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■1444 / inTopicNo.41)  メイド主人 ‐23‐
  
□投稿者/ 乱 軍団(131回)-(2005/01/19(Wed) 18:12:37)
    足下に、ローター、バイブ、縄が撒き散らしてある部屋で
    服を一枚一枚、ゆっくりと脱ぎ捨てている亜希子。
    タイトスカートとストッキング、そしてTバックのパンティーを脱ぐ時は
    腰をくねらせ、目を閉じ、舌なめずりをするその顔を、背後にいる人物に向けている。
    この部屋に着く直前まで、夏海を弄り、興奮していたのだろう。
    パンティーは夥しい量の蜜を含んでいるらしく、太い糸を引きながら下ろされていった。
    全て脱ぎ終えた亜希子は、背後に立つ人物に歩み寄り
    「さぁ。早く攻めてちょうだい。ここが疼いて疼いて気がおかしくなりそうなんだから。」
    左手の人差し指を口に咥え、右手の中指を淫列にあて、腰を振りながら言う。
    言われた人物は、床にある縄を掴むと、亜希子の腕を後ろ手に縛った。
    「また、そうやって縛るんだね。少しくらい触らせてくれたってイイじゃない。サツキ。」


    亜希子に縄を巻きつけているのはサツキだった。

    マユがスヤスヤと寝息を立てた頃、亜希子が戻って来た。
    それを出迎えると、亜希子はサツキに、そのまま自分に寝室に来るよう命じた。
    2年前、亜希子と交わした契約の1つ。
    亜希子を縛り攻めるために。

    引越しを終えたあの晩、その契約は直ぐに履行された。
    ただ、その契約を交わす時、サツキからこれだけは許して欲しいと言って断った事がある。
    それは、直接、触れては攻められない事。それと
    絶対に自分の肌には触れて欲しくないという事だった。

    契約の中に、それが織り込まれていることを知った時
    サツキはこの話はなかった事にしようと思った。
    だがそれは、一目で落ちてしまったマユとの繋がりも絶たれる事になる。
    短時間ではあったが、考え、悩んだ挙げ句、出した結論だった。
    愛していない人を触れる事は出来ないし、触れられる事も出来ないと。
    契約当初、サツキに対して何の感情も無く、
    ただ自分の欲望が満たされればそれで良かった亜希子はそれを受け入れた。
    しかし、時が経ち、サツキに攻められる内に
    亜希子はサツキへ只ならぬ感情を抱くようになっていた。
    そう。亜希子はサツキを愛してしまっていたのだ。
    攻められる度に、サツキに触れて欲しいと、触れさせてくれと執拗に願うようになっていた。
    最初に手を後ろ手に縛るのは、拘束された体を攻めたいからでも、そのまま狂わせたいからでもない。
    隙があるとサツキに触れようとする亜希子を封じるためなのだ。

    サツキは無言で縄を操った。
    亜希子が潮を吹きながら満足すれば、その日の仕事は終る。
    一刻も早く、この仕事を終えたいサツキは亜希子を容赦なく縛り上げる。
    胸を挟むように縛ると、ローターのぶら下ったボディクリップを乳首に挟み振動を最強にする。
    「あぅ…サツキはせっかちだね。もっとゆっくり攻めてくれればいいのに。」
    腰に縄を巻くと、亜希子は足を開き出した。
    サツキが淫列を広げること無く股縄を通すと知っているから。
    これから這う股縄をギチギチに食い込ませて欲しくて自ら足を開くのだ。
    後ろに回り、腰に巻かれた縄の背中側に通し容赦なく引き上げる。
    腰に巻かれた縄が、見事なV字型を作る。
    「あぁぁ…サツキ…イイよ…堪んないわぁ…」
    亜希子はクリトリスが擦れる感触を味わいながら歩き
    椅子に腰を掛けると、肘掛に足を掛け大きく開いた。
    「さぁ…サツキ…早く弄って…」
    サツキはロングタイプのローターを持った。
    出来るだけ遠くから攻めたいから。
    振動を最強にして、縄の下で膨らむクリトリスを目指し強く押し当てる。
    「あぅ…あっあぁぅ…イイよ…サツキ…」
    獣のような鳴き声を上げる亜希子。
    「お口が…あぁ…ヒクヒクしちゃうわ…」
    サツキはただ強く押し当てていた。
    「見て…見て…サツキ…ほらぁ…」
    ヒクつく蜜壺を見るように促すアキコ。
    「あぅ…イクわ…サツキに…攻められて…イクわよ…見て…あぁぁぁぅ…」
    蜜壺が固く口を閉し、体を1度ビクンと跳ねさせ亜希子は1度目の絶頂を迎えた。
    亜希子の蜜壺から、濃厚な白濁した液が流れ落ちてきた。
    しかし、潮は吹かなかった。
    「まだ…まだよ…こんなんじゃ…満足できないわ…」
    荒い息で言う亜希子。
    サツキは股縄の下にナイフを入れ、それを切り外した。
    「さぁ…早くやってちょうだい…」
    怪しい目つきで亜希子が言った。

