ずっとここにいて・・・1 佳奈美 2003/06/18(Wed) No.1416
〔バシッ!!〕 突然あたしの頬に平手打ちが飛んできた。 夕日の差し込む教室にその音だけが響く。 あまりの痛さにその場に倒れてしまう・・・ あたしの頬を叩いた子の名前は江梨子。 気が強く、クラスでも割と恐がられてる存在の子。 そんな江梨子に告白されてから二ヶ月目の事だった 崩れたあたしを江梨子は見下ろしながら言った。 「全部知ってるんだから!あんたが×高の男と付き合ってたこと!そいつと、あたしとで二股かけてたんでしょ?!」 なぜ知ってるの? あたししか知らないあなたへの秘密を。 ずっと床に放心状態で座っているあたしの制服を、江梨子は無理やり脱がしにかかる。 「止めて!!こんなとこで脱がさないでよ!誰か来たら・・・んんっ」 抵抗するあたしの口を手で塞ぎながら江梨子はさらに制服を脱がしてくる。 かなり頭にきているせいか、江梨子の力には勝てない。 そのままブラウスのボタンをブチブチとはずされ、まるで男にレイプされてるかのようなカッコになった。 体中を江梨子の平手打ちが襲う。 泣きながらあたしは江梨子に許しを乞う。 「ごめんなさい、もう二度と浮気なんかしないから!江梨子がいないと・・・あたし・・」 ぼろぼろのブラウスの胸元を隠すことも忘れ、あたしは江梨子の足にしがみついた。 そんなあたしの体を江梨子は蹴り飛ばした。お腹に鈍い痛みが走る。 けど、そんなこと気にしていられない。 男はあくまでも浮気相手。 江梨子には変えられない男はただのオモチャなんだ・・・。 「ねえ・・・、お願い。許してよ・・・お願い・・」 けれど、江梨子は涙をぼろぼろ流すあたしに、とんでもない言葉を残していく。 「男とヤったあんたの体なんかいらないよ、あんたがあたしとよりを戻したくても、あたしはあんたとなんか二度と恋人になりたくないわ」 そういい残すと江梨子は教室から出て行ってしまった。 廊下には江梨子の足音が響いてた・・・。
もう二時間くらいのが過ぎたのか、窓の外は真っ暗になっていた。 暗い教室に、月明かりで照らされたあたしの体だけが浮かび上がる。 〔カッ・・カッ・・〕誰かの靴の音がする。 見回り・・? 三つ隣の教室の扉が開く音が聞こえてくる。 こんなカッコ見られたら・・。 妙な恐怖感があたしを襲う。 〔ガラガラガラ・・・〕隣の教室を歩く音・・・ どうしよう、見つかっちゃう・・ もう動く気力もなく、あたしは目を閉じてその場にうずくまった 〔ガラガラ・・・〕 「だれ?大丈夫?!」 うずくまる人影を発見すると、その人は走り寄ってきた。 あたしの体を起こし、その人はあたしが誰なのかを確認する。 「佳奈美・・ちゃん?」 優しい声があたしの耳に届く。 うっすらと目を開けると、そこには担任の寺澤先生がいた。 「佳奈美ちゃん、どうしたの?お腹いたい・・っっ!!」 あやしのカッコに気ずいたんだろう、先生はあたしに着ていた上着をかけてくれた。 あたしの体にある無数のあざも見ていたのに、何も聞かなかった。 保健室にあたしを連れて行き、体を後ろから優しく拭いてくれた。 「あ〜、しばらくは痕が残っちゃうけど大丈夫☆ちゃんと綺麗に消えるから」 何も話さないあたしを気ずかってか、先生は明るくあたしに話し掛けてくれる。 体を拭くのを終えると、先生は水を流すため立ち上がった。 先生の背中を目で追う。 〔ジャー・・バシャバシャ・・〕 水の音にまぎれる様に、あたしはぽつりと言った 「江梨子と別れちゃった・・・」 ジャージャー流れていた水道が、先生によって止められた。 「そう・・・、斉藤さんと別れちゃったのね・・。」 急に涙が溢れてきた。 やっと止まったのに、先生のやさしい声が痛かった・・・。
散々寺澤先生の胸の中で泣いた。 あたしの涙で先生の服はじっとりと湿ってしまった・・。 やっと落ち着きを取り戻したあたしは、急に恥ずかしくなって先生に背を向ける。 あたしは背を向けながらだけれど、先生に思い切り感謝の気持ちを込めながら言った 「ありがとう、先生・・。」 先生の姿は見えないけれど、なぜだかあたしを見守っていてくれるような視線を感じた。 二ヶ月前の、江梨子に告られた時の夕方の光景がまぶたに浮かんできた あのころも先生と二人きりでこの保健室にいたんだ。 先生とあたしは入学当時からすごく仲がよくて、友達同士みたいな感じで話をしていた。 あたしが困ったとき、悲しいとき、先生が困ったとき、悲しいとき、全部お互いに話すようにしてた。 だからあたしは江梨子の事だって先生に相談した。 夕方のやわらかい日差しを浴びながらあたしは後ろで書類の整理をしてる先生に話し掛けた。 「ねえ、先生・・・。」 カリカリと先生のペンが動く音がする 妙な雰囲気が保健室中に広がっていく。 