□投稿者/ くるみ 一般人(2回)-(2011/06/10(Fri) 22:54:57)
| 女性に連れてこられたのは、いかにも高級そうなマンションだった。 本来びしょ濡れの身体、しかも裸足で入っていいような場所ではない。 しかし女性はそんなことを気にしない素振りでキーを解除すると、エレベーターに乗り込んだ。
高級マンションの最上階の1番奥の部屋に入ると、女性はすぐにバスタオルを持ってきた。 真っ白いフワフワのタオルで濡れた髪や身体を拭いてもらう。 そして、温かいシャワーを浴びてくることを勧められ、少女は素直に浴室へと向った。
少女がシャワーを浴び終わると、濡れたワンピースは洗濯機にかけられていた。 代わりに着ろ、ということだろう、カゴの中に服が置いてあった。 広げてみるとそれは、女性のものらしき黒いワンピースだった。 着てみるとちょっと大きく、膝下まであったが、そこはしょうがない。
リビングへ行くと、女性が温かいココアを入れてくれていた。 両手でマグカップを持って飲んでいるのを、女性も同じものを飲みながら見つめている。
「そういえば、自己紹介がまだだったわね。私は菅野秋佳、よろしくね」
スガノアキカ、スガノアキカ、と何回か頭の中で名前を反復してみた。 『秋佳』なんて、あんまりいる名前じゃないな、と思った。
「あなたの名前は何?」
優しい微笑みと共にそう聞かれた。 少女は少し躊躇ったが、口を開いた。
「わたしは・・・・紺」
「紺?変わった名前ね・・・・名字は?」
「・・・・大谷」
オオヤコンね、と、女性は微笑んだまま頷いた。
雨は、まだザァザァと五月蝿く降っていた。
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