ビアンエッセイ♪

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■22308 / inTopicNo.21)  すこしづつ…U-40
  
□投稿者/ 桃子 一般♪(23回)-(2018/07/20(Fri) 14:22:36)
    「どう?」

    「美味しい♪」

    「でしょ?」

    「うん…ありがとう…」

    「お礼なら 私じゃなく 恭子さんに…」

    「えっ?」

    「昨夜 あの後 電話くれて とにかく国木田さんを呼び出してって!
     もし渋ったら『美味しいコーヒー飲む機会を一生逃しますよ』って脅せって(笑) ねっ?」

    「一生なんて言ってません…それに 脅せだなんて…」

    「でも そんな迫力感じたけど?」

    「まぁ…気持ちは…それに近いものが…」

    「でしょ?(笑)」

    Madamとのやりとりを聞いていた国木田さんが

    「そうだったの…本当に ありがとう…」

    コウちゃんが 国木田さんの顔を見て言った。

    「自分は ここで元気にしてます。これからも ここで元気にやっていきます。
     また こっちに来ることがあったら 顔を出してください。
     その時には 練習台ではなく ちゃんと お代を頂けるようになってますから…」
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■22307 / inTopicNo.22)  すこしづつ…U-39
□投稿者/ 桃子 一般♪(22回)-(2018/07/20(Fri) 14:19:35)
    昨夜 帰ってから Madamに電話をしたのは 私だ。

    「国木田さんが 明日もこっちに滞在しているなら 夕方5時頃 駅裏に来てもらうようお伝えください!
     もし 迷ったら「美味しいコーヒー飲む機会 逃したくないでしょ」って(笑)」

    Madamは

    「それって…」

    「はい コウちゃんに コーヒー淹れさせます(笑)
     今度…なんて言ってたら いつになるかわからないですから…(笑) 善は急げ です」

    「恭子さん…ありがとう…由美子には 絶対来るように言うから…あとは 任せます」



    コウちゃんは スタッフの出入り口を使っている。

    お店のドアに「貸し切り」の札が出ていることには気付いていないハズだ。

    店内には Madamと国木田さんが居るだけだった。

    いつもと違う店内の雰囲気に 怪訝な顔をするコウちゃん…

    奥のテーブルに座っていた国木田さんが 振り向いた。

    一瞬の間のあと

    「なんでここに…」

    つぶやいたコウちゃんに Madamが言った。

    「詳しい話は あとでちゃんとするから…こちらにコーヒーひとつお願い」

    「あっ はい…っていうか…マスターは?」

    「居ない…オーダーは ヒロのコーヒーだから…」

    「えっ? 自分 まだ お客様にお出ししたことは…」

    「大丈夫! 私の古い友人だから(笑) お代は頂かないけど その代わり 練習台になって って言ってある」

    「そうですか…で 何を?」

    「『駅裏オリジナル』をお願いします」

    国木田さんが 凛とした声で言った。

    「少々お待ちください」



    コウちゃんは いつも部屋で淹れてくれる時と同じように

    真剣で 優しいまなざしで コーヒー豆と向き合った。

    コーヒーのドリップの音と絞ったBGM以外は 何も聞こえなかった。

    「お待たせしました」

    「ありがとうございます」

    国木田さんの言葉を背中で受けながら コウちゃんは カウンターの中に戻ってきた。

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■22306 / inTopicNo.23)  すこしづつ…U-38
□投稿者/ 桃子 一般♪(21回)-(2018/07/20(Fri) 14:14:25)
    翌日 コウちゃんは 出かける時より 日焼けして帰ってきた。

    「泳いだの?」

    「ううん…泳ぐには まだ早くて…足だけ(笑) 日焼け止め塗ったんですけどね…」

    「なんか…ちょっとワイルドになった?(笑) 来週には あっちこっちで噂になってたりして…(笑)
     で!今日のお店…予約は7時なんだけど…その前に『駅裏』に寄ることになったから…
     コウちゃん 汗流したら すぐ出発できる?」

