| 第七話 冴 診察室 診察台から降りた後も、ショックは消えなかった。これが、聖なる契約をするための試練だと思っても、冴にとっては、想像していた以上の恥ずかしさだった。 そして死ぬほどの恥ずかしさの中で、初めて経験した性感に戸惑っていた。消毒液が秘部の粘膜に吹き付けられた時に感じた、快感。あれが今まで封印されてきた、女の悦びなのだろうか?ガーゼの下の秘部は、まだじんわりと疼き濡れていた。 「止めて。お願いです。いや、見ないで」 玲の悲鳴で、冴は我に返った。診察台の上で拘束された玲の脚が、開かれていく。鎌田が医療器具を用いてラビアを開いて、覗き込んだ。 冴にも、ピンク色の粘膜が露出されるのが見え、あわてて目を逸らした。私も、こんなふうにして、診察された。そう考えると、また顔が火照って来る。 「クリトリスが腫大して、膣周辺に分泌液が多く出ています。性的興奮の所見です。粘膜に何度も擦ったような跡があります。性行為の痕跡を疑います」 鎌田の説明に驚いて、顔を上げる。冴の目に再び玲の性器が見えた。無惨に開かれた陰唇から秘部が覗いていた。赤く充血した粘膜が濡れていて、当てられたライトを反射している。 「どういうことですか?」冴の質問に、鎌田が苦笑をうかべた。 「平民の言葉で申し上げると、あそこが愛液で濡れていて、セックスをした跡がある、という事です」 冴は驚いて玲の顔を見た。玲は涙目になって首を振っている。 「嘘です。私はそんな事、したことないです」 「じゃあ、どうしてこんなに濡れて、クリトリスに擦れたあとがあるのですか?玲様」 玲は答えられない。 驚きの後、冴に嫉妬と怒りの感情が押し寄せた。神聖な契約を結ぶために、自分は、死ぬほどの恥ずかしさに耐えたのに、玲が他の人と寝ていたなんて。ずっと愛していたのに、信じていたのに。 「相手は誰?男の人?女?」 冷静さを失った冴が、涙声で詰め寄る。 「信じて。私何もしていない」「でも先生が、行為の跡があるって。どういう事?」 美しいカップルが、泣きながら言い争っているのを鎌田が遮った。 「冴様。落ち着いて下さい。玲様に正直になっていただく方法がございます」 鎌田が取り出したのは、ゴム製の指サックだった。冴の人差し指に装着すると、医薬庫から取り出したゼリーを表面につけた。 「媚薬の一種ですが刺激が強いので素手では触れないで下さい。そのお指を玲様のここに挿入するのです」 鎌田が指差したのはアヌスだった。開かれた陰唇の下に露わになっている。 「だめ、許してください。そんなところ触らないで」 玲の悲鳴は無視され、冴の指がアヌスに入って行く。冴の目つきが変わっていた。嫉妬と初めて体験した性感で、今まで封印されていた性欲が高まっている。 「痛い、いや、はあっ、あっ、許して、もうだめ」 「奥まで入れてから、指を回転させるように動かしてください。媚薬の効果が高まり、粘膜が刺激を求めるようになります」 「お尻が熱い、痒くなって、変になりそうです、許して、ああっ、ああっ」 冴はいつの間にか、夢中になって玲のアヌスに入れた指を動かしていた。肛門が収縮し、サックをはめた指が締め付けられている。冴の秘部も疼きだし、ガーゼの下が濡れてきているのが感じられた。指の動きに合わせて玲の喘ぎ声が大きくなり、拘束された診察台の上で腰をくねらせ始めた。開かれた秘部から愛液が滴り落ち、冴の手まで濡らしている。 「これが性の悦びです。お尻の穴に入れられた指の感触はおぞましいものですが、媚薬の刺激で次第に快感に変わります。もう少しで果てますが、ここで指を抜いてください」 鎌田の指示で指を抜く。指が抜かれた後も、玲は腰をくねらせる事を止められなかった。 「躰がおかしくなりそう。お尻の中が、痒くて、熱くて、あそこも変な感じがして、お願い、助けて」 玲が、恥ずかしそうな声で哀願し鎌田を見つめた。 「正直に、お話ください、どうされたいのです」 「お尻にまた指を入れてください、途中で止めないで」 「最後まで、して欲しければ本当の事をおっしゃって下さい。なぜ性行為の跡があるのです?」 もう我慢できなかった。プライドを捨て、泣きながら告白するしかなかった。 「自分でしました。オナニーをしていたのです、助けて、もうだめ」 「玲様は冴様を裏切っては、おられませんでした。お助けになってください」 「ごめん、玲」 冴は指をアヌスに再び挿入すると、指を動かしながら、玲に抱きついた。診察台の上で二人の裸体が重なる。 冴は、無意識のうちに自分秘部を玲の秘部に重ね、抱きしめていた。そして、腰をくねらせている玲の喘ぎ声と一緒に、冴も声を出していた。 腰をのけ反らして、玲が果てた時、冴は我に返った。鎌田や看護師の見ている前で、全裸で抱き合っていた事に気づき、あわてて体を離す。恥ずかしさで真っ赤になり顔を上げる事が出来なかった。 「ここまでにします。神聖な契約の前に肌を重ねるのは、どういう理由があろうとマザーに対する裏切りとなります。本日の事は監察院に報告します。監察院から通達が来るまで、お二人とも自宅に謹慎していてください」 鎌田の声が響き、赤く火照っていた裸の二人が、今度は青ざめた。
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