あたしは先生にばれないように、ゆっくり深呼吸をしながら言った 「あのね、あたし・・・・江梨子に告られたんだけど・・・」 一瞬先生のペンの動きが止まったけど、またすぐに動き出してから、先生はいつもと変わらない口調で言った 「そうなの・・・。斉藤さんはすごく可愛いし、佳奈美ちゃんをリードしてくれそうな感じもするから、いいんじゃないかなぁ?」 あたしの顔にぬるい風があたる。 あたしは窓から離れて先生の前に座りなおした。 「ホンとにそう思う?女の子だよ?」 先生はクスっと小さく笑いながら 「斉藤さんは、きっと佳奈美ちゃんが男でも女でも好きになってたんじゃない?好きになった人がたまたま女の子だっただけで・・・。 女の子同士だから好きになっちゃ駄目って決まりはどこにも無いのよ? 大事なのは気持ちよ☆」 先生は可愛い顔に笑みを浮かべながらそう言った。 「大事なのは気持ち・・・かぁ・・・。」 「大事なのは気持ち」なんて、よくある話だけど、先生がそういったら ホンとにそんな気がしてきて。 あたしはその夜江梨子に電話して付き合うようになった・・・。
学校から帰る頃には雨が降り出していた。 歩いて帰るから、と断るあたしを無視して先生はあたしを車に詰め込んだ。 先生に家まで送ってもらい、あたしは疲れた体をベッドに放り投げる。 一階の台所では母が夕飯でも作ってるんだろう。規則正しい包丁の音が、床を通じてあたしの耳に届く。 今日は食欲なんか出てこないと分かっていたからあたしは夕飯を食べない事を母に伝える為、一階に下りていった。 金色のノブを回し、母がいる台所へと入っていく。 「お母さん、あたし夕飯いらないから・・・。」 母が振り向いてあたしに文句を言ってくる。 うるさくなる前にあたしは再び二階の自分の部屋へと戻っていった。 毎日江梨子とメールしていた時間が、急にからっぽになったかのような 錯覚におちいる。 誰からもメールが来ない携帯・・。 持ってても意味ないんじゃないか?とまで思えてくる。 携帯を床に放り投げようとした瞬間に、メールの着信音がなる。 ・・・・誰だろう。 江梨子の着信音じゃなかっただけに、メールへの期待が薄らいだ。 〔パカ・・・〕 ゆっくりと携帯を開き、メールを確認する。 メールの送り主は寺澤先生だった。 『こんばんは、今日は斉藤さんのことでとても疲れているわね・・。 佳奈美ちゃんが泣いてるとき、あたしはただ、佳奈美ちゃんを抱きしめてあげることしかできなかったわ・・・。 何も言えなくて、うまく慰めてあげる事ができなかった。 それと、こんなことメールで言うのは卑怯なことかもしれなんだけど・・ 佳奈美ちゃんが斉藤さんのことで苦しんでいる時、何度も斉藤さんからあなたを奪いたかったの・・ この意味・・、わかるよね?』 メールはそこで終わっていた。 あたしは先生に伝えたいことが急にのどから込み上げてきた。 メールを送るなんてもどかしい。 あたしは急いで先生に電話した。 雨が激しく窓ガラスを叩いている・・・。
携帯のボタンを押す手が震えてる。 おかしいよ、江梨子にふられて落ち込んでたはずなのに・・。 先生からのメールがあたしの胸をもやもやした気持ちにさせる。 〔トゥルルルル・・・・トゥルルル・・・〕 ??、受話器を当てていない耳からも電話の呼び出し音が聞こえてくる どこから?お母さんの携帯でも鳴ってるの? うぅん、お母さんの携帯の呼び出し音はチャイムなんかじゃなかった。 お母さんはいつもお気に入りの音楽を着メロにしてたもん・・・。 じゃあ、・・誰の? 音のするほうに耳を傾ける。 窓のほうから・・・・・? ベッドから降りてゆっくり窓に近ずく。 雨で外が見れないからあたしは窓の鍵を開けて、外の様子を確認する。 〔カラカラ・・・〕 車がある、あれは・・先生の車だ。 電話の着信音がまだ鳴っている。 車の中じゃない、どこ? あたしはたまらなくなって窓から身を乗り出しながら叫んだ 「先生・・・・、先生!!」 返事が無い。でも近くに先生はいる。 あたしは階段から落ちそうになるくらい足をもつれさせながら一階に 降りていき、靴もはかずに玄関を飛び出た。 涙が出てくる・・なんでよ、早く先生の姿が見たいのに 失恋して、先生の胸で泣いた。 泣くほど好きな子に降られた今日なのに 今は先生が欲しくて仕方が無い。 「せん・・せぇ・・。」 〔かちゃ・・・〕 電話が取られた。 【・・・・・・・・】 「先生・・、先生どこ?。」 涙や鼻水をすすり上げながらなんとか先生に話し掛ける 【・・・・・・】 「っっ・・・なんか・・しゃべって・・」 〔ジャリ・・・〕砂がこすれる音がした。 目の前には二時間ほど前に見た靴があった。 あたしなんかよりずっと濡れて、服なんかも下着が見えるほどだった。 「先生・・・。」 あたしは無意識に携帯を握り締めながら、そのまま受話器に話し掛けた 【こんばんは・・・】 先生の声が受話器越しに聞こえた。その瞬間また涙が出てくる。 たまらずあたしは目の前にいる先生に抱きつき、先生の唇に自分の唇を押し付けた。 そうなんだ、あたしが好きだったのは・・・先生なんだ・・・。