    (携帯)
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■1445 / inTopicNo.42)  メイド主人 ‐24‐
□投稿者/ 乱 軍団(132回)-(2005/01/19(Wed) 18:13:27)
    露になった密壺に先端が握りこぶしほどあるバイブをあてる。
    太さは腕くらいだろうか。
    全体にゴツゴツとした突起物が隙間無く埋められていて、
    実際の太さは、それより太いかもしれない。
    その突起物は、1つ1つそれぞれにバイブレーションが働くよう内蔵されていて、
    スイッチを入れれば、様々な振動が送られるようになっている。
    金持ちの、淫乱女が特注で作らせた物だ。
    「あぁ。それを使うのね…1週間ぶりだから入るかしら…」
    うっとりとしながら亜希子が言う。
    先端を挿れると、蜜壺の入口がそれにあわせどんどんと広がって行く。
    一番太くなっている所まで挿れると、入口はピーンと張り詰めた。
    そして
    ヌプッ…
    先端の拳が飲み込まれた。
    「あぁう…サツキ…やっぱりこれはイイはね…堪んないわ…」
    サツキはそれをぐっと奥まで挿し込んだ。
    「あぁぁあん…お口の中が…一杯よ…」
    そしてスイッチを入れ、くねらせる。
    「はぁぁぅ…凄いわぁ…広げられるのが…分かるわよ…」
    突起物を震わせるスイッチを入れる。
    肉壁は、押し広げながら震わされる。
    「あっあぁぁん…イイわ…いいわよ…サツキ…」
    サツキはそれを上下に激しく動かした。
    「あっあぅ…いきなり…そんなにして…
    乱れるあたしが見たいのね…」
    サツキは何も言わず、激しく動か続ける。
    「あぁぁ…イイよ…サツキ…堪んないわ…」
    サツキの額には汗が滲んでいた。
    「見て…サツキ…あぁん…涎が一杯出てるでしょ…」
    亜希子の言葉に耳も傾けず、サツキはまたさっきのローターを掴むと
    クリトリスに強く押しあてた。
    「あっあぅ…あっあぅ…」
    亜希子は体を大きく震わせながら悦び、大量の蜜を吐き出し始めた。
    サツキの握るバイブの動きが鈍くなる。
    極太のバイブを咥え、普通の状態でも充分きつい蜜壺が、締まり始めたことで
    腕ほどもあるバイブを締め付け始めていたのだ。
    『もう少し…もう少し…』
    「ああぁぁ…サツキ…あぁあん…」
    絶頂を迎えそうになり、サツキを呼ぶ亜希子。
    「ほらぁ…ん…こんなに…こんなに締め付けてんのよ…」
    無言のサツキに、淫らな自分を見せつけ、感じさせたくて
    亜希子は一方的にサツキに話かける。
    「サツキがぁん…そんな…そんなに攻めるから…あぁぁん…
    こんなに…こんなによ…ん…涎が出ちゃうのよ…
    ほらぁん…見てぇ…あぁう…イイわ…イイわよ…
    ねぇ…見てるぅ?…あぁぁん…ほらぁ…ん…
    お口もぉん…あっ…クリ…もぉ…トロトロなの…」
    サツキは固く目を瞑り、ひたすらにバイブとローターを操り続けた。
    「あっあっ…イクっ…イクわよ…見てっ…見てえぇ…」
    亜希子は体を仰け反らせなが大きく跳ね、絶頂を迎えた。しかし、
    「まだ…」
    サツキが漏らした言葉に亜希子が反応する。
    「…まだ…よ。」
    潮は吹かなかった。
    「今度は…これでして…」
    亜希子は椅子から降りると、後ろ手のまま床に座り、お尻を高々と上げた。
    「さぁ。早くぅ…」
    お尻を回転させながら、サツキにねだる。
    サツキは持っていた極太のバイブをそのまま挿し込んだ。
    「あぁあん…」
    亜希子が直ぐに悦び出す。
    「バックが…一番好きよ…あっあっ…あたる…あたるわぁ…」
    サツキは夢中で動かした。一秒でも早く終らせるために。
    「あっ…もっと…上から挿れて…そう…はぁ…垂直によ…
    イイわぁ…上手よ…サツキ…んぁあぅ…もっと…もっと…
    あぁう…そう…手首を使って…そうよ…回転させるの…」
    亜希子が腰を振り出した。
    「あぁう…腰が…勝手に…いっ…あぁあ…いいわぁ…」
    なかなかイキそうにない亜希子に、サツキはまたあのローターを持ち出しクリトリスにあてた。
    「あっあう…最高よ…んぅあん…」
    どれくらいそうしていただろうか。
    やっと亜希子の体が痙攣を起こし始めた。
    「あぁ…イクわ…イクわよ…サツキ…ほら…イクっ…イクうぅ……。」
    しかし、潮は吹かなかった。
    1週間の時間が、亜希子を底なしにしていた。
    使う玩具を変え、体位を変え、亜希子が潮を吹いたのは、すかっり朝がやってきた頃だった。
    「良かったわ。サツキ。今晩もマユが寝たら私のところへいらっしゃい。いいわね?」
    「…はい。奥様。…失礼します。」
    サツキが亜希子の部屋を出ようとした時、扉が少し開いている事に気付いた。
    そして部屋の外には。

