| 第十八話 文と梨花 学院 囚人番号23番は、文という名の伯爵令嬢だった。 もともと、真面目で世間知らずの深窓の令嬢が、古参のシスターに目をつけられたのが、悪夢の始まりだった。 貴族の娘達は、結婚や聖なる契約の前に、貴族女性としてふさわしい教養を身につけるための教育を受ける。教官はシスターと呼ばれる女性達で、貴婦人達の間ではマザーに次いで尊敬される立場にあった。 梨花は、美術を教える教官の主任の地位にあった。彼女は、長い経験で、性をタブー視して育てられた娘達の中に、自分と同じ、ある種の性癖を持つものがいるのを知っていた。 若い頃に離婚してから独身を続けている梨花は、いつも地味な格好で絵画の指導をしていた。堅物の美術教師と周囲に思われていたが、性欲の対象になる娘をいつも物色していた。 清楚な美しさを持つ文は、梨花の好みだった。 あの日、梨花は与えられた写真をスケッチして、人物像を書く課題を学生達に与えた。 他の学生達には、普通のスナップ写真を渡したが、文にはかねてから用意していた特別な写真を渡した。 梨花が以前、平民の風俗業者から手に入れた写真で、若くて美しい女が下着姿で縛られている。性器は露出していないが、縄を巻かれた乳房や太腿が露わになっている。 梨花は注意深く文の反応を観察した。 文は、驚いた様子で、写真を周囲から隠すようにして見つめ始めた。頬を紅潮させ、じっと見つめている。 他の学生が、スケッチを始めても、魅せられた様に写真から目を離さない。 梨花が、自分の席まで来ると、不安そうな表情で顔を上げた。 「気に入ってくれたみたいね。自分がこんな風に縛られるのを想像しているのでしょう?」 「先生、私は」 「その写真はあなたにあげるわ。他の人に見つからないように」 普通のスナップ写真を机に置いて続けた。 「授業の課題はこれで。最初の写真に興味があれば明日の放課後に、私のアトリエに来なさい」 そうささやいて、梨花は教壇に戻った。 翌日の夕方、文がアトリエに来た時、梨花は大きなキャンバスの油絵に取り組んでいた。 絵を見て、文は息を呑んだ。 あの写真と同じように、縛られた若い女性が描かれていた。下着姿ではなく全裸で、縄で磔台に縛られている。 顔と開脚された股間がまだ描かれていなかった。 文は、絵から目を離すことができない。 「来てくれると思ったわ、あなたをモデルにして描き始めたの」 梨花は、筆を置いて立ち上がった。 キャンバスの前に、十字架の形をした磔台が用意されていた。 あの写真や絵に描かれたのと同じ形をしている。 縄を手にした、梨花が近づいてきた。 文は、自分の予感に恐怖したが、逃げる気持ちにはならなかった。 恥ずかしい格好で縛られる事の恐怖は、甘美な誘惑になっていた。 梨花は慣れた手つきで、縛り始めた。 両手と片足を磔台に拘束した後、もう片方の足首に縄を巻いた。十字の腕の部分に引っ掛けて引くと、片足が上に上がり、開脚の姿勢になる。 スカートがたくし上がり、白い太腿が露わになった。 文の小さな悲鳴が上がる。
|