SMビアンエッセイ♪

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Nomal とらわれの身 /鳥子 (07/08/30(Thu) 02:29) #4577
Nomal とらわれの身 2 /鳥子 (07/08/30(Thu) 22:49) #4578
Nomal とらわれの身 3 /鳥子 (07/09/06(Thu) 22:06) #4586
Nomal 続きが気になります /☆ (07/09/10(Mon) 22:42) #4594
│└Nomal ☆さま /鳥子 (07/09/11(Tue) 12:07) #4596
Nomal とらわれの身 4 /鳥子 (07/09/11(Tue) 12:03) #4595
Nomal とらわれの身5 /鳥子 (08/07/26(Sat) 01:30) #5408


親記事 / ▼[ 4578 ] ▼[ 4586 ] ▼[ 4594 ] ▼[ 4595 ] ▼[ 5408 ]
■4577 / 親階層)  とらわれの身
□投稿者/ 鳥子 一般人(1回)-(2007/08/30(Thu) 02:29:40)
    2007/08/30(Thu) 10:21:18 編集(投稿者)

    イツコがハルカと出会ったのは、とあるビアンバーだった。
    その日、イツコがひとりバーに入って間もなくに雨は降り出して、
    傘のないイツコが帰るに帰れずにいた時間が右隣の席に座っていたハルカとの縁をくれた。
    ほんの少し話しただけで運命を感じてしまった二人のこの日は、
    イツコ24才、ハルカ30才の秋口のことだ。

    ・・・

    窓という窓を閉め切り、分厚い遮光カーテンも下ろされたこの部屋では、
    今が一体何時であるのか、時間がどうやって流れているのかを知る術はない。
    イツコは衣服を纏わぬ体でフローリングの床に座り込み、
    そのまま前に崩れるようにだらしなくうつ伏せになった。
    「はーちゃん、早く帰ってこないかな…」
    テレビもラジオすらもないこの部屋の時計は全て止まっていて、
    どの瞬間にも心地よくきいている空調が、やたらに神経を鈍らせる。
    怠惰に寝ころぶ体にひっそりとまとわりついてきた睡魔にイツコは目を閉じた。




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▲[ 4577 ] / 返信無し
■4578 / 1階層)  とらわれの身 2
□投稿者/ 鳥子 一般人(2回)-(2007/08/30(Thu) 22:49:48)
    2007/08/30(Thu) 23:36:07 編集(投稿者)

    水を流す音が聞こえる。
    ふんわりとした卵の香り。
    浅い眠りの海に漂ってきたそれらを感じ、イツコは勢いよく体を起こした。
    「はーちゃん!」
    小さく叫んでキッチンへ急ぐ。
    そこには鼻歌まじりに軽快にフライパンを揺するこの家の主がいた。
    イツコが寝ている間に帰って着替えたのであろう彼女は、
    ゆったりとしたブラウンのパンツにオフホワイトのカットソーという部屋着姿だ。
    イツコはキッチンの入り口でほんの少し躊躇してから裸のまま四つん這いになり、
    後ろ姿だけしか見えないハルカの足元へすり寄った。
    「はーちゃん…おかえりなさい…」
    小さな声で呟いて、イツコはハルカの足元からその顔を見上げる。
    煌々とついた電気が、目覚めたばかりのイツコの目には少し眩しい。
    コンロの火を止めてから、ハルカはゆっくりとした動作でイツコを見下ろした。
    「…ただいま、ネコちゃん。いい子にしていた?」
    問い掛けと共に唇の両端を優しく上げて微笑む。
    イツコは恥ずかしそうに表情を緩ませ、大きく何度も頷いた。
    そして何も言わず、ハルカの足首に唇を寄せる。
    「おりこうさん」
    ゆっくりとかがんで目線をイツコと同じにしてから、ハルカはそっとイツコの頭を撫でた。
    柔らかな耳元にくちづけるとイツコは可愛らしくため息をもらす。
    ハルカはまた微笑んでから立ち上がり、「今日はオムライスだよ」と優しく告げた。

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▲[ 4577 ] / 返信無し
■4586 / 1階層)  とらわれの身 3
□投稿者/ 鳥子 一般人(3回)-(2007/09/06(Thu) 22:06:53)
    2007/09/07(Fri) 00:17:09 編集(投稿者)

    イツコの食事は床。ダイニングテーブルのすぐ横に置かれる。
    道具を使うことは禁じられていて、手をついて獣のように口で食べる。
    最初の頃は慣れず、大層苦しい思いをして食べていたイツコだが、
    数日を経て少しずつそれにも慣れてきた。
    その様子を時々横目で見ながらハルカはテーブルの上に乗せた食事を、当たり前に食べる。
    今日は、差し出されたイツコ用のオムライスにケチャップで大きく「LOVE」と書かれていた。
    イツコが思わず顔を上げてハルカを見上げると、彼女はいたずらにニヤリと笑った。
    今日のハルカは機嫌がよさそうだ。
    頭の右隅でそんなことを、左隅でハルカの料理の腕前への賞賛を思いながら、イツコはゆっくりと胃を満たしていった。