ずぶぬれの先生をあたしの家に招き入れる。 玄関ですれ違いざまに母親に会った。 ずぶぬれの二人を見て母はかなり驚いていたが、急ぎの用があるらしく、先生に軽く挨拶をし 先生にお風呂に入っていただくようにとあたしに告げて出て行った。 ポタポタと先生のスカートから滴がしたたり落ちる。 あたしは先に家に上がり、お風呂場からバスタオルをもって来て先生に渡した。 「・・・体、拭きなよ・・・。」 先生はこくりとうなずいてあたしの手からバスタオルを受け取った。 長い髪をごしごしと拭き、濡れた服も抑えるようにして拭いていく。 濡れて透きとおったような服が先生の白い肌に張り付いている。 なかなか玄関から家に上がろうとしない先生の手を無言で引いていく。 先生はとまどいながら、 「いいよ、佳奈美ちゃん、あたしすぐに帰るから・・。」 聞こえないふりをした。 先生が欲しい・・・。
遠慮する先生を脱衣所に入らせる。 先生が逃げられないようにあたしが出入り口側に立つ 悪いことをした子供みたいにおどおどした先生は、 いつもみたいに明るく話し掛けてくることなく、 ただ、ひたすらソコから動こうとしなかった。 そんな先生を見ていたあたしは、先生にこんな事をしているのが 恥ずかしくなって、何だか悲しい気持ちになった。 「先生、ごめん・・・。あたし、勝手だよね・・・。」 精一杯先生に笑顔を向けた。下まぶたがぴりぴりする。 涙を見られる前に先生の前から消えたかった。 「バスタオルは棚の上で・・・、シャンプーとかは勝手に使っていいから。あ、着替え・・・は・・後で持っていくか・・・ら。」 嫌だ、見られたくない、涙声になってる。 我慢しようとするほど、涙はあたしの目から落ちていく。 先生があたしにの所へ近ずいてくる。 「佳奈美ちゃん・・。」 先生の手が肩に触れた。その手は冷たくて、震えてて。 その感触が余計に苦しくて、あたしは脱衣所のドアを開けて一人で二階にあがった。 「う・・・あっ・・あぁぁ・・。」 じんわりと枕にあたしの涙がしみこんでいく。 なんで・・・、あたしが悪いの? 江梨子と別れた日にすぐに好きな人を代えたから? しかたないでしょ? だってホンとに好きなのは先生だったんだから・・。 三十分くらい経ったのか、お風呂から上がったのか脱衣所のドアが閉まる音がした。 あたしを探してるんだろう。 下の階のドアを開ける音が途切れ途切れに聞こえてくる。 二階に上がってくる音。 〔トン・・・トン・・トン・・〕 「佳奈美ちゃん・・。どこ?・・ココ?。」 物置の部屋を開けたみたい。 ドアはあたしの部屋にたどり着くまであと一つしかない無い。 ・・・・?ドアを一つ素通りした? 〔コンコン〕 あたしの部屋をノックする音が聞こえる。 あたしはベッドから動かないでいた。 〔コンコン〕 「・・・・・。」もう帰ればいいのに・・。 あたしなんかほっといて。 〔コンコンコン〕 「・・・もう、帰って。」 ノックが止んだ。帰るんだ・・。 「・・・・・・。」 五分くらい経ってから、あたしは勇気をだしてドアに向かって声を出した。 「先生・・・。」 返事が無い。やっぱり帰ったんだ。 しばらく放心状態だったけれど、あたしは確認のためにベッドから起き上がった。 〔カチャ・・・・〕 ゆっくりドアを開ける。誰もいなかった。あたしは最後の 期待を裏切られてドアノブを握ったままその場に座り込んだ。 「いるわけないいじゃん・・・・。」 自分で自分にそう言い聞かせた。 もう期待なんかしたくない。 けれど、あたしの冷え切ったドアノブを握る手に、温かい温度が伝わってきた。 ぼんやりと上を見上げると、そこにはいつもの顔で笑った先生の顔があった。
先生の体温が優しくて、安心する温度をあたしに与えてくれた。 まさか、まだ側にいてくれてたなんて思いもしないから、あたしは何だか気恥ずかしくてうつむいたまま何も話せないでいた。 「くす・・。」先生がいたずらっぽく笑う。 スッと体をかがめ、先生はあたしの目線の高さに合わせるようにしゃがみこんだ。 ふんわりとあたしの髪に手を伸ばし、まだ濡れている髪を梳くように撫でる。 優しい、気持ちい感覚があたしに与えられた・・・。 目を閉じて先生に体を預けるように寄りかかる。 先生の胸の音がトクン・・トクン・・と聞こえてくる。 突然、ぎゅっと体を包まれた。あたしの体が無意識にこわばった。 先生は一瞬見せたあたしの反応に勘ずいて、抱きしめる腕をゆるめた。 