    「了解です」


    コウちゃんが浴室に向かったのを確認して MadamにLineを入れた。

       順調です

    返事はすぐに来た。

       こちらも 整いました


    1時間後…

    『駅裏』で 6年振りの親子対面が行われた… 
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■22305 / inTopicNo.24)  すこしづつ…U-37
□投稿者/ 桃子 一般♪(20回)-(2018/07/20(Fri) 14:09:20)
    「あの子は15歳で独立して 家を出て行ったって思えばいいかしら?」

    国木田さんが 前を向くカンジで言った。

    「ヒロは きっと いろいろ考えて 連絡を取らないって決めたんだと思うよ…
     親は死んだことにして 学校に行き始めたのも 余計な詮索を避けるためだったんだろうし…
     うちは あの子が決めたことは よほどのことが無い限り 口出しはしないって決めてるから…
     今でも ヒロの両親は 亡くなったままになってる(笑)」

    Madamが 続けてくれた。

    「今までに 口出したことあった?」

    少し元気になった国木田さんが Madamに訊いた。

    「1度だけね…」

    「訊いてもいい?」

    「お店のお客さんとお付き合いを始めたことについて いつ問いただそうかと思っていたら…
     先方のご両親に会いに行くことになったって…珍しく 自分から報告してくれたの…
     多分 あの子も 不安だったんじゃない?(笑)
     だから…親御さんには 何を言われても あなたの誠意を伝えなさいって…
     その覚悟が無いんだったら 今スグ別れちゃいなさいと言って送り出した…」

    「それでどうなった?」

    Madamが目で合図を送ってきた。

    「相手の両親は 娘に これからは 坂本君と2人で遊びに来るように…って…」

    「今の話 佐々木さんのこと?」

    「はい…両親は 宏海さんと出会えただけでも 私を育ててきて良かった…って言っています」

    「そう…あの子 そんな風に言ってもらえるんだ…」

    「はい…国木田さんが 手放してくれたおかげです」
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■22304 / inTopicNo.25)  すこしづつ…U-36
□投稿者/ 桃子 一般♪(19回)-(2018/07/20(Fri) 14:05:56)
    (あたし ケンカ売ってる?)と思った瞬間

    「恭子さん 嫌な思いさせちゃってごめんね…」

    Madamが声をかけてくれた。

    「この人 ヒロが大学卒業したら 手元に呼びたいって言いだして…」

    「えっ?」

    「でね…あの子には 生涯をかけてお付き合いしている人が居るから そっちには帰らないよって
     言っちゃったの( *´艸`)
     そしたら 今度は その人に会わせろって…(笑) とうとう根負けしちゃって…ホント ごめんね…」

    「いえ…」

    「あの子の中では 私たちのことは もう…無かったことになっているんですね」

    国木田さんは 大きなタメ息をついた。

    「あの…宏海さんは ご家族のこと 本当に 何も言っていませんが それは 恨みや憎しみからでは
     ありません」

    「どうして あなたが そんなこと言えるの?」

    「宏海さん 一度だけ言ったことがあるんです。
     こっちに来てすぐの頃 大切なことを教えてくれた人が居るって…」

    国木田さんだけでなく Madamも 私をみつめている。

    「色々な手続きが済むまで 学校に行けなかった時 毎日 昼休みに コーヒーを飲みに来るおじいさんの
     相手をするようになって…
     そのおじいさんは 宏海さんのことを『ボン』と 呼んで コーヒーを1杯 飲む間だけ 他愛ない話を
     して 仕事に戻られていたそうです。
     お店に来るようになって 1ヶ月が過ぎた頃 宏海さんに
     『おまえさんは 何もかも失くして この街に来たと思っているかも知れんが…
     ここに来たことで おまえさんは 自由に生きられるようになったんじゃないか?
     おまえさんを手放した家族・受け止めた家族…両方の家族から もらった自由を大切にしなさい』って
     おっしゃったそうです。
     そこで初めてそのおじいさんがマスターのお父さんだってことがわかって
     『道理で 自分のこと よく知ってるハズですよね』って…笑ってました…
     宏海さん 今でも おじい様の言葉を忘れていないから ご両親のこと何も言わないんだと思います…」

