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■21774 / 1階層)  青い空の白い雲 第二話
□投稿者/ 左眼 一般♪(2回)-(2013/10/25(Fri) 14:41:55)
    第二話
     水野さんとは、メールの交換だけでなく次に会う約束までした。
     今度の木曜日、仕事で遅くなる日、厚志君と夕食を一緒に食べて欲しいと頼まれたのだ。
    「一人で、晩御飯を食べさせるのが可哀想で。私が帰るまで、相手をしてくれると助かるわ」
    「喜んで」
    「本当?晩御飯だけで、バイト代もだせないけど」
    「嬉しい、水野さんのお料理が食べられるなんて」
    「あんまり期待しないでね」
     別れ際の会話を思い出して、にんまりした。
     でも、これ以上の期待はしないでおこうと自分をいさめる事も忘れない。
     今まで、何度か悲しい思いをした。
     きれいで、優しい、素敵な年上の女性。
     お友達、と言ってもらっただけで、満足だ。大満足、のはずだ。
     約束の日、スマホのナビに、教えてもらった住所を入力して自転車に乗った。
     小さな公園の近くに、水野さんが住むマンションを見つける。
     モデルさんが住むマンション、と想像していたのとは違う、古びた外観だった。
     マンションというより、アパートに近い。
     インターホンを鳴らすと、すぐにドアが開き水野さんが、顔を出した。
    「いらっしゃい、どうぞ中に入って」
     部屋の中は清潔で整頓されている。
     カレーのいい匂いがして、テーブルの上に二人分の夕食の用意がされていた。
     水野さんは、仕事に出かける支度を済ませていた。
     完璧なメイクでモデルの顔になっているが、大きな瞳は優しいままだ。
    「カレーを作ったの。いっぱい食べてね。厚志、ご挨拶しなさい」
     母親の後ろから、厚志君がはにかんだ表情で私を見た。
    「こんにちは。水野厚志といいます。よろしくお願いします」
     早口で言うと俯いてしまう。
     母親に教えられたセリフを、棒読みしたみたいだ。
     女の子の様な可愛い顔を少し赤らめている。
    「こちらこそ、植野空です。うわのそら、じゃないよ」
     厚志君はきょとんとした顔をしているが、水野さんが楽しそうに笑う。
    「厚志にはちょっと難しいかも。でも本当に助かるわ。あまり遅くなるようなら、先に帰ってくれてもいいからね」
    「大丈夫です。お仕事がんばってください」
    「ありがとう。行ってきます」
     水野さんが出かけて、厚志君と二人だけになる。
     二人で、おしゃべりしながらカレーを食べ始めた。
     すぐに、厚志君が繊細で優しい男の子だと分かった。
     母親似の顔立ちで、大きな瞳が印象的だ。
    「お姉ちゃん、柔道強い?」
    「強くなるため練習しているけど、柔道に興味ある?」
    「うん。教えてくれる?」
    「お安い御用。弟子にしてあげてもいいわ」
     少し意外な気がした。線の細い大人しい男の子だ。
     格闘技に興味を持つタイプではない。
    「誰か、投げ飛ばしたい相手がいるの?」
     冗談めかして訊いてみたら、俯いてしまった。
    「いいわ。男の子だからね。いろいろあるよね」
    「うん」
     顔を上げて大きな瞳でわたしの細い目を見つめる。
    「よし、ご飯食べたらさっそく、練習しようか」
    「はい」
     大学の道場まで、自転車で行ける距離だ。
     カレーを食べた後、厚志君を自転車の後部座席に乗せ、道場に向かった。
     自転車の二人乗りは、初めてという厚志君は嬉しそうに私の腰にしがみついてきた。
     背中が温かく、自分も嬉しくなってきた。

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