そして、確かめるように今度は優しく抱いてくれた。 先生の頭があたしの頭の上にある。 「ねえ、佳奈美ちゃん・・。」 先生の体中に声が響いてる。あたしは何も言わずに先生の胸に耳を押し付けた。 「佳奈美ちゃん、さっきはごめんね・・・。」 その言葉を聞いたとたん、今までの優しい気持ちが姿を消し、さっきの出来事が頭の中を支配していく・・・。 ずきっ・・と、何かが胸に刺さった気がした。 「佳奈美ちゃんの気持ちを混乱させちゃって、とても悪い事をしたと思ってるわ・・。」 もう・・・言わないで・・・。 先生が次の言葉を言う前に、あたしは体をねじらせ先生の唇を塞いだ。 何も聞きたくない。愛情で先生にキスをしたのでは無い為、罪悪感が胸をかすめる。 先生は、あたしの気持ちなんか知るはずも無く、あたしの体をさらに強く抱きしめ、激しく舌を絡めてきた。 「んっ・・・んんっ!。」 先生の予想もしない反応にあたしは少し驚き、思わず抵抗の声をあげてしまった。 先生は素早くキスを止めた。 長い沈黙の中、先生は声を震わせながら言った 「佳奈美ちゃん・・・あたしの事嫌い?」 先生の震えた声が愛おしい。 ちがう・・嫌いじゃない・・。 そう伝えたいのに素直になれず違う言葉を発してしまう。 「勝手だよ、あたしが求めたときは何もしてくれなかったのに。先生みたいな人嫌いだよ」 何言ってるの、あたし・・・。 先生の顔が、みるみる泣きそうな顔に変わっていく。 違うのに・・。ほんとはココにいて欲しいのに・・・。 「出てって。」 冷たく言い放つあたしの口。 涙が先生の頬をつたっていく。 先生は何も言わず階段を駆け下りていった。 胸がぎゅうぎゅう締め付けられていく。 苦しい。 素直になりたい・・。 玄関のドアが開けられて、車のエンジン音が響く。 今度こそ先生は帰っていった。あたしとは違う痛みを持って・・・。
次の日は、あたしの気持ちとは打って変わって快晴だった。 家を出た瞬間に、健康的な光があたしの肌を照らし始める 「あつ・・・・・。」 額に手を当てて、日光を少しでも遮断しようとする。 学校へは歩いて15分くらいかかる。 その道のりの途中で、友人の桜に会った。 明るい子で、江梨子とも仲が良く、天然の茶髪でロングの髪が印象的な可愛い子だ。 桜は高い声を弾ませて陽気に話し掛けてくる。 「昨日はすっごい雨だったのに、今日めちゃ晴れてない? あたし窓開けたまま学校行っちゃって、帰ってきたらベッドがぐしょぐしょになってたんだぁ☆ で、あたし仕方なくソファで寝たんだよぉ〜。 もぅ、ソファ硬いからさぁ、首痛くなっちゃった☆ こういう時に親がいればいいのにねぇ♪。」 そうなんだ、桜は両親の浮気のことで家にいたくないと告げ、みずから一人暮らしをし始めていたんだった。 自分のことであたまがいっぱいで、自分だけがつらい思いをしているのだと思い込んでいた。 あたしは桜の明るい声につられて、なんとか話を合わせていった。 桜と教室が逆方向になるため、あたしは明るい声をだし桜に手を振った 「はぁ・・・。」 深い溜め息をださずにはいられなかった。 この扉を開けると江梨子がいるんだ。 〔ガラガラガラ・・〕 江梨子の席に反射的に目が行ってしまう。 いつも通り江梨子はそこにいた。 あぁ・・、今日も綺麗・・・。 肩下15cmくらいで、よく梳かれ艶のある髪の毛。 少し日焼けしたような茶色い肌に形のいいバストのライン。 くびれのあるしなやかなウエスト・・。 潤んだ様な色っぽい瞳・・・。 涼しげな横顔が嫌でもあたしの眼に入ってくる。 昨日までは大好きな人。 今日からはただの友達。 はたして友達でいてくれるのかが不安だった。 しばらくはあたしと話をしてくれなくても仕方ない、時間はまだまだあるから・・・。 焦らないで元通りの仲良しに戻していこう。 あたしは自分にそう言い聞かせて教室に入っていった。 江梨子があたしに気ずいて顔をこちらに向けて、すぐに顔をそらしていた行動が視界に入る。 あたしはソレに気がつかない振りをして江梨子の後ろを素通りした。 こんな時に限って、あたしは江梨子と隣の席なのだ。 仲が良かったときに、二人でクラスの子に頼み込んで席を替わってもらった事をうらめしく思う。 はぁ・・・。早く帰りたい・・・。 1日中先生の事であたまがいっぱいで、授業も全て上の空だった。 だからあたしは気がつかなかったんだ。 隣の江梨子が不敵な笑みを浮かべてあたしを見つめていたことに・・・・。