    そこから先は 言葉が続かなかった。
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■22303 / inTopicNo.26)  すこしづつ…U-35
□投稿者/ 桃子 一般♪(18回)-(2018/07/20(Fri) 13:56:26)
    食事をしながら 国木田さんに

    「あの子がこちらに来たいきさつは…」

    と 訊かれた。

    「聞いていますが ご家族のことは 何も…訊けば 宏海さんは 教えてくれたかもしれませんが正直…そこまでは…」

    「知る必要ない?」

    「はい…そう思っています」

    「どうして? 気にならない?」

    「どうして…と言われても…宏海さんが経験してきたことで 今も苦しんでいるなら 話を聞いたり 自分に出来ることを考えるかもしれませんが…実際は…私が知る限り そうではありません。
     Madamやマスター・ミィさん・カイさんと いい関係を築いています。
     大学生活も 充実していますし…宏海さんが消化してきたことを ほじくり返すことは無いと…」

    「でも…好きな人のことは 全て知りたいって思わない?

     ヒロも…全部話したいと思っているかもしれないのにあなたがそんな態度だから 話したくても 話せないで居る とは思わない?」

    「宏海さんのことは どんなことでも知りたいです」

    「だったら…」

    「でも…それは こちらから 問いかけることでしょうか?
     私は…宏海さんが 自分のタイミングで 話してくれたらいい と思っています」

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■22302 / inTopicNo.27)  すこしづつ…U-34
□投稿者/ 桃子 一般♪(17回)-(2018/07/20(Fri) 13:51:02)
    Madamのお宅には 7時丁度に着いた。

    リビングには 先客と思われる女性が居た。

    (うわっ 何事?)

    内心の焦りを隠しながら

    「遅くなりました」

    「ううん…急に呼び出してごめんね… 恭子さん…こちら…」

    「国木田と言います」

    「ヒロの母親」

    Madamが あまりにもアッサリと言ったので 聞き間違えたかと思った。

    (えっ?)

    すぐには言葉が出なかった。

    「ヒロが お世話になっています。 佐々木さんのことは りっちゃんから よく聞いています」

    (Madam りっちゃんって言うんだ…)


    「佐々木です。ご挨拶もせぬまま…」

    すっとこどっこいになってしまった…

    「驚いた?」

    Madamが いたずらっぽく笑いながら言った。

    「はい…初めて こちらにお邪魔した時よりも 驚いています…」

    「恭子さん 今 声 出なかったよね(笑)」

    「思考が停止するって ホントにあるんだなぁって…」

    「フフフ ごめんね(^^♪」

    「今日 私がご一緒すること りっちゃんからは…?」

    「ごめん 言わなかったんだ…」

    Madamが答えてくれた。

    「そうだったの?…びっくりさせて ごめんなさいね…」

    「いえ…」

    「とりあえず 食事にしよう!」

    Madamが言った。
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■22301 / inTopicNo.28)  すこしづつ…U-33
□投稿者/ 桃子 一般♪(16回)-(2018/07/20(Fri) 13:46:24)
    「来週の木曜日から ゼミ合宿です」

