SMビアンエッセイ♪

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

[ 最新記事及び返信フォームをトピックトップへ ]

■1982 / inTopicNo.1)  合図で始まる恋
  
□投稿者/ 遥 一般人(1回)-(2005/06/08(Wed) 18:03:24)
     新宿から山手線に乗り込むと心の中だけで溜め息をついた。失敗した。朝8時半の車内は肋骨のきしむ音が聞こえてきそうな混み具合だ。

     窓の向こうにむけた視線の端に写った鞄。胸に抱えられた鞄のポケットにぶら下がっている安全ピンに、私は目を奪われていた。
     ピンクのゴムに通された赤、青、黄色の安全ピン。レズビアン・サイトの掲示板で見かけた「ビアンの合言葉」として身につけようと提案されたアイテムそのものだ。
     ピンクのゴムはネコの目印……。サラリーマンに埋もれるように、ドアの前に立つ少女の顔を覗き込んだ。
     ……可愛いな……
    化粧っけのない肌、染めたこともなさそうな黒い艶髪。気付かれそうにないのをいいことに、みつめ続けた。
     はるか背後でドアが閉まる気配。電車は降車駅を出た。それを合図に私は、行動に移るべく、少女の真後ろに体をねじ込む。
     ……何? 不自然な腕。挟まって動けないの?……
     私に押されて少女の真後ろから押し出された男の腕だけが、私と少女の間に残る。不自然に力がこもっているような感触。腕を引く方向ではなく、そこに留まる方向に働く力。
     ……痴漢、か。……
     「プレイ?」
     少女にだけ聞こえるように、ほとんど音のない声でささやくと、少女はハッと顔を上げ、そしてまたうつむいた。目は開いたまま、潤んだ目で小さく、本当にわずかに首を振って答えた。
     合意の痴漢行為ではないようだ。
     「おはよう、レン」
     今度ははっきり、少し大きめの声で言って、右手で男の腕を押しのけ、左手で彼女の肩を叩いた。混雑した車内での、迷惑な動きと声に周囲が注目するのがわかる。しかし注目がそれるのもすぐだ。誰もが誰かと関わりを持ちたくない場所、だから。
     「降りるの次だよね?」
     私の言葉に、振り向けないまま、彼女はコックリと頷いた。

引用返信/返信 削除キー/
■1984 / inTopicNo.2)  合図で始まる恋(2)
□投稿者/ 遥 一般人(2回)-(2005/06/09(Thu) 08:22:39)
     反対側のドアが開くと同時に、私と彼女が動きやすいように、周りにほんの少しの空間ができた。そう、結構優しいもんなんだよね、みんな。ちらっと見回して目が合った相手にだけ、ニッコリ微笑んでおく。
     私が握った手に、彼女の力もこもるのを感じた。どうしようもなく浮かび上がってくる期待をどうにか押し返しつつ、彼女の手を引いて駅を出た。
    「どうしよう? 一休みする? ホームに戻る?」
     わざと改札を出てしまってから聞く。彼女は答えず、うつむいたままだ。
    「学校は?」
     彼女が手を離さないのを勇気にかえて、聞いてみた。なおうつむいたまま首をふる彼女を、抱きしめたくてしかたない。
    「うーん、じゃあ…少し歩こうか」
     今度は返事をまたずに歩きはじめた。もう少しだけでいい、そばにいたかった。
     彼女は抵抗もしなければ行く先を確かめるそぶりもなく、ただ引かれるままに歩く。……初めてってわけじゃないだろうけど、ショックなんだろうな……
    「すぐそこがウチの事務所だから」
     歩調を緩めて言うと、ようやく顔を上げた彼女と目があった。
     尋ねるような彼女の目に頷いて促すと、彼女も頷き返した。