やっと終業のチャイムが鳴った。 ものすごく1日が長かったような気がする。 寺澤先生の社会の授業も、いつもなら熱心に聞いているのに、昨日の事が原因で今日はまったく頭に入らなかった。 寺澤先生も、あたしのことを一度も直視しないまま授業を、HRを終わらせていった。 あたしは教科の課題を片つけてから教室に戻った。 人が三、四人ほど残っていたが、その人たちもほぼ入れ違いざまに出て行った。ただ一人を除いて・・・。 あたしはバスの時間を気にしながら鞄に携帯を突っ込み急いで教室を出ようとした。 扉を開けようと、ノブに手をつけた瞬間に後ろで声がした。 少し低く、それでいてよく通るような江梨子の声が・・・・・。 「佳奈美、今日ちょっと残ってくんない?」 あたしが振り向くとそこには可愛らしく、けれどいたずらっぽい顔をした江梨子座ってがいた。 ぎゅっ・・と鞄の持ち手を握り締めながらあたしは江梨子に言葉を返す 「ごめん・・、今日は気分悪くて・・・。早く帰りたい。」 江梨子はあたしのが言い終わるか終わらないかの間に椅子から立ち上がり、あたしの方へ向かってきた。 ぐぐっと体が押さえ込まれるような威圧感が江梨子にはあった。 江梨子の顔があたしの首筋に近ずく。 あたしの鼓動がより一層早く波打っている。 江梨子の柔らかそうなぷるぷるした唇が開き、その口はあたしの首筋に息を吹きかけながら切なそうに言った。 「あたしが・・、きのう酷い事したから怯えてるの?ごめん・・・。 昨日は気持ちが押さえられなかったの。二度と恋人になりたくないなんて・・・。 家に帰ってから良く考えて・・・。 あたしには佳奈美が必要なんだってよく考えて分かった。 だから、お願い・・・。恐がらないでちゃんと話したいの・・・。」 ぞくぞくと背筋に快感が走る。 昨日あれだけあたしに酷いことをした人をまた好きになってしまいそうだなんて・・。 あたしが身動きしない間に、江梨子の右手があたしの腰に回る。 その手は腰を通してあたしの背中へと、指先を立てながら伸びていく。 やがて江梨子の綺麗な顔があたしの顔の近くへと近ずいていく。 あたしの瞳を一旦見つめ、確認するようにあたしの唇も見つめる。 江梨子の長いまつげが瞬くたびに妙ないやらしさが滲み出てくる。 江梨子は最初に軽く唇を重ねてきた。 あたしはそれに対して、抵抗を試みる。 しかし扉に押さえつけられ、股を江梨子の膝で割られて、大事な部分を擦られている甘い感覚に力が鈍り、その唇を振り払えないでいた。 「ん・・・んぅ・・・。」 あたしの口からは、快感に酔った声が漏れてくる。 こんな声を出すなんて・・・。 あたしが好きなのは先生だって昨日わかったばかりなのに・・・。 ぴちゃぴちゃと、お互いの唾液が混ざり合う音が教室中に響きわたる。 昨日と同じ、夕方の光が差し込む教室で・・・・。
じんわりと太陽の光がオレンジ色に変わっていく。 その光はあたしと江梨子を包むように優しく教室に差し込まれてくる。 江梨子は長いキスをあたしに与え、その一方では江梨子の膝であたしの大事な部分をぐりぐりと刺激している。 ショーツの奥からは熱く、とろけるような愛液が溢れ出してきた。 こんなに濡れちゃったら江梨子に知られちゃう・・・・。 あたしはそう感じ、とっさに身をよじらせて江梨子の手を振り解いた もう少しだったのに・・・、という江梨子のいたずらっぽい顔。 江梨子の唇からはどちらのか分からない唾液が光って見える。 あたしは、ふき取るように唇を拭いた。 その行動は、無駄だとでも言うように江梨子は一瞬笑って、再びあたし の手首を掴んできた。 「っ・・・やぁ・・止めて江梨子っ・・・!!」 江梨子の唇により声が閉ざされた。 くちゅくちゅと舌が口内を這いまわり、歯をなぞりながらあたしの感じる部分を探り当てる。 「ん・・・ふぅ・・・ぁ。」 抵抗したくても抵抗できない。江梨子に体中撫で回され愛撫されたい。 あたしの頭の中は江梨子で満たされていくかのようだった。 やがて江梨子はあたしのセーラーに手をかけ、ボタンを優しくはずしていった。 耳元で囁きながら・・・。 「昨日はこんな風に優しくなかったね・・・・。ボタン直ってる。お母さんに直してもらったの?」 あたしは胸をどきどきさせ、なんとか言葉を口にした 「うぅん、あたしが直したの・・・。あんな破れ方した制服なんか見せられないし・・・。」 江梨子はすまなさそうにあたしを見つめた。 そして江梨子のしなやかな指先があたしの首に絡みつき、時折その指が耳をなぞりあげた。 ボタンを全てはずし終え、あたしの下着が江梨子の目の前にさらされた 「ふふっ・・・。可愛いブラ。あたしには見せてくれなかったよね」 少し悲しそうに江梨子は下着を見つめている。あたしは慌てて 「江梨子とエッチしてない時に買って・・。昨日まで着けてなかったから。だから、見せてなかったの」 ふ〜ん、と言った感じであたしに目配せをし視線をブラに戻しながら江梨子は言った 「ブラも可愛いんだけど、佳奈美のおっぱいも見たいなぁ」 可愛い顔を見せつけ、両手であたしの胸を持ち上げる形で江梨子は顔を胸にうずめる。 