    コウちゃんが そう言ったのは 梅雨が明けてすぐのことだった。

    「土曜日の午後に帰って来ます」

    「今年はどこに行くの?」

    「日本海のどっかだそうです(笑) 」

    「楽しそうだね(笑)」

    「毎年恒例 合宿という名の飲み会ですから(>_<) 」

    「学生の特権でしょ(^^♪ 」

    「ですね…帰ったら デートしましょ(笑) お店決めといてください(^^♪」

    「わかった!」



    金曜日の朝 Madamから電話がかかってきた。

    「急な話なんだけど…今夜 家に来れない?」

    コウちゃんが居ないことは Madamも知っている。

    「はい 大丈夫です」

    「よかった〜(^^♪ じゃ 今夜7時にね」



    「坂本クン帰るのって明日だよね? 今日 時間ある?」

    職場で お弁当を食べながらミカに訊かれた。

    「ごめん…今日はちょっと…」

    「合コン?(笑)」

    「まさか! それだったら ミカも一緒でしょ(笑)」

    「そりゃそうだ(^^♪ で ホントは何?」

    「Madamと…」

    「呼び出し?」

    「う〜ん…そうなるのかなぁ…仕事終わったら Madamんチに行くことになった…」

    「なんだろうね? 別れ話?…坂本クン 自分では言えないからって…Madam経由にしたとか?(笑)」

    「そんな情けない人じゃないよ…っていうか…ウチ ラブラブなんですけど?(笑)」

    「うん それは 言われなくても知ってる( *´艸`)」

    「まっ ここでアレコレ考えても仕方ないよね…(^^♪ さっ 仕事 仕事!」
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■22300 / inTopicNo.29)  すこしづつ…U-32
□投稿者/ 桃子 一般♪(15回)-(2018/07/20(Fri) 12:54:12)
    髪を撫でるコウちゃんの手が止まった。

    コウちゃんの顔を見た。

    「恭子さん…」

    「なに?」

    「キスしましょうか?(笑)」

    「わざわざ訊く?(笑)」

    「そこは 一応…(笑) 『今日は そんな気分じゃない!』 だったら 申し訳ないんで…(笑)」

    「バカ…そんな日 あるわけないじゃない! いつも…待ってるんだから…さっきの琵琶湖でだって…」

    「あそこは めっちゃガマンしました(笑)」

    「えっ? なんで?」

    「恭子さん…イライラしてたでしょ(笑)」

    確かに…コウちゃんへの和美や聡美の質問攻めには 腹を立てたが…顔には出ていなかったハズだ…

    「気が付いてたの?」

    「うん…うまく言えないんですけどね…あそこでキスしちゃうと なんか 誤魔化すカンジがして…イライラは ちゃんと解消しないと…(笑)」

    波の音を聞いている内に 気持ちが落ち着いてきたことを思い出した。

    だから コウちゃんは 余計なことは言わなかったんだ…

    この子は 本当に年下なのだろうか…時々 分からなくなる(笑)

    「でも…そろそろ限界です…」

    限界は 私も同じだ。

    黙って コウちゃんに被さって唇を重ねた。

    コウちゃんの舌が 私を誘った。

    そこから先は お互い ノンストップだった…

    心も体も充実した夜だった。
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■22299 / inTopicNo.30)  すこしづつ…U-31
□投稿者/ 桃子 一般♪(14回)-(2018/07/20(Fri) 12:50:13)
    部屋に戻ったのは 日付が変わる頃だった。

    「お風呂…シャワーでいい?」

    「はい」


    寝室に入ったら…コウちゃんは 寝息を立てていた。

    ベッドに腰かけて 寝顔に向かって

    「バカ…」

    「誰がバカですか?(笑)」

    「起きてたの?」

    「起きてますよ〜(笑)」

    コウちゃんは 腕を伸ばして 私を自分の方に引き寄せた。

    力を抜いていた私は そのままコウちゃんの胸に倒れこんでしまった。

    「この場合 押し倒されたのは どっちになるんですかねぇ…」

    「バカ…」

    コウちゃんは 黙って 私の髪を撫でている。

    コウちゃんの心臓の音を聞きながら

    「ねぇ…コウちゃんって 私の過去の恋愛 気にしたことある?」と 訊いてみた。

    「何をいまさら…(笑)」

    「だって…一度も訊かれたことないし…」

    「訊かないのは 気にしてないからです。年齢差を考えると…恋愛の ひとつやふたつ みっつやよっつはあったと思います。
    そういうのがあって 今 こうして一緒にいられるんだから…
     恭子さんの中で “いい思い出” になってたら それでいいんです。
     あっ でも…今も続いている人がいる ってことなら 話し合わなくちゃいけませんね(笑)」