    サツキの日記帳が落ちていた。

    「マユ…」

    サツキはそれを拾い、走り出した。

    (携帯)
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■1446 / inTopicNo.43)  メイド主人 ‐25‐
□投稿者/ 乱 軍団(133回)-(2005/01/19(Wed) 18:14:09)
    マユはサツキの日記帳を手に、ふらふらと歩き出していた。
    そして、扉をゆっくりと少しだけ開ける。
    その部屋で行われている事に目を疑った。
    「サツキ…」
    片足をベッドに乗せて立つ亜希子の下で、サツキが極太のバイブで亜希子を攻めていた。
    顎をあげ、体を震わせながら腰を振る亜希子は、喘ぎながらサツキの名前を呼んでいた。
    「サツキ…好きなのよぉ…あぁあぅ…愛してるの…サツキぃ…」

    「嘘…」
    マユの手からサツキの日記帳が落ちた。
    数歩後ずさりすると、自分の部屋へと戻って行った。
    「ガチャ…」
    マユの部屋の鍵が掛けられた。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■1447 / inTopicNo.44)  メイド主人 ‐26‐
□投稿者/ 乱 軍団(134回)-(2005/01/19(Wed) 18:14:50)
    サツキは息を切りながら、マユの部屋をノックした。
    返事はなかった。
    扉を開けようとノブを握るが鍵が掛けられていた。
    自分の部屋からマユの部屋へと繋がる扉も鍵が掛けられている。
    サツキは唇を噛みながら、合鍵を取り出し
    「…入りますよ。」
    そう言って扉を開けた。
    部屋の中は、花瓶に活けてあった花が無数に散らかっていた。
    ベッドに横になるマユを見ずにサツキはその花を拾い集め
    全部集めたところでマユのベッドに向かうと
    「お嬢様?」
    サツキの手から拾い集めたばかりの花がはらはらと落ちる。
    「マユ…」
    呆然としながらマユへと近づくサツキ。
    「マユ…マユ―――」
    家の中をサツキの叫び声が響いた。

    それに気付いたノブが駆け寄る。
    「どうしたんだい!?サツキ!」
    マユを抱くサツキがいた。
    見えるマユの腕が、異様に青白い。
    「お嬢様?…お嬢様!!」
    慌てて腕を取るが、その腕に温もりはなかった。
    サツキは声を殺して泣いていた。
    体がふるふると震えている。
    「何が…」
    ノブは、この状況を理解しようと辺りを見回す。
    マユの枕元には空になった薬の瓶。
    いつもならサツキの部屋に置かれている、掃除用のバケツ。
    バケツの中の水は、おそらく花瓶に入れてあった物だろう。
    花瓶から取り出され散乱する花。
    バケツの中の真っ赤な水。
    そして…血痕の残るナイフ。
    「どうして…」
    ノブの言葉が口の中に篭る。
    落ちていたサツキの日記を拾い、捲る。
    日記には、愛していない亜希子を攻めなくてはならない自分を
    なじり、嘆き、後悔する思いが綴られていた。
    「知られてしまったんだね…」


