| 日曜の渋谷。外は快晴。うだるような暑さの中でもこの街には人が溢れてる。
交差点を歩く人、人、人。
そして私の居るビルの外には、待ち合わせをしているらしき人が壁を覆う様に並んでる。 クーラーの効いた店内で、外にいるある人物を眺めながら暇つぶしにコーヒーを飲む。
その人物は照りつける太陽に目を細めながらも、人並みにに目を凝らしていた。
華奢な肢体、色素の薄そうな白い肌、薄茶の髪と瞳。 目が大きく黒めがちで長い睫に縁取られ、薔薇色の唇はぷっくりとしていて西洋の人形のよう。
既に何人もの男性に声をかけられていて、その度に困った表情を浮かべてる。
あ、ほらまただ。
それを横目に見ながら、コーヒーの残ったコップを捨て外へ。
彼女は未だに戸惑いながら男性と話している。 唐突に表情が変わった。頬は薔薇色に染まり、花の様に微笑んで人ごみに向かい手を振っている。
「ごめんね、待たせた?」 「うぅんっ、大丈夫、待ってないよっ」
待ち人の下へ駆け寄る。
そう、私の腕の中へ。
もう彼女の目には先ほど話をしていた男性の事など見えていないのであろう。
可愛い茉莉。
「暑かったでしょう?」
「大丈夫だよ、暑いの平気だもんっ」
冬にも同じような事言ってたなと、思い出してまた愛しくなってしまう。
「何笑ってるの??」
ちょっぴり不満げに、私の服の裾を引っ張る。
「何でもないよ、ただ茉莉が可愛いなーって思っただけ」
途端に喋るのをやめて、不満げなフリをする。照れてるのバレバレなのに。
恥かしがりやの茉莉。
「今から行けば、映画始まるちょっと前ぐらいに着けるかな?」
ここは話をそらしてあげようね。
「そだねっ(^^)ポップコーン買わなきゃ」
せわしなく私の横で変わる表情を眺めながら歩きだす。 小柄な茉莉を人ごみの中に置いていってしまわぬ様、左手を後ろに差し出した。 体温の高い小さな手がソレをぎゅっと握りしめる。
嗚呼 愛しい茉莉。
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