    「バカ…そんな人いるわけないじゃないっ! それに…みっつもよっつも無いから!」

    「だったら…問題ナシです(笑)」

    「うん…それと…今日 嬉しかった…」

    「えっ?」

    「啓子に『お任せください』って言い切ってくれた時…」

    「ちょっとカッコつけちゃいました(笑) でも…マンションの件は…カッコ悪かったですね(^^;」

    「ううん そんなことないっ! 惚れ直しちゃった(笑)」

    「あとで「こんなハズじゃなかった」になったりして…(笑)」

    「フフフ…そうなったらどする?」

    「ふたりで どうしたいかを考えましょ(笑)」

    「うん…」
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■22298 / inTopicNo.31)  すこしづつ…U-30
□投稿者/ 桃子 一般♪(13回)-(2018/07/20(Fri) 12:45:32)
    「ここにはよく来るの?」

    「最近は 全然ですけど… モヤモヤしてた頃はよく来てました(笑)」

    「モヤモヤって?…」

    「『佐々木さんが好きだ〜』って…(笑)」

    「大声で叫んでた?(笑)」

    「まさか…(笑) 心の中で です(^^♪」

    「…直接ぶつけてくれたらよかったのに…」

    「ぶつけるだけじゃ済まなくて 押し倒してたかもしれません(笑)」

    「押し倒されたかったなぁ(笑)」

    「すみません…自分 チキンなんで…」

    「バカ…ホントのチキンは 友だちの呼び出しになんか応じないよ(笑) 」

    「それだけ みんな 恭子さんが大好きで 大切に思ってる ってことじゃないですか」

    「そうかなぁ…」

    「だと思います」

    コウちゃんに言われると 本当にそうなのかも…と思えてくるから不思議だ。

    湖岸に寄せる波の音を聞いている内に 気持ちが落ち着いてきた。
     
    「そろそろ帰ります?」

    「うん」


    コウちゃんは 運転の時 いつも以上に無口になる。

    赤信号で止まった時 左の太腿に そっと手を置いてみた。

    コウちゃんは 何も言わず 自分の左手を重ねてくれた。

    信号が青に変わった。

    「夜道は スピード出すから(笑)」

    「うん」

    コウちゃんは 左手をハンドルに戻した。

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■22297 / inTopicNo.32)  すこしづつ…U-29
□投稿者/ 桃子 一般♪(12回)-(2018/07/20(Fri) 12:41:46)
    「着きました!」

    「琵琶湖?」

    「はい(^^♪ 降りますか? それとも このまま?(笑)」

    「降りる!(笑)」

    車から降りて 2人で遊覧船乗り場の桟橋に立った。

    「ホントは 海に行こう思ったんですが さすがに…で 近場にしました(笑)
      今日は 水の音の方がいいと思って…」

    「うん…」

    寄せる波の音の他は 何も聞こえない。

    時々 対岸の道路を行き交う車のヘッドライトが見える。

    コウちゃんが 私の体を抱き寄せる。

    「コウちゃん ごめんね」

    「何が?」

    「急に呼び出して…あんなに 根掘り葉掘りになるなんて…知ってたら 電話なんかしなかったのに…」

    「大丈夫ですよ(笑) 少しだけ 覚悟して行きましたもん(笑)
     『あんたなんか 恭子の相手として認めない』って言われなくてよかったです(笑) 」

    「私が選んだ人に そんなこと言わせるわけないじゃない…」

    「恭子さん 長女だもんね(笑)」

    「そうよ(笑)」

    「自分のことは後回しにする…(笑)」

    「そうそう(笑) でも コウちゃんには 押しの一手で突き進んでる(笑)」

    「なんで?」

    「だって…待ってたら いつまで経っても 何も起こらないでしょ(笑)」

    コウちゃんは 声をあげて笑った。

    「お友達は こんな強気の恭子さん しらないんだろうなぁ(笑)」

    「多分…けど…もしかしたら 啓子は 気付いているかも…」

    「そっか…啓子さんに 謝っといてください。せっかくのお食事会に しゃしゃり出てしまって…」

    「気にしないで! 彼女も コウちゃんを呼び出すことに乗り気だったんだから…(笑)」

    「だったらいいんですけど…」

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■22296 / inTopicNo.33)  すこしづつ…U-28
□投稿者/ 桃子 一般♪(11回)-(2018/07/20(Fri) 12:37:26)
    「駐車場…満車だったので ちょっと歩きます」

