ビアンエッセイ♪

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■20457 / inTopicNo.1)  幻の君
  
□投稿者/ 壱也 一般♪(1回)-(2008/01/18(Fri) 14:40:45)

    「もう!うんざりだわ」


    つい先ほどまで私の下で泣いていた子猫は、急に牙を剥き出しにした。


    『…』


    黙って見守る私に、子猫は苛立ったようで


    「私は貴方のおもちゃじゃないわ!」


    別におもちゃにしたつもりはないけれど


    「貴方の寂しさを紛らわせるだけなんて嫌!」


    確かに子猫は穴埋めだったかもしれないな。


    「さよなら」


    子猫は身支度をして、ホテルの一室から抜け出した。

    (携帯)
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■20458 / inTopicNo.2)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(2回)-(2008/01/18(Fri) 14:42:29)
    2008/01/18(Fri) 14:44:38 編集(投稿者)


    『まいったよ。ホテル代は私持ちだし、大事な子猫には逃げられるしで』


    ワイングラスを片手に、私は愚痴愚痴と昨日の話しをした。


    「チカが悪いんじゃない!まったく、学習能力0ね!」


    親友の奈々が私の顔に人差し指を突き出し、これで六回目の説教をする。


    「一体、いつになったら本当の恋を覚える気?」


    『本当の恋?私はいつだって本気だけど?』


    「ちがーう!逃げられた癖に、涙一つ見せない恋は本気とは言わないわ」


    それは奈々の勝手な解釈だ。なんて、口にはしなかったけれど、私はいつだって本気だ。


    受け手が、それを遊びだと受け取るかは自由だし、私は精一杯の愛は注いでいるつもりだ。


    『奈々は、新しい人見つかった?』


    「またー話しをはぐらかして!」


    奈々はより一層顔を赤くして怒る。


    可愛らしくて、幼さの残るルックスに世の中の男性は翻弄されているんだろうな。

    『彼氏、いるの?』


    奈々の言葉を無視して、質問を繰り返す。


    「…いるよ。チカと違って本気で結婚しようって思ってる」


    『私ら、25歳だもんね。結婚してもおかしくないか』

    自分がビアンだからか、結婚という単語とは無縁であった為に、多少驚く。


    『旦那様に奈々を取られるのは、妬けるなぁ』


    ふざけた口調で、言うと奈々は照れながら


    「チカの世話係りは引き続きやらせてもらうから!」

    なんて可愛く言う。
    奈々が親友じゃなければ食べてしまうかもしれない。

    私が同性愛者ということを知っても、引きもせずに、理解してくれた唯一の女。

    高校の時に、私の想い人と離れ離れになり泣いた時も、慰めてくれた親友。


    そんな親友に手を出すはずもなく、こうして私からの不規則な呼出しにも来てくれる大好きな親友。


    きっと、私が理性を保てているのは奈々がいるから。

    でなければ…あの夜、私は理性を失った犯罪者になるところだった。

    (携帯)
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■20459 / inTopicNo.3)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(3回)-(2008/01/18(Fri) 14:45:49)


    「ねぇ、チカ?私好きな人が居るんだぁ」


    高校三年の冬に、私が二年間片思いをし続けた、朱美が初めて恋を口にした。


    それまで、恋愛とは無縁なように、男性を避け、女友達にべったりだったのに。

    『マジで!誰よ!朱美も恋をしたんだぁ〜』


    本当は聞きたくなかったけれど、普通の友達なら流れ的にこう言うだろう。


    「…2組の秋山君」


    秋山は学年でかなり目立った奴で、言うならばヤンキーと言った所だろうか。お勧めは絶対しない。


    『マジで!?あれヤンキーでしょ?ヤバクない?』


    朱美のルックスなら、秋山なんてイチコロだろうな。ふんわりパーマのかかった天然オーラ全快の朱美は、自分では気付かないくらいのフェロモンがあった。


    「こないだ、少し話したら、噂より全然優しくてカッコ良かったの」


    ああ、完全に乙女モードだ。こうなっては、最後まで突き進むタイプだろう。


    『…そっか。。ん〜じゃあ応援しちゃる!頑張ってね!』


    「ありがと〜!チカ!頑張るよぉ」


    笑顔を全面的に放ち、痛々しい私の心は、完全に砕かれた。


    二年間の片思いは、はかなく散っていく。

    (携帯)
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■20460 / inTopicNo.4)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(4回)-(2008/01/18(Fri) 14:46:36)

    『奈々〜朱美が恋をしたぁ〜』


    泣きそうになりながら、よろよろと、席につく。


    「はぁ!?大ニュースじゃん!」


    そう、これは一大ニュースなんだ!