    「あの…ごめんなさい。仕事の邪魔ですよね。」
     小さな応接セットのソファで珈琲を飲むと、ようやく落ち着いたようだ。部屋を見渡して申し訳なさそうに彼女はあやまった。
     散らかりまくった部屋は、さぞ忙しそうに見えることだろう。実際そうなんだけど、それはあとで頑張ればいいだけのことだ。
    「とりあえず仕事はヤメ。連れ込んだのは私なんだから、謝るのもヤメ、ね?」
     言いながら私は彼女の隣に座る。顔を覗き込んでも、素直にみつめ返してくる。私の言葉に小さく笑う表情が愛おしい。
    「でもこんなふうに、あっさり付いて来るのは感心しないな。ねえ、ネコちゃん。」
     彼女の向こう側の鞄に手を伸ばし、指で3つの安全ピンを弄んだ。途端に顔色が変る。
     固く閉じた膝に手を置く。そのまま短いスカートの中まですべらせた。顔をみつめながら下着に触れる。すぐにうつむいてしまったから、目は合わなかった。
     下着に到達した指を、まっすぐ降ろす。布ごしにプニプニした感触を感じる。左右からの拒む力は、この角度からでは侵入を簡単に許してしまうものだ。
     すぐに一番柔らかい部分まで、指が届いてしまう。
    「いけないなぁ。痴漢でこんなに濡らして……あんなオジサンなのに。」
     言葉の間だけ、ほんの少しの間だけ、潤った部分を下着の上からなぞって、解放した。
引用返信/返信 削除キー/
■1985 / inTopicNo.3)  合図で始まる恋(3)
□投稿者/ 遥 一般人(3回)-(2005/06/09(Thu) 11:57:30)
     即座に逃げ出すだろう、という予想に反して、彼女は動かない。それでは困る。そう長くは我慢も続かない。
    「…違い、ます…痴漢で……濡れたんじゃ…」
     わかっていた。彼女の潤いは、まだ新鮮だったから……たった今、湧き出したように。
     彼女は顔を上げた。頬に涙のあとが一筋、だがもう泣いてはいない。
    「“レン”さんになりたい」
    「君には無理だよ。」
     苦労して無関心な声を作った。立ち上がって向かいのソファーに座りなおす。彼女はネコだし、私の好みだ。外見も、多分中身も。
     だけど彼女が出会いを求めていた相手は、多分同じ学生かそこらの年の相手で、私のような年長者ではないはず。あの“合図”は学生同士のものなのだから。
    「名前は?」
     またうつむいてしまった彼女に聞いてみる。予定外の質問だった。これ以上は知るべきじゃない、関わるべきじゃない。
     今の私は彼女にとってヒーローなのだろう。だが時間がたてば目も覚める…その程度のことだ。私は彼女に惹かれはじめてる。だから……。
    「ミユ…えっと美しい柚(ゆず)で、美柚です」
     答えた美柚の顔はとても輝いていて嬉しそうで、私はすぐに視線を外し、立ち上がってデスクの上の電話に手を伸ばした。
    「そう、美柚ちゃん、もう帰れるね?」
     冷たくいい捨てるように…多分、出来たと思う。直接美柚に話しかけるのは、これを最後にしよう。
    「レン、ちょっと駅までおつかいして」
    「はぁ〜い すぐ行きます〜」
     受話器を置いたまま、スピーカーフォンでレンを呼び出した。相変わらずの元気な声が返ってほどなく、レンがドアを開けた。
    「ノックぐらいしなさい」
     私とレンのやりとりの間、美柚は顔を上げなかった。ただ、私が“レン”と言う度に、反応していたように見えた。
     美柚を促して部屋を出るレン。ドアが閉まるのを確認して、私は窓に移動した。ブラインドの隙間を少しだけ広げて、地上を見下ろす。この窓からは、ビルの入り口も駅に続く道も見えない。わかっていても、探さずにいられなかった。
     忘れよう。ちょっと可愛かったから、降りるまでの間だけ満員電車の圧力から守っていようと思っただけじゃないか。いつものように。
     ちょっとハプニングがあって、ちょっと言葉を交わした。ちょっとだけ悪戯して…でもそれだけだ。大丈夫、惚れっぽい私なんだから、すぐ忘れるさ。
    「ああ、もう!!」
     ドンッ! と窓にヤツ当たりして、とりあえず部屋を片付け始めた。

引用返信/返信 削除キー/
■1986 / inTopicNo.4)  合図で始まる恋(4)
□投稿者/ 遥 一般人(4回)-(2005/06/09(Thu) 12:55:28)
    「ただいま〜。あ、片付けできたね。じゃあ掃除するからぁ、書類持って事務所で仕事してくれる?」
     帰るなりレンは私を社長室から追い出す。とは言え、自業自得なので大人しく必要になりそうな書類を集める。散らかしたまま数日、出社せずだった。綺麗好きなレンにはたまらなかっただろう。
    「あ、ねえお姉ちゃんさぁ」
     書類を抱えて何とかドアを開けた私に、レンが言った。
    「本気、なりかけたでしょ」
     クスクス、笑いをこぼしながら。