    この生活が続けられるのもあと数日。
    イツコの夏期休暇が終わってしまうまで。
    まるで時間の存在しない空間のような部屋であるのに、終わりはあるという事実。
    食事が終わってもなお、イツコはただ、空っぽになった皿を眺めていた。


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▲[ 4577 ] / ▼[ 4596 ]
■4594 / 1階層)  続きが気になります
□投稿者/ ☆ 一般人(1回)-(2007/09/10(Mon) 22:42:32)
    こういう話大好きです。これからも頑張ってください

    (携帯)
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▲[ 4594 ] / 返信無し
■4596 / 2階層)  ☆さま
□投稿者/ 鳥子 一般人(5回)-(2007/09/11(Tue) 12:07:52)
    ありがとうございます!
    亀より遅いスローペースですがなんとか続けたいと思うので、どうぞお付き合いくださいませ♪

    (携帯)
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▲[ 4577 ] / 返信無し
■4595 / 1階層)  とらわれの身 4
□投稿者/ 鳥子 一般人(4回)-(2007/09/11(Tue) 12:03:13)

    ◇◇◇

    「雨…やみそうにないみたいね」
    先に口を開いたのはハルカだった。
    イツコは話しかけられたことに気付くのに数秒を要したが、ゆっくりと窓の方に目をやり、
    街頭に照らされた街路樹たちが雨に打たれて踊っている様を見て「そうですね…」と呟いて嘆息した。
    「雨、嫌いなの?」
    ハルカの問いに、イツコはきまりの悪そうな顔をした。
    「嫌いじゃないですよ。ただ、天気予報で夜は雨ってしっかり見たくせに、家を出る前にはすっかり忘れちゃって…」
    傘も持たず、仕事が終わって早々のんきにこのバーへ来てしまったという訳だった。
    「雨が降り出してから思い出したの?」
    品良く薄化粧を施した顔に溢れてしまいそうな笑いをこらえながらハルカがまた尋ねる。
    「よりによって今日は会社で上司にさんざっぱらイヤミ言われた上に雨を忘れて今朝おろしちゃった新しい靴のせいでかかとは靴擦れ!ふくらはぎもむくんでパンパンだし…今日は厄日かもしれません」
    眉の両端を下げて泣きそうな顔を作ったイツコを見て、ついにハルカは声を上げて笑ってしまった。
    「そりゃどうしようもない。帰るのも憂鬱よね。」
    ひとしきり笑ってからハルカは改めて笑顔を浮かべた。
    「でも、今日は悪いことだけじゃありませんでした。今夜ここに来てよかったです。あなたと話せたから。足が痛くても濡れて帰ってもハッピーな気持ちで眠れそう」
    少しはにかんだようにイツコが笑う。
    ハルカはキョトンとしてイツコの顔を見た。そして、優しく目を細める。
    「あなた、面白い子ね。私はハルカ。あなたの名前は?」
    イツコは真っ直ぐ見つめる柔らかな目線に自分のそれを絡ませながら答える。
    「私は…イツコっていいます…」
    その時、イツコとハルカそれぞれのグラスの氷が立て続けにカラン、と音を立てた。

    (携帯)
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▲[ 4577 ] / 返信無し
■5408 / 1階層)  とらわれの身5
□投稿者/ 鳥子 一般人(1回)-(2008/07/26(Sat) 01:30:18)
    ◇◇◇

    「そんなにお皿を見つめたって何にも出てこないわよ?」
    空になった皿を手に取り、ハルカはいたずらっぽく肩を竦めた。
    見下ろすイツコの目は力なく潤んで見える。
    ゆるやかに微笑んだイツコの頼りなげな唇を目にして、
    ハルカは自分の背筋がゾワリとしなるのを感じていた。
    手から滑り落ちそうになった皿をギリギリで掴み、
    何事もなかったかのように流しへ運び、自分の使用した食器と共に洗浄する。
    洗剤のライムの香りが鼻腔を通り抜けると、
    ハルカは気持ちを落ち着けるように大きく深呼吸した。

    食器をすすぎ、水切り籠におさめていると、ふと足元に温かさを感じる。
    「…なにしてんの?」
    見下ろせばイツコがふくらはぎの辺りに軽く噛み付いていた。
    返事はなく、ブラウンのパンツがイツコの口元から段々と色を濃くする。
    「…なにしてんの?」
    もう一度問いかけるとイツコはゆっくりと口を離し、返事のかわりに
    自らの唾液で濡れた唇をほんの少し開き、濡れた目線をハルカに投げかけた。
    それを受け取りハルカはそっと鼻先で笑い、
    フローリングに座り込み、まるでお座りをしているように手をつくイツコの左肩に自分の右足をかけ、
    力を込めた。
    イツコの細い体はしなり、一瞬あばらを浮かせた後、背中からフローリングにぶつかる。
    ハルカはゆっくりとかがんで、上半身をそのまま横たえたイツコに優しく囁いた。
    「ね…イツコ。先にベッドに行きなさい」
    ほんの数秒の間をあけてから、寝返りを打つようにうつぶせになってから緩慢な動作で、
    四つん這いでベッドルームに向かうイツコを、ハルカは満足そうに眺めていた。
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