「ねえ、コレとっていい?。」 もう好きにして・・・。 早く触って・・。 言葉で伝えるのが恥ずかしく、あたしはコクリとうなずいて見せた にやっと江梨子の顔が笑い、腕を背中に回してホックを素早く外していく。 ホックが外れ、肩が急に楽になる。 セーラーの上着を脱がされ、ずり落ちるブラをはがされた。 江梨子から溜め息が漏れる。 「あぁ、いいわこの格好・・・。佳奈美の幼さといやらしさが混ざった顔と体が余計に・・・。」 うっとりするように声をあげる江梨子。 するすると胸を撫で上げる。その行為だけであたしは声を漏らしてしまう。 「あ、あ・・・江梨子・・。」 「佳奈美・・・可愛いよぉ、ちょっと触っただけなのにこんなに乳首硬くして・・・。」 潤んだ大きな瞳であたしを見つめてくる江梨子。 それだけでじんじんとアソコから愛液が溢れてきちゃう・・・。 あたしと江梨子がお互いを求めようとしようと、69の体位をしようとした瞬間、〔ガタッ〕と扉がゆれる音がした。 はっとしてあたし達はその方向に顔を向けた。 そこには・・・・先生が呆然と立っていた・・・・。
あたしは頭が真っ白になっていた。先生に見られた・・・。 ドクン・・。ドクンと嫌な緊張があたしを襲う。 動かないあたしを、江梨子はじっと見詰め、何かを悟ったかのような顔を見せた。 その顔にますますあたしは不安を感じる。 まさか・・・ばれてるの? 江梨子の瞳を見つめる自信が無くて、あたしはただ、うつむくだけだった。 江梨子は無言であたしを抱き寄せた。 まるで先生に見せつけるかのように・・。 そして平然と先生に言ってのけた 「先生、悪いんだけど、あたし達よりを戻したの。今はその確認のためにSEXしてた所よ。邪魔になるから他の所の見回をりしてくれる?」 きつい言葉・・・。 あたしが唯一嫌いな江梨子の部分。 自分にとって迷惑な存在の人や、関係のない人の気持ちは一切考えようとしない性格。 あたしは江梨子に抱かれながらそんな事を考えていた。 先生は何も言わず、ただ江梨子に抱かれるあたしを見つめていた。 「ねえ、早くどこかに行ってよ。先生はあたし達が付き合ってた事知ってたでしょ?恋人たちの時間を邪魔するなんて事しないよね?」 その言葉を聞いた瞬間、先生の目つきが変わった。 教室の前方にいた先生は、つかつかとあたし達に詰め寄り、江梨子の前に立ちはだかった。 人に見下ろされるのが大嫌いな江梨子はあたしを抱く手を緩め、サッと自分も立ち上がった。 身長160cmの先生と、165cmの江梨子。 大分差があるけれど先生はひるむことなく江梨子に言い放った。 「恋人同士なら、なぜ佳奈美ちゃんにあんなひどい怪我を負わせたの? 佳奈美ちゃんはあなたと別れた後、教室に1人うずくまるほどの痛みを味わったのよ?」 江梨子はあたしをチラっと見ると再び先生を睨み返して言った 「それはもう誤った。あたしを許していないのならあたしが呼び止めても帰れば済んだんだから。 あたしを受け入れたのは、佳奈美が許してくれてる証拠でしょ?」 先生に言っているようで、どこかあたしに言っているように聞こえる江梨子の言葉・・・。 ぐっと言葉がつまる先生。 床に座っているあたしに視線を落とす。 佳奈美は勝ち誇ったかのように先生を見ている。 ふぅ・・と溜め息をつき、先生は言った 「佳奈美ちゃんがいいなら、あたしは何も言わないわ。 斎藤さん、今はもう何も言わないけれど、今度佳奈美ちゃんに手を上げたりしたら承知しないから。」 そう言うと先生は江梨子をキッと見据えて教室を出て行った。 あたしはあまりの出来事にただただじっと座っている事しか出来なかった。 江梨子は何の悪びれも無くあたしの横に座りなおした。 「あ〜ぁ。何なの、あの女。佳奈美を狙ってる事あたしに言うなんて」 そう言うと江梨子は不機嫌そうにあたしを見てくる。 「佳奈美・・・、昨日あの女と何かあったでしょ?」 ドキッと心臓が跳ね上がった。 何も言わないあたしの顎をつかみ、強引にキスをする江梨子。 そしてあたしの首から鎖骨に唇を押し付けた。 江梨子の口付けの後には、じんわりと赤いキスマークが浮かび上がってきた。 「佳奈美ぃ・・・。」 泣きそうな江梨子の声。 さっきまでの自身や、嫌な態度など感じさせないような声。 「昨日みたいなことはもうしない・・・。お願い、あたしは佳奈美がいないと駄目。 佳奈美が大好きですごく不安なの・・・。佳奈美が先生とこのまま付き合っちゃうんじゃないかって・・・」 いつもなら絶対見せないような涙が江梨子の透きとおる頬に伝う。 犬みたいな可愛らしい瞳・・・。 あたしは江梨子をぎゅっと抱き寄せて江梨子の頭を撫でてあげる。 江梨子はあたしにしがみつき、子供のように甘えてきた。 元はと言えばあたしが悪いんだ。 それに江梨子は怒って暴力を振るってきただけだもん。 考えてみれば江梨子は悪くない、 悪いのはあたし・・・。 そうやって自分を責めて、あたしは反省していた。 あたしの方からは見えない恵理子の顔が不敵に笑っている事などしるよしもなく・・・・。
