂々と文句を付けるとは。


    恐らく、
    最大の恋敵であるアリスの言葉に感銘を受け、
    真面目に聞き入っている自分にはたと気付き、
    だんだんと癇癪の虫が顔を出してきた、

    とまあ、そんなところだろう。



    この無謀な19歳に、1つ年上のアリスがどういう反応を示すのか、
    皆が静かに見守る。


    「・・・山根さんは、」

    「山根って言わないでって言ってるしょ!!三葉!み・つ・は!!」


    スタイリッシュな自分には似つかわしくない、とかで、
    彼女はいつも苗字で呼ばれる事を激しく拒むのだが。



    アリスの、故意ではない絶妙の仕返しに、
    私は思わず肩を震わせた。



    「貴方は貴方の考えを持って進んでいけばいいと思うわ」


    顔色一つ変えないアリスの大人の振る舞いは、
    小娘のプライドを余計に傷付けたようで、
    三葉は目を吊り上げ、声を荒げる。


    「未だ黒星が無いのがそんなに偉いわけ?
     大体、アリスの裁判って気色悪いのよね。
     普段ろくに人と会話も出来ないロボットみたいな人間が、
     弁護士なんて、正義の味方演じちゃってさ、ばっかみたい!!」



    アリスが、
    そんな三葉の怒り任せの言葉如きに、傷付きなどしないのは分かっていたが、
    それでも私は、
    何か、言わずには居られなかった。


    「何よ、いつもアリスの裁判傍聴して帰って来ると、
     “凄い!アリスってやっぱ天才!”とか言ってるくせに」

    「それは言わない約束じゃないっすかルイ子さん!!」

    立ち上がった三葉は私を激しく睨み付ける。
    怒りが留まる気配は無いようだ。

    と、いうか。後に引けないのか。



    「法廷ではよ〜く動くその口で、男も女もたぶらかして。
     所長もこの女に騙されてんですよ!」


    入れ込んでいるのが所長の方である事は、
    三葉も十分感じ取っているはずなのに。

    そんな暴言を吐いて、
    後で虚しくなるのは三葉の方だと、
    私は彼女を少し哀れに思った。

    が、その気持ちよりも、
    腹立ちの方が自分の中でわずかに勝っているのを感じた。

    その感情をどうすべきか迷っていると、


    「三葉ちゃん。言っていいことと、悪いことがあるんじゃない?」


    優しい口調で、しかし強い意志が感じられる声で、
    すみれちゃんが静かに立ち上がってそう言った。


    「いーーーんです。この女には今まで言いたいこと沢山我慢してきたんすから!
     腹ん中溜め込んでるより、ぶつけた方がいいんすよ!
     アリスもあたしに何か言いたいことあるんなら、今言えば!?」


    感情を表情にそのまま反映させる、
    そんな、自分とは正反対の三葉を、
    アリスは何も言わず、ただ見上げていた。


    「そうやって人を馬鹿にして、いつもいつも!何か言ったらどう!?」


    アリスの眉間が僅かに寄せられるのを見た私は、
    彼女が決して三葉を馬鹿にしているのではなく、
    ただ少し困惑しているだけだという風に感じた。


    どうやって助け舟を出そうか・・。

    私が思い迷っていると、


    「三葉に対して普段から思ってても言ってないこと。
     それを教えて欲しいんだってさ。
     何か、言ったら?アリス。少しくらいあるんじゃない?」

    初めてリリーが口を挟んだ。



    さて。

    アリスはどう応じるのか。




    案じつつも、興味が沸いた。

引用返信/返信 削除キー/
■20949 / inTopicNo.44)  ALICE 【88】
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(2回)-(2008/06/24(Tue) 03:01:18)
    視線を斜め下の何も無い空間に落としたアリスは、
    しばしの沈黙を設けた後、

