| 黒服の男たちに次に連れていかれたのは、45Fの奥の八畳程度の部屋だった。その部屋の中央に大きな椅子に座った、足の長い女がいた。 スリットの入ったスカートから見える足は白く、美脚というのに相応しい。 黒服の男は愛を女の前に差出し、部屋から出ていった。
(今度は何されるの…もう嫌だぁ。。。)
愛は精神的にも肉体的にもボロボロだった。
『ようこそ。ひどい体ね。般若がやったのね、可哀相に。』
女は愛に近付き、背中に付いたムチ跡を指でなぞった。
『ぁあああ。』
痛いのと少し気持ちいいのが交ざり、何とも言えない刺激を生んだ。 女は口元をあげながら、愛の目を見た。
『愛ちゃんだっけ。お名前は。何でそんなに反抗するのぉ?』
女は疑問そうな顔をして、愛の答えを待つ。
『だって…こんなこと、間違ってると思うし。。』
『正義感に満ち溢れているのね?でもね、世の中それじゃあ損するわよ?』
愛の目をキリッとした目が掴んだ。 女の視線を外す事が出来ない。
『うまく世を渡るには、常に周りを見て、相沢さんのような方に付いていく事が大切よ?おとなしくしていれば痛い思いをしなくていいのだし。』
女の言うことには一理ある。しかし、愛にはそれが無性にはらただしかった。
『般若から聞いたわよ?友達さん、連帯責任負わされそうなのよね?あなたのせいで。』
愛の胸がズキッとする。 自分が招いた不幸の輪廻に峰子までも巻き込んでしまったのだから。
『助かる方法は相沢に従う事。それか……月一イベントに参加するか。』
『月一イベント……?』
女によると、月一回、会社の常連客を招いて、人身売買をやっているらしい。 セレブな女性が、可愛らしい女の子たちを自分の家に住まわせ、自由に使える、夢のような話。 こっちからしたら、最悪な話なんだろうけど。
『相沢さんに飼われるか、まだ見ぬ、熟女に飼われるか。二つに一つね。』
どちらも“飼われる”に違いない。 どちらにしても、完全に助かる訳じゃない。 ならば、相沢に飼われた方がよっぽどマシだ。
『腹をくくったのなら、私はすることないわ。今すぐ相沢さんの所へ行きなさい。』
『あの…最後にお名前を聞いてもいいですか?』
愛は女に振り絞った力で聞いた。 女は“朱雀”(すざく)と答えた。
(携帯)
|