     忙しい日々が続いて、そしてようやく落ち着いてきた。今日は久々に家に帰って寝ようか、と時計を見る。9時…まだ朝のラッシュがぐずぐず残っている時間だ。もう、当分は駅に近寄りたくない時間帯。
     あれから1カ月。まだ脳裏に彼女の姿が焼きついている。指に感触がまとわりついている。
     時間を潰そうと、落としたばかりのパソコンの電源を入れた。
    〈ピピピッ〉
     それが合図だったように、電話が鳴る。レンからの内線呼出だ。
    「社長、お客様をお通ししました。」
     スピーカーからレンのすました声。聞き返すまもなく通信を切った「ぷつっ」という音。
    ……企んでるなぁ……
     今日は来客の予定などない。予約もない客を確認なしに通すわけがない。甘ったれな妹だが、仕事はそつなくこなす子だ。
    〈コンコン〉
    「どうぞ」
     控えめなノックの音に、とりあえず入室を勧めた。
    「あ……」
    「あの…ごめんなさい! 私が無理にお願いして…!」
     ドアを開けるなり深く頭を下げた、その声。その制服。
     ……美柚だ。私は困惑を隠さず表情に出した。
    「何? 忘れ物?」
     忙しさを装って、パソコンのモニターに視線を移した。
    「いえ……あの、どうしても会いたくて…」
     声が震えている。1カ月だ、熱が冷めるには充分な時間だろうに。開いたドアの取っ手を持ったまま、美柚は動かない。
    「………とりあえず、座ったら?」
     美柚に届いた私の声は、冷たく突き放すようなものだったはずだ。もう限界だった。適度によそよそしい声など作れない。一刻も早く冷めて出ていってくれ、それだけだった。
     美柚はおずおずとソファーに座る。1カ月前のあの場所に。
    〈コンコン〉
     それを見計らったようにドアがノックされ、返事も待たずにレンが入ってきた。黙ってテーブルに珈琲を2つ置くと、あからさまに美柚を睨んで出ていった。
     何故だか、剥き出しの敵意だ。
    ……レンの企みじゃない?……
    「ごめなさい……、レンさんとの間に割り込むつもりはないんです。ただ……」
     美柚はまだ、私とレンが恋人同士だとでも思っているようだ。あのあとレンが余計な世話を焼いたのではないらしい。
    「うん…ただ、何?」
     黙っている私を泣きそうな目でみつめてくる。仕方なく続きを促した。声が冷たくなりすぎないように、無駄な努力をしながら。
    「たまにで、いいんです……レンさんの変わりトカで……」
    〈ガチャン! ガチャガチャ…〉
     隣の部屋から、乱暴に洗い物をするような音が響き、美柚の途切れ途切れの言葉をよけいに聞き取りづらくする。
    ……アイツは何をやってるんだ……
     そこに水場なんてない。やはりレンの企みのようだ。
    〈パリーン!!〉
     何かが割れる音に、美柚が言葉を止めた。もういつ泣き出してもおかしくない顔で、音の方向に目をやっている。
    「社長、今日は早退しますから!」
     ドアの向こうから、レンの大声。しばらくは私も美柚も、口を開けなかった。……私は呆れて、美柚は多分、後悔で。


引用返信/返信 削除キー/
■1987 / inTopicNo.5)  合図で始まる恋(5)
□投稿者/ 遥 一般人(5回)-(2005/06/09(Thu) 13:35:48)
    2005/06/10(Fri) 10:50:01 編集(投稿者)
    2005/06/10(Fri) 10:49:54 編集(投稿者)