    ノブは全てを承知していた。
    マユとサツキが愛し合っていることも。
    サツキが亜希子を攻めなくてはならないことも。
    亜希子がサツキを愛してしまっていることも。
    そして…

    「夏海っ!!!」

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■1448 / inTopicNo.45)  メイド主人 ‐27‐
□投稿者/ 乱 軍団(135回)-(2005/01/19(Wed) 18:15:36)
    サッ…

    夏海の手にするナイフがノブの手を掠める。
    夏海はヘナヘナと座り込むと頭を抱えて泣き出した。

    「…罰があたったんです。」
    サツキが話し始める。
    「初めから話しておけば、こんな事にはならなかったんです。
    でも、私には出来ませんでした。
    お嬢様と…マユと愛し合いたかったんです。
    いつかきっと、知られてしまう時が来ると思ってました。
    その日が来るまで、マユを騙し、自分を騙し続けようと思っていたんです。
    自分の欲望を叶えたいがために…マユと愛し合いたいがために…
    許される訳ないですよ…。
    もし神様が許してくれたとしても、マユは許さなかったと思います。
    これがその証拠です。
    そこまで私を愛してくれていたんです。
    それなのに…それなのに私は…」


    マユを初めて抱いた日の事が蘇る。

    「大丈夫。サツキになら何をされても平気。」

    健気に大人ぶっていたマユだったが実際に始めてみれば
    初めて体験する感触、感覚、そして、羞恥心に戸惑い「恐い」と言い始めていた。
    仕方がないだろう。初めてのことなのだから。
    ピリピリするような感触も、頭の中が白くなりそうな感覚も
    恥ずかしいと思うことも、全てが「恐い」で表現されてしまう。
    他の言葉が見付からないのだ。
    サツキはマユが恐いと言い出した時は何もせず、
    ただそっと、マユを抱きしめていた。
    本当は、それが恐いのではなく、恐いという言葉でしかで現せないのだとわかっていても
    マユが落ち着くまで、ずっと、ずっと抱きしめていた。

    「…ごめんね。サツキ。でも…もう大丈夫。」
    「無理しなくてもいいのですよ。」
    「ううん。無理してない。サツキにぎゅってしてもらったら
    何も怖がることないんだって思えてきたの。
    だから、大丈夫。サツキなら大丈夫。」

    大好きなサツキだから大丈夫。
    大好きだから、愛し合っているから大丈夫。
    大好きだから、愛し合っているから、抱き合えるんだと。
    そう思っていた。なのに…

    愛してもいない、ましてや自分の母親を淫らに狂わせるサツキ。
    日記に、どんなに愛していないと、そんな自分をなじっていても
    マユには受け入れ難い現実だったのだろうと。
    絶対の信頼をおいていた。
    だから「サツキなら大丈夫。」そう思っていたのに。

    「…それなのに…私は…」
    「サツキ…」
    ノブは言葉が見付からなかった。
    「その上、夏海さんまで傷つけてしまって…」

    夏海が亜希子を愛している事はサツキも気付いていた。
    何故愛してくれないのか。何故自分ではなくサツキなのか。
    亜希子に愛されるサツキを見て、次第に膨れる夏海の嫉妬にも。

    「だから…いいんですよ。ノブさん。もう…マユがいないのなら生きていても仕方ありませんから…」

    ノブの腕を掠めたナイフは、サツキに向けられていた。
    夏海の中でも、整理できない感情が破裂してしまっていたのだ。

    ノブはそれも承知していた。
    夏海が亜希子を愛している事も、それが儚い想いである事も。
    サツキが夏海に対して、申し訳なく思っていることも。
    全て、全てを承知していた。

