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■4595 / 1階層)  とらわれの身 4
□投稿者/ 鳥子 一般人(4回)-(2007/09/11(Tue) 12:03:13)

    ◇◇◇

    「雨…やみそうにないみたいね」
    先に口を開いたのはハルカだった。
    イツコは話しかけられたことに気付くのに数秒を要したが、ゆっくりと窓の方に目をやり、
    街頭に照らされた街路樹たちが雨に打たれて踊っている様を見て「そうですね…」と呟いて嘆息した。
    「雨、嫌いなの?」
    ハルカの問いに、イツコはきまりの悪そうな顔をした。
    「嫌いじゃないですよ。ただ、天気予報で夜は雨ってしっかり見たくせに、家を出る前にはすっかり忘れちゃって…」
    傘も持たず、仕事が終わって早々のんきにこのバーへ来てしまったという訳だった。
    「雨が降り出してから思い出したの?」
    品良く薄化粧を施した顔に溢れてしまいそうな笑いをこらえながらハルカがまた尋ねる。
    「よりによって今日は会社で上司にさんざっぱらイヤミ言われた上に雨を忘れて今朝おろしちゃった新しい靴のせいでかかとは靴擦れ!ふくらはぎもむくんでパンパンだし…今日は厄日かもしれません」
    眉の両端を下げて泣きそうな顔を作ったイツコを見て、ついにハルカは声を上げて笑ってしまった。
    「そりゃどうしようもない。帰るのも憂鬱よね。」
    ひとしきり笑ってからハルカは改めて笑顔を浮かべた。
    「でも、今日は悪いことだけじゃありませんでした。今夜ここに来てよかったです。あなたと話せたから。足が痛くても濡れて帰ってもハッピーな気持ちで眠れそう」
    少しはにかんだようにイツコが笑う。
    ハルカはキョトンとしてイツコの顔を見た。そして、優しく目を細める。
    「あなた、面白い子ね。私はハルカ。あなたの名前は?」
    イツコは真っ直ぐ見つめる柔らかな目線に自分のそれを絡ませながら答える。
    「私は…イツコっていいます…」
    その時、イツコとハルカそれぞれのグラスの氷が立て続けにカラン、と音を立てた。

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