| うちの会社はまあ、大企業とは言えないけれど、中堅の中ではそれなりに知られたメーカーだろう。 小型モーターの性能には定評があって、ある特殊な用途のもののシェアは全国、というか、世界の七割を占めている。 で、その納入先の企業から、女性社員をアドバイザーとして派遣してくれないかという依頼があり、なぜか私が選ばれた。 「あなたを推薦したのは私なの。あなただったら大丈夫。というより、あなたしかいないわ」と課長は言った。 「何の会社なんですか?」 「まあ、行ったらわかるから」 課長はいつもの酷薄な笑みを作った。 実はあんまりこの課長とは仲が良くない。 今回の出向も、課長が私を追い出したのだとふんでいる。 「女性ばっかりの会社だから、すぐに馴染むと思う。簡単なプロジェクトだし、すぐに戻って来れるわ」 この段階で、かなりアヤシイと思った。 やっぱりアヤシかった。 「セイグ」と聞いて、それが「性具」であり、大人のオモチャだと気付く人がどれほどいるだろう。 「女性向けのセイグを開発してるんです」 は? という感じだった。 目の前に次々と並べられる禍々しいと言っていいそれに、私はどう反応して良いかわからず、ただ息を飲んだ。 「御社のモーターは実に素晴らしいんですよ。特に、ネオジム磁石を使った超小型のモーター……」 そう言って、社長と名乗る、私と同じくらいに若い、おそらく二十代前半の女性は、指ほどの太さの棒を手に取った。 外見はそれほど禍々しくない。 スマートで、ピンクと水色の二種類がある。 「使ってみます?」 さりげなく聞いてくる。 「いえ、私は……」 「男性自身や、オナニーとは全く違いますよ。どうぞ、いいから、持って帰って使ってみて下さい。明日、感想を聞かせて下さいね」 感想って言ったって……(続くよ。感想待ってるね)
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