    「なんだってこんなに歯車が噛み合わないんだろうね…」

    ノブが悲しそうに呟く。

    そこへまどろみから抜けた亜希子が現れる。
    「何の騒ぎ?こんなに散らかして…」
    亜希子の目にとまったのは、青白いマユではなくそれを抱くサツキだった。
    「サツキッ!どういう事なの!何でマユを抱いているのさッ!」
    「奥様!あなたの目には他に映るものはないのですか!?」
    ノブが大声を上げた。堪えていた涙が溢れる。
    「夏海…夏海っ!」
    ノブが頭を抱える夏海を呼ぶノブ。
    呼ばれてムクッと立ち上がる。
    「奥様をお連れして。」
    「あたしの話しはまだ終わってないわよ!」
    亜希子が言うが
    「奥様をお連れしないさいっ!」
    怒鳴り声をあげる。
    「母さん…」
    「早くっ!!!」
    「…はい。」
    亜希子はサツキの名前を呼びながら夏海に連れられていった。

    静かな時が流れる。
    マユを抱くサツキの顔が穏やかになっていく。
    立ち上がると、ノブを掠めたナイフを手に持ち。

    「サツキッ!!!」

    ノブの声が響いた。

    (携帯)
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■1449 / inTopicNo.46)  メイド主人 ‐28‐
□投稿者/ 乱 軍団(136回)-(2005/01/19(Wed) 18:16:20)
    ―――1ヶ月後。

    コンコン…

    来客を告げるノックの音。
    「はい…。」
    夏海が返事をして扉を開ける。
    「失礼します。」
    「あ。お久しぶりです。」
    夏海が頭を下げる。
    現れたのは、尚と雪だった。
    「この度は色々と大変だったようで…」
    夏海はただ深々と頭を下げた。
    「ご様態は、如何ですか?」
    尚が訊ねる。隣りで雪が夏海に花束を渡している。
    「…はい。一人では何も…。話すことも出来なくなってしまわれました。」
    ベッドには、どこを見ているのか、それとも何も見ていないのか
    精気を無くした亜希子が座っていた。
    「尚さんと雪さんがお見舞いに来てくださいましたよ。」
    亜希子の顔を覗きながら言うが、亜希子は何の反応も見せなかった。
    「すみません。あれ以来、ずっとこんな状態なんです。どうぞ…」
    用意されている応接用のソファーへ掛けるよう促す。
    「失礼します。」
    尚と雪は並んで腰を掛けた。
    夏海がお茶を出しながら言う。
    「仕方がありませんよね。娘さんを亡くし、仕えていた者も亡くし、家も失い
    …愛する人まで亡くされてしまったのですから…。」
    亜希子の気持ちを代弁するように言う夏海。
    「奥様は繊細な方なんです。だから、こんな状態になってしまわれるんです。
    そう考えると……私は、とても強い人間なのかもしれませんね。」
    正気でいる自分が悔しいかのように言う夏海。
    「夏海さん……」
    「…私も…母を亡くしているのに…」
    寂しそうに言い、涙を溜め、話し始めた。


    16日の朝。
    近藤家は炎に包まれていた。
    夏海が気がついた時、あたりは火の海で
    亜希子を抱きかかえるようにして逃げるのが精一杯だった。
    夏海が呆然と炎を見つめる隣りで、亜希子は子供の様に笑ってキャッキャッと笑っていた。
    全てが焼き尽くされ、後から発見されたのは、3人の亡骸だった。
    近藤の娘マユと、メイドのサツキ、そして夏海の母親、ノブ。
    マユの上に重なるように発見されたサツキの体には
    夥しい量の傷が残り、まるで、死にきれず、苦しむサツキを楽にしてあげるかのように
    介錯をされたような傷が首に出来ていた。
    その上には沢山の布団が掛けられ、2人は、奇跡的に綺麗な体だで発見された。
    ノブは、自ら灯油を被って…との事だった。