    「うん」

    2人とも無言だった。

    駐車場から出て マンションに向かった。

    まっすぐ部屋に帰る気になれなかった。

    「コウちゃん…」

    「ん?」

    「寄り道したい」

    「何処へ?」

    「何処でもいい」

    「ホントに何処でもいいですか?(笑)」

    「うん」

    明日は 休みだ。急いで帰る必要は無い。

    「了解しました(^^♪」


    走ること30分

    コウちゃんが 車を止めた。
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■22295 / inTopicNo.34)  すこしづつ…U-27
□投稿者/ 桃子 一般♪(10回)-(2018/07/20(Fri) 12:34:57)
    「納得した? それとも まだ 何か不満ある?」

    私のひとことに 啓子が 真剣な声で コウちゃんに言った。

    「ひとつだけいいですか?」

    空気が 締まり 一瞬 緊張が走った。

    「はい」

    コウちゃんは 変わらない。

    「失礼ですが 坂本さん…」

    言い淀んだ啓子の言葉の続きを コウちゃんが拾った。

    「お察しの通り 男性ではありません」

    「えっ?」

    聡美と和美が 同時に小さく呟いた。啓子は 顔色を変えることなく

    「そのこと 恭子のご両親は?」

    「ご挨拶させて頂いた時は 驚かれましたけど 今は 可愛がってもらっています」

    「坂本さんのご両親は 恭子のこと…」

    「ウチは 両親も姉も兄も 恭子さんへの信頼度 半端ないです(^^♪」

    コウちゃんの言葉に 啓子は 安堵したように頷いた。

    「恭子 昔から 誠実な人が理想だ って…言ってたけど 坂本さん その通りの人じゃん!
     おまけに 超カッコ良いいし…(^^♪」

    「うん」

    「坂本さん! 恭子は 私たち4人の中では いちばん落ち着いていて 長女的な存在なんです(^^♪
     その分 自分のコトは 後回しにすることが多くて…これからも 恭子のこと よろしくお願いします」

    「はい お任せください」

    コウちゃんは 穏やかに 力強く言い切ってくれた。

    和美も聡美も 微笑んでいた。

    3人とは ホテルのロビーで別れた。

    車で送ると言うコウちゃんに 啓子が タクシー呼ぶから…と断ったので 私たちは 先にホテルを出た。
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■22294 / inTopicNo.35)  すこしづつ…U-26
□投稿者/ 桃子 一般♪(9回)-(2018/07/20(Fri) 12:28:26)
    「一緒に暮らしているというのは 本当ですか?」

    聡美の質問に

    「はい 本当です」

    「どうして?」

    コウちゃんの答えを待たずに聡美が続けた。

    「…社会人と学生さんとじゃ どうしても 恭子に負担がかかるでしょ?
     それくらいのこと 考えたら スグわかるのに どうして 一緒に住むという発想が出来るんですか?

    「恭子さんに 生活の面倒を見てもらって平気なのか?ってことですか?」

    「ええ まぁ…」

    「ちょっと! 何てこと言うの!」

    思わず 語気が荒くなった。

    コウちゃんは 穏やかに そしてサラリと

    「話を切り出したのは 自分です。
     恭子さんと一緒に居たい という気持ちを ストレートに言葉にしました。
     それに… ウチの場合 家賃がかかりませんから(^^♪」と 言い切った。