     震える美柚の背中を眺めながら、私は意味もなくキーボードを叩いて音をさせる。限界だった。気持ちを抑えるのも、泣いているであろう美柚を、ソファーで1人置いておくのも。
    〈カチャ!〉
     私の指がひときわ大きな音をたてると、美柚の肩が大きく震えた。
    「何でここに来たりした?」
     私の声はどうしようもなく、苛立ちを含んでいる。
    「ごめんなさい……」
    「私になにを望んでいる?」
     消え入りそうな声で謝る美柚に、私はたたみかけるように言葉を吐いた。
    「何も……ただ、会いたくて…」
     抑えきれない。どうしようもなく愛しくて。
     私はわざと大きな音をたてて立ち上がり、乱暴に歩き、乱暴にソファに座った。美柚の隣に。
    「それでどうなるかとか、考えずに?」
     なおも責める私に、ただ美柚は謝り続けた。かすれた、途切れ途切れの声で。そして。
    「わからない…わかってたのかも…でも、ただ好きで、ただ会いたくて…」
     涙を隠しもせず、流れるに任せて、美柚は顔を上げ私をみつめた。真っ直ぐな目で。
    「ただ、蘭さんに、会いたくて…」
    ……あいつ、勝手に名前までおしえやがって……
     止められなかった。私は乱暴に美柚の腕を掴んだ。そのままの勢いで、美柚を抱きしめた。
    「あ……」
     美柚の唇から溜め息がもれる。熱い音をたてる溜め息。
    「もう、いいから。」
     きつく抱いたまま、背中を撫でる。私の掌が肩に触れた時、美柚が小さく震えた。私はその震えをむさぼるように、肩を撫でる。
    「…ん……うぅん……」
     美柚のわずかに開いた唇からこぼれる熱い息とかすかな声。
    「うん? くすぐったい?」
     首を振って答える美柚に構わず、私は肩を撫でていた手を遠ざけ、腰にまわした。
    「とりあえずさ、レンは妹、だから。」
     すっかり色っぽく潤んでしまった瞳で、美柚は私をみつめた。私の言葉に対する驚きと、私の掌に対する懇願が見える瞳で。
    「悪戯がすぎるな。でもいい子なの。許してあげてね。多分、悪いのは私だから…」
     言いながら、美柚の視線に答える。目が合うとあわてて逸らそうとする美柚の顎を掴んで制止した。
    「どうして欲しい?」
     すでにピンクに染まっていた美柚の頬がさらに色を増す。口を開いて…出るのは溜め息ばかりで、音にならない。
     私がクスリと笑うと、口を閉じてしまった。
    ……可愛い…この子は多分、大丈夫。傷つかずに受け入れてくれる……
     一度そう思ってしまうと、もう、制御などできなかった。
     顎を解放して、腕を肩に戻した。触れるか触れないかに、そっと撫でる。
    「…はん……あぁ……」
     それだけでもう、声が漏れ始める。
    「こんなところで、そんなに感じるんだ?」
     私の言葉に、美柚はコクンと頷いて、うつむいてしまう。それもまた可愛い。
引用返信/返信 削除キー/
■1988 / inTopicNo.6)  NO TITLE
□投稿者/ ゆうみ 一般人(1回)-(2005/06/09(Thu) 23:13:55)
    すごくいいです。入り込んでしまいました!楽しみにしてます。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■1991 / inTopicNo.7)  合図で始まる恋(6)
□投稿者/ 遥 一般人(7回)-(2005/06/10(Fri) 10:48:15)
     耳に口を寄せて、やわらかな耳たぶを唇に挟んだ。
    「…あ…んぅ……」
     ほんの少しの刺激にも応える吐息。華奢な腕がしがみつく。
     ひとなでだけ、舌で耳たぶををなぞって、口を離した。
    「今日はもういいよ。無理しないで。」
     息のかかる距離で耳に囁いて体を離した。しっかりしがみついていた美柚の腕は、私の動きに合わせて簡単に解かれた。
     途端に閉じられたまぶたから涙が溢れ、いく筋も流れた。
    「そんなに嫌なら嫌って、ちゃんといいなさい。ね?」
     頭をポンポンと叩いて、私は立ち上がった。珈琲を入れてくるから、と言い残して部屋を出る。

     部屋に戻ると、美柚が笑顔で迎えてくれた。
     珈琲を渡して向かいに座る。肌の色がまだかすかに残る熱を語っている。それでも息を整えて、気を取り直して待っていてくれたらしい。
    「学校は?」
     美柚はとたんに困った顔になって、首を振った。
    「行っておいで。」
     また浮かんできた涙をこらえて、コクンと頷いた。
     美柚は黙って珈琲を飲みながら、私の話を聞いた。他愛もない雑談を、楽しそうに、少しだけ寂しそうに。
    「さあ、もう行かないと。」
     美柚のカップがからになると、そう言って私は美柚を送り出す。社長室のドアを抜け、事務所のドアを抜け、エレベーターで階下に降り、ビルの入り口につくまで、美柚は何も言わなかった。
    「さあ。」
     背中を軽くおして促すと、腕に抱きついてきた。力なく首を振る美柚の腕を解いて、メモを握らせる。
    「学校に行って、家に帰って着替えて…それでもまだ、気が変らなかったら、電話して。」
     開いたメモに番号をみつけると、美柚は微笑を浮かべた。よく表情が動く子。1つ1つが私の好みにピッタリとはまってくるようで、手を離したくなくなる。
    「いい? 私はうんと年上で、しかもSなの。良く考えてね。」
     電話をかけてくれるな、と匂わせるようにつとめて言った。美柚の返事を待たず、私は事務所に戻った。