    ぼんやりと、言った。




    「コーヒーが、美味しい」









    「え?」
    「は?」
    「えぇ?」
    「何?」




    「ミツハが淹れるコーヒーは、美味しい、凄く。
     ・・・いつも思ってて言ってないこと」








    皆、脱力した様子で顔を見合わせる。





    これぞアリスの、


    完全勝利だ。






    「確かに。何気に絶妙よね。三葉のコーヒー」


    リリーの発言が、
    アリスをフォローするかのように感じられ、
    私は何故だか無性に嬉しくなった。



    「コーヒーとか、そんなの、何も考えないで普通に淹れてるだけっすよ、そんなん・・」

    「うんうん!三葉ちゃんは紅茶も上手!私も思ってたの!」


    すみれちゃんもすかさず加わり、
    皆に持ち上げられた三葉は、
    もはやすっかり毒気を失った顔つきに変わりつつある。


    感情的になり過ぎた事を気まずく思い始めたのか、
    居心地の悪そうな雰囲気が、
    彼女の周囲に漂い始める。


    アリスが隣に居たのでは、
    余計にクールダウンしにくいのだろう。



    「もう正午か。アリス、外で何か、食べて来よっか」


    三葉への助け舟として提出した私のその案に、
    真っ先に反応を示したのは、
    予想外なことに、アリスだった。


    私を向いた彼女の瞳は、
    安堵のあまり、
    それはもう無防備に揺れていて、

    予期せずそんな目で見つめられてしまった私は、
    皆が居るのも忘れて、
    思わず彼女を引き寄せて抱き締めそうになったのを、


    ぎりぎりのところで抑え込んだのだった。
引用返信/返信 削除キー/
■20950 / inTopicNo.45)  ALICE 【89】
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(3回)-(2008/06/24(Tue) 03:23:37)
    事務所の並びにあるコーヒーショップでテイクアウトしたランチを持って、

    私とアリスは園へ向かった。


    アリスと園で会うのは、これで4度目だが、
    これまでは全て、現地集合・各自解散だった為、
    園までの道のりを並んで歩いたのは、

    今日が初めてだった。



    毎回私が渡り切るのに骨を折るスクランブル交差点の人間の海を、

    アリスはまるで人魚のように、

    滑らかに、
    涼しげに、

    風と共に泳いだ。



    老若男女がアリスに道を譲っていく様子は、
    エジプト記に記録されている、
    モーセの紅海のエピソードを私に連想させた。








    「今日は、とんだ災難だったわね」


    アリスのお気に入りのオリーブの木陰に並んで腰を下ろす。


    「んーー。彼女は。色んな意味で、私を嫌いなんだろうね」

    「嫌い・・・まあ、不可抗力でしょう。
     でも、アリス、偉かったじゃない。
     言い返すどころか、あの場面で三葉を誉めるなんて、凄い。
     私、真面目に感心しちゃった」

    「深く、考えて、ないよ。
     普段思ってることって、あれしか、無かったから。
     それだけ」


    あっけらかんと、アリスはそう言ってのけた。

    本当に、嫌味の無い人間だ。


    この娘と一緒に居れば居るほど、
    その類稀な、ひねくれの無い心に惹き寄せられる。

    心が澄んでいる分、
    普通では考えられないような、
    深い闇を抱え込んでいるのだろうが、


    それにしてもアリスは、

    性格が良い。

    極めて良い。


    世の中、美人は得をすると言うが、
    あまりに人間離れした美しさを持って産まれると、
    ひとえにそうとは言えないのかも知れない。


    アリスを見ていると、
    その容姿が、
    彼女の人となりに得を与えているとは、
    どうも考えがたい。


    まあそれは、
    アリスの社交性も問題なのであるが。


    それでも、
    もっと普通の、
    何と言えばいいのか、
    人目を惹く“べっぴんさん”レベルであったなら、

    『無口で、だけど喋ってみれば案外可愛らしい』

    という風な印象を持たれたのではないだろうか。


    所長もダイナもそれ以前の女達も、
    ほんのもう少し、
    アリスの内面の美しさに気付けていたなら、

    いくら金銭のやりとりがあったといえど、
    もっと違う形で、
    この娘と良い関係を築けたのではないだろうか。


    アリスと肉体関係を持つことが、
    彼女の心を真っ直ぐに見つめて、
    それを勝ち得るのに妨げとなるのであれば、

    私は、そんな繋がり、一生要らない。




    ・・・と、ここまで考えてから、

    “肉体関係”って、
    いつそんなものを私が望んだんだ、

    と、己の突拍子も無い発想に、
    私は些か動揺を覚えた。


    そんな私の心境など知らないアリスは隣で、
    ベーグルに挟まれたレタスをシャキシャキ鳴らして食べている。


    「変なの。キャベツはダメで、レタスは、いいんだ」

    「好みを変と言われるのは遺憾だわ」


    アリスはツンとした様子でそう返してきた。



    好み、か。


    ・・・ああ、そうだ。

    午前の騒動の中、
    三葉がアリスに放った言葉を聞いて、


    私の中にふと湧き上がった疑問が、あったのだった。
引用返信/返信 削除キー/
■20951 / inTopicNo.46)  あおい志乃さんへ
□投稿者/ 凌 一般♪(1回)-(2008/06/24(Tue) 08:43:49)
    おかえりなさい。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20954 / inTopicNo.47)  待ってました(^-^)
□投稿者/ ★ 一般♪(1回)-(2008/06/26(Thu) 17:38:54)
    ほんとにこのお話大好きです!!引き込まれる!(≧▽≦)これからも楽しく読ませてください♪
    素敵なお話ありがとです!