    「私達が、お嬢様の部屋を出てから、何があったのかはわかりません。
    でも、サツキさんの首の傷が、母が残したものならば…
    母は、サツキさんを見ていられなかったのではと。
    痛々しくて…。可哀相で…。
    私の事も、不憫に思っていたところがあるかもしれません。
    サツキさんを思い、私を思い…。母にとっても苦渋の選択だったと思います。
    そして母が最後に決断したのが、あの炎だったのではないかと。
    悲しい過去も、おぞましい記憶も、全て、燃え尽くされるようにと…」
    切なそうに言う夏海。
    「私が奥様に一生仕える事。それが何よりもの供養になると信じ、生きていくつもりです。」
    夏海は涙を溢れさせながらも、穏やかな笑顔を見せた。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■1450 / inTopicNo.47)  メイド主人 ‐最終章‐
□投稿者/ 乱 軍団(137回)-(2005/01/19(Wed) 18:17:38)
    「お嬢様。お嬢様…」
    「ん…サツキ?」
    「そうですよ。」
    サツキに起され目を覚ますマユ。
    「…ここは?」
    見慣れない風景。
    あたり一面に霧がかかっている。
    「さぁ。何処なんでしょう。私にも分かりません。」
    「何もないところね…。何だか寂しい…」
    「ええ。でも、お嬢様がいらっしゃいますから。」
    マユがきょとんとする。
    「お嬢様がいらっしゃいますから、私は平気です。」
    「…うん。マユもサツキがいるから平気。」
    嬉しそうに言うマユ。
    「そう言えば、さっきノブさんもいらっしゃいましたよ。」
    「ノブが?」
    「ええ。」
    「何処に?」
    「呼ばれてみては如何ですか?」
    「ノブー!」
    霧の粒子が纏まり始め、ノブの姿を作り出す。
    「…はいはい。何ですか。お嬢様?」
    「あ。ノブだ!」
    マユがノブに抱き着く。
    「今日も元気で何よりですね?お嬢様。」
    「うん♪ノブもここに来てたの?」
    「ええ。お嬢様とサツキだけでは、絨毯を取り替えるのにお困りだろうと思ってね。」
    マユは頬を赤らめ、ノブから離れると、サツキの後ろへと隠れた。
    「ノブさん。」
    「あはははは。」
    豪快に笑うノブ。
    「お嬢様。お幸せになってくださいね。
    お嬢様を不幸にする物はあたしが全部焼き尽くしてあげますから。」
    「ありがとう。ノブ。」
    「では。失礼しますよ。何かあったらお呼びくださいな。飛んできますからね。」
    そう言いながら、ノブは霧の粒子に戻っていった。
    「ねえねえ。サツキ?」
    「何ですか?」
    「欲しいものは呼んだら何でも現れるのかな?」
    「うーん。どうでしょ?呼んでみたら如何ですか?」
    「うん。…サツキの日記帳!」
    「え?」
    「あー。出た。」
    「出ましたね。」
    マユがニコニコと笑う。
    「そんなマユ、全部が大好き…だって♪」
    「お、お嬢様!人の日記を読むなんて悪趣味ですよ!」
    「だって、全部のページに書いてあるんだもん♪」
    サツキが日記帳を奪い取ると
    「日記に書いたのはそれだけじゃありませんよ?
    全部読みましょうか?
    サツキ…サツキ…いいのぉ…」
    「わわわわっ!やめてよー!もうっ!そんな事、書いてあるほうがよっぽど悪趣味だよ!」
    サツキは笑って日記帳を霧に戻し、
    「私ならこれを呼びますね。」
    そう言って
    「お道具箱!」
    と叫んだ。
    霧の粒子が、マユの為のお道具箱を形作る。
    「全部揃っていますね。」
    見せられて、マユは恥ずかしそうに俯いた。



    悲しい過去も、切ない記録も、全てが消えるこの時の中で
    沢山の愛い注ぎ、沢山の蜜を垂らし
    そして…
    幸せな記憶と、愛し合う記録だけを残し続けよう。

    もう、誰にも気兼ねすることはないのだから…。



    メイド主人 −完−

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■1455 / inTopicNo.48)  感想です〜(つд`;)
□投稿者/ 依織 一般人(2回)-(2005/01/19(Wed) 20:36:46)
    最後まで読んだら涙が止まりませんっ。・゚(ノд`)゚・。もの凄く切なくなりましたが、最後は二人(三人?)が幸せそうな感じで良かったでしたっ(つд`;)尚と雪のお話の方もお疲れ様でした。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■1456 / inTopicNo.49)  感想です
□投稿者/ りな 一般人(1回)-(2005/01/19(Wed) 21:39:39)
    はじめまして。悲しい予感がしながら、最後まで読んで、予想以上に泣いてしまいました(:_;)でもマユとサツキの幸せがずっと続いてよかった…

    (携帯)
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■1457 / inTopicNo.50)  乱サマへ
□投稿者/ ぁんり 一般人(3回)-(2005/01/20(Thu) 01:07:34)
    読みながらマジ泣きしてしまいました…
    周囲(亜希子サン)にとっては最悪(?)の結果だったのかも知れないけど、マユとサツキが最後の最後でホンマ幸せそぉ〜で泣きながらも、羨ましく思いました。ホント素敵な小説を読ませて頂きましたm(__)m
    次回作を心待にしております(>∇∇<)o
    長々とすいません…