     言葉や態度とは裏腹に、私は美柚を離すつもりなど、もう殆どなかった。
     少し若作りをしようか? なんてことが頭に浮かんで、少しだけ嘲った。

引用返信/返信 削除キー/
■1992 / inTopicNo.8)  合図で始まる恋(7)
□投稿者/ 遥 一般人(8回)-(2005/06/10(Fri) 10:56:56)
    ……ちょっと早過ぎたな……
     時計の針はやっと19時をさしたところ。店でも眺めて歩くかと車を出そうとした時、美柚の姿が見えた。
     携帯で美柚の番号を鳴らすと、すぐに出た。手に持って歩いていたらしい。
    「目の前の道路のちょっと左側、青い車……そう、目立つやつ」
     言いながらドアを開けて立つと、彼女が駆け出した。まだ繋がったままの電話に苦笑しつつ、私は電話を切った。
     軽く息を切らせる彼女を助手席に座らせ、車を出す。
    「ずいぶん早いね?」
     私の言葉に美柚はニッコリと頷いた。“蘭さんも”とでも言いたいのだろう。
    「運転してる間、しゃべっててね。黙ってると寝ちゃうからね。」
     私の言葉に、激しく頷きつつ、話題をあれこれ考えているようだ。少し表情が真剣になった。
    「じゃあまず……」
     そんな美柚に最初の話題を振る。
    「あの時、濡れてたのは何故? 痴漢のせいじゃないって、言ってたよね?」
     美柚は顔を曇らせた。少し黙って考えるふうにして、そして顔が朱に染まり出す。
    「どこ、触られた?」
    「お尻…あの、服の上からだけ。だってすぐ、助けてもらったから…」
     そこで一旦息をついた。
    「でも、そうじゃなくても感じたりしません。いつも…ただ、気持ち悪いだけ。」
     こんな質問にも、できるだけちゃんと答えようとしてる。私はうんうんと頷いてから、さらに質問を重ねる。
    「じゃあ、いつから濡れてた?」
    「あの…足を撫でられた時に……」
     美柚の体がもたれかかってきて、すぐに戻った。それを私がまた、引き戻す。
    「大丈夫、そのくらいでミスったりしないから。」
     寄り掛かっていなさい、と促すと、ピッタリと腕に顔を寄せてきた。
    「もっと前、かな。ネコって呼ばれた時…ううん……事務所のドアを入った時から、期待してたと、思う…」
     徐々にすらすらと話し出す美柚。
    「ずっと、また触れられたかった……でもレンさんが、来るなら1カ月後にしてって……仕事大変だからって、ちょっと怖い顔して。…だから…」
     赤信号。車を止める少しの間、私は手を回して美柚の髪を弄んだ。なるべく、無造作に。
    「それで勘違いしたんだ?」
    美柚は首を振って否定して言った。
    「最初に声をかけてくれた時に、レンさんの名前を使ったでしょ? あの“レン”って声がすごく、優しかったから。」
     信号が変り、私は美柚から髪から手を離した。
    「可愛かったからなぁ…。キミは。」
     “キミ”と呼ぶと美柚は毎回、悲しそうな目をうつむいて隠す。今朝から私はまだ一度も名前を呼んでいない。
    「じゃあ、次。肩や耳に触れただけで嫌がってたのに、何で電話してきたの?」