    一年の時から、男子の告白を片っ端から断り続けた朱美が!!恋をしたんだから。


    「秋山〜!?」


    同じ反応をする奈々に、静かにするように、指で口を押さえる。


    『ヤバイよな?もしも、付き合ったりしたら…』


    「ていうか、アイツ!タラシって噂だし」


    『あー…大事な朱美が取られるー』


    「でも、やっと好きな相手が出来たなら友達として応援しなきゃだね!」


    『それはもちろん…あぁ告白しよーかな。』


    ボソッと呟く私に、奈々が頭を叩く。


    「それが出来たら、今頃付き合えたんじゃない?ヘタレ君?」


    奈々が言う通り、一年の終わりから幾度となくチャンスがあったにも関わらず、私は想いを伝えなかった。今の関係を大事にしていたからである。

    それがこの結果。


    『失恋したんだから優しくしてよ!』


    「同情の価値もないね!」

    奈々が憎たらしい事を言い終わると同時に、廊下から噂の秋山君の声が聞こえた。

    (携帯)
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■20461 / inTopicNo.5)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(5回)-(2008/01/18(Fri) 14:47:43)


    「行くぞー朱美!」


    何てデカイ声だろうか。
    噂の秋山君は私の最愛の朱美を呼んで…


    ちょっと待てーーい!


    今は休み時間だが、あと一分程で授業が始まるというのに何処へ連れ去る気なのだろうか!


    一方、朱美は嬉しそうに、漫画で言うなら御花畑が浮かびそうな笑顔で走っていく。


    『奈々…』


    「ん?」


    『追うぞ!』


    「は!?」


    気がつけば、奈々の腕を引っ張り廊下を駆け出していた。


    チャイムが聞こえても、二人は教室に戻る気配はない。


    サボるなんて、朱美はしたことがない。


    「ちょっと…尾行はよくないって」


    『いい雰囲気なら、止めるよ。心配じゃないの?ヤンキーとサボりなんて』


    「心配だけど…」


    奈々は罪悪感を感じながらも、ソロソロと朱美達の後を付ける。


    二人はまもなく、体育館に入って行く。


    この時間は、どの学年も体育館を使用しない。


    サボるにはうってつけの場所だろう。


    『裏回るぞ?』


    奈々の腕を掴み、体育館裏の扉を少し開けた。


    二人は気付いておらず、そのまま体育館倉庫に入って行く。

    (携帯)
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■20462 / inTopicNo.6)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(6回)-(2008/01/18(Fri) 14:48:59)


    「何かヤバイ雰囲気じゃない?」


    奈々がおそらく、直感的に言う。


    奈々の勘はよく当たる。


    体育館倉庫の扉が勢いよく閉められ、音が響く。


    私たちは、忍び足で体育館倉庫に近づいた。



    「なぁ俺の事好きなんだよな?」


    「早くやろーぜ!!」


    「黙ってろよ!」


    ジタバタ暴れる音と、秋山以外の男の声…


    レイプ!?


    私は我を忘れ倉庫の扉を開いた。


    !?


    制服が乱れ、腕を押さえ付けられている朱美が泣きながら、床に倒れている。


    「何だてめぇ!!」


    秋山が吠えたと同時に、私は奴に飛び掛かった。


    昔から、空手を習っていた私は、飛び蹴りを食らわしてやった。


    「がはぁ」


    秋山が怯んだ、その隙に、もう一人の男に顔面向かって拳を突き出した。


    しかし、かわされてしまい、みぞおちに男のパンチが入った。


    その瞬間、視界は霞み、意識が途絶えた。

    (携帯)
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■20463 / inTopicNo.7)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(7回)-(2008/01/18(Fri) 14:50:06)


    「チカーチカー死なないでーチカー」


    意識が蘇った時には、誰かが私の隣で泣いていた。


    死んでないよ。
    勝手に殺すなよなぁ。


    返事をする気力もないくらい脱力していた私は、どうにか目だけは開く事に成功した。


    ベッド脇に啜り泣く女の子。


    朱美??


