| リンゴーン・・・リンゴーン・・・・・・・・・
終礼が終わると同時に、学校中に鈍い鐘の音が鳴り響いた。 学校が終わった合図だ。
豊かな自然の中に、ひっそりたたずむ白を基調とした立派な校舎。
『黒百合女学院』。男子禁制の、女の園。
全寮制で男性は教師にも生徒にもいない、ただただ女ばかりがいる学校である。 偏差値も高く、大会でもほとんど上位を占める有名校。 中高大一貫校で、密かに秘め事のように、山や海に囲まれた場所にあった。
体育祭や文化祭、卒業式や入学式くらいでしか親には会えない。 バスや電車も、1日に2本くらいしか通らないような場所である。 行事ではるばる来た生徒の親は、学校の近くにある高級感溢れたホテルに泊まるのだ。
そんな金持ち学校の高等部1年薔薇組に、あたしはいた。 あたし・・・・・天音梨乃。15歳。今年高等部にあがったばかりだ。 といっても、大体が中学生の頃から一緒にいる人ばかりだから、大した変化はないけど。
「りーの!」
ここの学校の制服である黒いシャツ、白い赤のラインが入ったスカート。 胸元に高等部の証である赤いリボンと、金のバッジを留めた女の子がやって来た。
彼女は北野美空。中等部の頃に知り合った友達だ。 今は生憎、あたし隣の百合組になってしまったけど、中学校3年間はずっと、一緒なクラスだった。
茶髪の腰までのロングヘアーをなびかせて走ってきて、あたしに抱きついた。 それだけであたし達には視線が集まる。
可愛らしい容姿と性格を持ち合わせた美空は、なんだかんだ結構な人気者。モテるし。
女子校だとやはり、同性愛は生まれる物で、逆に男性と付き合っている生徒の方が珍しい。寧ろ引かれるかもしれない。
「ねえ、帰ろうよ、梨乃」
「うん、帰ろっか」
彼女とはルームメイト。寮の部屋が一緒で、仲もいいため、毎日一緒に登下校をする。決して恋人ではない。
そもそも、この子にはちゃんと、高等部2年菫組にいる恋人が存在する。 あたしにはいないけど・・・・・・・・。 最近は恋人である先輩と一緒に帰っていたから、久ぶりにあたしと帰る。
何でも、先輩が部活で残らなければならないらしい。 先輩は陸上部の長距離走選手。毎回お馴染みのエース。大会も近いし、練習に毎日遅くまで励んでいる。 だからあたしと帰るらしい。
先輩とは知り合いだけど、性格がサバサバしてて明るいし、いい人だ。 先輩もあたしの事を知っているし、誤解される事もない。
校舎の玄関からのびる、舗装された白い大理石の道を5分ほど歩くと、寮に着く。
寮は3つあって、それぞれがある一定の距離を保って並んでいる。 中等部は『向日葵』。高等部は『紫陽花』。大学は『シクラメン』という名前だ。 この学校の創立者である人が花が大好きで、クラスや寮の名前も花の名前。 花畑も敷地内に2ヶ所あり、鮮やかで綺麗な花がたくさん咲く。
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