    「嫌じゃないもん! そうじゃなくて……」
     少し固い声でした質問に、即座に美柚は答えた。ちらっと顔を見るとすがるように私を見ている。
    「そうじゃなくて?」
     冷たく先を促した。
    「……もっと…されたくて……もっと違うトコもして欲しくて…」

引用返信/返信 削除キー/
■1993 / inTopicNo.9)  合図で始まる恋(8)
□投稿者/ 遥 一般人(9回)-(2005/06/10(Fri) 10:57:24)
     車を止めた。大黒ふ頭のパーキングエリア。そこそこ景色が良いので利用客も多い。
    「パーキングエリア。ちょっと休憩ね。」
     一瞬顔を上げて窓の外をうかがった美柚に場所を伝えた。美柚はうなずくとまたうつむいてしまう。
    「で、そういう時は、ちゃんと言ってくれないと。今度から、絶対だよ?」
     うつむいたままコクンとうなずいた美柚の顎に触れ、顔を上げさせる。目を合わせて促すと唇を開いた。
    「あの…どこか行きたい。ここじゃなくてもっと…」
     顎から手を離すと、美柚はあまり柔らかくなさそうな私の胸に顔をうずめた。
    「うん?」
    「2人きりになれるところに行きたい、です。」
     抱きしめて肩を撫でればすぐに体が応える。ピクリと震える体、荒い息遣い。
    「ダメ……んぅ…我慢できなく……」
     うんうんと、頷きながら私は彼女の体を離し、頬に触れた。耳を弄び、首筋から胸に指をすべらせる。
    「あぁん……ん…ふっ…」
     小さい小さい声を洩らす。まだ肝心なところにはどこにも触れていないのに、目がトロンとしている。
     手を止めてみつめると、美柚と目があった。まだ少しトロンとした、潤んだ瞳。そのまま、私は今度は子供にするように、美柚の頭を撫でた。
     不満そうな表情を浮かべた美柚の目を、真っ直ぐみつめながら。
    「いじわる……やめちゃ、いや…そんな触り方、いや……あん…」
     苦しそうにねだる美柚の口を指で止めた。
    「ちゃんと言うって約束したでしょ?」
     そう言うと美柚は少し目を逸らして、すぐにまた私と目を合わせた。色っぽい目をする子…。
    「キス、して欲しい。美柚を好きって、言って欲しい…」
    「ん…」
     希望に応えて私は美柚にキスをした。触れるだけの、短いキス。
    「好きって言えばいいの? ウソでも?」
     私の言葉に、美柚はポロポロと涙を流した。そのままうつむこうとするのを阻んで、今度はしっかり唇を合わせる。わずかな隙間から舌を入れ、美柚の舌を誘った。
    「ああん……い…いや…しない…で…」
     美柚の抗いに応えて、私は唇を離した。
    「嘘は嫌…好きじゃないなら、しないで…」
     今までとは別の弱々しさで美柚が言う。可愛い。……だから泣かせたくなる。いじめたくなる。
     くすっと私がもらした笑みに美柚がさらに体を離そうと、腕に力を入れた。
    「馬鹿。美柚、好きよ。可愛い美柚…」
     美柚の頬を涙がまた伝う。今度は多分、喜びの涙。
     悲しみの涙と喜びの涙とで、美柚の顔はグシャグシャになっている。