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20958 / inTopicNo.48)  お待ちしてました
□投稿者/ れい 一般♪(14回)-(2008/06/28(Sat) 01:41:58)
    あおい志乃さま

    更新、ありがとうございました。
    お疲れさまでした。

    更新されたものが読めて非常に嬉しいです。
    ありがとうございます。


    東京はここ数日、寒暖の差も大きく、
    体調管理がなかなか難しい日が続きます。

    あおい志乃さまも、くれぐれもお体ご自愛下さいませ。


    私は久しぶりに休みが取れそうなので、
    大好きな温泉にでものんびり浸かってこようと思います。
    (そのために仕事頑張っているようなものです)


    またの更新、楽しみにしております。



    れい

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■20959 / inTopicNo.49)  ALICE 【90】
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(5回)-(2008/06/28(Sat) 01:52:15)
    「アリスってさ、男の人と付き合うことは無いの?」

    「無い」



    こちらが戸惑うほどの即答だった。




    『法廷ではよ〜く動くその口で、男も女もたぶらかして・・・』


    という三葉の暴言の、

    “男も”

    という部分に、私は引っ掛かったのだった。



    そういえば、アリスの恋愛遍歴の、
    異性編はどうなっているのだろうかと。


    アリスは、

    この通り、“無い” と言う。





    「あ、そっか。無いんだ」

    「どうして?」



    ところでこのところ、
    アリスは積極的に会話を続けるようになってきたように思う。


    以前の彼女なら、
    受けた質問に “イエス” か “ノー” で答えるだけで、
    それ以上自分で話を膨らますようなことは、しなかった。


    ましてや、“どうして”そんなことを自分に尋ねるのか、などと、
    質問を返すことなど、絶対に。


    この変化は、
    私と居る時にそれだけアリスが、
    気分をリラックスさせている事の証拠だろうか。


    確信は持てないが、
    でもきっとそうなのだろうという自信が私の何処かに潜むゆえに、
    以前なら酔った勢いでも言えなかったであろう、
    こんなプライベートな質問も、
    少しの覚悟だけで放ててしまうのだと思う。




    「ほら、慰安旅行で、アリス言ってたじゃない?
     愛してないなら、男も女も同じだ、って」

    「言ったね」

    「だからさ、どっちでもいけるのかなと、思ったんだけど。そっか、違うんだ」



    ベーグルを完食したアリスは、
    スクッと立ち上がったかと思うと、
    おもむろに、背もたれにしていたオリーブの木を登り始めた。

    何をしているのかと私が声を掛ける間も無く、
    いとも簡単にアリスはするすると、
    地上3メートルを超える高さの枝まで辿り着き、
    そこに腰を下ろした。



    「・・・猿か」


    私の呆れ声に、
    アリスの笑い声が、天から降って来る。


    「ルーイはさあ」

    「ん?」

    「私が女と付き合うの嫌?」

    「え?なんで?・・ああ、違うよ。そうじゃなく。
     ほら、アリス昔から相当モテただろうし、それは同性からもなんだろうけど。
     でもやっぱり、数的には言い寄ってくるのは異性が圧倒的に多いでしょ。
     だから、流れでいけば、っていうのも変だけど。
     男と付き合う方が、手軽だったんじゃないかなって、そう思っただけ」





    だって、実際そうだろう。

    特に、パトロンを探すのであれば、
    確実に男の方が簡単に見つかる。


    アリスは木の上で、
    風に吹かれて気持ち良さそうに目を閉じながら、

    「金持ちには男が多いしね」

    と言った。



    私の考えが読まれていたようだ・・・。



    「ま、それもあるし。
     あとさ、女性相手の方が、なんていうか、大変かなって。
     性格的に、束縛とか、嫉妬とかね。
     想像でしか無いけど。人にもよるんだろうけど」