    3人の目が 私を見た。

    「マンションのオーナーなの」

    私のひとことに さすがの啓子も 言葉を失った。

    そこから続いた和美と聡美の身辺調査のような遠慮の無い質問に コウちゃんは ひとつひとつ丁寧に答てくれた。

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■22293 / inTopicNo.36)  すこしづつ…U-25
□投稿者/ 桃子 一般♪(8回)-(2018/07/20(Fri) 12:23:15)
    和美と聡美は コウちゃんを見つめたまま 何も言わない。

    コウちゃんは ミネラルウォーターをオーダーした。

    和美と聡美は まだ 黙っている。

    「恭子とは何処で?」

    啓子が会話を仕切り始めた。

    「図書館で 声をかけられたのが最初です(^^♪」

    「えっ 恭子から?」

    和美が 声を出した。

    コウちゃんは 和美の方に向かって

    「はい」

    「恭子って そんなタイプだった?」

    つられて 聡美が言った。

    「そんなタイプって どんなタイプよ?」

    悪態をついたら

    「自分から声をかけるなんて…ちょっと 想像がつかないというか…」

    「3年も片思いしてた人が お隣さんになって 図書館に1人でいたら 声かけるでしょ」

    「いやいやいや‥職場はどうかと思うよ(笑)」

    和美が反論した。

    「だって…ホントに好きだっただもん…」

    コウちゃんが 間に入ってくれた。

    「そんなこんなで お付き合いさせて頂いています(^^♪
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■22292 / inTopicNo.37)   すこしづつ…U-24
□投稿者/ 桃子 一般♪(7回)-(2018/07/20(Fri) 12:17:36)
    2次会は 啓子のリクエストで 駅前のホテルの最上階のバーに決まった。

    「ここから見る夜景が好きなの」

    「プロポーズもここ?」

    「ううん…プロポーズは…駅のホーム(笑)」

    「加藤君らしいね」

    席に着いて 10分程経った頃 入り口に コウちゃんの姿が見えた。

    係の人と 一言二言 話したあと まっすぐに 私たちのテーブルにきてくれた。

    「初めまして 坂本と申します。遅くなって申し訳ありません」

    「橋口と言います。今日は ありがとうございます。どうぞ お座りください」

    啓子が挨拶してくれた。

    「ありがとうございます。失礼します」

    6人掛けのボックス席に 3:1で座っていた私の隣に コウちゃんは座った。


    和美と聡美は コウちゃんを見つめたまま 何も言わない。

    コウちゃんは ミネラルウォーターをオーダーした。

引用返信/返信 削除キー/
■22291 / inTopicNo.38)   すこしづつ…U−23
□投稿者/ 桃子 一般♪(6回)-(2018/07/20(Fri) 12:13:02)
    「6歳下?」

    「うん」

    和美が言った。

    「ねっ 会えない?」

    「えっ?」

    「ヒロ君に…」
    間髪入れずに 聡美が言った。

    「会いたい!」

    啓子は 当然 と言う顔で 微笑んでいる。

    逃げられなかった。

    下手な言い訳はしたくなかった。

    「電話してみる」

    スマホを持って ロビーに出た。

    聡美もついて来た。

    コール2回で コウちゃんが出た。

    「もしもし? どうしました? 今日 お食事会でしょ?」

    「うん…そのお食事会で…ヒロ君のこと話したら みんなが 会いたいって…」

    「アハハハ」

    「無理だよね?」

    「うん…だって…こっちも今から 夕食ですもん(笑)
     食事の後の2次会になら合流することは出来ますけど?(笑)」

    聡美に

    「2次会になら 顔出せるって…」

    聡美は 笑顔で 頷いた。

    「じゃあ 場所が決まったら 連絡するね」

    「了解!」
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■22290 / inTopicNo.39)   すこしづつ…U−22
□投稿者/ 桃子 一般♪(5回)-(2018/07/18(Wed) 15:18:08)
    一緒に暮らすようになって1年以上が過ぎた。

