| 彼との待ち合わせ場所へ向かう途中、偶然にも咲希を見かけた。
お友達なのか知り合いなのか、間柄はわからないけど、数人でお店から出てくるところだった。 外国人の女性も2人混ざっていて、みんな咲希よりは年上に見えた。
楽しそうな雰囲気で、中でも外国人の女性は咲希にベッタリくっついている。 外国流のスキンシップ?? 咲希はいつも通りクールな顔で接している。
日曜日で賑わう通りの人込みに紛れて、咲希がこちらに気付くことはなかった。
無意識のうちに、気付かれなかったことにホッとしている自分がいた。 別に彼と会うことを知られたくない訳でもないのに。
彼は待ち合わせ場所に車を止めて待っていた。 自然と私は彼の車に乗り込んだ。
久々に会う彼は、いつも通り優しくて穏やかだった。 近くのお店で遅めのランチをして、しばらくドライブをした。 彼は、色々と近況報告のように最近のことを話してくれていた。
だけど、私はどこか上の空だった。 咲希とベッタリくっついていた女性の光景が頭から消えなかった。
突然、彼が人気のない場所へ車を止めた。
「りこさ、さっきから上の空だけど、何かあった?」
「えっ?ううん・・・何もないよ」
「元気ないしさ・・・」
「あっ、えっと、ちょっと最近体調が良くなかったからかな?? ・・・ごめんね」
「そっか。まだ調子よくないなら、今日は早めに送るよ」
「・・・うん。ごめんね」
「あのさ・・・そろそろ返事、聞かせてもらえない?」
「・・・・」
「まだ時間かかりそう?」
「・・・ごめんなさい。正直、はっきり決められないの。今の学校で教師を続けたいし、離れた地へ行くことにも不安っていうか・・・」
苦しい言い訳に言葉に詰まってしまった。
「・・・・他に好きな奴でも出来た?(笑)」
冗談ぽくそう言った彼は、優しく微笑みながらも、切ない顔をしていた。
はっきり決断出来ない自分が腹立たしかった。
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