引用返信/返信 削除キー/
■1994 / inTopicNo.10)  ゆうみ様
□投稿者/ 遥 一般人(10回)-(2005/06/10(Fri) 11:24:37)
    ありがとうございます^^
    とっても励みになります。

       by遥 私書箱@8268
引用返信/返信 削除キー/
■1995 / inTopicNo.11)  遥さんへ☆
□投稿者/ ノア 一般人(2回)-(2005/06/10(Fri) 16:55:00)
    こんな話大好きデス(*≧∀≦*)続き楽しみにしているので、頑張って下さいっ♪
引用返信/返信 削除キー/
■1996 / inTopicNo.12)  合図で始まる恋(9)
□投稿者/ 遥 一般人(11回)-(2005/06/10(Fri) 18:28:59)
     エンジンをかけ、ハンドルを握りなおす。美柚は私にもたれるような姿勢に戻った。言葉に出さなくても、期待しているのが伝わってくる。だけど今日はそれに応えられない。
    「じゃあ、帰ろう。車出すよ。」
     私の言葉に、美柚は不満そうに顔を上げた。
    「見て、もう出ないと門限に間に合わない。」
     美柚が拒否の言葉を口にする前に、デジタルの小さな時計を示した。素直な美柚はそれだけで従う気になったようだ。
     その素直さに、私も助けられるわけだけど、少し物足りなくもある。
     あまり好きではないけど仕方ない。少しだけスピードを上げて走らせることにしよう。
     車がパーキング・エリアの明かりから解放されるとすぐに、美柚の腿に手を置いた。短かすぎない、上品な丈のミニスカート。細かいプリーツの可愛らしいデザインが美柚らしい。
     スカートの上から、布ごしの感触を味わう。腿から足の付け根に向かってなで上げる。内腿の柔らかい感触、そして小指がほんの少しだけ、敏感な丘に触れる。
    「…うぅん……あぅ…ん……は…あ…」
     すぐに息を乱す美柚。自然に僅かに足が開いて、触れやすくしてくれる。だがまだ、期待に応える気はない。
    「美柚、気持ちいい?」
     美柚は黙ってうなずく。
    「今日はこれで満足してくれる?」
     さらにうなずく。私はより優しく、ゆっくりと美柚の腿を撫で続けた。丘に触れないように、注意を払って。
    「んぅ……あ… ランさ…」
     美柚の途切れ途切れの呼び掛けをしばらくは無視して、同じ動きを続けた。うつろな美柚の声は何度も私を呼んだ。無視されても不機嫌になったり、強い口調になったりしないのは、焦らされることを知らず知らず、喜んでいるのだろう。
    「どうしたの?」
     料金所を出て、すぐ信号につかまってようやく、私は美柚に問い掛けた。止まった手を、美柚が握り締めてくる。
    「直接…触って欲しい…」
     右手でうつむいている美柚の顔を上げさせる。逃げるように泳ぐ美柚の目に、視線を向けた。
    「ちゃんと私を見て、はっきり言ってくれないと、ダメ。」
     そして止めていた左手でまた、美柚の足を撫でる。勿論、服の上から。
    「…ん……服の上からじゃ…なくて……直接触って……ください…」
     途切れ途切れの言葉が終わったところで、私は再び車を走らせた。ここからは一般道。車の中とはいえ、少し人目を感じるようになる。
    「じゃあ、触りやすいようにしなさい」
     少しのまは、戸惑いではなくて、私の言葉に応える方法を探していただけだろう。すぐに美柚はスカートを捲り上げた。
    「ダメよ、美柚。そんなにしたら、トラックから下着が丸見えになる。」
     真上から見たら下着がのぞいて見えるくらいに捲り上げられていたスカートを、美柚は慌てて少しだけ戻した。
     やはり他からの視線が頭から消えてしまっているようだ。しっかりとそれを再認識させた。
    「それでいいわ。美柚はウソツキね。見た目は大人しそうなのに、本当はやらしい子…。」
     言いながら、美柚の腿に触れた。布越しとは違う、吸いつくような感触。少し上昇してしまっている体温。
     腿の内側を、ねっとりと撫でる。
    「あぁん……嬉し…い…んぅ……」
     溜め息のような、囁くようなかすかな喘ぎも、湿り気を帯びてくる。
     小指の爪で下着を掻くように、丘を下からなで上げた。
    「はぁ…ん!」
     初めてはっきりした喘ぎを上げる。私の腕にしがみつく美柚の手に、力が篭る。
    「ああ、ごめん。足だけでいいのよね、美柚は。」
     私はつとめて静かに言って、撫でる手を丘から遠ざけた。そのまま、わかるように丘に触れるのを避けて、腿を撫でる。
    「…だめ…足だけじゃ…い…やん……」
     車はちょうど公園の駐車場に入ったところ。車が止まったことにも、美柚は気付かない。
    「なあに? 約束したでしょ?」
     私は撫でる手を休めず、そっと美柚に向き直った。
    「ここから、歩いて帰れるわね?」
     私の目を、懇願するように見つめていた美柚の瞳が泳いだ。ようやく車が止まったことに気付く。
    「あ……はい、ここからなら…」
     はっきりと気落ちした声を出す。私は美柚のスカートを直すフリをして、下着に触れた。指の腹で濡れた感触を確かめるようにひと撫で。
    「…だ…めぇ……んん…」
     小さく震えた美柚が、チラっと時計を盗み見た。門限まではあと40分。まだ少しだけ余裕がある。
    くすっと、私は美柚にわかるように笑った。もう、美柚の言葉を促す必要は、なさそうだ。
    「もう少し、だけ……触って……下さい…お願い…触っ…て…」
     今はどこにも触れていないのに、美柚の声は途切れ途切れになる。羞恥で染まる頬。
    「仕方ないわね。どこが、いいの?」
     少しだけ後押ししてみる。
    「あの……」
     ためらいながらも、美柚はスカートを大きく捲り上げた。
    「ここ……美柚の、ここを、触って下さい…」
     スカートを両手で捲り上げたまま、美柚は顔を逸らして言った。もう充分。これ以上は、私のほうが我慢できない。
引用返信/返信 削除キー/
■1997 / inTopicNo.13)  ノア様
□投稿者/ 遥 一般人(12回)-(2005/06/10(Fri) 18:31:02)
    ありがとうございます。
    少しずつですが、確実に進めていきますので、よろしくお願いします^^