    コウちゃんは 大学3年生…穏やかな時間が流れていた。

    ミカに言わせると

    「ケンカしないカップルなんてあり得ない!」そうだが…

    実際 私達は 殆どケンカをしたことがない。

    それは 私が 大人だから…なのではなく コウちゃんが 私を受け止めていてくれるからだと思う。

    もちろん コウちゃんだって スーパーマンではないから(笑) 時々は 意見の食い違いだって生じる。

    そういう時は お互い 納得するまで 話すことにしている。

    言葉に出すことで ストレスが溜まらないのかもしれない。


    GWを迎える頃 大学の友人 啓子の結婚式前に 友人たちと会うことになった。

    久し振りに 啓子・和美・聡美・私の4人が揃った。

    和美と聡美は すでに家庭を持っている。

    話題は 当然『結婚』になる。

    「恭子は どうなの?」

    「なにが?」

    「なにがって 結婚…」

    「ああ(笑)」

    「ああって…恭子は 昔から 浮いた話がないけど…今も?」

    「今は ちょっと変わったかな?」

    「彼氏出来た?」
    「というか 一緒に暮らしてる人が居る…」

    「え〜〜〜っ?」

    3人が 声を揃えて驚いた。

    「そんなに驚く?」

    「だって…今まで そんな話 聞いたことないもん!」

    「ねっ どんな人?」

    「どんなって…今日は 私じゃなくて 啓子が主役でしょ!」

    「いやいや 私も聞きたい…私は ホラ ずっと 変わらずのあの人だもん(笑) それより 恭子の相手は?」

    啓子・和美・聡美の目が 私に集中した…

    「さっきから訊こうと思ってたんだけど…その右手のリングは…」

    「うん…一昨年 付き合い初めて最初のクリスマスにもらった…」

    「そういうこと?」

    「うん…左は もうちょっと先になるかな(笑)」

    「それでいいの?」

    「うん(笑)」

    「具体的な話は 無いの?」

    「無い」

    「なんで? 一緒に暮らしてるんでしょ?」

    「だって…ヒロ君 学生だもん…今 大学3年生」

    人は 本当に驚くと 目がまん丸になることを思い出した。
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■22289 / inTopicNo.40)   すこしづつ…U-21
□投稿者/ 桃子 一般♪(4回)-(2018/07/18(Wed) 15:14:38)
    目が覚めたのは 目覚ましが鳴る直前だった…隣のコウちゃんは まだ夢の中…

    軽く唇に触れてから ベッドから出た。

    朝食の準備をしながら お弁当も作ることにした。

    (コウちゃん 嫌がるかな…ダメだったら 今日のお昼にすればいいやっ)

    「おはようございますっ…」コウちゃんが起きてきた。

    「おはよう! 朝…パンにしたけど よかった?」

    「はい(^^♪ 美味しそうな オムレツっすねぇ(^^♪ コーヒー淹れますね」

    「うん おねがいっ」

    2人で 朝食を摂るのは お正月以来だ。

    「今日 遅くなる?」

    「バイトのあと まっすぐ帰宅なんで(笑) 7時半くらいかなぁ…

     それより遅くなるようなら 連絡します…恭子さんは いつまで休み?」

    「今週いっぱい…」

    「了解っす」


    支度を整えたコウちゃんが カバンにお弁当を入れている。

    「それ 持っていくの?」

    「はい…って言うか…作ってくれたんですよね? 違ってました?」

    「ううん…余計なことだったかも って思ったから 嬉しい&#9836;」

    「こういうの…愛妻弁当って言うんですよね(^^♪」

    「バカ…」


    「行ってきます(^^♪」

    「行ってらっしゃい(^^♪」

    ドアノブに手をかけたコウちゃんが振り返った。

    「なに?」

    「ちょっと忘れ物っす…」

    そう言いながら 私を抱き寄せた。

    「行ってきます の ハグと…」

    コウちゃんの唇が 私の唇に触れた。

    (えっ?)

    咄嗟に言葉が出なかった私を置いて コウちゃんは 笑ってそのまま大学に向かった。

    (こういうこと出来るんだ…)は 心の声にしておこう(笑)

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