    その後ろに泣きそうになるのを堪える奈々が見えた。


    モゾモゾ動こうとしたのに気付いたのか、朱美が涙を拭きながら、私に話し掛ける。


    「チカ?大丈夫??」


    微かに首を動かすと、安心したのか、笑顔を取り戻した。


    「チカ!生きてる?」


    奈々が私を揺らす。


    「アイツら退学になるから!安心しな?」


    ああ、アイツらマジでムカつく。


    私の大事な朱美を…
    未遂だから良かったけれど…。


    「チカありがとう!本当にありがとう!」


    朱美はまた涙を見せながら布団に顔を埋めた。


    『…な、泣くな』


    やっと出せた声に、動かせるようになった右手で頭を撫でた。


    「安静にしてなさいね?」

    そう言い残し、奈々は保健室を出て行った。

    (携帯)
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■20464 / inTopicNo.8)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(8回)-(2008/01/18(Fri) 14:51:36)

    『朱美…大丈夫だから』


    「えっ?」


    『私が朱美を…守るから』

    振り絞る声に、朱美は頷き、手を握ってくれたね。



    「あの時の、チカは無謀だったわね?」


    時刻は夜の十時を回り、ワインも酔いが、いい感じに回って来た。


    『そうだね。頭の中は朱美でいっぱいだった』


    「まるでヒーローね」


    『本当にヒーローなら、今頃朱美とワインを楽しんでるさ』


    「もう忘れなさいよ」


    『誰を抱いたって…代わりにはならないよ』

    (携帯)
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■20465 / inTopicNo.9)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(9回)-(2008/01/18(Fri) 14:52:54)


    体調もよくなったのは三日後だった。


    学校は相変わらず噂が飛び交い、朱美はその度に、同情や卑しい目で見られた。

    奈々と私は出来るかぎり、守った。


    時間が許す限り、傍に居た。

    それでも、朱美の心は傷だらけだった。


    あの日から、二ヶ月が経った頃、朱美は屋上から飛び降りた。


    授業中に、抜け出して。


    本当に守れたなら、朱美は死ななかった。


    私は朱美を見殺しにしたんだ。


    何度も何度も自分を憎んだ。


    「チカは悪くないから」


    奈々はそう言ってくれたが、私はそう思わなかった。

    高校を卒業後、雑誌のフリーライターとして活躍の幅を広げて行った。


    朱美を忘れた日はなかった。


    私が取り上げたのは、自殺する若者や、いじめに苦しむ若者たち。


    朱美の傷を共有出来たら…浅はかな考えだけで動いていたが、それも行き詰まり、次第にただのフリーターに堕ちたのだ。


    『揚句の果てに、たくさんの女を抱いて気を紛らわせようとして…』


    「飲み過ぎよ。」


    奈々にワイングラスを取られ、私は頭をテーブルに落とした。


    『朱美に会いたい』


    「もう寝なさい。今日は泊まってあげるから」


    ベッドルームに、私を引きずり、ベッドに寝かせると奈々はリビングに戻ったようだ。


    そのまま意識は薄れ夢へとダイブした。

    (携帯)
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■20466 / inTopicNo.10)  
□投稿者/ 壱也 一般♪(10回)-(2008/01/18(Fri) 15:37:46)


    朝、目覚めると隣には見知らぬ女が寝ていた。


    私の右腕に顔を埋め、幸せそうに眠っていた。


    『…だ、誰だ?』


    奈々の友人だろうか?
    いや、勝手に入れるような子ではないし、何故私の隣で寝ているんだろうか?


    「…んん」


    寝ぼけた声で、寝返りをうちたいのか、体を動かす。

    『おい、誰だ?』


    「…ふぇ」


    !?


    私の隣に寝ていたのは、朱美だった。



    『あ、あ…けみ?』


    「うーん…おはようチカ」

    本当に朱美なのか!?
    何で名前知っているんだ?

    ていうか本物だったら幽霊なわけで……。


    プシュー。


    思考は完全に停止した。

    (携帯)
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■20469 / inTopicNo.11)  すごい。
□投稿者/ サト 一般♪(1回)-(2008/01/20(Sun) 02:33:24)
    読み出したら止まらんくなってしまいました(^^)
    続き待ってます!

    (携帯)
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■20471 / inTopicNo.12)  10
□投稿者/ 壱也 一般♪(11回)-(2008/01/20(Sun) 13:47:57)