        遥@私書箱8268
引用返信/返信 削除キー/
■1998 / inTopicNo.14)  NO TITLE
□投稿者/ れん 一般人(1回)-(2005/06/10(Fri) 20:38:22)
    かなりぃいお話(*б∀б)☆つづきが楽しみ☆
    私は舞台やってて舞台名がれんなんです(人´∀`*)反応しちゃった☆(笑)☆

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■2000 / inTopicNo.15)  合図で始まる恋(10)
□投稿者/ 遥 一般人(13回)-(2005/06/11(Sat) 17:53:45)
     私は左手で自分の体を支え、右手を美柚の体に伸ばした。美柚は顔を隠すように私の胸に額を預けてくる。
    「ここ、かな……?」
     もう少し焦らそうか、とも思ったけど、時間もあまりないことだし…何より、私の指が彼女の潤いを求めていた。
    「んっ…はぁ……ん…」
     かすかな亀裂に触れ、指でそっと往復する。下着はしっとりと彼女の蜜を含み、布越しに触れた私の指を濡らすほど、溢れている。
     それを充分確認してから、指を離した。
    「ここじゃないの?」
    「いやっ…やめ…ちゃ……いいの……そこ………」
     美柚は素早く反応して、途切れ途切れになりつつも、懇願する。膝の横でかたく握っていた美柚の左手が、私の手首にしがみつく。
    「ここでいいならいいって、ちゃんと言ってくれないと。」
     自然にクスクスと笑いが混ざる。ピンクに染まった美柚の肌が、羞恥を帯びた声が、そして敏感に私に答えてくれる体が、たまらなく可愛い。
    「……っ…はぁあん…そこ…嬉し…い、です…あぁ…」
     今度は手の平全体をつかって、ゆっくりと彼女の亀裂をさする。
     美柚は大きく体を震わせた。すっかり荒くなった息にもれ出す声も、少し大きくなっている。
     まだまだ、囁きに近い喘ぎだけど。
    「こうしたら、聞こえるかな…?」
     言いながら、2本の指で布越しに亀裂を割り開くように、円を描いた。
    『くちゅ…くちゅ…』
    「…っ……ぁ…」
     湿った音に、美柚が息を飲んだ。少し体が強張る。
    「ほら、聞こえる?」
     円を描く指の動きを少しだけ乱暴にすると、淫靡な音も勢いを増す。
    「…は…い……あぁん……だめ…」
     素直に答えておいて、まだどこかで理性が口をはさむ。私は黙って、即座に指を離した。
    「いや……蘭…さ…お願、い…」
     首を小さく左右に振る。私の手首を掴んだ美柚の手が、無意識にだろう、私の手を秘所に誘導しようとする。
     私は美柚の手を掴み返し、それをはばんだ。
    「お願い、です…もっと……触って、下さ…い」
     クスクス……また笑いがこぼれてしまう。
    「恥ずかしいなら、もういいのよ?」
     自然と冷静になる、私の声。美柚はフルフルと首を振る。
    「じゃあ……どんなふうに触ろうか?」
     恐る恐る、という感じで、美柚が顔を上げた。潤んで、朦朧とした瞳で、私を見上げる。
    「直接…触って、下さい……」
    「そういう時は自分で準備してね。」
    私の言葉にすぐにまたうつむこうとした美柚を制すると、意を決したように自ら、下着をおろした。
     スカートで隠してしまって繁みも見えないが、それがかえってそそる。
    「いい子ね、美柚。」
     直接触れると、それだけで蜜が指にからみついた。そっと円を描くと、車内に響き渡るようにはっきりと、音をたてる。
    『くちゅっくちゅっ…』
    「はぁあん…ぅんっ……あ…」
     美柚が奏でる2つの音を楽しみながら、私は蜜をたっぷりと指に絡め取った。そしてツーーっとそのままなで上げる。
    「はんっ!…あ…あっ……くぅ…ん…」
     蕾に辿りつき、からめとった美柚自身の蜜を、そこにたっぷりと塗りつけた。
     美柚の体はよく跳ね、喘ぎも囁きから、はっきりしたものになっている。
    ……少し反応が良すぎるかな…これじゃあ……
    「ん…ああぁんっ…あ…い…」
     すっかりほころんだ蕾をさすると、私を見上げたままだった瞳がきつく閉じた。私の腕を抱きかかえるようにして、しがみつく。
    「蘭さっ…い…ちゃう……もぉ…」
     少し惜しいな、と思いつつ、美柚の唇に唇を重ねた。優しく舌をからめとり、下では指で蕾を荒々しく弄ぶ。
    「……ん…んぅう……はぁあああんっ…!!」
     最後の瞬間、自分の体を支えていた手も私の背に回して、由美はしっかりと抱きついてきた。
     私も両手で美柚を抱き、快感の残滓の残る美柚の唇を吸い、舌を弄って、体を離した。
    「…ごめんなさい……」
    「なに?」
     いきなり謝る美柚の髪に触れ、乱れた髪を直した。
    「私だけ、気持ち良く…」
     美柚のそんな言葉に、たまらずまた、強く抱きしめた。
    「美柚、気持ち良かった?」
     抱きしめられたまま、コクンとうなずく。
    「ちゃんと言いなさい」
    「あ…はい、気持ち良かった、です。…すごく…」
     私は腕を解き、もう一度美柚の髪を直す。
    「それが聞ければ私は満足。さあ、もう行きなさい」
     正面に向き直り、ドアのロックを外した。美柚は動かない。
    「あの…また会ってもらえますか?」
     美柚は不安そうに言った。

引用返信/返信 削除キー/
■2001 / inTopicNo.16)  れん様
□投稿者/ 遥 一般人(14回)-(2005/06/11(Sat) 17:55:41)
    あらら…れんだ(笑)

    ご声援ありがとうございます^^
    れんさんの名前に恥じないように、
    良い作品になるよう頑張ります。
引用返信/返信 削除キー/
■2010 / inTopicNo.17)  Re[2]: 合図で始まる恋(10)
□投稿者/ さなか 一般人(1回)-(2005/06/13(Mon) 20:56:28)
    かなり惚れました///
    もっと書いて欲しいです><
    これからもがんばってください♪
引用返信/返信 削除キー/



トピック内ページ移動 / << 0 >>

このトピックに書きこむ

Mode/  Pass/

HOME HELP 新規作成 新着記事 ツリー表示 スレッド表示 トピック表示 発言ランク ファイル一覧 検索 過去ログ

- Child Tree -