    (携帯)
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■1458 / inTopicNo.51)  依織さんへ
□投稿者/ 乱 軍団(142回)-(2005/01/20(Thu) 10:33:32)
    2005/01/20(Thu) 10:48:16 編集(投稿者)

    始めたのはいいけれど、どんな終わり方にしたらいいのか
    自分でもよく分らないまま書き殴ってしまいました。
    今でも、こんな結末で良かったのか分らないのですが
    良かったと言っていただけたので安心しました(>_<)
    最後までおつき合いくださりありがとうございました♪

    (携帯)
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■1459 / inTopicNo.52)  りなさんへ
□投稿者/ 乱 軍団(143回)-(2005/01/20(Thu) 10:39:22)
    初めましての、りなさんですね?
    初めまして。乱です。
    感想ありがとうございます♪
    理解に苦しむところも多々あったと思うのですが
    最後までおつき合いくださりありがとうございました。
    また機会があったらこんな感じの物も投稿させていただきたいと思ってます。
    良かったらまた、おつき合いください☆

    (携帯)
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■1460 / inTopicNo.53)  ぁんりさんへ
□投稿者/ 乱 軍団(144回)-(2005/01/20(Thu) 10:45:52)
    結末をどうするか、悩みましたが、こんな感じになりました。
    亜希子もきっといつか、夏海の大切さに気付く事を信じて。
    次回、投稿させていただく時は初心に戻り
    エロ満載、エロオンリーで行こうと思ってます(^_^;)
    その時、またおつき合いいただけたら嬉しいです。

    (携帯)
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■1502 / inTopicNo.54)  乱さんへ
□投稿者/ ゅう 一般人(1回)-(2005/02/01(Tue) 02:26:57)
    初めて読ませてもらったんですけど すごぃ良かったです♪♪こんなに 状況がわかりやすく書くことができるなんて 感動しましたo(^-^)oこれからも読ませてぃただきます☆乱さんの HPとかはなぃんですか??

    (携帯)
完結!
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■1517 / inTopicNo.55)  ゅうさんへ
□投稿者/ 乱 軍団(146回)-(2005/02/03(Thu) 09:55:07)
    感想ありがとうございます♪
    お褒めいだだきとても嬉しいです。
    HPはありません。
    またこちらに投稿させていただきたいと思っていますので
    その時、読んでいただけたら嬉しいです。

    (携帯)
完結!
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■2214 / inTopicNo.56)  感想
□投稿者/ 春 一般人(2回)-(2005/08/15(Mon) 14:37:54)
    わーもう涙止まんないです!。>△<。。 こんな切なくて愛おしい話初めてです。感動しました!
    最初から最後まで読ませていただきました☆全部大好きです^^
    これからも素晴らしい話作り頑張って下さい(″^^″)
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■2261 / inTopicNo.57)  乱さんへ 感想です♪
□投稿者/ まなみ 一般人(3回)-(2005/08/22(Mon) 22:22:10)
    (ノ_・、くすん
    最後すごい、悲しくて、切なくて、きれいなお話でした。
    でも、ハッピーエンドになってよかったです。

    でも、途中は すごくドキドキしました(はずかしぃ〜(>_<)

    またお時間あるとき、お話してください。
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■2281 / inTopicNo.58)  春さんへ
□投稿者/ 乱 一般人(4回)-(2005/08/25(Thu) 23:07:19)
    もう半年も前の話でしたのに、感想いただきありがとうございます。
    こちらでの投稿は卒業させていただきました。
    詳しくは、「メイド芽衣」の方に記させていただいています。
    ご一読いただけたら幸いです。
    ありがとうございました。

    (携帯)
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■2282 / inTopicNo.59)  まなみさんへ
□投稿者/ 乱 一般人(5回)-(2005/08/25(Thu) 23:11:07)
    古い話にお付き合いくださりありがとうございます。
    こちらでの投稿は「メイド芽衣」を最後に卒業させていただいてるんです。
    詳しくは「メイド芽衣」の方に記しておりますのでご一読いただけたらと思います。
    ありがとうございました。

    (携帯)
完結!
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