    「おはよう、チカ。驚いた?」


    いつの間に居たのか、ドアにもたれながら、奈々が言う。


    『奈々、これは朱美なのか?』


    「残念ながら違うわ。でもがっかりしないで?そっくりなのは外見だけじゃないから」


    「奈々、チカが困惑してるよぉ」


    朱美のそっくりさんはハニカミながら、私を見つめた。


    「…事情は奈々から聞きました!私は、朱美さんの生まれ変わりだと、奈々が言うくらい似ているらしく、ある条件付きで今日からここに住む事になりました」

    事態をうまく飲み込めないまま、また口が動く。


    「チカさんのお世話をするのが条件です。私、行く宛てがないので困ってたんです」


    「いつまでも、お世話出来ない私に代わって、愛里がお世話するの。」


    『勝手に決めないでよ!大体、私は別に世話なんてして欲しくないんだから』


    「あんなに朱美に会いたがってたじゃない?ここまで似ているなんて愛里くらいよ?」


    「チカ…お願い…」


    その時、愛里の顔と朱美の影がダブって見えた。


    『好きにしたら…』


    どうしよう。。私トキメいてる。


    これは朱美じゃなく愛里という別の女性なのに。

    (携帯)
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■20472 / inTopicNo.13)  11
□投稿者/ 壱也 一般♪(12回)-(2008/01/20(Sun) 13:58:45)


    「ありがとう!チカ!」


    愛里は私に抱き着き笑顔を見せる。


    「じゃあ成立ね!愛里?明日荷物を持ってまた来てね?」


    奈々は小柄な愛里に言うと素直に返事をして、忠実な犬のように、部屋を飛び出した。


    『おい、奈々。』


    「あら?ご機嫌ナナメ?」

    『当たり前だ。心臓に悪すぎる。』


    「知り合いの娘さんなのよ。年齢はハタチで、大学生。学校は今冬休みに入ってるの(笑)その間だけ泊まらせてあげて?」


    大学の休みは二ヶ月近くあるんではないだろうか?
    その間、他人との生活なんて耐えられるだろうか?


    「愛里も、ノンケだし?朱美にそっくりだし、昔を思い出して告白してもいいのよ?」


    『馬鹿言え!あの子は朱美じゃない!ただのそっくりさんだろ?そんなんで…告白したって…今までの子猫と何も変わらない。』


    「愛里にどう接するかはチカ次第。私は別に気にしないからさ」


    奈々は体を翻し、部屋に出る間際、一言漏らした。


    「チカ、元気になってね」

    そして、扉が閉められたベッドルームで、私は一人泣いた。


    頭では分かっているのに、体が反応する。
    朱美にずっと会いたかったんだって。

    (携帯)
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■20473 / inTopicNo.14)  サト様
□投稿者/ 壱也 一般♪(13回)-(2008/01/20(Sun) 14:02:03)
    お読み頂きありがとうございます。

    書き始めたばかりで、これから更新遅れるかもしれません。

    ですが、一所懸命書いて行くので、引き続き読んでくれたら嬉しいです。

    (携帯)
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■20474 / inTopicNo.15)  12
□投稿者/ 壱也 一般♪(14回)-(2008/01/20(Sun) 18:52:08)


    翌日、昼頃に愛里はキャリーバッグ一つ持ってきて、リビングに居た。


    いつの間にか作ったのか合い鍵を持っていたらしく、勝手にリビングにあるテーブルに昼食が置かれていた。


    「おはようございます!チカさん!」


    昨日とは違い、敬語を使いやけに礼儀正しい。


    自分の身分をわきまえているのだろうか。


    私はあっさり無視をして、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。


    昨日まで空っぽだった冷蔵庫は、食材が詰まっていた。


    『食事費』


    私は財布から、三万円を出して愛里に渡す。


    「いえ、結構です。愛里が勝手に買ってきたので。」


    『いや、とりあえず持ってなよ?年下に奢らせるわけに行かないから』


    愛里は苦笑いしながら三万円を財布にしまうと、テーブルにあるオムライスを食べるように促した。


    面倒臭いと思ったが、人が作ってくれた食べ物を粗末に扱うのはポリシーに違反するし、道徳的に許されない。


    席に着き、スプーンですくい食べる。

    (携帯)
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■20475 / inTopicNo.16)  13
□投稿者/ 壱也 一般♪(15回)-(2008/01/20(Sun) 18:53:36)


    とても…おいしかった。


    「お口に合いますか?」


    愛里が心配そうに見るので、


    『ああ…おいしい』


    無愛想に答えてしまう。


    慣れない人間に、どうリアクションすればいいか分からなかった。


    「良かった〜♪奈々からチカさんは食生活乱れてるって聞いてたので、これから毎日愛里が作ります!」


    その瞳は、健気で、純粋だった。


    まだ恋に恋をしていそうな純粋な少女の眼。

    (携帯)
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■20476 / inTopicNo.17)  14
□投稿者/ 壱也 一般♪(16回)-(2008/01/20(Sun) 18:54:40)


    「チカ〜!またコンビニ弁当??」


    『あ?作れないから買うしかないでしょ?』


    「体壊すよぉ〜一人暮らしなんだからさぁ」


    朱美は心配そうに口を尖らせて言うと、何かを閃いた様に、目を輝かせていた。


    「じゃあ!明日からチカの分も作って来る!誰かにお弁当作って持っていくの夢だったんだぁ〜」


    べ、弁当!?