    「そうかもね」

    「アリスが、同性の方がいいっていうんなら、何の問題も無いけど。
     うん、ちょっと訊いてみただけよ」



    本当は、この関連でもう一つ、
    前々から時折頭に浮かんできていた、
    重要な疑念があるのだが、
    それはさすがに少し、
    踏み込みすぎかもしれない。

    とりあえず今日のところは、ここで終わらせようと、
    私は前を向いて適当に鼻唄を歌い始める。





    「特に理由があって女を選んでるわけじゃないよ」


    ところがアリスの方が、
    この話題を続行する姿勢をとったので、
    私の心は少し戸惑いを覚え始めた。


    「うん・・そうなんだ」

    「それから私」

    「うん?」

    「sexは好きじゃないけど」

    「あ、そうなの・・うん」



    アリスは何を言い出すつもりなのだろう。


    彼女が今どんな表情をしているのか、
    見定めたいのだが、
    どのタイミングで上を向けばいいのか、
    私は顔を上げることが出来ないで居た。


    すると、



    「受精はもっと嫌いなの」



    何の心構えも無いままに、


    そんな台詞が私の耳に達し、

    やがて胸に当たった。




    あまりに綺麗な声で、
    アリスがそんな生々しい単語を口にしたので、

    私は妙な…本当に妙な気分になった。






    快晴の空から落ちた大粒の雨のように。

    白百合から放たれた悪臭のように。

    女神から産み落とされた悪魔のように。






    “受精” というワードだけが脳内で異質に浮いていて、

    私はその出処を模索するように、
    落ち着き無く瞳を上下左右に動かす。



    そして、ようやく、

    アリスを見上げた。




    真っ青な夏空を背に、
    鳳凰のように枝に宿ったアリスは、

    そこで美しく微笑んでいた。



    その花のような唇から発せられたと考えるには、


    “受精” という二文字は、



    あまりに違和に溢れていた。
引用返信/返信 削除キー/
■20960 / inTopicNo.50)  ◆凌さんへ
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(6回)-(2008/06/28(Sat) 01:57:46)
    ご無沙汰しております。

    簡潔で、心温まるメッセージをありがとうございます。
    励みになります。
    凌さんのそのお心遣いに少しでもお返しが出来るよう、
    アリスを動かしていきたいと思います。

    良い週末を。
引用返信/返信 削除キー/
■20961 / inTopicNo.51)  ◆★さんへ
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(7回)-(2008/06/28(Sat) 02:00:36)
    初めまして、こんにちは。
    こちらこそ、素敵なメッセージ、ありがとうございます。
    素直に嬉しいですね(/-\*)
    これからも楽しくお読み頂けますよう、
    楽しく書き進めていけたらと思います。

    素敵な週末をお過ごし下さい♪
引用返信/返信 削除キー/
■20962 / inTopicNo.52)  ◆れいさんへ
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(8回)-(2008/06/28(Sat) 02:14:44)
    れいさんこんばんは。
    真夜中のメッセージ、ありがとうございます。
    れいさんが東京で変わらず、
    お忙しい日々を送っていらっしゃるご様子が窺えます。
    週末の激戦を終えて、お風呂に入ってらっしゃる時間帯かなと、
    思っていたのですが。

    季節の変わり目、体に負担が掛かる時節ですね。
    れいさんこそ、くれぐれもお気を付けて。
    体も、心も。

    温泉、イイですね。
    私も日曜から数日休みを設けています。
    “連休中音信不通”宣言を各方面に堂々と掲げられるよう、
    あと30時間ほど心を無にしてやり抜きたいと思います。

    れいさんの週末が素敵に素晴らしく彩られることを、
    祈っています。
引用返信/返信 削除キー/
■20963 / inTopicNo.53)  ALICE 【91】
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(9回)-(2008/06/28(Sat) 03:06:00)
    「ルーイったら、黙っちゃった」