江梨子と教室で抱き合ったあの日からあたし達は、まわりにレズだとばれるんじゃないかってほど親しくなっていった。 少なくとあたしは本気でそう思っていた・・。 社会の時間になると江梨子は決まって周りの女子達と話し始める。 あたしの学校は女子校なだけに、授業中は騒がしい。 でも、社会の時間はあきらかに嫌がらせのために騒いでいたように思う。 先生の声が江梨子たちの声により掻き消される。 あたしは一生懸命授業をしてる先生が可哀想でしかたなかった。 大好きなはずの江梨子の声があたしの勘にさわる・・・。 「きゃははははっ!マジで?今からソコ行って連れてってもらう?」 授業をサボる事を先生に言ってるみたい。 机の横に引っ掛けている鞄を取って江梨子たちは帰り支度を始めた 「佳奈美も行こ☆いまから奈央のアシの家行って車で海連れていってもらうんだけど」 江梨子の指先があたしの肩に触れる。 あたしのさっきまでのイライラがその瞬間に弾けた。 〔バシッ〕っと江梨子の手を払いのけて、あたしは鞄を持って教室を出た。 「ちょっと、佳奈美キレてるけど、あんた何かしたの?」 奈央が江梨子に話し掛ける 「あんた達最近超仲良かったのにさぁ・・・」 奈央が話し掛けてくるのを無視して、江梨子も教室を出て行った。 「もぅ!何なの。じゃ、あたしらだけで行こうかぁ♪」 奈央とその他、3〜4人の女子はぞろぞろと教室を出て行った。 先生はその集団に何も言わず、じっとチャイムが鳴るのを待っていた。 あたしは教室を出たはいいけど、どこに行けばいいかわからなかった。 ただ闇雲に歩き回り、そのうち屋上へ行く階段を見つけた。 「立ち入り禁止」という紙がはってあったが、おかまいなしにドアを蹴破った。 真っ青な空があたしの目の前に広がった。 胸につかえている何かがサッと取り除かれたような気がした。 「気持ちい・・・・」 背伸びをして鞄を放り投げた。 その場に寝転がり、青々とした空を仰いだ。 雲ひとつ無く時間が止まったかのような錯覚におちいる。 しかしその時間は一瞬で終わった。 江梨子があたしを追いかけてきていたんだ。 息を切らし、髪をかき上げる江梨子。 普段なら江梨子が追いかけてきてくれるものなら心のソコから感動してしまうだろう。 けど、その日は逆に、江梨子に近ずいてきて欲しくなかったんだ。 大好きな寺澤先生にあんな嫌がらせをしている江梨子が許せなかった。 あたしは江梨子に背を向けてフェンス近くまで移動した。 江梨子も黙って後を追ってくる。 〔かしゃん・・・〕 あたしはフェンスにしがみつき、その下に広がる町を見下ろしていた。 背中に江梨子の視線を感じた。 あたしはフェンスに片手を置き、フェンスに沿って、その場からゆっくり歩き出した。 江梨子に視線を合わせないまま質問する。 「なんで先生にあんな嫌がらせするの?」 江梨子は少し困ったように切ない顔で言葉を詰まらせた。 「ねえ、どうして?あたしと先生の間に何かあったから?」 江梨子の髪が風になびく。 サラサラと流れる髪。 風の勢いで江梨子の綺麗なうなじが見え隠れした。 「江梨子、あたしの事が好きならあたしだけを見てればいいじゃない。 嫌がらせなんかしなくても、あたしは江梨子の事見てるよ?」 江梨子は何も言わずにただ、悲しい顔を浮かべてあたしに近ずいてきた。 あたしはじっと江梨子を見ていた。 ふわっと柔らかな風が吹いた。 あたしの髪が風によりなびき、一瞬視界が髪の毛により失われた。 髪が元の位置に戻る頃には江梨子の唇があたしの唇に重なっていた・・・。 江梨子の柔らかな唇が離れ、その口はあたしの耳元へと移動していった そして 「ごめん・・・。」 そう江梨子が言ったかと思うと、屋上の扉から三人の女たちが出てきた。 三人とも綺麗で、若かったが、女子高生でないのは何となく雰囲気でわかり、どこか笑みに影があった。 あたしは嫌な予感がした・・・・。