    あ、愛妻弁当って奴ですかい←違う


    『あ、ありがとう。じゃあ宜しくです』


    「はぁい!」


    朱美はメモ用紙を机から取り出し、いくつかの質問をした。


    「じゃあ明日のメニュー考えながら帰ろうっと」


    キラキラした瞳で、いつもの分かれ道で私は別れた。

    (携帯)
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■20477 / inTopicNo.18)  15
□投稿者/ 壱也 一般♪(17回)-(2008/01/20(Sun) 18:56:01)


    「チカさんは何か嫌いな物ありますかぁ〜?」


    愛里は、メモ用紙を取り出し、オムライスを食べ終わった私に質問してきた。


    『え゛ぇ!?』


    戸惑う私に不思議そうな眼差しを送り、どうしました?と心配された。


    あぁ、何でこんなにリンクするんだろうか。


    『特にないよ』


    本当はあるけれど、もし朱美と中身まで似ているならあの方法で私を困らせてくるにちがいない。


    「本当ですかぁ〜?奈々はチカさんが食わず嫌いさんだから、聞くよーにって言ってましたよ?」


    くそー奈々め。
    いちいち報告しやがって。

    『…ピーマン食べれない』

    「ぷっっあははは」


    『…何だよ?』


    「あは、いえ可愛い人だなって思って」


    『…馬鹿にしてるだろう?』


    「そんなことはないです♪夕飯のメニュー考えるのが楽しくなりました♪」


    そして…私の予感は的中するのである。

    (携帯)
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■20478 / inTopicNo.19)  16
□投稿者/ 壱也 一般♪(18回)-(2008/01/20(Sun) 18:57:23)

    『愛里…一体これは?』


    「はい♪ピーマンの肉詰めですよ?ピーマン嫌いはこれで解消出来ます!」


    はぁ…まったく。
    愛里といい朱美といい何も分かってない。


    『あのねぇ…ピーマンを全面的に剥き出しにしちゃったら何も意味ないの!肉の中にピーマンを詰めるならまだ解るんだがな?』


    「あは!ですよね!でも食べて見て下さい!」


    私は心底嫌な顔をした。


    ピーマンは人生において最大の敵だからだ!


    「…しょうがないですねぇ〜♪はい、あーんvV」


    朱美の瞳と愛里の瞳が重なり、そしてピーマンの肉詰めは私の口にほおりこまれた。


    高三のあの時、まったく同じ方法で朱美はピーマンの肉詰めを口に入れて来た。

    あのピーマンの苦みと、朱美の甘い行為は、今も忘れていなかった。


    「ちゃーんと食べてくれたら、デザートは手作りプリンを出しますね?」


    愛里は嬉しそうに、肉詰めを食べていた。


    毎日外食ばかりしていた私には何故か新鮮で、最初こそは、嫌悪感でいっぱいだったが、私の事を考えてくれている愛里に対して、少しは優しくしようと思い始めた初日だった。

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■20480 / inTopicNo.20)  17
□投稿者/ 壱也 一般♪(19回)-(2008/01/21(Mon) 17:26:35)


    翌日、目覚めると、昨日隣に寝ていたはずの愛里が既におらず、布団の温かみは消えていた。


    リビングの戸を開くと、愛里は丁度、コーヒーポットを手にしていた。


    「おはようございます」


    『おはよう、早いな』


    時刻はまだ6時を回り、朝から物騒なニュースが流れていた。


    「いえ、チカさんのお世話を任せられたので当然です。さ、トーストとコーヒーが出来ましたよ?」


    テーブルには喫茶店に出てきそうなモーニングセット風な朝食が並べられており、朝からお金持ちのお嬢様になった気分だった。


    『愛里、今日は私は仕事があるから、昼ご飯はいらないよ』


    「えっ?それだったらお弁当を作ったのに!何で昨日言わなかったんですか?」

    『あ…すまない。』


    何故か私は年下の小娘に説教されて、頭が上がらなかった。


    私らしくない。
    愛里は私を狂わせていく。

    「じゃあ、昼間は掃除と洗濯しときますね?天気もいいですし♪」


    『…お願いします』


    私はトーストを食べ終わると、そそくさと支度して家を出た。


    愛里の寂しそうな目を後にして。

    (携帯)
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