    「・・ああ、ごめん。あまり耳にしない言葉だったから」



    膝から下を前後に揺らして、

    ブランコを漕ぐようにアリスが空を漕ぐ。


    その子供のような仕草は彼女によく似合っていて、

    だからこそ余計に、
    やはり先刻の二文字が生々しく思えた。




    「そうだよね。女同士なら、妊娠の可能性、絶対無いからね」


    アリスの言った台詞を、なんとか冷静に思い返して、
    私はそう返答した。



    「変に思った?」

    「ううん。全然」 と答えてから、

    「安心した」 と、自然に私はそう加えた。



    「安心?」


    「そう。男性関係のトラウマから、女性しか愛せなくなるケースは多いって聞くから。
     アリスがそうじゃないんなら、良かった」




    ―――これが、さっき言い留まった、疑念。


    前々から少しずつ考えていた、不安。




    「そんなこと、考えていたの。ルーイ」


    アリスが、
    意外だというように、
    冗談めいた響きでそう言った。

    だが表情には、
    僅かに困惑というか、
    何かの引っ掛かりが浮かんでいるように見えた。



    「考えていたというか、うん、まあ、考えてしまうというかね。
     アリスが今辛いのも、昔辛かったのも、嫌だからさ」




    過去を変えることが出来ない事は十分承知している。

    それでも、
    アリスが経験した苦しみが、
    少しでも、少なくあって欲しい。


    それが私の、正直な、飾り気の無い気持ちだ。



    所員とも、依頼人とも、
    アリスは仕事中、何の問題も無く男性と接触していたし、
    愛想が良いとは決して言えないが、
    それは誰に対しても同じなわけで。


    とにかく今回のことで、


    『同性と付き合うことには特に意味は無い』と、

    性虐待の過去は無いと、


    アリスの口から聞くことが出来た私は、

    心底安堵していた。




    父親を “男” と称するアリスの呼び方には、
    明らかに侮蔑の念が見られた。


    我が子に食事をまともに与えることさえしない人間が、
    他にもどんな仕打ちをアリスに与えていたか、分からない。
    出来れば考えたくない部分だ。


    アリスのその父親像が、
    そのまま彼女の持つ男性像に与えた影響の大きさは、
    小さくないと予想されるが、
    考えてみれば、アリスの場合、
    不信の対象は異性に限ったことではないだろう。


    彼女の瞳は、
    “男” よりむしろ “魔女” という言葉を発するその時に、
    様々な情意を宿していた。

    紅野心とアリスの父親が、
    一体どんな関係で、
    そして二人が真白・アリスの母娘に対して何を行ったのか、
    この辺りに関する具体性は一切手にしていないが、


    その正体の全貌が、

    アリスを笑顔に導く類である可能性は、






    ゼロだ。






    “sexが嫌い” というのは、

    妻以外の女を想い(あるいは抱き)続けた、
    不道徳な父親に対する嫌悪感と結びついているのかもしれないが、

    実際、アリスは性行為を行っているし、

    その関連での目に見えるトラウマは、無いようだ。


    食欲は極めて少ないが、
    摂食障害では無い、
    自傷行為の痕跡も見られず、
    トゥレットの症状も無ければ、
    自閉気味ではあってもシンドロームとは言えない。


    そういう、他人の同情や心配を簡単に集める要素が、

    アリスには無い。





    ―――だが、



    心が、


    深黒の闇に覆われている。




    アリスは、

    表面を滑らかに保つ為に、
    内面を途方も無く犠牲にしている。


    きっと、そうなのだ。








    ・・・果たしてどちらが良かったのだろう。




    感情の波を抑え込むことをせずに、
    よく笑いよく泣きよく怒る、が、
    コントロールが利かない、
    不安定な人間。


    それとも今のアリスのように、
    何事にも辛抱強く耐えることが出来るが、
    感情が恐ろしく鈍く、
    自身の保守の仕方を知らない、
    不器用な人間。








    どちらにしても、




    心に平安は無い。
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■21035 / inTopicNo.54)  伝えたいこと
□投稿者/ リーフ 一般♪(1回)-(2008/08/03(Sun) 10:02:28)
    この作品は、一度読んでもまた読みたくなる作品で、大好きです。
    何度も何度も読み返してはルーイとアリスのやり取りに心温まる感じです。

    また、ゆっくりと更新される日を楽しみにしています。
    暑い日が続いていますので、ご自愛下さい。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■21277 / inTopicNo.55)  まってます
□投稿者/ ぎのご 一般♪(1回)-(2009/03/07(Sat) 15:03:18)
    いつ読んでも…むふふです( ̄▽ ̄〃)
    更新まってます

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■21507 / inTopicNo.56)  即プレイOK
□投稿者/ 千里 一般♪(1回)-(2012/05/14(Mon) 22:20:24)
http://www.fgn.asia/
    レベルの高い女の子います+.(・∀・).+♪ http://fgn.asia/

    (携帯)
完結!
引用返信/返信 削除キー/

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