| …っ!?
何が起こったのか、和沙には理解できなかった。 ただ、気がつけば背後からとてつもない衝撃を受けて、 倒れるようにして地べたに這いつくばっていた。 転んだのではない。 転ばされたのだ。
「ご苦労さま」 とそこに、目の前の少女とは別に声をかける人物がいた。 見ると、まず最初に細長い脚が飛びこんでくる。 どうにか顔を見ようと上半身をくねらせて起きあがると、 そこには…あの御舘篤子が居た。
どういうこと…?
どうして彼女がここにいるのだ、という疑問が和沙の頭を駆け巡る。 「痛っ」 だが、次の瞬間…背中を激痛が襲う。 蹴られたのだ、と分かるまでさほど時間はかからなかった。 しかし、そんな怪我人をよそに、篤子は静かに さっきの忘れ物をした生徒に近づいていく。 二人が並んでツーショットになったところを見て初めて、 和沙は思い出すことができた。
ああ、そっか…
あの生徒は篤子の取り巻きの一人だ。 篤子はいつも大勢の女生徒を従えて歩いているから、 彼女一人だけだと気づかなかったのだ。 篤子は彼女に何やら耳打ちしている。
そういうこと…
だんだん読めてきた。 この状況から、まさか二人がたまたまここに居合わせたのではないことは 鈍い和沙にもさすがに分かる。 この二人は『グル』だった。 そう考えるのが自然だろう。 連中が何を企んでいるのかは知らないが、 昼休みにわざわざこんな誰も居ない場所に呼び出してまで 成しえたかったコトとは、そう良いことのはずがない。
逃げなきゃ…
和沙はとっさに立ち上がった。
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