江梨子があたしから離れ、三人の近くに寄って何かを話していた。 フェンスに片手を掛け、あたしは状況を把握しようと必死に頭を回転させる。 江梨子は三人に何かを説明しているような風だった。 3人は納得してるような感じを見せ、江梨子に何かを手渡した。 江梨子はソレを持って屋上から出て行ってしまった。 フェンスを握る手に力が入り、汗がじんわりと背中に伝う。 三人はあたしに近ずいてきて、それぞれ舐め回すような視線を送るってくる。 嫌だ、なにこの人達・・・・。 「江梨子に何言われたか知らないけど、あたしに何か用ですか?」 精一杯の声を振り絞って問い掛ける。 髪の長い女の人がクスッと笑った。 「可愛いわね・・・。声が震えてるわよ?」 その言葉に声が詰まる。 「あたしは綾。髪が黒い子が有紀、茶髪の子が恭子よ。」 綾は淡々とあたしに説明を始めた。 「あたし達、3人であなたを買ったの。 1ヶ月前かなぁ、イベントで江梨子に出会って、買って欲しい子がいる。って持ちかけられたの。」 何・・・?江梨子が?売り?買い?何・・・・・。 「すごく可愛いから損はさせない・・・。ほんとにその通りだわ・・。いやらしい体に幼い顔の大きな瞳。あたし達のタイプよ♪」 綾は後ろの2人に微笑んで見せた。 二人も嬉しそうにお互いを見て笑っている。 「江梨子も、相当悩んだようね。あなたが男と二股掛けてるからこらしめて欲しいってさ☆駄目よ、男と女を同じ扱いにしちゃぁ・・・」 あたしはフェンスから手を離し、両手をグッと握り締めた。 「江梨子とはもう仲直りしたよ、男とも別れた・・・。あたし達は上手くいってた!」 綾は呆れたように言う 「そう思ってるのはあなただけでしょ? 現に江梨子はあなたを許してないからあたし達にあなたを売ったんだから・・・。 二ヶ月も我慢させられて、おまけに別れたその日に他の女に乗り換えられたんじゃたまらないわよね。」 何も言い返せなかった。当たってるから・・・・。 うつむいたあたしを見つめながら綾は付け加えた。 「江梨子は最後まであなたを気使っていたわ。【あの子をあまり傷つけないで、優しくして欲しい】って。 その前にはやっぱりお金を返すからあなたを売りたくないとまで言ってきたの」 あたしは言葉を挟む 「じゃあ・・。なんで・・・。」 「何であなたを売ったかって?あの子の親はガンなのよ。アル中のね」 体中がいっぺんにしびれた。 そんなの気がつきもしなかった。 江梨子の親がガンでアル中?江梨子の親には昔会った・・・。 けど、アル中なんて感じしなかった。 ましてガンなんて感じさせないほど元気だった。 「混乱してるようね、ガンが分かったのは3ヶ月前よ?何か心あたりは無いの?」 はっとしてあたしは動けなくなった。江梨子は母親がいなかった。 お父さんと2人暮らしをしていたのは知っていた。 確か以前に2、3度江梨子の体に不自然な痣があるのを見たことがある あれは、お父さんが? 「江梨子のお父さん、ガンのせいで体が弱ってね、働けなくなったらしいわ。 お金が無ければ病気も治せない、生活できない。 江梨子はそれで仕方なくあなたを売ったのよ、この後学校をやめる覚悟でね。」 女達はしばらくあたしを見ていたが、やがて綾が合図を出して二人があたしを屋上から連れ出して、車に詰め込んだ。 あたしは抵抗することなく女達に身を任せた。 江梨子の甘えた顔がまぶたに浮かんできた・・・・。
スモークがかかった車の窓から、灰色の町を目で追っていた。 車を運転する綾。 その隣には黒髪の有紀。 あたしの隣には恭子が座っていた。 信号で車が止まると、綾は後ろを振り返りあたしに話し掛けてきた。 「そんなに心配そうな顔しないでよ♪あたし達はあなたを傷つけるようなことなんかしないから」 あたしは綾の顔を見ずに、そのまま顔を窓のほうに向けていた。 綾はそんなあたしの態度に微笑み、あたしの隣に座っている恭子に目配せをした。 信号が青に変わり、車が動き出した。 あたしは相変わらず外を眺めていたが、突然太腿に恭子の手が置かれた。 「佳奈美ちゃん、後からあたし達三人であなたに気持ちいい事をするんだけれど・・・。その前に体を慣らしておこうね♪」 そう言うと、恭子は太腿に爪を軽く立てて膝から脚の付け根まで滑らせた。 軽い痛みと気持ちよさで体がビクンと反応してしまう。 その反応を見て恭子は更に爪を立てる。 「痛いでしょ?なのに体が反応してるみたいでけど・・・。江梨子ともこんな事してたのかな?」 意地悪そうに笑ってから恭子は体をかがめてあたしの太腿に唇を付けた あたしは体を強張らせて、キュッと力を入れた。 恭子は左手で自分の体を支え、もう片方の空いてる右手で太腿を撫で回した。 「そんなに力入れなくてもいいわよ♪ゆっくりするからね」 【ちゅっ・・・ぴちゅ・・・】恭子が優しく太腿にキスをする。 あたしは声が出るのを必死で抑えた 恭子は声を出さないあたしに、何とか声を出してもらおうと執拗にあたしに愛撫を繰り返す。 ぐっと我慢をしていると、恭子は綾に向かって 「綾、シート倒すね」 と言った。 綾は軽くうなずいてまた運転に意識を戻した。 いったいどこを走っているんだろう・・・。 知らない場所に知らない女達。 なんで・・・?もぅヤダよ・・・。 恭子の体があたしをまたぎ、シートを倒した。 ゆっくりとシートが倒れ出す。 もう・・・・どうでもいいや・・・・。 あたしは絶望の中でそう思った。
つづく